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サキュとやっちゃいます!! 三人が繰り広げるハートフルな毎日。 聖道のハートフルボッコな現実。

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学校へ行こう!!

今日は朝から体の調子がまた良い。

しかしだ……学校に行く気になれない。

太陽、何故この言葉が俺はこんなに嫌いになったのか。

おおよその検討はついている。

俺のベッドで気持ち良さそうに寝息を立てるリッチ・サッカバスのせいだ。

俺はこの阿羅耶識とやらに住み着いた悪魔の下僕的な身分か?

だったら十字架や太陽と言ったオーソドックスに神聖な物は全てダメなわけか。

もちろん教会や寺、神社と言った響きにも寒気を催す。

金や銀にも蕁麻疹が出そうな気がする。

しかし何故住まわせてやってる奴の身分が、宿主より上なのかと言う理不尽に意を唱えたい。

「おーい。リッチ」


寝息を立てたまま、ピクリとも動か無いので鼻を突いて見た。

鼻を自分で弄った後にヒクヒクと鼻の穴を動かした。


「おーい。起きろ」


また鼻を突くとヒクヒクさせる。

宿主としてこれくらいの悪戯は許されるだろう。


「リッたん。朝だ――」


二本の指が俺の両目を貫いた。

突かれた衝撃で倒れ込み、足をばたつかせる。

少し調子に乗りすぎた。


「ぬをっ。目がぁぁあ」


「お前にそれで呼ばれたら無性に腹が立つ」

むしろ始めから起きていたのでは無いかと疑いたくなる反応の速さだ。


「もう、お兄ちゃん。朝からうるさいよ」


2階で暴れた為に妹が注意しに上がって来た。

「咲智よ。朝からお前は過激過ぎるぞ」


チューブトップが上手い具合にエプロンで隠れ、前から見ると上半身裸にエプロン状態の妹がそこに居た。


「何言ってんの? お兄ちゃんって本当へんだよね」


「お前の妹は天然痴女か?」


「人様の妹をいかがわしい目で見るな」


「じゃあお前は良いのか?」


「ぬをっ……」


鋭いツッコミに返す言葉が無かった。

しかし、当校するに当たって太陽が邪魔過ぎると言う問題について何一つ解決していないまま、朝の貴重な15分を使ってしまった。


「取りあえずお兄ちゃんは、リッたんと話しがあるから先に降りてなさい」


「は~い」


妹はアホだ。しかしとても素直な子でよかった。

「ところでリッた――」


二本の指が先程よりも強く両目に食い込んだ。


「ぬぁぁああ。また目がぁぁあ」


「二回それで呼んだからな。二回分だ」


床でジタバタしていると妹が一階から叫ぶ声が聞こえて来た。


「もう、お兄ちゃ~ん!! 朝は静かにね~!!」


妹よ、その叫ぶ声も十分近所に迷惑だから気をつけろ。


「ところでリッチ、太陽が邪魔で当校出来ん」


「では、私の日傘を貸してやろう。黒塗りの特注傘だ」


「日傘とか何処の乙女のアイテムだ!! 嫌過ぎる!!」

「じゃあ黒塗りのレインコートはどうかね」

「いらん!! 熱中症でしんでまうわ!!」


「じゃあ――」


「もういい、解った。俺も男だ。自力で何とかする」


「そうか、まぁ頑張ってくれ」


欠伸をした後にリッチは掛け布団を放り投げ、一階にスタスタと降りて行った。


「お兄ちゃ~ん。ご飯だよ~。起きて~」


妹よ、ガッツリ起きてるところ見たじゃ無いか……。


「やれやれ」


俺もさっさと朝食を済ませようと降りて行く。

今日も妹は昨日の夜に引き続きご機嫌な様子で、一人で喋りまくっていた。

素っ気無い相槌に嬉しそうに笑顔を返す妹よ。

