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ソードアート・オンライン~一人の青年と吸血鬼の少女は…………~

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The beginning The end

 
前書き



最初で最後。


 

 


「ここは……」


第三次世界大戦、世の中では通称IS大戦なんて呼ばれていた戦争。それが終戦を目前にして数の暴力に圧倒されて、海に落ちた麗矢とメリー。
そのまま意識を失い、再び目を覚ますと森の中にいた。
少し手を動かしてみるとほんの僅かに違和感を感じた。


「お前様、どうやらここは【ばーちゃるげーむ】とかいうところらしいぞ」


背後から声をかけられた。その声のする方に向くとそこには長い金髪を持った少女がいた。
メリー。正式名称、メランコリー・ウォーゲル。
信じられないかもしれないが、もともとメリーはISコアの深層心理人格者なのだ。それが実体化したもの。さらにはどうなってそうなったのかは知らないが、怪異殺しの王。最強の吸血鬼なのだ。


そのメリーからの話によると、ここはMMORPGと呼ばれるところの内部のようで、どうやら何かの拍子でこの世界に紛れ込んでしまったらしい。
それなら管理者から何かしらのコンタクトがある筈なのだが、ここにしばらくいるがそんな様子は見られない。何一つ変わることの無い木々が多い茂っているだけであった。
また、その手のオンラインゲームは実名ではなく、ハンドルネームというもので名乗り合うのがセオリーだ。ちなみに極稀に実名をハンドルネームにしている奴もいるが、そんな人は正気の沙汰とは思えない。名前だけでも知ることが出来る情報だってあるのだから。


「メリー、ハンドルネームは決めたか?」
「何じゃ? そのはんどるねーむ、とやらは」
「この世界で実名の代わりに使う名前だ」


ああ、なるほど。と納得したメリーはメニューを呼び出していろいろと操作する。
しばらくすると操作音が聞こえなくなった。不思議に思った麗矢がメリーを見ると、メリーは視線だけを動かしていて、その動いていた視線もある一点で止まった。より正確に言えば、視界の左上に。


麗矢もメリーに従うように視線だけを動かして左上を見る。
すると、そこには体力(ライフ)バーがあり、その隣にローマ字表記ですでにネームが入っていた。
D・e・a・t・h。death――――デス。英単語の一つであり、意味は確か死神を意味するはずである。


「なあ、お前様よ。これは何というんじゃ?」


メリーにメリーのハンドルネームの読み方を聞かれた。
麗矢は改めて視界の左上にある自分の体力(ライフ)バーの下にもう一本体力(ライフ)バーがある。
どうやら、もうすでに麗矢とメリーはパーティになっているようで、相手の名前も見れるようになっていた。


F・i・e・n・d.fiend――――フィンド。これも英単語の一つである。意味は……魔人。
闇に生きる架空上の存在。
基本的に悪に生きる者によくつけられるような名称である。
悪者として生きて行けということなのだろうか。……それはプレイヤー次第になるのだが。


ここで今麗矢は極僅かな違和感の正体に気付いた。
バーチャルゲームだからこそ、思考回路から読み取って動くのに若干のラグが生じる。
もう一つ、現実では麗矢は180ちょっとの身長で背が高いのだ。だが、今は推定175ぐらいだろうか。支障はきたさないと思うが、違和感に慣れるしかない。


「しょうがないか……メリー、ここから出るにはどうしたらいい」


先ほどメリーからどうやってその情報を手に入れたと聞いたら、メリーの存在はメインサーバーにアクセス権を持つプログラム構築体ということだった。
メインサーバーに――――ここでは『カーディナル』と呼ばれるところにアクセスして、これからどうするべきかをメリーは調べ上げていく。


「分かったぞ、お前様よ」


メリーは検索をかけたことによって得た情報をまとめて、麗矢に伝えていく。


「ここでは自発的ログアウトが不可能。全100層をクリアしない限り、ここから出られないそうじゃ。まあ、この仮想世界《ソードアート・オンライン》は魔法がなく、剣とそのスキルだけで戦い抜いていくものじゃ。さらにはこの世界で死ぬと現実世界の死、じゃと」


ここでは麗矢とメリーの存在はイレギュラーである。だから、この世界で死んでしまったらどうなってしまうかは分からない。
だが、二人は他人に頼るほど甘ったれていない。……それに他人を信用できるわけもない。
ここは、メリーとと二人でクリアを目指して戦いぬいていくしかない。


二人は進んだ。
もといた世界に変えるために。


もうすでに正規サービスが始まって1日が過ぎていた。1日遅れのスタートだった。





      ――――これはゲームであって、ゲームではない――――





      ◯


麗矢とメリーが仮想世界《ソードアート・オンライン》に迷い込んで二か月。
二か月たってもいまだに第1階層は突破されていない。これは、通常のMMORPGでは有り得ないことなのだ。
メリーによれば、ベータテストの時には三日とかそれぐらいで突破されていたそうなのだ。
やはり、死の恐怖と戦いたくないという人が始まりの街で閉じこもっていたりする。戦っている人はそう多くはない。


麗矢とメリーはそんなことにはならない。
死の恐怖なんてもう戦争を体験しているから、安全地帯があることでぬるく感じてしまう。
そんな二人であるから、よく叫ばれている安全マージンを取れという声は臆病者がすることとしか思っていない。


