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その答えを探すため(リリなの×デビサバ2)

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発作的ショートストーリー デビ☆サバ外伝

 
前書き
この駄文は、
・アニメデビルサバイバー2を見た筆者が、突発的に妄想で生みだした話です。
・拙作「その答えを探すため」には全く関係なく、アニメ版の設定に則って書いています。
・バンちゃんニャルラトかわいい!
・「私が正義よっ!」とか言っちゃうバンちゃんマジ我がまま系妹様!
・そして、そんなバンちゃんを陰日向に支える純吾君まじオカン。
でお送りいたしますっ!
 

 
世界が崩壊して4日目、変容の水曜日

「では迫、後は任せる」

「はっ。許可していただき、ありがとうございます」

 ジプス大阪本局、その中央ホール。いつもよりも若干不機嫌そうなジプス局長、峰津院大和がそう言うと、局員である迫真琴はキビキビした動作で敬礼をした。

「ふんっ。全く理解できんが、これで駒の動きが良くなるというのならそれでいい」

 返礼をせずに、そう言うと大和は踵を返しホールを出ようとする。

「あの、局長もよろしければ――」

「いらん。これは貴様の発案だ。なら、貴様が責任を持って成果を上げろ」

 迫の引き留めに振返りもせずにそう言うと、若干歩みを速めて出口へといった。今この場所に、一時たりとも居たくないと全身で言っているようだ。
 乱暴に閉められる扉を見て、真琴は小さく肩を落としてため息をついた。

 責任を持ってと言われたが、それは勿論果たす。だが、自分が言いたかったのはそう言うことではなかったのだが…。
 極めて優秀な様で、どこか人とはずれている局長への愚痴を、真琴は心の中でこぼした。

 しかし、愚痴ばかり言っていられない。局長が言った様に、これからささやかなものではあるが勤めがある。ジプスに協力してくれるメンバーに、より積極的に協力してもらうという責任があるのだ。
 真琴は先ほどとは逆に小さく息を吸い込むと、姿勢を起こして振り返った。

 振返った先には、以前とは比べ物にならないほど小さいものではあるが会食の用意がされてある。規則正しく並べられた机の上にあるのは、この状況では考えられない程の贅沢な量の料理と、ペットボトルに入った清潔な水などの飲み物。
 そして真琴の方を向いている、ターミナルによって全国から集められた悪魔使い(デビルサマナー)達。

「すまない、待たせてしまった。
…では、これから今後のジプス中核を担ってくれるであろうメンバーとの交流会を始める。それぞれ出身地も、ここまで至った経緯も違うだろうが、今後は共に人類の存亡をかけた戦いに身を投じる仲間、戦友となる。
 存分に交流し、今後の戦いのための英気を養ってくれ」



「…アイリ、どうしたの?」

 宴もたけなわになった頃、一人壁の花となっていた伴亜衣梨に純吾が再び話しかけた。
 交流会のはじめは、亜衣梨は純吾の後をひっついて会場の中を歩き回っていたのだが、中盤だんだんと不機嫌になり、終いには純吾の脛を蹴っての喧嘩別れをしたのである。

 そう言う訳で実は亜衣梨、先ほどまで純吾とは別行動をしていたのだ。

 ぷんぷんと、本気で怒っているのだろうがどこか憎めない身振りで純吾から離れて行った亜衣梨。その後ろ姿を、はじめは純吾も、その時話していた久世響希一行も呆然とそれを見送ったものだが、すぐに純吾が我に帰って後を追った。
 これが、今までの経緯である。

「……べっつに、何でもないわよ」

 自分の行為を悪いとは思ってはいるのだろう。亜衣梨は、まっすぐな純吾の視線から目を逸らし、ぶっきらぼうに答える。
 ここで普通なら「本当に?」とか、更に追及でもするのだろうが、純吾はそう、と短く首肯するだけだった。それから、亜衣梨と一緒になって壁に背を預ける。

「ねぇ」

「何よ」

「アイリ、ここの人嫌い?」

 その問いかけに思わずキッと純吾を睨む亜衣梨。けれども、視線の先にあった心配そうな純吾の目を見て言葉に詰まってしまう。
 諦めたように視線を床に向け、長くて紅い前髪をいじりながら答えた。

「…別に、そんな事ないわよ。ただ、ジュンゴ以外の人と最近話さなかったから、何話していいか分からなくなっただけよ」

 その亜衣梨の答えに、純吾はもう一度そう、と答え

「ん…。実は、ジュンゴも。ずっと緊張してた」
 それから、少しだけ口の端を持ち上げてそう言うのだった。

「…ばーか」
 貴重な純吾の微笑みを見て、亜衣梨は聞えないように罵倒の言葉を口の中で転がす。
 今の純吾の言葉は嘘だと、たった3日の短い付き合いながらも亜衣梨は知っていたからだ。

