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トーゴの異世界無双

作者:シャン翠
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第十九話 イケメンで貴族ってモテるんだろうな

「へぇ、ここがヴェルーナ魔法学園かぁ」


 初めて訪れる魔法学園は壮大な門が迎えてくれた。
 綺麗に装飾された門の中には、幾つもの校舎が建ち並んでいた。
 大きな広場の真ん中には噴水もあり、壮麗な感じを受けた。
 クィルには職員室まで案内してもらうことになった。
 だが、歩いている時、妙に周りから視線を感じる。
 ま、クィルは王女だからな。
 普通は近寄りがたいはずだ。
 それなのに、親しく話している人間がいるなら驚くのも無理は無い。
 しかもそれが、男だしな。
 男からは殺気に近い視線を受けるし、女からは好奇の視線を向けられる。
 これは当分居心地悪いかもしれないが、まあ、気にしないようにしよう。
 この程度、オレが送って来た人生と比べると蚊に刺される程度だしな。
 そう思っていると、いきなり闘悟達の前に複数の人物がやって来た。
 その真ん中にいた男が一歩前に踏み出し跪(ひざまず)く。


「お久しぶりですクィルネス様」
「え? えと……」


 クィルがハッとなり、闘悟を壁にするように背後に回る。
 闘悟は目の前で跪いている男を見る。
 そして、後ろにいるクィルに再び視線を送る。


「知り合い?」
「えと……はいです」


 何か歯切れが悪い。
 もしかして、ビビってる? 


「どうしたんだクィル?」


 闘悟のその言葉にピクリとこめかみを動かして反応したのは、男の方だった。
 そして、サッと立ち上がって闘悟を睨む。


「貴様、今何と言った?」
「は?」
「聞こえなかったのか?」
「いや、聞こえたけど……」
「何だと?」


 キッと視線をぶつけてくる。


「なあ? アイツ何で怒ってんの?」


 クィルに顔を近づける。


「アイツだとっ!」


 闘悟はもう一度男を観察するように見る。
 金髪碧眼(へきがん)の細身の男だ。
 目つきは鋭いが、間違いなくイケメンに入る部類だろう。
 周りにいる男と比べても、そのルックスはダントツだ。
 この男が起こっているのは何故か?
 闘悟は男の言動と自分の言動を思い出す。
 そして、答えに辿り着く。
 恐らくこの男は、それなりの身分なのかもしれない。
 所謂(いわゆる)貴族という奴だろう。
 さぞや女性に不自由しない生活を過ごせるだろう。
 そんな貴族男は、クィルの目前で親しそうにしている闘悟のことが気にくわないのだろう。
 こういう社交場では、よくある話だ。
 平々凡々(へいへいぼんぼん)な男が、高貴な自分よりも王族の姫と懇意(こんい)にしていることに腹を立てているのだろう。
 その答えを導くと、闘悟は小さく溜め息を漏らす。
 ふぅ、どこの世界でもこういうのはあるんだな……。


「貴様! 一体何者だ!」


 男の声に周囲も注目し始める。
 そのせいで、クィルが怯(おび)えたようにおろおろし始める。


「何者って言われても、オレは今日からここの生徒だけど」
「……貴様が? ……転入生ということか?」
「まあ、そうだな」
「貴様の名前は何だ?」


 ふぅ、ホントなら先に名乗れとか言うんだけど、また噛みつかれても面倒だしな。


「オレはトーゴ・アカジ。わけあってクィルの世話になっている」


 その告白に周囲がざわめく。
 金髪男も眉を寄せて信じられないといった感じだ。


「世話になっている……だと?」
「そうだけど?」


 闘悟は何でも無いように言う。
 その態度に不信を抱いたのか男は口を開ける。


「それは事実なのでしょうかクィルネス様?」


 すると、クィルはビクッとした。


「……はい……です」


 姫の肯定にまたも周囲が湧く。


「ということは、貴様はそれなりの身分だということか?」
「いんや、身分で言や、平民だろうな」
「なっ! う、嘘を吐くな! 平民風情(ふぜい)が王族と懇意にしているわけがないだろうが!」


 コイツ、ギルバニア王がどんな国王なのか知らないのか?
 まあ、恐らくは額縁に入れられて育てられた、正真正銘のお坊ちゃんということかな?
 だから、今の国王がどんな性格の持ち主なのか知らない。
 ただ単に、王族は最高権力者であり、それに連なる自分達貴族が次に偉いとか思ってるのかもしれない。


「ホントのことだ。オレにはアンタの好きそうな権力なんて一つも持ってないぜ?」


 少し挑発してみる。
 これでこの先の展開が読み易くなる。


「貴様! 僕を侮辱するのか! たかが平民のくせに!」


 おお、おお、思った通りの返答。
 こうなったらコイツはオレを目の敵にするだろうな。
 まあ、それも面白い。


「貴様! 何を笑っている!」


 おっと、ついつい笑ってしまっていたようだ。
 それにしても、この世界はテンプレな刺激が満載だな。

 
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