お前はなかなか可愛いぞ。誤解するな、兄としてな。

ツン出してごめんなさい。本気で好きだ妹よ。

とは言え、朝食を終えて登校をしようと玄関で靴を履くまではよかった。

またしても外は晴れていて、蝉の鳴き声が夏をしらしめている。

このにっくき紫外線を何とかしないと俺は当校すら出来やしない。


「どうしたの?」


妹がまた俺に不思議そうな顔して首を傾げた。


「いや、何か今日は調子が悪いみたいだ」


「もう、またズル休み!?」


妹は強引に手を引き、玄関から引きずり出して炎天下に俺の肌を晒させた。

体から上がる湯気を妹が見る。


「あら、お兄ちゃんってそんな暑がりだったっけ?」


「い……いや大丈夫だ」


徒歩で15分、高校にしては近い距離だと我ながら思う。

されどこの状況で15分とか拷問じゃ無いか。

「じゃあリッたん。留守番よろしくね」


リッチの言葉は、咲智に伝わらない為か頷き無言で手を振った。


「あ……熱い」


「そうだね~、今日も暑いね~」


妹よ、兄は明らかにお前のアツいと漢字が違うぞ。

皮膚を焼かれる様な、まるで全身が沸騰する様な痛みだ。


「皮膚が沸騰する様な熱さだ」


「上手い事言うね~」


もう俺の皮膚は限界なのか、全身が赤く染まり始めた。

しかも妹よ。別に何も上手い事言ってないぞ。


「やはりダメか、だらし無いのぅ」


振り返ってみたら後ろには、リッチが制服姿で立っていた。


「リッチ、何だその格好は!?」


「制服とやらだ。変な目で見るな」


確かに高城高校の制服を着たリッチが立っている。

先程から皮膚の焼ける様な痛みがない。


「私達は、もう二人で一つなのだよ」


「は? はい?」


「どちらかが欠ければまともに生活すら出来ないのだよ」


「先に言えよ」


「お前がこの秘策に耳を貸さなかったに過ぎぬ。人の話しを最後まで聞かなかっただろう」


「ぬをっ」


またしても鋭いツッコミ……。

取りあえず三人で当校を始めたのは良いが会話が弾まない。


「ねぇ、リッたんはお兄ちゃんの事好き?」

「嫌いだと伝えろ」


「嫌いじゃ無い。だそうだ」


舌打ちされたし。鋭い目つきで俺は威嚇された。

「そっかぁ、ならね。住む所はあるのか聞いて見て」


「ある、素敵な場所だ」


「ある、素敵な場所だそうた」


「あ!! 今日はリッたんの好きな物にしよう」


「人間の臓物を素焼きにしてくれ」


「ホルモンが食べたいらしい」


「リッたん渋いね!! うん!! そうしよう」


さっきから見るからに元気が無かった。

まぁ、暑さで怒る気力も無いだけだろう。

俺も日本人だけに日本の夏の暑さは異常だと解る。


「リッチ、暑いだろ? 日本の夏は湿気が多いからな」

「確かに暑いな、こんな暑いのは初めてだ」

俺が鞄から下敷きを取り出してリッチに渡してやると喜んで扇ぎ始めた。

学校の正門を潜り妹と別れてからリッチをどうした物かと考えた。

まさか教室に連れて行くわけには行かないし。


「お前は今からどうする気だ?」


「もちろん授業を受けに来た」


提出済みの転入手続きの片割れをヒラヒラと見せ付けた。


「お前と同じクラスだぞ」


「マジか」


「マジだ。職員室に付き添え、通訳が必要だ」


廊下のど真ん中を歩く外人のリッチは目立つ様で、みんなが振り返っては俺の前を歩くコイツを見ている。


「どうした聖道? やけにソワソワしてるな」


「いや、目立って無いか?」


「気のせいだ」


気のせいだ。で済ませるレベルじゃないだろ!!

廊下にいる全員がお前を見ているぞ。

それも男女とわずだ!!


