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水の国の王は転生者

作者:Dellas
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第九十一話 ヴィンドボナの日々

 時間を少し遡って、帝政ゲルマニアの新帝都ヴィンドボナ。

 都市の中央をドナヴ川が横切るゲルマニア屈指の大都市である。
 かつてのヴィンドボナは交通の要所だったが、長年大河の氾濫に悩み続けていた。しかし現在の大公アルブレヒトの治水事業によって氾濫の心配は無くなり、交易と治水を利用した農業との両輪で国力を蓄え、ゲルマニア最大の諸侯に登り詰めた。

 そのアルブレヒトは、ゲルマニア皇帝アルブレヒト3世として選出され、その権勢を内外へ知らしめ様と戴冠式を行う為に各国に使者を出した。

 トリステイン王国マクシミリアン1世は、王妃カトレアと数人のお供と共に、即位後初の外遊として、ここヴィンドボナに訪れていた。

「ゲルマニア屈指の大都市と聞いていたが、喧騒に包まれている訳でもなく、綺麗に整備されているな。うん、良い都市だな、掛け値なしに」

 ヴィンドボナ市内をマクシミリアンとカトレアを乗せた豪華な馬車が行く。
 御者席には執事のセバスチャンが手綱を握り、二台目の馬車には、外務卿ペリゴールを団長とするトリステインの使節団の馬車が続き、三台目の馬車にはベティとフランカのメイドコンビは、トリステインから持ってきたドレス等の物資を積み込んだ貨物用の馬車の御者席に座ってマクシミリアンとカトレアの馬車に続く。
 三台の馬車の周囲を、使い魔のグリーズに跨ったミシェルと、アルブレヒトの命で派遣された武装した帝国貴族が厳重に警備していた。

 本来なら、市内を行く豪華な馬車に市民の目が向けられるものだが、ヴィンドボナ市民の目は馬車の上空をゆっくりと飛ぶ、巨大な怪鳥に向けられていた。
 言うまでも無く怪鳥の正体は、カトレアの使い魔、サンダーバードのフレールだった。

「あんまり目立つのも嫌だし好都合だけどね」

「何か仰いましたか? マクシミリアンさま」

「いや、なんでもない。市民には活気があるみたいだな」

「……でもマクシミリアンさま。少しばかり物々しくないでしょうか?」

 馬車の窓から市内を覗いたカトレアは、持ち前の直感でヴィンドボナに漂う不穏な空気を感じ取った。

「物々しい……か、新皇帝の即位に反対する勢力が未だ市内に居るのかもしれないな」

 マクシミリアンは自身の謀略の影響である事を言う訳にもいかず、適当に話をあわせた。

「マクシミリアンさま。わたし達が泊まる所はどんな所なんでしょうか?」

「過去の大公が狩猟用に建てた離宮と聞いたな。名前は確か、ショーンブルン宮殿」

 マクシミリアン達はヴィンドボナ市の中心区画に入ると、真っ先に巨大な泉が抱えた広大な庭園が目に入った。
 何か水魔法を絶えず使っているのか、泉からは5メイル程の噴水が空高く噴き出されていて、水しぶきが太陽の光に合わさって綺麗な虹を空中に描いていた。

「見事な仕掛けだな、こんどトリスタニアに帰ったらやってみよう」

 ショーンブルン宮殿の区画には、噴水や庭園の他にも動物園が建てられていて、カトレアは動物園の案内用の看板から目が離せない。

「ねえ、マクシミリアンさま……」

「分かってるよ、荷を解いたら二人で行こう」

「気を使わせてしまって申し訳ございません」

「気にするなって。公務とはいえ息抜きは必要だ」

 デートの約束を交わすと、二人を乗せた馬車は庭園を通り過ぎ、宿泊場所となるショーンブルン宮殿に到着した。

 馬車から降りたマクシミリアンは、ショーンブルン宮殿の外壁を見て呆気にとられた。宮殿の外壁は金色に輝いていたのだ。

「あ、これは……」

 マクシミリアンは思わず『悪趣味な』と口を滑らせそうになったが、何とかその言葉を飲み込んだ。

「あらあら、まあまあ」

 カトレアも同じ感想の様で、ニコニコしながらも微妙に呆れ顔だ。

 マクシミリアン一行はショーンブルン宮殿内に入ると、使用人やメイドら家人達が一斉に礼をして国賓の到着を歓迎した。

「僕たちは部屋に入って休むとしよう、他の皆もそれぞれ休んで旅の疲れを癒してくれ」

『かしこまりました陛下』

 トリステイン訪問団一同が礼をした。

「ペリゴール。ゲルマニアとの通商交渉は明日からだったか。それまで休んでいてくれていい」

「御意にございます陛下」

 『行こうかカトレア』と、マクシミリアンはカトレアを伴って、国王夫妻の寝室として割り当てられたショーンブルン宮殿でもっとも豪華な部屋に入って行った。

「さて、我々も休ませて頂きましょうか。今夜は歓迎パーティーが催されると聞いています。それまでゆっくり休んで下さい、」

 マクシミリアンとカトレアが部屋に入るのを確認すると、ペリゴールが音頭を取って訪問団の部屋を割り振っていった。

 よほど疲れていたのか訪問団は次々と割り当てられた部屋に入って行き、やがて廊下には守衛の帝国貴族とショーンブルン宮殿のメイド達、そしてミシェルらマクシミリアン達を直接世話する者達しか居なくなった。

