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銀河英雄伝説〜ラインハルトに負けません

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第百五十一話 アイドルという名の謀略

 
前書き
GIO48の真の意味が語られます。 

 
あるスパイの報告書原文

帝国暦484年1月18日
ボルテック補佐官の命令で、フェザーンと同盟を征服する為の特殊部隊であるとされる銀河帝国歌劇団へ数々の難関を突破し入団することに成功した。其処でラチェット・アルタイアと言う芸名を頂いた。

歌劇団が秘密組織である以上何かしら特殊なことがあると探っているが、自治領主様(ルビンスキー)の思惑に反して今だ尻尾を掴めない。歌に踊りにジャンケンの練習っていったい何なのよ!

帝国暦484年7月27日
先日幹部しか知らない劇場の隠し通路を発見。本日密かに進入した。暗証コードが必要な扉を抜けるとエレベーターが有るが、いくら何でもそれを使う訳にはいかず、階段を延々と地下へ進む、数百段も下がったところで、やっと最下層へ到着。人の気配がないのを確認して進入したところ、地下に有ったのは金庫室だった。

早速金庫を開け中を調べたが、機密らしき物は何も無く、入っていたのは来年度オーディションの募集要項だった。此処まで来た甲斐がない!

途中の部屋も探るが、衣装や演劇など余所に漏らしてはいけない資料を製作し話し合う場所だったようだ。とんだ草臥れ儲けである。

帝国暦484年10月7日
今度こそと思い、再度発見した隠し部屋に進入したが、今回も外れである。其処はぬいぐるみが一杯で壁紙がピンクのファンシーな部屋であった。どうやら総監督マリア・マナリーナ氏の部屋らしいが、あの精悍な人がこんな趣味とはと唖然とした。もう潜入を止めて良いんじゃないかと思い始める。

帝国暦485年1月10日
デビューして、大喝采を受ける。大勢の観客からの拍手は心地よかった。

帝国暦485年1月25日
テレーゼ殿下のお墨付きで一般公開された劇場は、毎日GIO48各組のコンサートとやっと練習が終わった劇も始まり、平民、帝国騎士、下級貴族にお忍びの貴族までもが連日集まり賑わっている。

更に総合プロデューサーの売り込みでコンサートや劇が帝国中に放送され、娯楽に飢えた人々により高視聴率を得ているそうだ、その為にGIO48グッズは通販でも飛ぶように売れているらしく、今月の給料が彼方(フェザーン)の給料より3倍程も有る。アイドルの仕事は良いかもしれない。

帝国暦485年2月10日
なんと、GIO48がフェザーンと同盟でも放送されたそうだ。フェザーンは正式なライセンス契約だが、同盟は海賊版が流れているらしいのだが、売れ行きが非常に良いらしく、ミーティングで総監督が『フェザーンと叛徒の歌謡界も征服するぞ』と気合いを入れていたが、まさか、フェザーンと同盟の征服ってこの意味なのかしら?

帝国暦485年3月5日
潜入して既に1年以上経つが、秘密部隊とかでは無いと確信し既にもう良いんじゃないかという気がするが、スパイよりアイドル業の方が実入りが良いので、誠意内偵中と報告は入れているが、普通のアイドル通信のようで内容がなさ過ぎるのが悩みの種だ。

今後本格的にアイドル業をどうするか考えている。現在転職を考えているが、消される可能性が高いためどうしよう、全く良い考えが浮かばない。




帝国暦485年3月7日

■オーディン 憲兵隊総監部 憲兵総監室

スパイ達がヤキモキしている中、憲兵隊総監部ではグリンメルスハウゼン上級大将とケーフェンヒラー大将がスパイについて話していた。

「総監、此がスパイの資料です」
「御苦労様じゃな」
「しかし、フェザーンも地球教も肩透かしを喰らってヤキモキしているでしょうな」

ニヤニヤと笑うケーフェンヒラー大将。

「ホホホ、そうじゃな、宣伝文句の『フェザーンと同盟を征服する』で大分焦ってスパイを仕込んできたからの、あの程度のスパイ連中など、調べれば容易く判る物じゃよ」
「確かに、余りに経歴が綺麗すぎますから」

「しかも、単なるアイドル業が戦略とは普通の人間には気づかない事よ」
「此もテレーゼ殿下の我が儘なお遊びと思われているようですから」
「それよ、如何にも秘密が有るような組織なのに何も無い、ルビンスキーも躍起になって調べようとしている様じゃからな」

「それでも何も出ないと、なれば更にボロを出し始めると」
「ルビンスキーは、策に飲まれるタイプよ、地球教は結局はテロ組織でしかないからの」
「GIO48が5組で何故280人なのか判らんで有ろうな」

「表向きの仕事と裏向きの仕事、40人の監視者ですからな」
「そうじゃな、なんせ、殿下のご指示で芸名をそれぞれの役割で替えたのじゃからな」
「歌劇団には普通の芸名を、スパイには判る芸名をですから」

「そして華檄団には殿下の作成した名前をと言う訳じゃ」
「それにしては普通の名前ですが?」
「それは其処じゃよ」

「なるほど、確かに殿下なら」

暖かな午後の昼下がり、とてもスパイに対しての話し合いをしているように見えない二人であった。





宇宙暦794年 帝国暦485年3月10日

■自由惑星同盟 ヴァンフリート星域 ヴァンフリート4=2

最近自由惑星同盟ではGIO48の事が話題に上がることが多く成っていた。何と言っても同盟やフェザーンの在り来たりなアイドルユニットと比べ帝国全土から集まった、それぞれ個性的な選りすぐりの美女美少女280人である。