 実はこの青年、野暮ったい話し方しかできない癖に、意外なほど社交的なのだ。児童福祉施設の(孤児院では? と言うと、「みんな、独りじゃない」と珍しく口をすっぱくして訂正された)出身で他人との接触にも抵抗が少なく、かつ、これまで居酒屋で働いていたという事で、この雰囲気にも大いに慣れているからだ。
 実際さっきも、その朴訥な話し方と雰囲気を活かして他の人に話しかけ、料理や猫など、今では憧憬すら覚えさせる“日常”についての豊富な話題を駆使して、大いに場を盛り上げていた。
……そのお陰か、余り喋っていない自分も、他のサマナーに良い印象を持ってもらう事ができた。

 そんな純吾が、この程度で緊張するはずがないのだ。けれども、こうして自分を心配してくれて、合わせてくれる。
 これまでも自分が短気で、我がままに振る舞っているという自覚はある。けれども、それは自分ではどうしても止められなくなっていたのだ。
 以前から感じていた、けれども、決して表に出る事はなかったそれを押しとどめていたものは、世界の崩壊と共に無くなってしまっていたのだから。

 でも、純吾と一緒ならそこまで自覚しなくてもいい。何を考えているのか知らないが、純吾はこんな自分を受け止め、支えてくれるのだ。
 自分でも止められない自分を、彼なら止めてくれる。自分の醜い所は、彼にぶつけてしまえばそれで治まるのだ。彼と一緒にいる限り、自分は前の自分でいられる。

 だから亜衣梨は、彼には伝わらない感謝の気持ちをこめて、純吾を見上げて思いっきり「あっそ!」と言うのであった。

「あーら、なんやえらい甘ったる~いええ雰囲気やない」

「うわっひゃあ!」

 しかし突然横から聞こえてきた声。純吾との会話に没頭していた亜衣梨は素っとん狂な声を上げた。

「ぷっ…あっはっは! なんやうわっひゃあて、あー苦し。ぷふっ、ふふふっ」

 自分でも恥ずかしいと思っているのに、さらに追い打ちをかけるその声。怒り心頭の亜衣梨は、思いっきり声の主を睨みつけた。
 亜衣梨より高い身長に豊満な体つきの女性は唯一、遠目で見ただけで交流会中、絶対に純吾には近づけさせまいと決心した存在……

「何笑ってるのよ! えっと……」

「ヒナコ、九条緋那子や。よろしゅうな、名古屋のお二人さん」

 目の前にいる露出の激しい女性――緋那子は、亜衣梨に視線を合わせる様に…その豊かな胸を強調するかのように背を曲げて挨拶をした。何気ないその動作に亜衣梨はせっかく治まったボルテージが上がっていくのを感じた。
 ちなみに純吾は何の感慨もないのか、片手をあげて「やっ」と軽い挨拶を交わす。

「で!? 何の用? こっちはあんたに何の用事もないんだけど」

「いや、用ゆうたらこの交流会の目的を果たすために挨拶に来ただけよ。うち、あんたらとだけは話してへんかったしなぁ」

 ぽりぽりと頭をかいてそう言う緋那子に、亜衣梨はぐうの音もでない。どう考えても、彼女の言い分の方が正しいからだ。
 それでも何か言い返してやろうと自分の世界に入り込み、頭をひねる亜衣梨。

「しっかし、初対面やってのにえらい剣幕やなぁ。なんでそんなに……ははぁん」

 その声を聞いた途端、はっと亜衣梨は現実に戻った。そして何故か、まずいとも思う。そんな自分でもよく分からない焦りを抱えて声の方を向くと、更にその焦りは加速する事となった。

「な~ぁ、あんたの名前教えてもらえんやろうか」

「ジュンゴの? …ジュンゴは、鳥居純吾。よろしくね、ヒナコ」

「へ~ぇ、そっか。うん、よろしゅうな、ジュンゴちゃん」

 亜衣梨の目の前で、純吾と緋那子が親しげに言葉を交わし、握手をしている。たったそれだけのことなのに、亜衣梨の頭は訳の分からない感情で真っ白になる。2人を離そうと思っても、動く事ができない。

