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とある六位の火竜<サラマンダー>

作者:aqua
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前書き
総合評価が150を超えました!
すごくうれしいです!これからもよろしくお願いします! 

 
システムスキャンのある学校はその日は午前中で放課となる。そのためシステムスキャンの結果がどうであれ、世の学生たちはこの平日の空き時間を有意義に過ごそうと思い思いのことをして楽しく過ごす。それは学園都市でも有数のお嬢様学校、常盤台中学の生徒にも当てはまる。実際、白井も友人たちと楽しく遊ぶ予定だったのだ。しかし、実際は

「風紀委員<ジャッジメント>ですの!窃盗および器物損壊の現行犯で拘束します!」

遊びにきたクレープ屋のそばで銀行強盗が発生。自分は友人たちを待機させて犯人拘束のため銀行強盗と向き合っているという状況だ。本当についてない。

「・・・・・・」

少しの間呆気にとられて白井のことを見ていた2人の男だがこらえきれないというように笑い出す。

「はっ、まだガキじゃねぇか。」
「風紀委員<ジャッジメント>も人手不足か?」

笑いながら言う2人にムッとする白井。そんな様子に気づかずに彼らは続ける。

「ガキが首つっこむことじゃねぇんだよ。」
「どかないと怪我するぜ?」
「そういう三下の台詞は死亡フラグですわよ?」

我慢できずに皮肉を言い返す白井。その言葉に男の顔色が変わる。

「このガキ・・・!!」

男の手に炎が現れる。その様子を白井は冷静に観察する。

「いまさら謝っても遅ぇぞ・・・!!黒焦げにしてにやる・・・!!」

(発火能力者<パイロキネシスト>・・・なら!!)

一瞬で考えをまとめた白井は男から離れるように走り出す。男はその行動に即座に反応。

「逃がすかよ!!!」
「誰が・・・」

正確に白井の進路に放たれた炎が直撃する直前、白井の姿が消える。

「逃げますの?」
「なっ・・・ぐはっ!!」

テレポートした白井は一瞬で男の目の前に現れて一言。さらにもう一度テレポートして男の後頭部にドロップキック。倒れた男の服を太もものホルダーに仕込んでいるチョークほどのサイズの鉄製の矢をテレポートさせることによって地面と縫い付ける。

「て、テレポーター・・・」
「今度は体内に直接転移させてさしあげましょうか?」

さらりと言われた白井のものすごく怖い言葉に男は戦意を失ってがっくりとうなだれる。その様子を見届ける白井の耳に

「だめええええええええ!!!」

先ほど知り合ったばかりの少女の大きな声が聞こえた。





白井が銀行強盗の拘束に向かった後、佐天と御坂は初春がだれかともめているのに気づいてそちらに向かっていた。

「だめですって!今広場から出ちゃ・・・」
「でも・・・!」
「どうしたの?」

そこにはさっきのツアーガイドのような人と初春。御坂が状況を訊く。

「それが・・・」
「男の子が一人足りないんです!!さっきバスに忘れ物したって取りに行ったっきり・・・」
「じゃあ、私と初春さんで・・・」
「あ、あたしも行きます!!」

話を聞き、御坂が初春と2人で探す判断をしようとするのをさえぎって自分も行くという強い意志をはっきりと口にする佐天。レベル0だからってなにもしないでいるなんて我慢できなかった。

「・・・分かった。手分けして探しましょう。」

佐天の気持ちをくみ、御坂は3人で探す判断をする。そうして3人は男の子を探し始めたのだが、

「そっちは?」
「だめです!!」
「ったくもう・・・。どこ行ったのよ・・・!!」

そんな御坂たちの声を聞きながら佐天はバスの前の方を探す。その佐天の耳に聞こえてくる声。

「なんだ?お前、ちょうどいい。ちょっとこっち来い!!」
「なに?お兄ちゃん、だれ?」
「いいから!!」
「えーっと・・・」

佐天の目に映るのは犯人の1人に連れて行かれそうな男の子の姿。御坂たちの方を見るが、バスの中を探す御坂も後ろを探す初春もこちらの様子に気がついていない。それを確認した佐天は

(あたしだって・・・!!!)

勇気を振り絞り決意を固めて、犯人と男の子のもとへ走りだした。





「これでよしっと。後おねがいします。」

デブをロープで縛り、後のことを銀行の人たちに任せる。目を覚ました時のことを考えると離れられなかったが縛っていれば安全だろう。

「お~、さすが白井。もう終わってる。」

蓮が外に出て様子を確認する時、白井はちょうど犯人の1人を拘束しているところだった。そこで蓮は気づく。

(1人たりない・・・?)