「チャームは私のパッシプスキルだ」


「チャーム? パッシプ? なんだそりゃ」


「うむ、チャームとは魅了だ。それが常に行われていると言う事だ」


「なるほどな。だから男女問わずあの目つきか」


良くわからんが取りあえず納得して話しを合わせとく。

しかし周りを見ていて俺は思う。

リッチと関わると絶対こいつ等にいつか葬られる。

職員室のドアを開けて担任の机にリッチを連れて行く。


「先生~、リッチが来ましたよ」


「あらサッカバスさん。早いわね」


担任の藤沢八子(フジサワヤツコ)先生だ。

ニックネームはヤッコちゃんと言うらしく、妹のいるテニス部の顧問だそうだ。

なかなかテニスが上手いらしい。

担当科目は英語で二年生を受けもっている。


そして三十路前。

おいコラ!! そんな三十路前のババァの癖に、物欲しげに上目遣いで腰をクネクネさせるなっ!!


「今日からよろしくと伝えろ」


「キモいからクネクネするな。だそうだ」


「あら~サッカバスさんたら、めっ」


先生のキャラ崩壊が進んで行く。


「もう目を当てるのが少し辛い」


本当に可哀相な生き物を見る気持ちが湧いてきた。


「目を当てるのが辛いのか? なら潰してやろう」


「ごはぁぁぁああ」


また目潰しっ!!


「もう三回めじゃないか」


「ふんっ!!」


「ぬぅぅううぉぉぉ」


更に目潰しっ!!


「縁起が悪いところでストップしておこう」


「なんか嫌だから後一回突いとてくれ」

「ふんっ!!」

「うをわぁぁあ!! 本気にすんなよちくしょ~!!」


合計三連続……それも二回は言われなく。

まさか職員室の床で、のたうち回る事になるとは一生の不覚だ。

「ちなみに私の得意技は目潰しだ」


「言われ無くても把握したっ!!」


「本気でやれば一撃で同報も殺せるぞ」


「本当っぽいからやめてくれ」


「目の位置から脳に向けて指をクイッとこう」


「解説もいら~ん!!」


そのやり取りを見た先生が少し嬉しそうに笑った。


「あらあら、サッカバスさんと一乗寺君は仲良しなのね」


このやり取りでどうしてそうなるっ!!

「取りあえず一乗寺君とサッカバスさん。二年三組に行きましょう」


「解りました」


リッチを連れて二階に上がって行くと既に誰も廊下には居なかった。

朝のホームルームが始まり、学校はもう授業の準備に取り掛かっている。

まずは先生が三組のドアを開けて入って行く。


「みんな~今日からうちのクラスに新しい友達が出来ましたよ~」


「サッカバスさ~ん入って~」


俺とリッチを三組に迎え入れて教壇の前に立たせた。


「え~っと、俺の隣に居る外人さんはリッチ・サッカバスさんです」


みんなが朝の出来事を見ていた為か、敵に向ける様な視線が突き刺さる。

「は~い、しつも~ん。サッカバスさんと一乗寺君は付き合ってるんですか?」


リッチは何も答えない。


「リッチ・サッカバスって珍しくて、カッコイイ名前だよな」


「リッチの言葉の意味は死体だよ。さぁ訳してやれ」


俺は迷う。リッチはこちらを見ないが表情が明らかに浮かない。

『死体』と呼ばれるってどういう気持ちなんだろう。

親も娘に良くそんな名前をつけたもんだ。

あの表情からして自分の名前が嫌いなんだろう。

でもコイツ本当に悪魔なのか? 逆に悪魔にしてみれば迫のあるカッコイイ名前なんじゃ無いのか?

