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ONE PIECE NOVEL -SHISHI BREAK STORY-

作者:伝龍
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プロローグ 前半

「相変わらずあの先生の説教は長いよな。」

そんなことを言いながら夕焼け色に染まった歩道を歩いている青年がいた。
名前は仁道獅子、近くの学校に通う学生である。

「まあ、いいや。それよりも早くコンビニ行かねーと。」

そう言って獅子は歩みを少し速める…今日は某週刊誌の発売でその雑誌に掲載されている漫画ワン○ースを読むためだ。獅子は毎週欠かさずに立ち寄り、それを帰りに見ながら帰るのが習慣となっており、今週も同じようにコンビニで購入して読みながら歩いていた。

「しかし、この展開は有りって言ったら有りだし、無しって言ったら無しだな。」

俺は漫画の最後のページを読み終え、雑誌を閉じた。今現在の状況として黒ひげが白ひげの能力を奪い、世界に震撼を与える場面で終わっている。

「この戦争の初めの方は連携とか取れてたけど、白ひげが負傷してからの動揺が激しすぎるし……」

今回の戦いを最初から読んでいる獅子は改めて振り返り、自分が思ったことを口にしていく。

「何よりまずは戦力の差だな。物語の構成とはいえ、隊長達でさえ苦戦している大将の実力がああもはっきり示されたら他の奴じゃ対応しきれないし、さらに中将や七武海がいるからなぁ。」

腕組みをしながらブツブツと独り言を話す様は他人の目から見れば、気持ち悪いことこの上ないのだが、そんなことは気にせずどんどん口にしていく。

「ルフィ達も合流したけど、それでもあまり戦力差に変化もないし……何より救出されたエース本人が挑発に乗って、返り討ちにあったら元も子もないな。気持ちが分からなくもないが……」

エースにとって白ひげは自分を救ってくれた人であり、かけがえのない大切な家族をそんな人をバカにされたりもしたら怒りもするだろう。

「だからこそ、こういう展開になったんだろうけどな。」

そこまでを口にすると横断歩道にさしかかり、信号が青に変わるまで歩みを止めた。

「もし、あの場に圧倒的な力……それこそチート並の能力を持った奴がいたら状況は変わってくるんだろうけど、それはあくまで創作小説の中での話だからな。」

よくネットのサイトでチートや能力最強などの投稿小説があるが、あれはあくまでそれぞれ個人がこういう風にしたいと思って書いている物であり、実際の漫画で同じ事をするとパワーバランスを無視するし、何より面白みがほぼ皆無になってしまう。

故にそういった小説は好きな人と嫌いな人が明確に別れるのである。

「まあ、俺はチート肯定派だからそういった小説は好きだけどね。」

そこまで喋り終えると信号が青に変わり、再び獅子は歩き始めた。

「さてと、それじゃ来週の話も楽しみに……!?」

横断歩道を渡ろうとして歩き始めた途端、急に目の前が強力なライトに照らされたかのように明るくなった。

「(くっ……これは一体!?)」

突然の出来事に動揺した獅子だったが、次の瞬間、光が体全体を包み込むかのように覆い被さり、意識を失った。

































「ん……んん……」

まぶたをゆっくり開けながら獅子は目を覚ました。

「……ここはどこだ?確か横断歩道を渡ろうとして、いきなり目の前が真っ白になったと思ったら……」

そう言いながら辺りを見回そうとした瞬間…

「やっほー!目が覚めた?」

目の前に桃色の髪の毛に白のローブを着た美少女の顔があった。

「おわっ!!」

急に出てきた顔に驚き、横たわっている体を起こした。当然その結果は……

ゴン!!!!

「っ!」

「いったあああああああーーーーーーーーいい!!」

鈍い音が響き渡り、二人しておでこを押さえた。

「ちょっと!!いきなり起き上がらないでよね!!」

少し涙目になりながら少女が文句を言ってくる。

「ああ、すまない……って何で俺が謝らなければならないんだ!!」

「そっちからぶつかって来たんでしょ!!」

「ふざけんな!お前がいきなり顔を出すからだろ!」

「何よ!」

「何だよ!」

おでこを押さえながら水掛け論を繰り返し、にらみ合う二人。

「うぅー……ハッ!こんな事してる場合じゃなかった。」

これ以上は無駄と判断したのか、急に少女が何か思い出し方のように表情を変えた。

「おい、話はまだ終わって……」

「あなた、仁道獅子よね?」

「話聞けよ……まあ、そうだが?」

呆れながらも獅子は少女に聞かれた質問に答えた。

「良かった。それじゃあ、はいこれ。」

そう言うと少女はローブに手を突っ込み、一枚の紙を取り出して獅子に渡した。差し出された紙を受け取り、俺は不審そうに眺めた。

「何だこれ?」

「読めば分かるから。」

「は?ていうかここって一体どこ……」

「いいから読んで!!」

急に顔を真っ赤にして怒り出す少女……俺、何か悪いことした?

「わ、分かったよ。えーと、なになに……」

そう言いいながら紙を見ると何やら文字が書かれている。

『初めまして、私、神様と言います。そして、おめでとうございます仁道獅子殿。あなたはこの度、好きな世界への移動する権利を獲得いたしました。つきましては注意事項や特典についてをご説明したいと思います。』

「おい、冗談は……」

「いいから最後まで読んでください!!」

またも顔を真っ赤にして怒り出す少女……だから、俺何か悪いことした?