蓮がそう思い、あたりを探そうとした時に聞き慣れた声が響く。

「だめええええええええ!!!」
「ちっ・・・!!あのバカ!!!」

声の方向を見ると佐天が犯人の1人に連れて行かれそうな男の子を守るように抱きかかえていた。蓮は舌打ちをして走り出す。足の裏からのブーストも使って最高速で佐天のもとに向かう。

「なんだ、お前・・・離せ!!」
「きゃっ!!!」

しかし蓮がたどり着く直前に佐天が顔を蹴られて倒れこむ。その間も男の子は必死にかばい続けていた。それを見て蓮の頭をたった1つの感情が支配する。

「ちくしょう・・・!!!」
「待てよ、てめぇ。」

その感情は‘怒’。悪態をついて逃げようとする男にかけられた声は小さなものだったが逆らえない迫力があった。男は動けなくなりこちらを見て固まる。

「こんなことしてただで済むと思うなよ・・・?」
「う、うわあああ!!」

蓮の言葉に男は恐怖で顔を染めると近くの車に乗り込んで逃げ出す。

「俺はな・・・」

蓮は炎のブースターを使って車の進行方向に先回り。

「大切な人を、佐天を傷つけられて黙ってられるほどお人よしじゃねぇんだよ!!!!」

そう叫び、蓮は全身から炎を出す。その炎は竜の形となって咆哮をあげる。白井と御坂、能力を知っている初春と佐天でさえ驚いて唖然としている。蓮が能力を本気で使うところを見たことがなかったからだろう。

「ひっ・・・ちくしょう!!」

その蓮の炎を見て車は急旋回。反対方向に逃げ出す。

「こっからは私の個人的な喧嘩だから、手出させてもらうわよ。」

しかしそちらには蓮と同じく怒りの表情を浮かべる御坂。2人は同時に車に向けて攻撃を放つ。蓮は炎で竜の頭を模した砲台をつくり、そのなかに炎球を蹴りこみ撃ちだす。御坂はコインを電気の力を使って親指ではじいて撃ちだす。

「火竜<サラマンダー>・・・」
「超電磁砲<レールガン>・・・」

2人の攻撃が直撃した車は空高く舞い上がり、落ちてくるころには男は気絶していた。





「本当にありがとうございました。」
「え~っと・・・」

その後、警備員<アンチスキル>が到着して犯人を連れて行く間に佐天は男の子の母親にお礼を言われていた。

「ほら・・・」
「お姉ちゃん、ありがとう!!」
「えへへへ・・・」

戸惑っていた佐天だったが、母親に促された男の子のお礼に照れたようにはにかんだ。

「ほんとお手柄ですね~、佐天」
「か、神谷・・・」

その両者の間に入り込むのは蓮。笑顔だが目がまったく笑っていない。それが怖かったのか、男の子と母親はそっとどこかに行ってしまう。

「え~っと・・・」
「バカか、お前は!!!!」

言い訳をしようとした佐天だったが蓮の大声でびくりとして縮こまる。

「だって・・・」
「だってじゃねぇよ!これじゃすまなかったかもしれねぇんだぞ!!!」
「うぅ・・・すみません・・・」
「ったく・・・」

謝って小さくなる佐天。そんな佐天を怒っていた蓮だが、佐天が十分反省しているのを見て表情をやわらかくする。

「でも、本当に無事でよかった・・・。心配かけんな、バカ。」

さっきのバカとは違う、優しさが含まれた『バカ』。蓮の優しい言葉が佐天の心に染み渡る。

「神谷・・・」
「あっ、いたいた。君、ちょっといいかな?」
「はい。佐天、ちょっと行ってくるな。」

佐天が蓮になにか言おうとするが、蓮に話を聞きにきた警備員<アンチスキル>によってさえぎられる。警備員<アンチスキル>についていく蓮を不満げに見ながら、佐天は広場の柵に寄りかかって座る。そんな佐天に今度は御坂が近づいてくる。

「お疲れ様、佐天さん。」
「御坂さん・・・」

一瞬また怒られるかと思う佐天だったが御坂の様子を見るとそんなこともないようだ。

「お手柄だったね。すごいかっこよかったよ。」
「そんな・・・御坂さんこそ・・・」
「お姉さま~!!!」

佐天の言葉を今度さえぎったのは白井。どこからかテレポートしてきて御坂に抱きつく。さらに初春が心配そうに佐天にかけよってくる。

「佐天さん、大丈夫ですか!?顔が・・・!!」
「このくらい大したことないって。」

心配そうに訊いてくる初春を安心させ、離れない白井に電撃を浴びせている御坂を見ながら佐天はさっき言えなかった言葉をつぶやく。

「御坂さんもかっこよかったです!!」





「そういえば神谷さんはどこにいきましたの?訊きたいことがありましたのに・・・」
「神谷ならさっき・・・」
「はぁ・・・疲れた~。よく考えたら事情説明って風紀委員<ジャッジメント>の仕事だよな・・・」

