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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第73話 東京沈没作戦

 ウルトラ三兄弟がナックル星人とブラックキングの猛攻を退け、撃退に成功していた丁度その頃、彼等と別行動を取っていたウルトラマンレオ、そしてアストラの兄弟は今、東京湾付近の沖にやってきていた。
 普段は穏やかな波が見られる筈の東京湾が、何時に無く激しく荒れていたのだ。
 そして、荒れ狂う東京湾において、我が物顔で暴れ回る二体の怪獣の姿があった。
 赤い体の怪獣と、黒い体の怪獣であった。そのどちらも背中に鋭いヒレを持ち、その頭部には巨大で雄雄しき角が生えていた。
「兄さん、やっぱり奴等だ!」
「あぁ、忘れもしない、マグマ星人が放った双子怪獣だ!」
 レオも、アストラもあの怪獣を知っていたのだ。
 忘れもしない。奴等こそ、レオとアストラの故郷であるL77星を破壊したマグマ星人率いる双子怪獣だったのだ。
 その名を、レッドギラス、並びにブラックギラスと言う。
 その二体の怪獣が、今大津波を起こしながら東京へ上陸しようとしている。
 このまま放っておけば東京は壊滅してしまうだろ。そんな事をさせる訳にはいかないのだ。
「行くぞ、アストラ!」
「任せて、兄さん」
 ゲンとジンの二人がそれぞれウルトラマンへと変身した。
 二人のウルトラマンは地上へと降り立った。第二の故郷でもあるこの星を奴等に蹂躙させはしない。
 今度こそこの星を守り抜いてみせる。
 その思いの元二人は果敢に双子怪獣に挑んだのだ。
 双子怪獣もまた、ウルトラマンの接近を知り、その標的をウルトラマンへと変える。
 折角の破壊活動を邪魔されたのだろう。とても不機嫌に暴れまわっている。
【兄さん、こいつらは!】
【分かっている。だが、それだとしても此処で退く訳にはいかないんだ! 例え、私達に不利な状況であったとしても―――】
 双子怪獣は本来水場での戦いに秀でた怪獣だ。それに対しウルトラマンはかなり不利な戦いを挑まれる事となる。
 だが、逃げる訳にはいかない。自分達がこいつらを倒さなければ東京は沈没させられてしまう。
 戦わなければならないのだ。
 レオとアストラがそれぞれ一体ずつ怪獣を相手に戦いを挑む。数の上では互角、残すは実力の差だった。
【兄さん! こいつらにあれを使わせたら駄目だ!】
【分かっている。ギラスピンを使われる前に倒す!】
 レオとアストラを知っていた。かつて母なる星を滅ぼした恐ろしい攻撃。
 それをこの星で使わせる訳にはいかない。その前に倒しきる必要があったのだ。
 かつて、母なる星を蹂躙されていた頃はどうする事も出来なかったが、今は違う。
 もう二度と、あんな悲劇を繰り返す訳にはいかない。不退転の覚悟の元、兄弟は双子怪獣に挑んだ。
 レオがレッドギラスを、アストラがブラックギラスをそれぞれ相手に戦いを挑んでいく。
【奴等の連携を断て! そうすればギラスピンは行えない】
【任せてよ、兄さん!】
 双子怪獣は確かに強力な怪獣だ。しかしその怪獣の真価は互いに協力しあう事で発揮出来る。
 ならば、その連携を断てば勝機が見えてくると言うのだ。
 しかし、それは同時にこちらも連携が取れないと言う事態に陥ってしまう事になる。
 例えギラスピンを行えないとしても、双子怪獣の強さは侮り難い程でもあった。
【強い、流石は双子怪獣!】
【だけど、僕達が逃げる訳にはいかない! これ以上犠牲者を出して溜まるもんか!】
 思えば、あの時単独で行動しなければ仲間達と連携を取れただろう。だが、この戦いだけは逃げる訳にはいかないのだ。
 この戦いには地球を守るだけじゃない。かつての母なる星を屠った憎き侵略者達への報復もあるのである。
 突如、天空から雷鳴が轟いた。
 自然の現象じゃない。その証拠に、その雷鳴の中から黒い体と金色の髪を持ち、白い仮面を被った宇宙人が現れたのだ。
 その宇宙人の右手には無骨なサーベルが携えられている。
 双子怪獣をけしかけたサーベル暴君マグマ星人であった。
【マグマ星人!】
【ほぅ、何処かで見た顔だと思えば、貴様等あのL77星の生き残りか? 敗北者はそれらしく隅っこで震えてれば良い物を、我等星間連合軍に挑むその無謀な勇気だけは褒めてやろう。だが!】
 笑いながらマグマ星人の無骨なサーベルが猛威を振るった。
 最初にそれはブラックギラスを相手にしているアストラへと振るわれた。
 アストラ自身ブラックギラスだけを相手にするのも手一杯だった所へこれである。
 突然の不意打ちによりアストラは吹き飛ばされてしまう。
【アストラ!】
 弟の身を案じ、レオは咄嗟にアストラの元へとはせ参じた。だが、それこそが悪賢いマグマ星人の策略であったのだ。
【馬鹿め、無駄な兄弟愛があるからこそ貴様等はそれで死ぬのだ! 今だ双子怪獣! 貴様等の奥の手を見せてやれ! ギラスピンを使うのだ!】
 天空に向けて掲げたサーベルから怪光線が放たれた。それを双子怪獣は各々の角で受け止める。
 すると双子怪獣は突如互いを強く抱き締めあう形で合体する。そしてそのまま高速でスピンを始めたのだ。
 回転はどんどん速くなり、遂には回転する怪獣の周囲を青い膜の様な物が現れだす程にまでになった。
【しまった! ギラスピンを使われてしまった!】
 強力なギラスピン。現状のレオとアストラにこれを打開する術はなかった。
 果敢にもそれに挑むレオではあったが、高速で回転する双子怪獣を前にしては成す術がなかった。
 殴りかかったとしても高速回転の前に遭えなく弾き飛ばされてしまう。
【駄目だ、奴等のスピンを破らない限り、我々に勝つ手段はない!】【ははは、諦めろウルトラマン! この星はいずれ双子怪獣の手によって沈没させられてしまうだけだ! 抵抗するだけ無駄と言う物よ】
 勝ち誇るように高笑いを浮かべるマグマ星人。現状で奴等双子怪獣を破る術をレオも、アストラも持ち合わせてはいなかった。
 このままこの青き母なる星は深い海の底に沈んでしまうのだろうか?