「リッチの名前の由来は、愛とか豊かな心と言う意味だそうです」


一応気を利かせたつもりの言葉にリッチが「ちっ」と舌打ちして睨みつける。

だがいつもの迫力が無い。

コイツ、ビックリする程素直じゃねぇな。


「う~ん、良い名前だなぁ~」


「リッチさんかわいいよリッチさん」


口々にクラスメイト達の言葉が教室内に飛び交う。

何はともあれ上手く凌げた。

「じゃあサッカバスさんは一乗寺君の隣の席に着いて下さい」


教壇から一番後ろの窓際が俺の席だった。

よもや学校の中でもリッチから離れられないと言う悲しい現実が憎い。


「ま、家も学校も一緒だけどよろしくな。悪魔さんよ」


「ふん」


御機嫌ななめなのかプイッと顔を反対に反らしたが、後頭部からは何の悪意も感じなかった。


「それ、マジなのか?」


何気ない会話を拾われて、一時限目が始まる時間にも関わらず「付き合ってんのか?」とか「実は高校生夫婦?」とかありえない質問が飛び交う。

それと共に殺意ある危険で熱い眼差しも感じた。

しっちゃかめっちゃかで教室がお祭り騒ぎになる。

こうして今日と言う一日が賑やかに始まって行く。

出来たら凡人の俺をそっとしておいて欲しい。

クラスメイトの質問で一時限目はまるまる潰れた。

何故ならば……先生までもがこぞって質問を繰り返して授業にならなかったのだ。

そんな中でリッチはあれ以降一つも質問に答えなかった。

コイツの意志の強さには些か驚いた。

何しかあれだけのマスゴミ的な、あるいはパパラッチ的な奴らの質問攻めに、ただ黙って座っていたのだから……。

チャイムと共に名残惜しげに先生が教室を去って行く。

ヤッコ先生、この一時間分の授業は何処で取り返す気だ?

次の時間は体育だ。

ちなみに俺は体育が大っ嫌いで出来たら出席したくない。

短距離ダメ長距離ダメ、跳躍力皆無。

そんな俺が体育に期待するのは女子のブルマ姿とスクール水着!!

しかし!! しかしだよ!! ブルマが俺の学年からマイナーチェンジにより死滅したのだ。

今をときめくのは、ハーフパンツ……何もときめかない。

だから今はスクール水着くらいしか楽しみがないわけだが……夏って素晴らしい!!