ようやく落ち着いて御坂から離れた白井に佐天が答えようとすると、ちょうど蓮が愚痴りながら戻ってきた。さっきから言葉をさえぎられている佐天はちょっと不満げだ。

「神谷さん、ちょっとよろしいですか?」
「ん?どうした?」

真剣な顔で白井は蓮に尋ねる。

「あなた、なにものなんですの?」
「・・・なんのこと?」
「誤魔化さないで。」

一瞬黙った後に誤魔化そうとした蓮を逃がさないというように言ったのは御坂。

「あんな炎をだせる人がただの発火能力者<パイロキネシスト>なわけないじゃない。」
「・・・・・・」

黙り込む蓮を見る御坂と白井の目は真剣。誤魔化しはきかないのが見て取れた。そんな3人の様子に佐天と初春は心配そうな顔で蓮を見る。

「はぁ・・・。分かりました、言いますよ。」

ため息をついて蓮は話しはじめる。

「柵川中学1年、神谷蓮。能力は発火能力<パイロキネシス>。‘炎使い’<フレイムマスター>のレベル5。7人のレベル5の第6位。・・・こんな感じでいいですか?」

蓮のことを知り、唖然とする御坂と白井。蓮はまだ心配そうな佐天と初春に大丈夫と笑顔を見せてから悪戯っぽく笑って訊く。

「驚きました?」
「あ、当たり前じゃない!神谷くんもレベル5だったの!?」
「聞いたことがありますわ。レベル5の第6位は発火能力者<パイロキネシスト>の頂点にして火竜<サラマンダー>と呼ばれていると・・・」
「たぶん白井の情報はあってるよ。そう呼ばれてるらしいし。」

驚いている御坂たちを笑ってみながら白井の情報を肯定する蓮。そこで御坂が不満げに言う。

「でもなんで言ってくれなかったの?」
「あ~っと、それは・・・・」

言いよどむ蓮。その様子を見てそれまで黙っていた佐天が口を開く。

「距離をあけられたくなかったんだよね?」
「ちょっ、佐天!!」
「「距離?」」

慌てて蓮がとめようとするも、佐天の言葉はしっかりと御坂たちに聞こえていた。

「どういうこと?」
「神谷さんは柵川中学初のレベル5ですから。最初はみんな普通なんですけどレベルを聞くとちょっと距離をあけるようになっちゃうんです。」
「そういうことだよね、神谷?」

全員の視線が蓮に集中する。そしてその視線に耐え切れなくなった蓮が口を開く。

「あ~もう!そうだよ!!距離をあけられたくなかったの!!みんな、俺がレベル5って知った途端態度変えるから・・・!!それが嫌だったの!!!」

吐き出すように自らの気持ちを言う蓮。つらそうな声は最後は涙声になっていた。そんな蓮を見て白井が一言。

「なにくだらないこと気にしてますの?」
「なっ・・・・!!」

そう言った。その言葉に蓮は驚き、直後怒りの表情を浮かべる。

「お前になにが・・・!!」
「だって、そうではないですか。お姉さまはレベル5。私はレベル5のお姉さまの近くにいるんですのよ?レベル5だからって距離をあけるわけありませんわ。」
「でも・・・」

白井の言葉に怒りは収まるもまだ不安げな蓮。そんな蓮に御坂が微笑みながら言う。

「黒子の言うとおりだよ?レベル5だからってそんなの関係ない。私たちが距離をあけるわけない。私たちが友達になりたいって思ったのは、レベル5の神谷蓮でも火竜<サラマンダー>って呼ばれてる神谷蓮でもない。柵川中学1年の神谷蓮っていう1人の中学生なんだから。」
「御坂さん、白井・・・ありがとう・・・」

御坂の優しい言葉に蓮の目に涙が溜まる。今度の涙は悲しいから流れたものではなく純粋にうれしくて流れた涙だった。それを隠そうと後ろを向く蓮だったが目ざとく佐天がその様子に気づく。

「あれ?神谷、感動で泣いちゃってる?」
「ばっ・・・!!泣いてねぇよ!!」
「え~?でも目がウルウルしてない?」
「してないっ!!」
「佐天さん、やめてあげましょうよ・・・」

ここぞとばかりに蓮をいじりだす佐天。その様子を見て初春が呆れたように佐天をとめる。

「でもさ、初春。あたしたちは神谷と距離おいてないのに、さっき神谷がみんなって言ったのがあたしとしては納得いかないんだよね。」
「確かに・・・」
「え~っと・・・ごめんなさい・・・」

佐天の言い分に素直に謝る蓮。

「まぁ、分かればいいけどね。あたしたちは神谷の友達なんだから。いつでも神谷の味方なんだよ?それを忘れないこと!!」
「佐天さんの言うとおりですよ。神谷さんは私たちの大事な友達です。」
「2人とも・・・ありがと。」

佐天と初春の言葉に蓮は笑顔を浮かべる。本当にうれしそうな笑顔を。

「それにしても小さいことで悩んでますのね?」
「神谷小さいって言われてる・・・ぷぷっ・・・」
「笑っちゃだめですよ・・・」
「初春さんもこらえてるじゃない・・・ぷっ・・・」
「お前らなぁ・・・」

みんなに笑われてため息をつく蓮は

(こいつらと友達になれてよかった・・・)

心のそこからそう思っていた。


「 
 

 
後書き
やっとアニメ1話終了~!!
感想よろしくお願いします!! 
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