 その様子をドア越しに聞いていたマクシミリアン。

「よし、みんな休憩に入ったな。カトレア、着替えたら早速動物園に行こう」

「でもマクシミリアンさま。今出て行ったらミシェル達に気付かれてしまうのではありませんか?」

「そうなれば、護衛が付いて『二人っきり』ではなくなるな。ん、そうだ。そこの窓から外に出ようか」

 マクシミリアンが指差す先には、大きな窓がありヴィンドボナ市の建物が木々の間から覗いていた。

「まあ、マクシミリアンさまったら」

「部屋の中を無人にすれば、大騒ぎになるだろう。そこでスキルニルを身代わりに立てよう」

「でもこんな子供みたいないたずら、ワクワクしますね」

 カトレアも乗り気で、二人は予め用意しておいた一般市民が着るような服に着替えると、身代わりのスキルニルをそれぞれマクシミリアンとカトレアに変化させた。

「それじゃ留守番任せたぞ」

「分かっている。精々楽しんでくるんだな」

「何なら、カトレアのスキルニルとよろしくやっていても良いぞ?」

「馬鹿を言え、スキルニルにそんな機能付いていない」

「付いていないのか。ともかく任せた」
 スキルニルの自分自身と軽口を交わしたマクシミリアンは、既に着替え終えたカトレアと共に窓から下へ飛び降りた

「少し遅くなるかもしれませんから、その時はフォローをお願いします」

「たっぷりと遊んできて下さい」

 窓から顔を出したスキルニルのカトレアに、本物のカトレアがこれからの身代わりを労った。

 国王に即位した後のマクシミリアンは、その忙しさからカトレアとのデートは一切行っていない。
 何とか二人だけの時間を取りたかったが、政務は決して二人に自由な時間を与えなかった。

「そこで初めての外遊は、なにが何でも自由な時間を作るつもりだったんだよ!」

「マクシミリアンさま、なにもこんな所で仰らなくても……」

 マクシミリアンは動物園への道中で熱弁し、それを間近で聞いていたカトレアは嬉しさ半分気恥ずかしさ半分の心境だった。

「良いんだよ。久々の自由だろ? カトレアは嬉しくないのか?」

「それは嬉しいですけど……」

「だったら楽しもう。ほらほら!」

 マクシミリアンはカトレアの手を取ると園内を連れ回した。
 宮殿近くの動物園は、普段見られないような動物が多く飼育されていて、飼い慣らされたモンスターも見ることが出来た。

 二人は動物園内を見て周り、モンスターのトロル鬼が居る『トロル舎』の前までやって来た。
 トロル舎は10メイル以上の巨大な壁の上から、下のトロル鬼を見下ろすような構造で、頑丈な手すりが在る為か、よっぽどの事がない限り転落する事はない。

「5メイルのトロル鬼を飼うなんて、ゲルマニア人は面白い事を考えるな」

「でも、余り元気が無いみたいですよ?」

 カトレアの言うとおり、3匹いるトロル鬼は元気が無く、餌の牛の大腿骨を口でプラプラせながら地べたに座り込んでいた。

「どうしたんだろう?」

「このような狭い場所に押し込められて、気が滅入っているのではないでしょうか」

「なるほど、5メイルの巨体にこの穴は狭すぎるな」

 周りをよく見ると、元気が無いのはトロル鬼だけではない。
 トロル舎の他にもオーク鬼の入ったオーク舎にスキュラ舎、バグベアー舎があり、それらのモンスター全てが元気が無かった。

「可哀想だが、僕らが心配する事はないか、行こうかカトレア」

「……はい」

 カトレアは後ろ髪を引かれる思いで先を行くマクシミリアンに続くと、一人の不審な男がカトレアの目に止まった。

 一見、市民風のその男はベンチに座りながら、モンスター達を見ていただけの様に見えたが、勘の鋭いカトレアはその男に不穏な雰囲気を感じた。

「おーい、カトレア。どーした?」

「マクシミリアンさま。この子供連れの多い動物園に不釣合いな方が居たので……」

「なに?」

 マクシミリアンはカトレアの言った不審な男を探し辺りを見渡したがそれらしい男は見当たらなかった。

「何処だ? それらしい男は見かけなかったぞ」

「そんなはずはありません。たしかにあそこのベンチで……あら、居ない?」

 カトレアが見た不審者は、カトレアがほんの少し目を離した隙に何処か居なくなってしまった。
 マクシミリアンとしても、不審者の姿を探せばいいのだがそろそろ時間が差し迫っていた。

