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銀河英雄伝説小話

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ナイトハルト・ミュラーの災難
  ナイトハルト・ミュラーの災難 Ⅰ

 
前書き
かなりくだらないです。
 

 

元帥府のロビーは、いつもと違う不自然な空気が流れていた。ロビーのソファーにくすんだ金髪の美しい女性が座っていたからである。
ロビーを歩く士官達はチラチラとその女性を見て行く。しかし、その女性が特段変わっている訳ではない。白いシャツにざっくりとした編み目のサッパリとした色合いのセーター、体の線にぴったりフィットしたズボンにプラチナのネックレスといういたってシンプルなスタイルの服を着ている。何が変わっているのか強いて言えば、彼女が女性であることだ。
元帥府に女性が来ることは極めて珍しい。美女とくれば尚更だ(←オジサンかよ)
という訳で、人々(男)は好奇の目で彼女を見ていた。(勿論、元帥府の人間とどのような関係にあるか、あらぬ妄想をしている)

彼女がロビーで待つこと30分。エレベーターからローエングラム元帥府の名だたる名将達が出てきた。周囲が慌てて敬礼する中、皆の注目を浴びていた女性がスッと立ち上がるとそちらの方に駆け寄った。
そこに居たのは、ミッターマイヤーやロイエンタール、ワーレンにビッテンフェルト、ミュラー、ファーレンハイト、ルッツというそうそうたるメンバー(通称:海鷲の酒浸り同好会)である。彼らが驚いて立ち尽くしていると、女性はミュラーの方に駆け寄った。

……と、このような場面に遭遇すると人は彼女が誰かの〇〇であると思いたがる。名だたる名将である彼らもそこは常人と変わらず、ニヤニヤとミュラーを(温かく)見守った。(例外を除く)

……が、彼らの予想は大きく外れた。
「ナイトハルト兄様!」
「お前…どうして此処に来たんだ?」
「だって…」
ナイトハルト兄様??お前??
「これはどういう事だ、ミュラー。」
といささか混乱しているビッテンフェルト。すると、ミュラーの代わりにその女性が答えた。
「ナイトハルト・ミュラーは私の兄です。貴方は…ビッテンフェルト提督ですか?兄がいつもお世話になっております。」
そう言うと、その女性はニッコリと微笑んだ。
「いや~。こいつの世話を焼くのは俺の趣味でして。」
隣でそれを聞いていたミュラーはブスッとした顔をした。本当は逆だからである。
「フロイライン、お名前は?」
相変わらずそういう事に関してはそつのないファーレンハイト。
「私は、ヘネラリーフェ・ミュラーと申します。外見があまりナイトハルト兄様に似ていないので、兄弟である事になかなか気付かれないのですが…」
「そうでしたか…しかし、貴方はミュラーと雰囲気がよく似ておられますよ。」
とファーレンハイト。
「有り難うございます。えっと…」
「アーダベルト・フォン・ファーレンハイトです。」
「ファーレンハイト提督、ですか?」
「えぇ。」
女性が思わずうっとりするような極上の笑顔を浮かべてファーレンハイトはうなずいた。…が、彼の予想程ヘネラリーフェは反応しなかった。
「リーフェ…」
「何ですか?ナイトハルト兄様。」
「何故、此処に来たんだ。」
「あら、決まってるじゃないですか。お母様から派遣されて来ました。」
「だからといって、元帥府に来なくても…」
「最近、生活習慣が崩れまくってるでしょ。官舎で待とうかと思ったけど、ちゃんと帰ってくるか分からないし…だから、元帥府まで来た方が話が早いかと思って。」
「……はぁ…」
ミュラーは盛大な溜め息をついた。
一方、他の提督達は物珍しそうにこの状況を見ていた。ミュラーは僚友達のゴシップネタを持っていても、自身がネタになる事は絶対にない。常々、彼の家族構成等が気になっていた提督達はここぞとばかりに日頃の恨み(話のネタにされる)?を晴らそうとした。その事に気付いたミュラーは、そんな事を企んでいない顔をしているミッターマイヤーに助けを求める視線を送る。
「フロイライン、折角ですからご一緒に夕食を食べに行きませんか?」
と、ミュラーの助けてくださいという懇願の視線に全く気付いていないミッターマイヤーは非情にも?そう言った。
「ええ。高名な提督方と一緒にお食事が出来るなんて光栄です。」
「ミュラー、卿も来るだろう?」
と、少し脅しの意味を込めた視線をビッテンフェルトはミュラーに向ける。
「……はい。(分かりましたよ、行きゃあ良いんでしょ、行きゃあ。)」←自暴自棄
「ナイトハルト兄様、今、心の中で何か余計な事を言いませんでした?」
「言ってないよ。」
「それ、全然説得力ないわ、お兄様。」
「………」
その様子を見ていたルッツは耐えかねたらしく大きく吹き出し、それを見た周囲も笑い始めた。ただ、独りミュラーだけが不本意な顔をしていた。

