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魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵

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後日談
  ⑰~母親、父親

 
前書き
ヴィヴィオ「ようやく産まれる新しい命。正しい産まれ方による命。産まれてくるまでとっても大変で、母親は辛そうで。たくさんの人に祝われて。そんな様子を見ていた私は、自分の生まれ方に疑問を持った」

フェイト「そんなヴィヴィオに対し、なのはと士郎は……」

ヴィヴィオ「後日談17、母親、父親。始まります」 

 
side なのは


その連絡をもらったのは朝早くだった。
ヴィヴィオの学校の支度を手伝っていたらレイジングハートに通信が入っていた。相手ははやてちゃんのようだ。


「はい、なのはです」
「なのはちゃんか!?」
「は、はやてちゃん?どうしたのそんなに慌てて……」
「フェイトちゃんの事や!!陣痛始まったそうやで!!」
「えっ!?」




…………………………………………………………………


その後、ヴィヴィオを送り出した私たちは車で病院に向かった。


「はやてちゃん!」
「おお、二人とも来たか。全く、ランスもタイミング悪いなぁ……」
「どういうこと?」
「任務の帰りが丁度今日の夜なんよ。だから代わりに非番だった私がフェイトちゃん見てたら……」
「陣痛が来てしまった、と」
「そういうこと。はぁ……予定日の2日前やからなんかあるかも、とは思ってたけど……」


はやてちゃんもランス君も何と言うか、運が悪いよね。
ランス君は立ち会えないし、はやてちゃんは色々なところに連絡したりとかしなきゃいけなかっただろうし。


「…………うーっ!っはあ、はぁ」
「はい、吸ってー。吐いてー」


分娩室からはフェイトちゃんの呻き声が聞こえてくる。
私も二か月後くらいには……
そう考えると少し緊張してしまった。


「てかごめんな。私そろそろ限界や……。後は、頼んだで……」


そんな私の心情などお構いなしにはやてちゃんは寝てしまった。


「はやても大変だっただろう。病院に連絡してから一睡もしていないそうだからな」
「そうなの?」
「聞いてなかったのか?」


どうやら私が考え事をしていた間に説明があったらしい。


「うん……ちょっと考え事してて。それで、いつから寝てなかったの?」
「昨日の夜からずっとだ。深夜2時くらいに始まったそうだからな」
「そうだったんだ……」


はやてちゃんもすごく頑張ってたんだな、ということが分かったのでそのまま寝かせておいてあげる。
その後は士郎君と二人でゆっくり待った。




…………………………………………………………………


それから一時間程で産声が聞こえてきた。
無事に産まれたようで良かった。


「うむぅ………」
「あ、はやてちゃんおはよう」
「うん。おはよう………ってちゃうやろ!?」


一人ノリツッコミ。相変わらずである。


「どうなったんや?無事に産まれたんか?」
「ついさっきね。産声も聞こえてるでしょ?」
「あ………ホンマやな……」


それにしても、大変そうだったな……。
次は私……なんだよね。
頑張らないと!!




side ヴィヴィオ


学校が終わると、私はそのまま病院へ向かう。
入り口まで来ると、見知った人影が見えた。


「ヴィヴィオ、久しぶりだな!」
「しばらく見ないうちにずいぶんと成長したな」
「ヴィータさん、シグナムさん!お久しぶりです!ほかの人たちは……?」
「ザフィーラと士郎は荷物運び、なのは、はやて、シャマルがフェイトんとこだ」


そう言って病院の中に入っていく二人についていく。
病室に近づくと楽しそうな笑い声が聞こえてきた。


「なのは、ヴィヴィオ連れてきたぞ」
「うん。ありがとね、ヴィータちゃん、シグナムさん」


ヴィータさんに続き、部屋に入る。
ベッドの周りにはママ、はやてさん、シャマルさん。
ベッドにはフェイトさんと、白い布に包まれた小さな命がいた。


「うわぁ……小さい……」
「ふふ、もっと近くで見てみる?」
「はい!」


近くで見ると、小さな手、しわくちゃな顔。まるで猿みたい、とはよく言ったものだ、と思う。
命って、こうやって生まれてくるんだ……。
たくさんの人に支えられて、うんと時間をかけて、みんなに祝福されて。


……私は、どうだったんだろうか?
試験管の中で生まれ、培養液の中で育てられ………


「ヴィヴィオ?」
「……えっ?」


気が付けば、ママがこちらを覗き込んできた。


「顔色悪いみたいだけど、大丈夫?」
「へ、平気平気!走ってきたから疲れちゃったの!」
「そう……」


空気が重い。おめでたい日なのに、私の所為で……。


「なぁなぁ、フェイトちゃん、そろそろその子の名前教えてくれへん?いつまでも内緒、じゃ気になって仕方ないよ」
「そうだね。もういいかな」


話題を変えてくれたはやてさんを見ると、軽くウィンクを返してきてくれた。
助けられちゃったな……。


「この子の名前はね、アリシア。アリシア・ハラオウン」
「ええ名前やね。元気な子に育つとええな」


それからはパパとザフィーラが戻ってきて皆でのんびりとアリシアちゃんのことについて話した。
……だけど、私の頭からは自分の生まれへの疑問でいっぱいだった。




side 士郎


フェイトとランサーの娘、アリシアが誕生して2ヵ月がたった。
ヴィヴィオも進級して、特事の仕事も落ち着きを見せてきていた。
ただ、時折なのはの膨らんだお腹を見て複雑な表情を見せるヴィヴィオが気にかかる。
丁度休日であるし、今日あたりにでも聞いてみるか。
そう思ってから2時間ほどのことだった。


