変わっていく影

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　変わっていく影
　不意に気付いた、気付いたのは偶然だった。
　都悠衣子は自分の影が自分の姿と違っていることに気付いた、その背丈も動き自体も変わらない、だがだったのだ。
「？何か」
　薄茶色に染めた髪を首が完全に隠れる位まで伸ばした白い顔の少女だ。目は大きく蒲鉾型で眉はかなり細く長い。
　頬は紅めで薄くピンク色の唇は大きい、そこから白く綺麗な歯が見えている。背は小柄で一五三程だろうか。
　通っている高校の鮮やかな青のブレザーと赤いタートンチェックのミニスカートを紅のネクタイ、黒のハイソックスに白のブラウスと合わせて可愛らしく着こなしている。その彼女が自分の影の異変にふと気付いたのである。
「髪の毛の長さ違うけれど」
「？どうしたの？」
　悠衣子と共にいる江藤陽子がその言葉に応えた。悠衣子より少し背が高く細長い顎が少し目立つはっきりとした顔の少女だ。黒髪を長く伸ばし波立たせて後ろでまとめている。
　胸はあまりないが脚が綺麗だ、その陽子が問うたのだ。
「髪の毛の長さがって？」
「うん、影の私の髪の毛だけれど」
　学校の帰り道の土手の上の道に映る影を見ての言葉だ。
「何かね」
「長いっていうのね」
「私の実際の髪の毛の長さとね」
「気のせいじゃないの？」
　陽子はその影を見たうえで本人に返した。
「私が見たところだと」
「変わらないっていうのね」
「胸の大きさだって」
　悠衣子とその影の胸を見比べる、そして言うことは。
「同じよ」
「大きいっていうのね」
「小柄なのに大きいってね」　
　薄めの陽子は苦笑いで言った。
「反則じゃない」
「そう言う陽子ちゃんは脚じゃない」
「脚？」
「そう、脚よ」
　陽子にはそれがあるというのだ。
「羨ましいけれど」
「私は胸の方が羨ましいけれど」
「ううん、そうなのね」
「私はね、それでだけれど」
　陽子はあらためて悠衣子に言った。
「髪の毛よね」
「何か長い気がするけれど」
「気のせいでしょ、それは」
　陽子はまた影と本人を見比べた、そして言うのだった。
「全然変わらないわよ」
「そうかしら」
「そもそも何？影が本体と違うってね」
「ホラーっていうのね」
「完璧にそうじゃない」
　まさにそれだというのだ。
「そんなこと有り得ないわよ」
「それじゃあこのことは」
「そう、気のせいよ」　
　陽子は笑って悠衣子に話した。
「気にし過ぎ、それじゃあね」
「まずはここから」
「今から私の家に行ってよね」
「そうそう、陽子ちゃんのお家スーパー銭湯だからね」
　そこに行ってだというのだ。
「入らせてもらうね」
「いいわよ、うちのお風呂は」
　陽子は笑って自分の家の商売のことを話す。
「もう一回入ればね」
「それでなのね」
「病みつきになるから」　
　そこまで凄いと悠衣子ににｙにやとして話す。