「カトレア。そろそろ宮殿の皆も、僕達の仕掛けに気付くころだろう。カトレアの見た男も気になるが早く帰ろう」

「……そうですね。気になりますがミシェル達に心配を掛けさせる訳にもいきません」

 二人はショーンブルン宮殿に戻り、一週間後のアルブレヒト3世の戴冠式に臨んだ。






                      ☆        ☆        ☆





 マクシミリアンを始めとするトリステイン訪問団は順調に滞在のスケジュールを消化し、いよいよアルブレヒトの戴冠式当日になった。
 新ゲルマニア皇帝アルブレヒト3世の戴冠式は、ヴィンドボナのシンボルであるシュテファン大聖堂で戴冠し、その後アルブレヒトが居城としているホークブルク宮殿へ移動後、大々的な、トリステイン国王夫妻をはじめ多くの来賓がシュテフォン大聖堂に集まっていた。

「マクシミリアン陛下。結婚式以来ですね」

「オルレアン公……」

 オルレアン公シャルルが、高齢のガリア国王の代理として出席し、二人は数年ぶりの再開を果たす事になった。
 ここ数年のシャルルは父王の代理として精力的に各国に飛び回り、次期ガリア王として徹底的にその顔を売り込んていた。

「陛下。少々お時間よろしいでしょうか?」

「会談ですか。15分程ならいいですよ」

「ありがとうございます。マクシミリアン陛下」

 突然の会談の申し出にマクシミリアンは潔く了承した。
 シャルルがガリア王の玉座への野心を隠しながらも狙っている事を、クーペを介して知っていて、トリステインの益に利用できると思ったからだ。

 突如行われる事になったトリステインとガリアの会談はシュテフォン大聖堂のとある廊下で行われる事になった。
 二人の周辺には『サイレント』の魔法で防音に勤め、『ウォーター・ビット』を辺りに配置し護衛の代わりとした。

「オルレアン公。会談の内容とはどの様な物なのですか?」

「実は陛下。我がガリアと陛下のトリステインとの間に軍事条約を結びたいのです」

「軍事条約を……」

 マクシミリアンは目を瞑るふりをして、『ウォーター・ビット』で周囲を警戒した。
 幸い、二人の周辺の廊下には聞き耳を立てる所か、人っ子一人居ない。

「その様な重要な会談内容でしたら、廊下ではなくお互いに机をはさんで協議し合うべきですね」

「陛下のおっしゃる事はごもっともにございます。後日、改めてお話を持ってきますので、その時はよろしくお願いいたします」

「分かりました。会談の内容はそれだけですか?」

「いえもう一つ。これは個人的な事なのですが……」

「個人的の……話を聞きましょう」

「もし私に『もしも』の事がありましたら、どうかマクシミリアン陛下。我が妻子の事、よろしくお願いいたします」

「これは穏やかではありませんね。それは自分の人生を賭けてガリア王の玉座を狙うを判断してよろしいのですね?」

「……そ、それは」

「いえいえ返事は結構です。ただ僕としましても、オルレアン公の言う『もしも』の時、トリステインを危険に晒してまで、奥方とシャルロット姫殿下を助けるわけにも行きません。『考慮』に入れておくという事でよろしゅうございますね?」

「流石ですね、私の娘の名をご存知でしたか。今はそれだけで十分です。陛下に置かれましては、不躾な願いを聞き入れていただき感謝の言葉もございません」

「恐縮ですオルレアン公。もし宜しければ公女殿下の事をお聞かせ下さい」

 その後、二人は公女シャルロットの話題で盛り上がり会談は終了した。

 ……

「ふうむ」

「どうされましたか、マクシミリアンさま」

 会談後、シュテフォン大聖堂の廊下で顎をなでながら何やら考え事をしていると、マクシミリアンに代わって、アルブレヒト関係者に挨拶回りをしていたカトレアが何事かと聞いて来た。

「ああ、カトレア。挨拶回りお疲れ様。いやなに、さっきの会談で妙な事を頼まれてな」

「妙な事?」

「ああ、それと無くお茶を濁したけどね」

「オルレアン公は、どの様な事を仰ったのですか?」

「ん? 内容が内容だけに、誰が聞き耳を立てているとか分からない。ここでは話せないから後日詳しく話す。いいねカトレア?」

「その様な重大なことをオルレアン公が。分かりましたマクシミリアンさまに従います」

 シャルルの話題は終わり、二人はペリゴールらトリステイン訪問団と合流する為、大聖堂の廊下を進むと、一人の少女を取り囲むようにして少年達がアプローチ合戦を行っていた。
 その姿は、いたいけな少女が男達に言い寄られている絵ではなく、小さな女王が取り巻きをを従えている様だった。