”待てぇぇい!!!”

 その時だった。突如天を裂くかと思われる程の怒号が響き渡った。その怒号を耳にした誰もがその声の主を探す。だが、一向にそれらしき者が見当たらない。
 ひたすらに探し続ける者達を尻目に、言葉は尚も続けられていく。

”優勢と劣勢には翼があり、常に戦う者の間を飛び交っている。
 例え絶望の淵に追われても、勝負は一瞬で状況を変える……。
 人、それを……【回天】という!”

【おのれ、誰だ! 姿を見せろ!】
 姿が見えずとも声は聞こえる。その事実がマグマ星人を苛立たせた。
 そんな苛立つマグマ星人を他所に声の主は声高く笑った。まるで、苛立つマグマ星人をあざ笑うかのように。
「そんなに俺を探したいか? ならば、天を見ろ! 人々が太陽を眺めるように、貴様も天を見上げるが良い! 其処に俺は居るぞ!」
【何?】
 声の主が命じるままにマグマ星人は天空を見上げる。其処には天空を飛翔する一機の赤いジェットが飛んでいた。そして、その上に乗っている男が居た。
 腕を組み愚かな侵略者を蔑むかの様に見下ろしていたのだ。
【貴様等か? この俺様に舐めた口を聞く輩は? せめて死ぬ前に名前だけは聞いてやるから名乗ってみろ! 貴様等の無様な名前をなぁ!】
「そうか、ならば貴様の言葉を返すように答えてやろう!
 【貴様等に名乗る名前はない!】」
 そう言葉を返し、青年は飛翔した。天空に向けて手を翳す。するとその手に光が集まり、やがて一本の剣と化した。
「正義の雷よ、我に力を与えたまえ!」
 青年が叫ぶ。それに呼応し、雷鳴が、雷が、青年に集まっていく。
 その光はやがて巨大な巨人の姿と成し、大地に降り立つ。
 大地に降り立った後、纏っていた光は消え失せ、その代わりに現れたのは、赤いボディを纏った巨人であった。
「バイカンフウウゥゥゥ!」
【バイカンフー? まさか、貴方はあのクロノス人】
【クロノス人だと? 何故あのクロノス人が地球に居るのだ?】
 バイカンフーの名を聞き、レオは青年が地球人ではないクロノス星の人間だと気付く。
 そして、その名を聞いたマグマ星人が驚愕した。どうやら双方ともクロノス人を知っているようだ。
 そして、どうやら今、このバイカンフーはウルトラマン達の味方をしてくれるようだ。
「俺も共に戦います。これ以上奴等にこの美しい星を汚させる訳にはいかない」
【だが、奴のスピンは強力だ! あれを破らなければ勝機が……】
「目には目を! 歯には歯を! そして、スピンにはスピンで対抗するしかない!」
 青年はそう言い、天高く飛翔する。
 50mを誇る赤い巨人ことバイカンフーが天空を舞う。その目下には高速で回転する双子怪獣の姿が見て取れた。
「行くぞ! バイカンフースクリューキィィック!」
 双子怪獣と同じ、いや、それ以上に高速で回転しながらバイカンフーは急速に降下した。
 丁度双子怪獣とぶつかり合う形で竜巻の如く回転するバイカンフーが向ってきたのだ。
 閃光が一瞬視界を奪った。
 そして、勝負は一瞬により決まった。
 地面に着地しているバイカンフー。そして、頭部を粉砕されて無様に倒れ付す双子怪獣。
 その様を見るに勝負は決したと見えた。
【ば、馬鹿な! あの双子怪獣がこうも呆気なく―――】
「今だ、ウルトラマン!」