「ジュンゴちゃん随分ほっそいけど、よぅ今まで生き残れたな」

「ん…。ネコショウグン、頑張ってくれた」

「ジュンゴちゃんの悪魔やな。あっ、うちのはリリムっていうんよ。うちに似て、めっちゃ美人で強い悪魔なんやで」

 亜衣梨に見せつける様に、緋那子は純吾の腕をとり体を押しつけた。
 混乱が更に、加速していく…

「ヒナコ」

「ええやん別に。それにしても、ほっそい割に鍛えとるなぁ。服の上からやったら分からんかったわ」

 困惑する純吾に、さらに体を押しつける緋那子。その上さらに、純吾の体を確かめる様に手に取った腕をさすってもいる。

 もう我慢の限界だ。頭が働かないなんて知ったことではない。亜衣梨は灼熱する感情に身を任せ、目の前の二人に向かってそれを放とうとすると

「ダメ」

 そう純吾が言い、緋那子を体から引き離したのを見て急に思いとどまった。緋那子の方も突然のことに、さっきまで余裕の表情を崩してびっくりした面持ちだ。

「ヒナコ、やっぱりその恰好じゃ風邪ひく。……これ着て」

 そう言うと純吾は上着を脱いで緋那子の肩にかける。主導権を握られっぱなしの緋那子は「ぉ、おおきに」と間の抜けた返事を返す。

「それと、これ、茶碗蒸し。ジュンゴが作ったから、食べて」

 さらにずいっと、どこからともなく取り出した茶碗蒸しを緋那子に押し付ける純吾。それから亜衣梨の方を向く。散々話に入れなかったのに、突然こちらに視線を向けられ、亜衣梨はぱくぱくと何も言う事ができない。

「ジュンゴ、みんなに茶碗蒸し渡し忘れた。だから、行ってくるね」

 亜衣梨にも、そう言って茶碗蒸しを渡すと純吾はさっさと壁際から離れて行った。
 後に残っているのは、呆然と茶碗蒸しを握りしめる二人の女性。

「…なぁ、あんた」

「…あんたじゃないわ。伴亜衣梨っていう名前があるわよ」

「そう。なら、バンちゃん」

 そう言うと、緋那子は急に亜衣梨に向けて頭を下げた。いきなりそんな事されるとは思ってなかったので、亜衣梨はわたわたと茶碗蒸しを握りしめる。

「えろうすんませんでした。バンちゃん、ジュンゴちゃんを妙に気にしとったから、ついからかい過ぎてもうて」

「な、なななな何よ気にするって! ジュンゴの事なんて、全然気にしてないわよっ」

 いやその反応がなぁ、と顔を上げた緋那子は呆れ顔をする。それから視線をサマナー達の間を行き来している純吾の方へ向ける。

「あんた、ええ人と出会えたなぁ。あれ、バンちゃんに気ぃ使ってああしてくれたんやで。それにうちにも、ちょっとイタズラの加減間違えてもうたのに怒りもせんし。それどころかこうやってうちのこと心配してくれたしなぁ」

 そう言って、緋那子は肩に掛けられた上着に顔をうずめる。また少し、亜衣梨の頭にいらっとくる。

「ふふっ。お日さんに、猫に、色々な料理のえぇ匂いがする。それに…」

 顔を上着から離して、亜衣梨の方へ近づける緋那子。すんすんと鼻を鳴らした後、にっこりと笑う。

「それに、バンちゃんの匂いもする。バンちゃん、随分ジュンゴちゃんに甘えとったんやなぁ」

「なっ! 私がそんな事する訳ないでしょ! ジュンゴっ! ジュンゴの方から勝手に抱きしめてきただけよっ!?」

 顔が燃えるんじゃないかって位熱くなるのを自覚しながら、亜衣梨は猛然と抗議した。「へ~ぇ、以外に積極的なんやなぁ」と、緋那子は馬耳東風な様子だったが。

「あっ、それでなバンちゃん。さっきうちが頭下げた理由なんやけど」

 そして亜衣梨の言葉を無視するどころか、にんまりといい笑顔で緋那子は言う。
 まずい、これは本格的にまずい。
 さっき感じた危険だという気持よりも、もっと大きな内からの警告を聞きながら、亜衣梨は続く言葉を待つ。

「うちな、男やったらシブい年上がええんよ。けど、最近そんな男が見当たらんでなぁ」

「……へぇ、で?」

 いよいよ頭の中が警告で一杯になるのを自覚しながら、亜衣梨は聞き返した。いや、答えはもう分かっている。
 だからこれは、相手へ飛びかかる為の助走みたいなものだ。

 そんな亜衣梨の心の裡などお構いなしに、緋那子は純吾の方を向きながら、決定打となる言葉を宣言するのだった。

「やからな、うちの手でこれから育てるっちゅーのも、有りやと思わへん?」

「だーれが賛成するかっ! このくるくるヒナポッポっ!?」




 結論から言うと、この交流会は一部を除きその目的を大いに達成する事ができた。
 ただ、その後紅髪の気の強そうな少女と、長身で艶やかな雰囲気の女性が事あるごとに張り合う仲となったのは、また、別の話である。
 
 

 
後書き
 バンちゃん、これからどんな裏設定が出てくるのかは知らないですが。
 ゲーム準拠で考えるのなら、うっ屈してた所に悪魔っていう強い力を、それも周りの人よりも凄い力を持ってしまって有頂天になってるんでしょうね。そう考えると今回のバンちゃんの発言も納得できますし、自分の思うとおりに行かない事がとにかく気にいらないんだろうなぁって思っちゃいます。
 そして、一言も自分に対して不満を言わずに付き従ってくれる純吾君に傾倒しちゃってるんだろうなぁとも思います。

 今回は上記にのっとり、「お兄ちゃんは誰にも渡さないもんっ!?」ていうツンデレ系妹をイメージして書きました。書くのめちゃ楽しかったです。 
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