彼らはまだ知らなかった…これから彼らを恐怖のどん底に叩き落とす物をヘネラリーフェが持っている事を…



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「素敵ですね、このお店。」
ヘネラリーフェはナイフとフォークの動きを止めると、ニッコリ微笑みながら言った。
「気に入っていただけて良かった。」
とこの店に皆を案内したワーレン。
「フロイラインは、どんな仕事をなさっておいでで?」
と、まずは当たり障りのない話から入るファーレンハイト。
「そうですね……何だと思いますか?」
「さあ…何でしょうか…おきれいですからモデルでしょうか?」
とファーレンハイト。
「そうおっしゃって頂けて大変嬉しいのですが、残念ながら違います。」
とヘネラリーフェ。
「では、キャスターか?」
と、ルッツ。
「違いますわ。」
「ルッツ提督、こんなじゃじゃ馬にキャスターなんか務まりませんよ。」
とミュラー。
「酷いわお兄様。」
「事実だろう。」
ミュラーがそう言うと、ヘネラリーフェはむくれた。
「いつもよりかなり辛口だな、ミュラー。」
と、(超)珍しくロイエンタールが苦笑しながら言う。
「なんでお兄様はいっつも私を子供みたいに扱うの!?昔から言おうと思っていたけど!」
「俺にとっては、リーフェお前は未だ未だ子供だ。」
僚友達の前で初めて"俺"という一人称を使ったミュラーにミッターマイヤー達は驚く。
「5才年上だからと言ってそんな事言わないで!」
ツンツンしながらヘネラリーフェは言った。
「で、フロイラインのお職業は?」
と、かなり気になっていたらしいビッテンフェルトが突如聞く。
(((この空気でそれはないだろう))))
と、心の中で突っ込む提督達。
さすがに毒気を抜かれたらしいヘネラリーフェは、少し間を置いてから口を開き言おうとした。
「フロイラインの職業はフィギア選手、だろう?」
今まで黙っていたロイエンタールが、さらりと言った。
「ご名答です、閣下。」
先程と打って変わってニッコリとヘネラリーフェは微笑んだ。
「髪の毛を染めて、カラーコンタクトを入れて、いつもと違うメイクをしていますから気付かないと思ったんですが。」
「どうして分かった、ロイエンタール?」
「いやなに、どこかで見たような気がしてそういえばと思い出してな。」
渋々答えるロイエンタール。
「私、フィギアで活動している時はクラウディア・ベルナーって名乗っているんです。」
「「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」
「この前のアルト・ハイデルベルク大会で史上最年少で銀メダルを獲得したあの選手か!!!!!!!!」
と、ビッテンフェルト。
それを見た、ワーレンが不思議そうに言う。
「卿は知っていたのか。」
「何だ、その言い方は?」
「いや、そういう事に疎そうな卿もさすがにそれは知っていたのかと思ってな。」
「アルト・ハイデルベルク大会はフィギアの最高峰なんだぞ、それぐらい知っている!!!!!!!!大体、俺の家族はフィギアが大好きだったから、毎年連れて行かれたんだ!!!!!!!!」
「人は見かけによらんものだな。」
ワーレンがしみじみと言う。
「何だと!」
「そこまでにしておけ、見苦しいぞ。」
とルッツ。
「フロイラインはいつからスケートを?」
と、相変わらずそつのないファーレンハイト。
「そうですね…6才頃からだと思います。最初はナイトハルト兄様に教えて貰ったんです。」
「そうなのか。」
「ナイトハルト兄様はとても上手でジュニアの大会でも活躍していたんです。これがその頃の写真です。」
と、ヘネラリーフェはおもむろに端末で写真を見せる。
そこにはリンクをバックに(超)王子様的な真っ白な衣装を着たミュラーと此方は薄い水色の清楚な衣装を着たヘネラリーフェが写っていた。
「その写真は人に見せるなと言った筈だ、リーフェ!」
ミュラーは慌てて端末を引ったくろうとするが、ビッテンフェルトによって阻止される。ビッテンフェルトのその行動に提督達は心の中で褒め称えると、じっくりとその写真を見た。
「よく似合ってるじゃないか。」
と、ルッツ。
「軍服より似合ってるぞ。」
ニヤリとしながらファーレンハイトが言う。
「それは褒めているのですか?貶しているのですか?」
「卿の想像に任せる。」
「…………」
「何故、この道に進まなかったんだ?」
とワーレン。
その問いにはミュラーは何も答えず、ただ微笑んだ。
「あまりフロイラインとミュラーは身長が変わらないな。」
と、ミッターマイヤー。
「ナイトハルト兄様は士官学校に入学した頃は私より少し大きかっただけなんです。」
「フロイラインは女性にしては身長が高いですからね。」
と、(身長に関して超敏感な)ミッターマイヤー。
「ええ。まあ、結局10cm位差がついちゃいましたけど。」
「そうですか。」
「あ、そういえば今日、士官学校に行ったの。それで、ちょっと兄様に見て貰いたいのがあるんだけど…」
「なんだい?」
「私の友達のお兄様が士官学校の教官をなさっているんです。それで、ちょっとお会いしに行ったんですけど、その方から預かった物があるんです。」
そう言うと、ヘネラリーフェはごそごそとバックから大きい箱を取り出した。
「正確に言うと、その方からではなく退職なさった先生からその方が預かり、私の手元に来たんですけど……」
「その退職なさったという教官のお名前は?」
とミッターマイヤー。
「確か……クレメンツ先生、とか仰っていました。」
「あのクレメンツ教官か!?」
心底驚いた表情でミッターマイヤーは言った。
「ご存知なのですか?」
「ああ、戦術理論の教官だった。授業が上手くてな、生徒に好かれていたぞ。」
と、ビッテンフェルト。
「あの士官学校の中では、一番まともだった。」
と、ロイエンタール。
「で、何が入っているんだ?」
とルッツ。
ヘネラリーフェの隣に座っていたミッターマイヤーが代表してその箱を開ける。
「「「「「!!!!!!!!」」」」
そこに入っていたのは……


 
 

 
後書き
ホントくだらなくてすいません。そして、ミュラー君犠牲になってくれて有難う!(←?!)
さて、箱の中には何が入っていたのでしょうか?お楽しみに!  
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