 一瞬の隙を見せた。其処を見逃さずに、青年は叫んだ。
 それに呼応し、ウルトラマンは立ち上がる。
 双子怪獣を失った今こそ、マグマ星人を倒す絶好の機会なのだ。これを逃せば恐らく永遠に訪れない。
 チャンスを生かすなら今しかないのだ。
【行くぞ、アストラ!】
【うん! 故郷の仇、今こそ!】
 レオとアストラがそれぞれ構えを取った。
 互いに手を合わせて放つ必殺光線、ダブルフラッシャーが放たれた。
 その光線はマグマ星人に直撃する。
 真っ赤に輝く光線はそのままマグマ星人に命中し、そして貫通した。
【がああぁぁ! お、おのれ……後一歩のところで……だが、これで俺の目的は完遂された……後は、残りの星間連合の奴等が……】
 その言葉を最後に、マグマ星人は爆発した。
 多少意味深な言葉が残ったが、とにもかくにも戦いは終わったのだ。
 そして、ウルトラマンレオとアストラは、故郷の仇を討つ事が出来たのである。
【有り難う御座います。クロノスの人、お陰で東京を守ることが出来ました】
【礼には及びません。共に正義の為に戦う者としてはせ参じたまでの事です】
【やはり、流石はクロノス人だ。僕達と同じ正義の心に満ち溢れている】
 会話の中からでも分かる。
 青年の心には正義の心が宿っていた。だからこそ、彼はウルトラマン達に手を貸してくれたのだろう。
「おいロム、そろそろ次に行くとしようぜ」
「それもそうだな、ジェット」
 ロムと呼ぶ、それは先ほどの戦闘機であった。
 上空でそれが変形し、人型となってバイカンフーの隣に降り立つ。
「急がないとまたドリルが愚図るぞ」
「そう言うな。ドリルだって俺達を心配してるからそう言うのだろう?」
「やれやれ、相変わらずだなロムは」
 ロムの言い分にジェットは肩を挙げながらそう言う。何とも微笑ましい光景でもあった。
 戦いが終わった後のひと時の安心の時である。
 だが、その時こそが星間連合の作り出した罠だったのであった。
【隙を見せたな、愚かな奴等め!】
「何!?」
 その声を聞いた時には既に手遅れであった。
 何処からともなく現れた巨大なカプセル。それがバイカンフー、ブルージェット、ウルトラマンレオ、アストラ達をそれぞれ包み込んでしまった。
「ロム、こいつは……」
「迂闊だった。俺とした事が敵の存在に気付けなかったとは……」
 ロムは舌打ちをした。だが、今更敵の奇襲に気付けなかった事を嘆いたとしても手遅れである。
【だ、駄目だ兄さん。このカプセルはかなり堅牢だ。砕けない!】
【こっちも駄目だ。それに、エネルギーがどんどん奪われていく―――】
 カプセル内でレオとアストラが苦しんでいた。
 そして、それはジェットとバイカンフーもまた同じであった。まるでカプセルによりエネルギーを吸い取られて行くかの様に。
【どうかな? この私特性のカプセルの入り心地は?】
「貴様は、ヒッポリト星人!」
 身動きの取れないロム達の前に姿を現したのは赤い体を持つヒッポリト星人であった。
 そして、ロム達は皆ヒッポリト星人の悪辣な罠に掛かってしまったのである。
【フハハハハ、幾ら暴れても無駄だ。諦めて全員ブロンズ像になってしまうが良いわ!】
【ぐっ……こ、このままでは……】
【駄目だ……もう、力が……】
(無念だ……俺も、まだまだ未熟だったか……すまないドリル。地球の戦士達よ……後の事は……頼……む)
 意識が消え去るとほぼ同時に、カプセル内に毒々しい色のガスが充満していく。
 そして、カプセルが消えた後、その中から現れたのは見事にブロンズ像と化した四人の姿があった。
 四人はもう動く事はない。彼等は既に力尽きてしまったのだから。
【これで良い。この調子でヤプール様に逆らう者達を全てブロンズ漬けにしてくれるわ! フハハハハハハ!】
 勝ち誇ったかの様に高笑いを浮かべた後、ヒッポリト星人とブロンズ像はその場から姿を消してしまった。
 心強い仲間を得たが、それと同時に大切な仲間達を失う事となってしまった。
 そして、その毒牙が他のヒーロー達へと向けられる事は火を見るよりも明らかなのであった。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

光の巨人を仲間に加えた一同。更なる仲間達を得る為、甲児となのはの二人は単独で行動を開始する事になる。
二人が最初に向かう場所、それは宇宙科学研究所だった。
だが、其処にもまた侵略同盟の魔の手が迫る。

次回【立ち上がれ! 宇宙の王者】

お楽しみに 
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