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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第四章 空白期編
  第九十四話    『堕ちるエース』

 
前書き
なのはが撃墜されます。シホ達の介入があってもこの運命は変えられませんでした。
書くにあたって心苦しかったですが後編でいい話を書きます。 

 


時期は小学五年生の冬の時。
なのはの調子が最近おかしく感じる。
シホはふとそんな事を思っていた。
不安なものを感じシホはなのはに聞いてみることにした。

「なのは…」
「どうしたの、シホちゃん?」
「いや、大したことじゃないんだけど最近任務が多いじゃない?」
「うん」
「…無理とか、していないでしょうね?」
「…え?」
「なにか最近なのはを見ているとときどき不安になってくるのよ。任務で無茶をしていないかを」

シホは普段見せないような不安の眼差しをなのはに向ける。
それになのはは、

「うん。大丈夫だよシホちゃん…多分今はまだ頑張れていると思うから。だから大丈夫なの」
「そう…。武装隊の訓練でもなのはには私の方針『絶対無茶な事はしてはいけない』を徹底させていたから、大丈夫だと思うけど、でもやっぱりいやな予感がするのよ。
だから、無茶はせずにちゃんと任務をやるのよ?」
「…うん。わかってまーす」

なのはは元気にシホに答えた。
それでシホは一応の安心を見せた。

(大丈夫よね…?)

だがやはり不安は消えなかった。
だからシホはオリヴィエにも相談して、

「オリヴィエ陛下。なのはの事をお願いしてもいいですか?」
「当然です。なのはは私のマスターなのですから必ず守ります」
「お願いします。最近ですけどなのはに嫌な空気がまとわりついているように感じるんです…」
「嫌な空気、ですか…」
「はい。近いうちになのはに災厄が起きると私は思うんです。だから…」
「安心してください、シホ。必ずやなのはは守ります。信じてください」
「わかりました」

それでシホは一応相談もできたので不安はあるが心の底にこの件は落としていった。



―――今、もう少し気を配って気を付けていれば不幸な事故は防げたかもしれないというのに。
…と後にシホは思い知らされる事になる。




◆◇―――――――――◇◆


なのははとある任務でオリヴィエ、ヴィータとともに吹雪が吹いているとある次元世界をともに飛んでいた。
ヴィータもシホからなのはが不安である事を聞いていた。
でもいつもと変わらないなのはの姿を見てシホの思い過ごしだろうと思っていた。

「ヴィータちゃん、今回の任務も大丈夫だったね」
「あぁ。あたし達にかかればこんな任務は軽いな」
《なのは、気を抜いてはダメですよ? 帰るまでが任務なのですから》

オリヴィエは飛べないので霊体になってなのはに着いてきていた。

「うん。わかってるよ。オリヴィエさん」
「オリヴィエはなんだって…?」
「うん。帰るまでが任務だって」
「確かにな。帰ればあたしにははやてが待ってる。だからあたしは頑張れる!」
「私もシホちゃんやお母さん達が待ってる。だから…」

そんな事を二人で話し合っているときだった。

《マスター! アンノウン反応です!》
「ヴィータちゃん!」
「わかってる! 構えろ、なのは!」
「オリヴィエさん、お願い!」
「はい!」

なのはとヴィータはデバイスを構えて、オリヴィエは実体化して拳を構えた。
そして前方から謎の機械の群れが現れる。

「レイジングハート、あの機械はなにかわかる?」
《すみません、アンノウンです…》
「そう…ヴィータちゃん、気をつけていこうね!」
「ああ、前衛は任せろ!」

そう言ってヴィータが前進して機械の群れに突っ込んでいく。
なのはもレイジングハートを構えて、

「いくよ、レイジングハート!」
《Yes, My master. Accel shooter set!》

周囲にアクセルシューターをいくつも展開。
二年前より訓練により操作できる数が増えたのでかなりの量が待機されている。

「シュートッ!」

放たれたアクセルシューターは機械の群れに向かっていくが…、
それは当たる前に掻き消えた。

「え!? 魔法が消えちゃった!」
「うわっ!?」

ヴィータが勢いに負けてこちらへと吹き飛ばされてくる。

「ヴィータちゃん、大丈夫!?」
「あ、ああ。だけど魔法は少し効かないみてーだ。直接叩くのは通じているみたいだが…」
「二人共、下がって! 聖王…鉄槌砲!」

オリヴィエの攻撃によって機械の群れは少し減る。

「どうやら英霊の攻撃は大丈夫のようですね。蹴散らします! なのはとヴィータは私の後ろで援護を!」
「わかりました!」
「わかった!」
「いきます! はあぁぁぁーーー!!」

オリヴィエの攻撃によって次々と破壊されていく機械の群れ。
これで安心かとなのはは思ったが突如として地面のそこから機械の群れが出現してなのはとヴィータを囲んだ。

「!? アクセル…!」

シンッ…。

なのはが魔法を使用しようとするが発動はしなかった。

「なにかのフィールドか!? なのはは下がってろ、魔法が使えない今のお前は“ただ”の人のようだ!」

ヴィータが機械の群れを殲滅しようとするがヴィータも動きをなにかの力で阻害されてしまってあんまり動きはよくない。
そして魔法が使えない以上脱出できないなのははその場から動くことができない。
なのはは恐怖を覚える。

(私は、魔法を使えないとただの人と変わらないんだ!)