『なお、全てをご説明したあとに移動するかしないかをお近くの使いの者にお伝えください。』

「だから冗だ……」

「………」

再び抗議しようとして少女の方を見ると……般若がいた。

「……すいませんでした。」

その迫力に思わず頭を下げ、再び文章を読み始めた。

『まず特典についてご説明いたします。簡潔に言いますと、あなたの要望したことを全て反映します。例えば肉体を強化したいと望めば肉体を理想の形で強化しますし、不老不死になりたいと望めばその通りになります。』

「(本当に簡単に言ったな)」

『次に注意事項といたしまして、もし移動するを希望された場合はこれまでにいた世界でのあなたに関する記憶等などは抹消されます。』

「オイ!!」

さらりと出た爆弾発言に思わずツッコミを入れる。

『しかし、ご安心ください。移動しない場合も何の問題もなくこれまでの生活に戻る事が出来ます。但し、これまでの出来事の記憶は消させていただきます。以上で説明を終了いたします。なお、ご質問等がありましたら使いの者にお聞きください。』

そこで文章は終わっており、読み終えた獅子は軽く溜息をついた。

「ふぅ……何か漫画や小説でよく見るお約束通りの展開だな。」

「お約束通りの展開だけど、今起きているのは事実だからね。」

先ほどまで般若のような顔をしていた少女が笑顔で再び話しかけてきた。

「さて、それじゃあ何か質問はあるかしら?」

「いろいろと聞きたいが、ここはどこだ?」

目が覚めたらいきなり変な手紙を問答無用で読まされて気にとめていなかったが、改めて周りを見てみて思った事…それは……

「(何もない…そして真っ白)」

文字通りどこまでも続く白一色の世界…そこにいるのは自分と少女だけ。

「ああ、ここね?ここは他の世界へ移動するための説明や準備等の最終確認を行うために神様が作った空間で、権利を獲得しなければここに来ることはできないの」

「何でこんな所でするんだ?別にその場でも出来るんじゃないか?」

「普通、神様は人間個人に干渉することは出来ないの。そこでこの空間に呼び込んで、干渉の制限を軽くするの。まあ、それでもまだ厳しくて、私達みたいな使いの者を寄こすんですけどね。」

いつの間にか黒の三角メガネをつけた少女がクイッとメガネを軽く持ち上げる。

「なるほどね。じゃあ次の質問、何で俺を選んだんだ?」

その質問をした途端に少女の目がキラーンと光り、顔を近づけてくる。

「あなたが選ばれた理由、それは……」

「ゴクリ……」

何故か緊迫した空気がその場を包み込み、思わず息を呑む。

「ダーツよ!!!!」

「……は?」

思わず目が点になる獅子。

「すまん…もう一回言ってくれないか?」

「だからダーツですよダーツ!」

すると、どこからともなく某番組でよく使われている円形の板が現れた。その表面の一カ所に『仁道獅子』と書かれており、その部分に穴が開いていた。

「これにダーツの矢を投げて決めたんですよ。」

「………」

余りの事にポカンとする獅子。まさか選ばれた理由がダーツで決められたなんて誰も予想できないだろう。しかも……

「何でパジェ○が入ってんだよ!!!」

よく見ると自分の名前の少し横に一番の高額商品である名前があった。

「ああ、それは気にしないでください。別に神様がその番組が好きで作って、ついでだからここに名前書いちゃえっていうのが真実じゃないですから。」

「今の世代絶対その番組知らないだろ!?そんなおまけ的な理由で選ばれたの!?」

思わず膝をつきがっくりうなだれる獅子。

「まあ、そう気を落とさないで。ある意味○ジェロより当たるの難しいですし。」

「フォローになってねえよ!!!」

少し涙目になる俺……さすがにぶっちゃけ過ぎたのを悪いと思ったのか少女は少し焦りながら話を進めた。

「ほらっ、他に質問はありませんか?」

「ぐっ……じゃあ、これに書かれている特典についてなんだが。」

気を取り直して、紙に書かれていた特典についてのことを聞いた。

「それについては言葉通りであなたの望んだことが全て反映されます。但し、移動した後での要望は叶えられません。あくまでこの空間で望んだ事のみですので、そこの点については気をつけてください。」

「つまり移動後の強化は不可能ってことか。」

「はい。ですが、ここではどんな事でも叶えられますので、そんなに問題はないかと思います。」

「分かった。それじゃあ、最後の質問だ。」

まだまだ聞きたいことがあるが、自分の中で一番気になっていることを口にする。

「移動した後は俺の記憶等が抹消されるってあるんだが……」

それに関しては不真面目に答えることができないのか、焦った表情から真剣な表情に変わる。

「あちらでの混乱を避けるために『あなたが存在したという事実』自体を抹消しますので、最初から存在していなかった事になります。」

「!!」

「干渉制限と同時にこの空間は最終確認の場でもあるんです。何しろ人一人の存在が消えてしまうんですから……」

「………」

「ですが、もし移動しないを選択した場合は今までの生活に戻ることが出来ます。その際、これまでのやりとりの記憶は消去させていただきます。」

そう言って少女は頭を軽く下げた。 
 

 
後書き
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