麗矢とメリーは開始して直ぐにレベリングのコツを覚えた。それを使って敵を倒していき、ある程度金が溜まったところで一気に武具を新調していく。もうここまでやれば1層ボスなんて簡単なように思えてくる。
そう思った二人は第1階層迷宮苦最上階にもう行った。
レベルは麗矢が12、メリーが11である。普通であれば難しくない程度のレベルである。


自分が死ぬことは全く考えることはなく、また撤退も考えることはなく、たった二人だけでボスフロアにいた。
ボス――――《イルファング・ザ・コボルトロード》とその取り巻き《ルインコボルド・センチネル》が4体。
そいつらを相手にするだけで数の差で不利なのだ。それなのに二人で互角に渡り合っている。


麗矢かメリーのどちらかがボスのタゲを取り続け、1対1.
もう一人が取り巻きの《ルインコボルド・センチネル》を倒していく。
《イルファング・ザ・コボルトロード》の4段あるうちの体力(ライフ)バーがなくなると二人はその立場を互いに入れ替える。
先ほどボスのタゲを取っていたほうが再湧出(リホップ)した《ルインコボルド・センチネル》を倒し、もう一人がボスと1対1.
こうして戦っている間にも二人にしか経験値が配分されないため、次々とレベルが上がっていく。


時間をかけてようやく4段目の体力(ライフ)バーまでいった時、開け放たれた後ろの扉の所が騒がしくなっていた。
どうやら前日、広場で作戦会議を開いていたグループらしい。
それを横目に見ながら通り過ぎて、ここまで来た二人には今更来られても困るだけであった。


メリーがその様子を見て、手っ取り早く《ルインコボルド・センチネル》をすべて倒し、麗矢のもとへ向かい二人で並んで立ち向かう。
もうイエローゾーンにまでいった体力(ライフ)バー。さらに攻撃が激しくなる。
戦っている間に後ろから誰も来ないことを不思議に思いながら麗矢は、ポーションが無くなってギリギリの戦いを楽しんでいた。


振りかざされる剣を麗矢が弾き防御(パリィ)して、メリーが一気に駆け上がり喉に剣を突き刺す。


「グオッ……グルオオオオオオ――――!!!!」


体力(ライフ)バーがレットゾーンにまで行き、《イルファング・ザ・コボルトロード》は県と楯を投げ捨て、腰に差していた武器を取り出した。


「なっ……! 危ないっ! 全力で後ろに下がれっ!!」


後ろで誰かが叫んでいる。
しかし、麗矢は気にせず、武器の解析をしていた。


――あれはカタナ。それも太刀に近いもの……


麗矢は解析が終わり、メリーの方を向いた。メリーは頷き《イルファング・ザ・コボルトロード》と向き合った。
長い間一緒にいた麗矢とメリーの間には裏切りの言葉などない。互いを支え合って生きているのだから。
また、どちらかが死んでしまうともう一方も死んでしまうのだ。
――――駆けだす二人。
そして、《イルファング・ザ・コボルトロード》の周りを駆け続け、すれ違うたびにソードスキルを発動させてダメージを与え続ける。


「お前様っ!」
「ああっ!」


二人は互いに自分の得物を投げ、投剣スキル《シングルシュート》を発動させ、ダメージを与えた二人はさらに新しい剣を具現化する。
《イルファング・ザ・コボルトロード》は最後の足掻きと言わんばかりに刀三連続ソードスキル《緋扇》をさせるが、麗矢によって3回とも弾き防御(パリィ)される。
受け切った麗矢はメリーを見て、合図をすることもなく二人は並んで駆け出し、麗矢は《ホリゾンタル》をメリーは《リニアー》を発動させて一気に斬りかかる。


「グォオオオオオ――――!!!!」


攻撃が命中し、体力(ライフ)バーがすべて削られる。
麗矢とメリーは6時間近くも死と隣り合わせの戦いを続けていたため、体力、精神共に限界を迎えていた。
《イルファング・ザ・コボルトロード》は断末魔の叫びにも似た悲鳴をあげ、ポリゴン状となって空中に霧散していった。


このデスゲームの中で2か月経っても突破されることの無かった第1階層が立った二人によって突破されたことは、瞬く間にはじまりの町中に広がり、人々に僅かな希望を与えた。
だが、一部ではベータ上がりとベータテスターを非難するような声も少数だが上がってきている。
たった二人でのフロアボス撃破。
人に希望を与え、また人に蔑まれて。イレギュラーの存在だったが、他人によってベータテスターになり、ビーターになった。
これは麗矢にとっていいことであった。


人と馴れ馴れしくなることもないし、余計な手間も省けて足手まといもいなくなる。
この出来事はニュービーとベータテスターとの間に大きな亀裂を作り、その溝は埋まることはなかった。
特に麗矢たちとの溝が一番深かった。


      ◯


あれから2年。
麗矢にはハンドルネームからそのまま二つ名《死に神》が、メリーも同じようにハンドルネームから二つ名《魔人》がつけられていた。
現在の攻略層は74層。生存者は約六千人。
誰とも関係を持つことなく、麗矢とメリーはたった二人で生き抜いてきた。
フレンド数――――0.


結婚コマンドもあったが、麗矢とメリーはそんな関係ではない。主であり従者。
この関係は崩れることは一度もない。








      ――――まだ、もとの世界に戻ることはできない…………





 
 

 
後書き


こんな感じが私、ザート098が書くSAOでございます。如何だったでしょうか。暇つぶしになってくれたら私の勝ちです。
読んでいただけるだけでも嬉しいです!
 
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