そんな当たり前のことも今まで分かっていなかったなんて私は…!
シホならこんな状況でもなにか打開できる方法を思いつくのだろうが…。
しかし、なのははただ焦りに駆られる。
そうしている間にも機械の群れからなにかビームのようなものが発射されたり鋭い爪が迫ってきてなのはに何度も当たっていく。

「なのはッ!」
「なのはッ、今行きます! このっ、邪魔です!」

なのははビームや爪に曝されながらも心の中で、

(シホちゃん、ごめんね…私、やっぱり無理していたのかな? 痛い、痛いよ…)

その手を握りしめてなのははシホに以前にもらった宝石でできたお守りを取り出し握り締める。
するとそれは光り輝いて、


◆◇―――――――――◇◆


…シホはなにか嫌な予感を感じた。
それは以前なのはにあげた宝石剣の欠片のお守りから伝わってくる。

(なのはに危険な事が起こっている!?)

本日はすずか達の魔術の訓練をしていたシホは咄嗟に宝石剣を自室からその手に転送して呼び出し、

「なのは! 今行くわ! 宝石剣よ、空間を切り裂きなのはの下へ誘え!」
「シホッ!?」
「シホちゃん!?」
「シホッ!?」

すずか達の声を置いてきぼりにしてシホは空間を飛び越えてなのは達の下へと直行した。
そしてシホが目の当たりにする。

「おい…! おい…! バカヤロウ、しっかりしろよ! なのは!」
「なのは、しっかり…!」

そこではなのはが全身に傷を負って血を流していた。
レイジングハートも故障して地面に転がっている。
ヴィータとオリヴィエが必死になのはに呼びかけをしていた。

「なのはッ!」
「!? シホ! どうしてここに!」
「それよりなのはの容態は!?」
「かなり危険な状態です! 早く医療班に連絡しなければなのはの命が…! マスター、しっかり!」
「どいて、ヴィータ! 応急処置だけでもするわ!」
「お、おう…!」
投影開始(トレース・オン)!」

シホが投影したのは全て遠き理想郷(アヴァロン)
これによってなのはの傷を治そうというのだ。
しかし、

「傷が深すぎる! アヴァロンの治癒だけじゃ追いつかない!」

そこに医療班が駆けつけてくる。
それによってなのはは担架に乗せられて運ばれていった。
それを見ていたヴィータとオリヴィエは、

「サーヴァントの私がついていながら…こんな失態をしてしまうなんて!」
「オリヴィエのせいじゃねぇ。あたしがもっと魔法が使えなかったアイツをちゃんと守っていたらこんな事には…!」
「魔法が、使えなかった…? それ、どういうこと。ヴィータ?」
「言葉通りだよ…。なんか変なフィールドをこの機械共が起こして魔法が発動しなくなったんだ。そしてビームや爪を何度もなのはに浴びせて、それで…」
「そう…調査班にこの未確認を調査してもらったほうがいいわね。それより早くなのはの下にいかないと…!」

それで私達はなのはが治療を受けている管理局本局へと直行した。
手術室の前では報告を聞いたフェイト達や桃子お母さん達が来ていた。

「シホさん、大丈夫だった…?」
「はい。リンディさん。もう襲ってくるものはありませんでした。それよりなのはを応急処置としてアヴァロンを使って治療をしましたが経過はどうですか…?」
「まだ手術中だからなんとも言えません。ですがこのままだともしかしたら二度と飛べなくなってしまうかもしれません…」
「そんな…! なのはが飛べなくなるなんて…」

フェイトがショックを受ける。
それは他のみんなも同様で苦悶の表情をする。

「なのはは…治るんでしょうか?」
「士郎さん…」
「シホちゃんにもだけどですがなのはには辛い事ややりたくない事はしてほしくないんです。
それはなのはは自分でこの道に進みましたが、やはり私達の娘なんです。
だからいつも心配はつきません。だからもしなのはがこれで終わりだと言うならば私達はなのはにこの仕事を諦めてもらう所存です」
「…はい。わかりました。
ですがそれはなのはさん次第ですからなのはさんの言うことも聞いてあげてください。
この道に誘った私達からはこれくらいまでしか言えませんから…」
「わかりました…。なのはの言う事を尊重させます」
「士郎お父さん…すみません、私がもっと早くなのはのところに到着していればこんな事には…」
「いや、シホちゃんはちゃんとなのはの助けになってくれたよ。ありがとう」
「はい…」

