| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ヱヴァンゲリヲン I can redo.

作者:緋空
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第伍話 Russia and EURO

翌日未明、NERV司令室

「葛城作戦部長、EUROは取りあえず放っておく事にしてくれ…」

 疲れた表情でゲンドウは呟いた。いつもは傍らにいる冬月は、既に自分の家に帰ってしまっている。普段見ない一人きりのゲンドウの姿は、不思議と弱く見えた。

「よろしいのですか?」

「ああ。当面、戦力は初号機と零号機で回す。足りなくなれば、アメリカにて建造中の3号機、4号機を接収すればいい」

「…了解しました」

 ミサトは一瞬懐疑的な表情を浮かべるも、それをすぐに消して敬礼をした。退室した後、ミサトはある人物に連絡を取った。







アメリカ、ニューヨーク 日本大使館

「いきなり電話とは珍しいな、葛城。もしや、よりを戻してくれるのか?」

(んな訳ないわよ!! EUROで政変があったから心配してかけたけど、その調子じゃ全くの無駄だったみたいね)

 加持の口調には全く異常はなかった。心配して電話をかけたミサトも、逆にその変りようのなさにイラっとくる。

「俺は大丈夫だ。EURO支部の支部長の取り計らいで、戦闘機で脱出して今はNYだ。ところでどうだ、そっちは。大わらわしてるんじゃないか?」

(そうよ。徹夜で会議。おかげで肌がガサガサ…)

「あんまり無理すんじゃねぇぞ」

(分かってるわよ…。ところで、EUROの状況はどう? アスカは大丈夫?)

 加持は一瞬、答えを詰まらせた。

「EUROの軍隊は…大統領とその親衛隊をロシア国内まで押しやった。しかし…ウラル山脈付近でロシア軍と睨み合いになってるそうだ…。アスカは心配いらないさ。2号機を動かせるのは彼女だけ、もしロシアに接収されるような事があっても、彼女に危害を加えたりしないさ」

(…そう。じゃあ、もう切るわね)

「ああ。俺もじきに本部に向かうさ…」

 電話が切れる。そして彼は頭を抱えた。

「アスカ…無事でいてくれよ…」

 彼女が幼きころから目をかけ、ほとんど自分の娘の様な存在の彼女の無事だけを、加持は祈っていた。








ジオフロント、NERV職員用宿舎

「EUROで…政変…?」

 ネットでその事実を知ったシンジは、己の目を疑った。

「EURO軍が政権を倒し…大統領はロシアに亡命…? ウラル山脈で、ロシアEURO両軍が睨み合い…。アスカッ…」

 シンジはすぐにMAGIへとアクセスした。その情報は、NERV職員であればだれもが閲覧できる、最も低い規制のかかった情報だった。かなりの量のあったその文章を、シンジはむさぼるように読み漁った。

「なんだ…これ…。2号機とNERV EURO支部が接収された…?」

 アスカが戦闘に巻き込まれてる。それを感じたシンジは、居ても立っても居られない。ちょうど自分の部屋を訪ねたミサトに食いつく。

「葛城さん! EURO支部が、EURO支部が接収されたって本当ですか!?」

 ミサトは真顔で答える。

「そうよ…。現在EURO軍は2号機を使用して、ウラル山脈でロシア軍と睨み合いを続けているわ。出来るだけ火急的に奪還しなければならない。まだ今は奪還計画はないけど、シンジ君、奪還計画が発令された時には、あなたに頑張ってもらうしかないわ」

「僕に…?」

「そう、世界屈指の戦力を誇るEURO軍相手では、NERVの防御隊は全くの無力。頼りになるのは、初号機だけよ」

 ミサトは彼の肩にポンと手を置くと、彼の瞳を真っすぐに見つめた。二人の瞳の奥には、どちらにも憂慮の感情が微かに見えた。

「心配…そうですね。葛城さん」

「ミサト、でいいわよ。そうね…EUROのエヴァ2号機パイロットの、事を知っているかしら?」

「は…い、いえ。知りません」

 本当ならばまだ知らない事実である事を忘れていた。シンジはyesを必死で呑みこむ。

「そのパイロットは、あなたと同じ14歳。とても勝気な子なんだけど、精神に大きな傷を負っている…」

 視線が宙に向けられる。シンジはうつむいた。自分も心配だったから。

 ミサトは話を続ける。

「今、2号機と彼女は強制的にEUROの政変に加担させられているわ。そして、ウラル山脈に配置され、ロシア軍と対峙している。とても…とても心配よ…」

 最後のフレーズを彼は、彼の心の中で繰り返した。とても…とても心配だ──。

 死なないで、この世界のアスカ。もう、誰も悲しませたくないから、もう、誰にも傷ついてほしくないから。










ウラル山脈西側。EURO軍前線基地

「レーダーに敵影!! ロシア空軍のSu-40戦闘機、数20。それと、爆撃機が何機か混じっています。エヴァの方へ向かっています!」

「衛星監視室より急報! ロシア軍が越境、ウラル山脈を越えました!! 間もなく会敵!!」

 アスカはそれをプラグの中から聞いていた。そして、操縦桿を力いっぱい握り直す。

「使徒相手じゃなく、人相手の戦闘ばっかり…。しかも今回は手ごわそう…」

 しかしやるしかない。再び訪れるかもしれないニア・サードインパクト。それを止められるのは、前世の記憶を持っている自分自身なのだから。と彼女は強く念じる。

 あのバカ、いやガキを止めるのは、止められるのは私しかいないんだ──。

「EURO臨時合同第2旅団、出撃せよ!! 繰り返す、EURO臨時合同第2旅団、迫りくるロシア陸空軍を殲滅し、EUROを腐らせた張本人を引きずりだせ!!」

 旅団長より命が下る。一斉に動き出す戦車を白いエヴァが追い抜き、いち早く敵の中へ飛び込んでゆく。

 白い巨人は次々に戦車を蹂躙し、爆撃機の投下した爆弾を手で払いのける。A.T.フィールドを使って戦車の群れを潰し、あちらこちらで爆発が連続した。

 2号機は鬼神と化す。相手方の兵士は我先にと逃げ、戦況は一気にEUROのものとなった。

「邪魔よあんた達!! エヴァは、エヴァは…」

 サッカーボールの様に軍用車を蹴飛ばしながら、彼女は叫んだ。

「エヴァは、人に手の出せるもんじゃないのよ!!!!」

 軍用車は空高く飛び、オレンジ単色の花火の様に弾けた。 
 

 
後書き
毎度駄文申し訳ありません。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