しかも芸能などはオペラや観劇などで、庶民の楽しみが非常に少なく、アイドルなどと言う物が存在しない質実剛健を絵に描いたような帝国で、初のアイドルグループの誕生にフェザーン、自由惑星同盟のマスコミ、芸能界、立体TV業界が新たな話題としていたからである。

ヴァンフリート星系第4惑星第2衛星の南半球に100日程前に建設された同盟軍の補給基地では来るべき第六次イゼルローン攻略作戦の為に物資の蓄積が行われていた。またイゼルローン要塞攻略部隊としてローゼンリッターも配属されていた。

ヴァンフリート4=2基地内でもFTLによりリアルタイムでハイネセンで放送されている立体TVが視聴できる為、基地内の食堂やリクレーションルームでGIO48のコンサートや寸劇の映像が立体Tvで視聴されていることが多く成っている。

そんな中、ローゼンリッター最強カルテットの面々も食堂で流れる帝国歌劇団GIO48の映像を見ながら喋っていた。

「しかし、帝国も変わりましたな。皇女自らアイドルグループのスポンサーとは」
カスパー・リンツが呆れましたとばかりに話す。
「そうは言っても、先年以来、帝国側の内情は変わって居ますから、捕虜の待遇改善や省庁改革など確実に帝国は良い方向へ向かっていると思いますから、此もその一環では無いかと」

「デア・デッケン、難しいと言ったってしょうがないぜ。今はあの可愛い赤毛のゲストが誰なのか知りたいだけなんだよね」
ブルームハルトが、テレーゼと共にゲストに来ていたズザンナ・フォン・オフレッサーをみてにやついている。無論テレーゼは変装し、ズザンナは偽名で出ている。

「副連隊長、帝国はどう変わるんでしょうな?」
リンツの問いにワルター・フォン・シェーンコップが眉間に皺を寄せながら答える。
「さあな、雲の上の大貴族様の考えは判らんな」

「そう言う副連隊長も貴族出身ですよね」
「俺は、名ばかりの貴族だからな」
「以前のお笑いウルトラクイズといい、今回のGIO48といい、帝国の真の狙いが判らんですな」

真面目な顔でリンツが話すが、GIO48のジャンケン大会にゲストが出てきて盛り上がる状態の映像が流れている為に食堂ではそれにかぶりつく連中の為に余り真剣な質問と思えない。

「リンツ大尉も真面目な事、言わないで、劇が面白いすっよ」
ブルームハルトが寸劇で見事な殺陣を見せるゲストのズザンナに見ほれながら話す。


『みんな今日もありがとう!本日のスペシャルゲストは、ズザンナ・シュヴァルツェネッガーさん、エヴァンジェリン・マクダウエルさんでした。皆さん拍手を』
「おっ、あの赤毛のグラマーちゃん、ズザンナちゃんて言うんだ、あの子に『ブルームハルトさん、一緒に来て』なんて言われたら一も二もなくついていきそうだな」

ブルームハルトのアホな言動にシェーンコップ、リンツ、デア・デッケンもあきれ顔で見ているが、GIO48がゲストの紹介と共に来賓者代表から花束を受け取るシーンでシェーンコップの動きが止まった。

『来賓のカーテローゼ・フォン・クロイツェル伯爵令嬢より花束の贈呈でございます』

「おっこの子も可愛いな、ん何処かで聞いた気がするんだけど?」
ブルームハルトの疑問にリンツが答える。
「カーテローゼ・フォン・クロイツェル伯爵令嬢と言えば、母親が同盟に亡命してたちの悪い男弄ばれて妊娠した挙げ句に捨てられ、母親の死で孤児になり帝国へ逆亡命したと言う話だったな」

「そうそう、そうですよね。先月の放送で話がばれた同盟政府は必死に隠したようだけど、俺達亡命者の間じゃ情報が直ぐに廻って彼女への社会の仕打ちに憤慨したもんだったですもんね」
「我々は所詮余所者と言う訳ですから」

「その為に、自分達は元同胞と血で血を洗う殺し合いをしなければ成らない」
「それしか、同盟に我々の居場所がない訳ですから」
「あーあ、救いようがないですよね」

リンツ、ブルームハルト、デア・デッケンがぼやく中、シェーンコップだけはTVに映る、カーテローゼ・フォン・クロイツェルの事を驚きながら見ていた。

いやまさか、この子はあの手紙にあった名前と年齢だ、それにローザによく似ている、俺の子なのか?俺の子が……

「副連隊長、副連隊長」
「ああ、リンツかどうした?」
「何やら上の空でしたので、ご気分でも優れないのかと」

「いや、昨晩ヴァレリーと一戦交えてな、単に寝不足なだけだ」
「副連隊長もお年を召されたようで」
「ブルームハルト、冗談は顔だけにしておいたほうがいいぞ」

「デア・デッケン酷いな」
「副連隊長、今日はこの辺にしておきますか?」
「そうだな、今日は午後は自由行動にする」

「イヤッホー」
「副連隊長、ブルームハルトには戦斧素振り1000回をさせますか」
「大尉、そりゃないですよ」

「まあ、休める時に休んでおけ」
「「「はっ」」」

そう言いながらも、シェーンコップの脳裏にはローザの顔と彼女の口癖が蘇っていた。

 
 

 
後書き
シェーンコップへのメッセージも含まれている訳です。
そしてブルームハルトにフラグが?

ズザンナ・シュヴァルツェネッガー=ズザンナ・フォン・オフレッサー
エヴァンジェリン・マクダウエル=テレーゼ 
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