それから手術室のランプは消えて医師がでてきた。

「先生、どうですか…?」
「はい、一命は取り留めましたが元からの無茶もあったのでしょう。かなり体に過労が溜まっていました。
今までの事も踏まえて無茶のある魔法の行使をし過ぎたのも一つの原因でしょう。
ですからかなりの時間をかけてリハビリをしない限りは復帰は難しいでしょう」

それでみんなは今までのなのはの行動を思い出す。
常に全力全開で手加減をしないで純粋魔力砲を撃ちまくっていたような、だと。

「そうですか。わかりました。ありがとうございます」

それで医師は出ていき、代わりになのはが病室に運ばれていった。
それをフェイトやユーノ、ヴィータ、オリヴィエが追いかけていった。
シホはその場に残り、

「やっぱりあれは無茶の連続だったのね。カートリッジもまだ未成熟の体には悪いものだと思うし…」
「そうですね。お姉様はカートリッジを使っていませんから正解でしたね」
「そうね、フィア」


◆◇―――――――――◇◆


それからなのははすぐに入院となった。
病室のベッドで体に包帯を巻かれた姿は痛々しいという言葉以外に見当たらない。

「…フェイト、ちゃん…ごめんね。私、無茶をしちゃっていたみたいなの…」
「うん、わかった。だからなのは、今は喋らないで…体に悪いよ」
「…うん。ごめんね…」

それでなのはは鎮静剤も効いているようで眠りについた。
シホはなのはの頭を撫でながら、

「…これからはなのはの努力次第だわ。また飛べるようになれるにはリハビリを一生懸命しなければいけない」

シホの言葉に、

「そうですね。ですがなのはは不屈の心を持っています。だからきっと…大丈夫です」
「うん。なのははきっとまた人懐こい笑みを浮かべて元気な姿を見せてくれると思う…今はそう信じるしかない」

オリヴィエとユーノがそう答える。

「…でも、シホの不安は当たっちゃったね。なのははやっぱり無理をため込んでいたんだね…」
「あぁ。あれだけ砲撃魔法を連発してしかもカートリッジを使用しまくっていたからな。やっぱ無理が祟ったんだな…」

フェイトとヴィータがなのはの無茶を指摘する。

「今後、なのはは復帰できるか分からないけどもし復帰したら今まで以上に大切に扱っていかないといけないわね」
「そうですね、お姉様。なのはさんは無茶が過ぎますから…。
レイジングハートも一回オーバーホールして修理するそうですし…」

そこにシホの携帯に電話がかかってきた。
誰だろうとスクリーンを確認すると相手はすずかだった。

「…そういえば、すずか達をほっぽりだして駆け付けたんだったわね」

それでシホは電話に出る。

『もしもし、シホちゃん…?』
「もしもし。ごめんね、すずか。急にいなくなっちゃって…」
『ううん、大丈夫だよ。だけどなのはちゃんになにかあったの…?』
「えぇ。落ち着いて聞いてね?」
『うん…』
「なのはは任務で瀕死の重傷を負って入院となっちゃったのよ…」
『なのはちゃんが!?』
『シホ、それって本当!?』
『なのはは大丈夫なの!?』

そこに一緒に聞いていたのだろうアリサとアリシアが割り込んできた。

「えぇ。今なのはは鎮静剤で眠りについているわ。命には別状はないから安心して…」
『そう…。シホ、今からそっちに向かうわ。すずかの家にある転送ポートでそちらにすぐいくから! ついでにはやても一緒に連れていくわ』
「わかったわ」

それからしばらくしてすずかとアリサ、アリシア、はやてが駆け付けてくれた。
病室の扉が開いて、

「なのは!」
「なのはちゃん!」
「なのは、大丈夫!?」
「なのはちゃん、大丈夫か!?」
「四人とも、しーっ!」

フェイトの言葉で四人は思わず口をつぐむ。

「今は寝ているから静かにね?」
『はい…』
「でも、なのはがこんな姿になっちゃうなんて…そりゃ怪我がする事はあるだろうと覚悟していたけど…」
「うん。やっぱり危険は付き物だったね…」
「なのはちゃんはもとから無茶はしてたからなぁ…」
「うん。あんな大出力の砲撃はやっぱり体にダメージがあったと思うんだ」

駆け付けてきた四人はアリサ、すずか、はやて、アリシアの順にそう話す。

「うん。やっぱりみんなが思う事はおんなじのようね。なのはには目を覚ましたら無茶は控えるように言い含めておかなくちゃね」

それをみんなは同意で頷いたのだった。


 
 

 
後書き
二話に分けました。次回はなのはを慰めたり癒したりする話です。
それと宝石剣は同じ世界の中だけならシホでも移動できるという設定です。 
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