「ミス・ツェルプストー。今夜の晩餐会。是非、僕とダンスを踊って下さい」

「いやいや、僕と踊って下さい」

「どうしようかしらねぇ」

 『ミス・ツェルプストー』と呼ばれた燃えるような赤い髪と瞳に褐色の肌をしたミドルティーンぐらいの歳の少女は思わせぶりに悩む振りをした。

「あら?」

「ん?」

 小さな女王はマクシミリアンとカトレアの姿を見つけると。『失礼』と取り巻きに断わって
二人の所に近づいてきた。

「畏れながら、マクシミリアン『賢王』陛下で在らせられますか?

「確かに、マクシミリアンは僕だがキミは?」

「失礼いたしました。わたくし、『キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー』と申します。以後お見知りおきを」

 二つ名を『微熱』と呼ばれる恋多き少女は、小さいながらも礼式に則って優雅に礼をした。

「なるほどツェルプストー辺境伯の。我がトリステインとは色々因縁があると聞いています」

「不幸な因縁ですわ」

 マクシミリアンの聞いた話では、ツェルプストー辺境伯が何かとラ・ヴァリエール公爵家にちょっかいを掛けていて、互いの家の仲はすこぶる悪いらしい。
 過去にツェルプストー家の人間がラ・ヴァリエール家の婚約者を横から掻っ攫ったりと、因縁と言っても恋愛関係に多い。
 ラ・ヴァリエール公爵からトリステイン王家に嫁いだカトレアは、先ほどから黙ったまま黙して語らず、マクシミリアンとキュルケの語らいを見守っている。

「陛下。もし陛下のご都合が付きましたら、今夜の晩餐会。是非、わたくしと踊っていただけますでしょうか?」

「妻のカトレアの後でよろしければ」

 と、カトレアへのフォローを忘れない。
 一方の取り巻き達はキュルケの発言に、殺気に似た眼差しをマクシミリアンに送った。

「それでは陛下。失礼いたします」

 ダンスの約束を取り付けたキュルケは、再び優雅に一礼すると取り巻きの中へ帰っていった。

「ツェルプストー辺境伯か……」

 マクシミリアンは独り言を呟いた。
 ツェルプストーの一人娘キュルケとお近づきになれば、ゆくゆくはゲルマニアの混乱に乗じて兆着出来るかもしれない。
 ツェルプストー辺境伯の広大な領地には、地球でいうルール工業地帯が入っていて、トリステインに組み込めば多大な恩恵を受けることが出来るし、なにより将来的にゲルマニアも鳥syテインの真似をして工業化を進めることがあれば、ゲルマニアの工業化を阻害させる可能性がある為、ツェルプストー辺境伯領が喉から手が出るほど欲しがった。

「マクシミリアンさま?」

「ああカトレア。彼女、中々面白い娘だね」

「……」

 無言のカトレアはマクシミリアンの頬を抓った。

「イタタ、何をするんだカトレア!」

「わたし、こういう人の悪口を言いたくはないのですが、ツェルプストーに人には気をつけてくださいね?」

「ああ、ラ・ヴァリエールとツェルプストーの因縁は聞いているよ。けど良い機会だし、そろそろ和解をしても良いんじゃないかな」

「……マクシミリアンさま、気が付かないんですか?」

「なにがさ?」

「わたしは二つの家の因縁の事で怒っているんじゃありません」

「それじゃ、何で?」

「それは……」

 カトレアは口ごもった。
 感情の高ぶりの原因は軽い嫉妬なのだが、王宮ではほぼ全ての女性を無自覚に魅了する夫に、何時誰がマクシミリアンに言い寄って、閨を共にするのかヤキモキした事は一度や二度ではない。

 マクシミリアンがキュルケに心を奪われるかもしれない、と心配になった。

 マクシミリアンの愛情を疑った事はないが、やはり女として他の女が愛する夫に近づくのは気が気でない。愛情の証として子供が欲しいところなのだが、マクシミリアンとの間にまだ子供が授からない。
 まだ焦る必要は無いが、少しづつカトレアに焦りが出始めていた。

「ともかくカトレア。ここでは人目につく。皆の所に戻ろうか、話しはそれからしよう」

「……分かりました」

 少し拗ねた様子のカトレアは、先を行くマクシミリアンの後に続いた。

 間もなくアルブレヒトの戴冠式が始まる。
 既に瓦解を始めた帝政ゲルマニアを背負う野心家に多くの厄災が降りかかろうとしていた。
 
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