あぁ太陽よ。ありがとう。そしてありがとう。

「そういやリッチ。お前水着あるのか?」


「大丈夫だ。裸で問題無い」


「お前も天然痴女なんだな」


「目を突かれたりないか? 冗談くらい察しろ」


リッチは目潰しの素振りを始めた。

百戦錬磨の目潰しか? やたらと慣れた手つきで素振りしている。


「文字通り、お前悪魔だな」


「ふふん」


「あ、水着借りに行くぞ」


「何処に?」


「咲智にだよ」


俺はリッチの手を引いて歩く。

一階の一年二組を除くと咲智が手を振ってきた。

「あ、お兄ちゃん。どうしたの?」

適当にジョークを交えつつ、妹に事情を話すと泣き出した。


「そっかー、リッたん辛かったんだね~」


両親が死んで一緒にスクール水着を焼いた事にしたら信じた。

妹よ、簡単に人を信じるな。だが……そこが可愛い。


「ありがとな」


「リッたんの為だよ。気に病まないで」


そこは「気にしないで」が正解だ。ニアミスしてやがる。

日頃の素行の良さを踏まえ、二点問題と仮定して一点はやろう。

そんなこんなで取りあえず授業に間に合ったわけだが、リッチのスクール水着にまたしても男女問わず釘付けらしい。

授業そっち除けでまた質問攻めに合う。

厄介な奴らだ。

少しはリッチの迷惑も考えてやれよ。

しかし良く考えたら、悪魔なのにしっぽや角が無い。

耳だって尖ってたりせずに全く持って普通だし、こうもりみたいないかがわしい翼も無い。

ただ肌の血色が人より悪いくらいだ。

ヤバいくらい血色が良くない、白人顔負けの白さ、ここまで来たら青いと言うべきか。

クラスメイトも先生もリッチが悪魔だと気が付いて居ないらしい。

そして相変わらずのあの態度だ。


「おいリッチ。こいつらにガツンと言ってやれ」


「いや、彼等が悪いのでは無く私が悪いのだ。本来女型の悪魔とは、私の様に魅了する相手を選ばぬわけでは無い」

「だけどお前は、パッシプなんとかだって言ってたよな」


「あぁ、常に私を見た者は魅了されてしまうのだよ」


「でもよ~。人を珍しい見世物みたいに囃し立ててる感じがムカつく」


「それがこの魅了と言う技なのだよ。何千年と生きて来たが厄介なもんだな」


「何とかできないのか?」


「何千年と生きて来た結果論だが、それは無理だ。無理だった」


俺って昔からそうだった気がする。

無理だとか無理だった。

そう言う言葉を極力使うのが嫌いだ。

しかし本来悲しみと無縁なはずのこの悪魔は、こんなに悲しい顔や寂しい顔をするのだろう。

誰か助けが必要な人を見た時に、俺は必ず決まった行動にでてしまう。

我ながら不良の癖に生意気だ。

「金輪際俺を通さずに無神経な質問を繰り返す奴は実力でぶっ飛ばす!! 男女問わずだ!! 問わずだからな!!」


クラスメイトが静まり返り俺を見つめた。


「今日学校が終わったらコイツと結婚するんだ」


言ってやった。

多分リッチは相当怒ってるに違いない。

リッチの顔を見るのが怖い……振り向き様に失明と言う事実が怖い。

想像して下さい。今か今かと振り向き様を狙う悪魔が立てる二本の指を。

俺はプールサイドから逃げ出した。

それも海パン一枚でプールに張られたフェンスをぶち抜いて。

取りあえず教室で更衣を済ませてから、事の重大さに気がつく。

俺はあることに気がついた。

自分で立ててしまった。

解り安い……とても解り安い。

タヒ亡フラグだ……。

「この〇〇が終わったら結婚するんだ」この台詞を吐いて生きていた漫画やアニメのキャラクターを、俺は見た事が無い。

どうすれば助かるっ!!

今更ウソですとかダサい。ダサ過ぎる。

そしてウソだとしても多分誰も許さない。

俺は右往左往しながら身の振り方を考えるが、どれも現実ばなれし過ぎて話しにならない。

「ちくしょう!!こんな場所にいられるかっ!!」

教室を出ようとしてドアに手をかけてから気がつく。


「これも立派なタヒ亡フラグじゃ無いか!!」


ちょっと疑心暗鬼で喉が痒くなって来た。

「おい、聖道っ」

タイミング悪くリッチが教室にやってきた。

「ひぃ、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


情けなく俺はリッチに向かって高速土下座を繰り返した。


「やめぬか!! みっともない」


地面に擦り付けた頭をガシッとスクール水着で素足のリッチ踏まれた。

一度俺を起こしたリッチの頬が少し紅色に染っていた。

目が合う度、リッチは直視を反らす様に何度か目が泳ぐ。

スクール水着なだけに。

って上手くない冗談はさて置き、タヒ亡フラグよりやっかいなのが立ちやがった!! と言うより立ちはだかった!!

仁王立ちの弁慶より折れ無いだろうフラグだ。

こっちが立ち往生するハメになりそうな強力なリッチエンド直行の予感だ。

こんな時ルートを分岐する相手がいないってのが寂しい。

ならこれは必然か? 運命って奴か?

いっそ終わらない八日間に迷い込みたい。

無理ならせめて日記の空白から過去に飛んだりできないだろうか!?


(あ!! これなら俺にだって!!)


俺は携帯を取り出して俺にDメールを送った。

はい、普通に俺から俺宛てにDメールがキターー。

考えてみたらレンジがないっ!!

だが、一応とっさに出来る事は全てやった。

諦めろ聖道。この世に神はいない。


「こほん」


俺は咳ばらいの後に、リッチに向かって今までの人生で多分一番重大な台詞を伝えた。


「結婚しよう」


「はい」

空は晴れていたが雨が降っていた。

俺達は手を引いてその中を走る。

宛ても無く逃げ場所を探して……。

例えば何かを失ってしまうかも知れない。

でも今日からは守って行かなきゃいけない。

リッチ・サッカバスは俺、一乗寺聖道の嫁になってしまうのだから。


おしまい


じゃね~よ!! 
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