「……っ」
「なのは?」


突然襲ってきた痛みになのはは顔を歪める。
どうやら始まったらしい。


「陣痛、来たみたい……」
「わかった。病院の方の手配はしておく。ヴィヴィオも手伝ってくれ」
「えっ?……うん」


明らかに様子がおかしい。
まるで何か迷っているようだ。




…………………………………………………………………


病院に到着し、陣痛に耐えるなのはの世話をしつつ夜を迎える。
分娩室に運ばれる頃にはかなり遅い時間となっていた。


「ヴィヴィオ」
「……」


朝からずっと悩んでいるらしいヴィヴィオは私の声も聞こえてないようだった。


「……いいのかな?」


と、思ったらちゃんと聞こえていたらしい。
返事を返してきた。


「どうしたんだ?」
「………私ってなんなんだろうって。パパとママとは血も繋がってないし、生まれ方だって特殊だし……。普通の子じゃないのにここにいてもいいのかな……って」


憂いの表情を見せ、そう語るヴィヴィオは、自分が邪魔者なんじゃないか、と思っているらしい。
そんなヴィヴィオに私は……


「莫迦者が」


拳骨を落とした。


「痛っ!?」
「もう忘れたのか?あの時のことを」
「あの時……あっ!」


全く分かっていないヴィヴィオにヒントをあげるとようやく気が付いたようだ。


「忘れてなんかない……忘れられるはずないもん」
「それにしては思い出すのが遅かったんじゃないか?」
「あ、あはは……」


ヴィヴィオの言う忘れられないこと、とは今の家に引っ越した時に交わした約束のことだ。
『どんな時でも家族一緒に』と言う約束。
血の繋がりがなくても家族だ、と言ってくれたママとパパが私の家族だと言って笑ったヴィヴィオ。
その約束を本人が忘れていた、というのは情けない。


「何にせよ、これからもヴィヴィオは私となのはの娘だ。それは変わらない」
「……うん!」


ようやくヴィヴィオに笑顔が戻った。




…………………………………………………………………


それから一時間程で子供は産まれた。男の子だそうだ。


「よう。無事産まれたようだな」
「おめでとう、なのは」


翌日の昼過ぎにはランサーとフェイトがアリシアを連れて見舞いに来た。
はやて達も夕方頃には着く、と連絡をもらっている。


「二人とも、わざわざありがとう」
「ふふふ、お互い様だよ。なのは」


なのははフェイトと話し込んでいる。ヴィヴィオは年の離れた弟に話しかけていた。


「私がお姉ちゃんのヴィヴィオだよ。よろしくね、優」


(ゆう)。それがこの子の名前だ。優しい子に育つように、という願いを込めてなのはが考えた名前だ。
ヴィヴィオはそんな優を見ながら何かを考えているようだった。




…………………………………………………………………


夜。明日から学校があるヴィヴィオと共に帰宅する途中の車内でヴィヴィオは言った。


「ねえ、パパ」
「なんだ?」
「私に剣を教えて」


ある程度は予想していた。優を見ながら何かを考えていたのは明らかだったし、ヴィヴィオが私やなのはに憧れを抱いていることも知っていた。


「剣を習って、何をする?」
「もっと強くなりたい。優を守れるように。パパとママの子だって胸を張って言えるように」


その目は真剣だ。強い意志を感じる目。そんな所がなのはそっくりだ、と思う。


「いいか、ヴィヴィオ。私が教える力とは大事な人たちを守るためのもの。傷つけたり、奪ったり。そんなことのために振るっていいものじゃない。それをよく覚えておくんだ」
「……え?」
「強くなるんだろう?」


そう問いかける。


「……うん!よく覚えておくよ」


これはヴィヴィオの誓い。強くなるための、姉としての決意をみせた。




side なのは


「そっか……。ヴィヴィオがそんな事を」


夜。ヴィヴィオを送り届けた後病院に戻って来た士郎君からヴィヴィオの誓いの事を聞いた。


「ああ。ヴィヴィオも姉になる事に対して思うところがあったようだしな」
「良かった……。ヴィヴィオが優が生まれてくることに対して後ろめたい気持ちがあるんじゃないかって心配だったんだ。でも、大丈夫だったみたいだね」
「ああ。あの子は私となのはの娘で優の姉だからな」


自信満々にそう語る士郎君に思わず笑みがこぼれた。


「ともかく、これからもよろしくお願いしますね。パパ」
「ふっ……こちらこそ。ママ」


夜の病室で笑いあう私達。
隣で眠る我が子の寝顔を見ながら私達は微笑み合っていた。 
 
 

 
後書き
えー。今回はヴィヴィオの葛藤をテーマとしてみたのですが、いかがでしたか?

個人的には中々の出来だと思っているのですが……

そして子供達の名前です!

ハラオウン夫妻の子供はアリシア・ハラオウン。これは連載初期から決めていたので漸く出せた、という感じですね。

衛宮夫妻の子供は衛宮優。候補はいくつかあったのですが、悩んだ挙げ句優に決定しました。

ちなみにアリシアが3月生まれで優が5月生まれです。

ViVid編ではこの二人にも出番があるかも……?

それではこの辺にて。 
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