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スザンナの秘密

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第二章


第二章

「サンテ、君も吸わない筈だね」
「はい」
 サンテは彼に対して恭しく一礼して答えた。
「その通りです、旦那様」
「そうだね。それじゃあ」
 一体どうしてだと。そう言うのであった。
「一体どうして」
「ジル」
 スザンナは困り果てた顔でその騒ぐ彼に対して声をかけた。
「あまりそう騒いだら」
「わかってるよ。けれど君は」
「何?」
「君を愛している」
 このことを告げるのだった。
「それは確かだ」
「私もよ、それは」
「そうだね。それは間違いない」
 言いながら彼女の横に座る。そのうえでさらに話すのだった。
「僕は君を愛しているし君も僕を愛してくれている」
「その通りよ」
「そうだ。けれどどうしてなんだ?」
 ここでまた言うジルだった。
「ここに煙草の匂いがするのは」
「それは」
「それにだ。今気付いた」
 ジルの顔が急に強張ってきた。そしてまた言うのである。
「君の口から煙草の匂いがする」
「えっ・・・・・・」
「何故なんだ」
 その強張った顔で問い詰めてきた。
「何故君の口から煙草の匂いがするんだい?」
「それは・・・・・・」
「言うんだ」
 問い詰める声になっていた。
「どうしてなんだ、それは」
「目をつぶって」
 スザンナは困り果てた顔で夫に言うしかできなかった。
「私の秘密には」
「秘密!?じゃあやっぱり」
 言ってはならない言葉だった。今のジルには。ジルは今の彼女の言葉を聞いてさらに激昂して。そうしてそのうえで怒鳴ってしまった。
「君は浮気をしているんだ!」
「そんなことしていないわ!」
 浮気と言われスザンナもつい叫んでしまった。
「どうして私がそんなことを」
「じゃあ秘密とは何なんだ」
 ジルはまた彼女に対して怒鳴った。ソファーに並んで座りながら二人で言い合う。
「その目をつぶってくれという秘密は。一体何なんだ」
「それは」
「言うんだ」
 睨み据えて問い詰める。
「それが何か。何なんだ?」
「言えないわ、それは」
 煙草を吸っているということを。どうしても言えないのだった。
「とても」
「夫婦の間で言えない秘密だっていうのか」
「ええ、とても」
「じゃあやはり浮気をしているんだな」
 彼はそうとしか思えなかった。
「僕に隠れて。だから煙草の香りを」
「それは誤解よ」
「誤解だったら素直に言うんだ」
 声のトーンは高まる一方だった。
「どうしてなんだ!?それは」
「それは・・・・・・」
「まあ旦那様」
 見かねたサンテがここで二人の間に入った。
「落ち着かれて」
「うう・・・・・・」
 大男の低い声を聞いてはもう沈黙するしかなかった。
 
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