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ロミオとジュリエット

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第三幕その二


第三幕その二

「モンタギューとキャブレットの家の子供達よ。貴方達はもう争うべきではないのです」
「ですが」
「御聞きなさい」
 彼は二人を制した。
「二つの家を争わせる古いわだかまりは若々しい愛情によって消え去るべきなのです」
「そうなのですか」
「だからなのです。私は今神の御前にて申し上げます」
 そこまで言うと二人の手を取った。
「神は御自身に似せて人というものを作られました。そして結ばれるように作られたのです。それは御存知ですね」
「ええ」
 二人はその言葉に頷く。
「だからこそ。貴方達も結ばれるべきなのです」
「そうなのですか」
「家同士のわだかまりなぞ。神の御前では些細なこと」
 神父はそうした考えであった。
「その結びつきは神聖なものであり恵み深き眼差しを以って貴方達の前に現われるでしょう」
「神よ」
 ロミオはそれを聞いて神の名を口にする。
「私達は今」
「ここに結ばれてもよいのですね」
「神がそれを許して下さいます」
 神父が二人に優しく告げた。
「神はその祈りを聞き入れられます。その絆が平和と幸福をもたらす為に。美徳と信仰が包むこの世において」
「神よ、私達を御護り下さい」
 次にジュリエットが言った。
「私達の愛を」
「永遠に」
「子供達がその道を幸福に歩むことを見守っていて下さい。貴方が愛する子等の為に」
 神父は告げる。
「貴方こそが私達を黒い罪悪から御護り下さるのですから。では」
 そこまで述べて二人に顔を向けた。
「今時が来ました」
「結ばれる時が」
「そうです。ロミオよ」
「はい」
 ロミオは神父に応えた。
「ジュリエットよ」
「はい」
 そしてジュリエットもまた。
「貴方達の心を知る神の御前で今結ばれるのです。この絆は永遠に分かれることはありません」
「それでは私達はこれで」
「そうです」
 彼は告げる。
「永遠に一緒なのです」
「ロミオ様」
「ジュリエット」
 その言葉を聞いて喜びに身体を震わせ互いの顔を見やる。
「これで私達は」
「離れることがない」
「これでこの街の争いが終わらんことを」
 神父はそう願った。
「そして平和が永遠に訪れんことを」
 それを適えられる二人が今目の前にいた。だがそれはあまりにも弱い結び付きであった。古いわだかまりを消し去るのは若い愛だとしてもだ。
 その頃キャブレット家の屋敷の前で一人の少年がいた。小柄な黒い髪の少年で赤い帽子に青いシャツ、白いタイツにマントと粋な出で立ちである。
 彼の名をステファノという。モンタギュー家の小姓である。
「さて、こちらには若様はおられないようだ」
 彼は辺りを探りながら呟く。
「あの中におられるのは横柄で偏屈なキャブレット卿。男やもめで傲慢な殿方だけだ」
 ここで何を思ったのか剣を鞘ごと身体の前に持ってきた。そしてギターのようにして持つ。
「白いキジバトさん、禿鷹の巣は暮らしやすいかい?何故かあんなのを親に持った貴女の不幸は同情するけれど」
 ジュリエットのことを歌っている。
「けれど禿鷹は偏屈で貴女を放そうとはしない。哀れ姫君は暴君の虜」
 キャブレット卿を揶揄もしている。
「何時か逃げて自由を見つけられるかな。けれどキャブレットの手下達は執拗で貴女を放しはしないだろうね。けれど逃げないと何時までも虜のまま。さあ、どうしたものか」
 歌は波に乗ってきてステファノも上機嫌になってきた。
「夜の星の中に隠れて愛の女神に助けを乞えばいい。禿鷹には恋なんてわかりはしない。あんな頑固親父には剣の傷が一番似合うのさ」
「何だ、あいつは」
 その歌を聴いてグレゴリオが門から出て来た。兵士達も後ろにいる。
「おや、これはこれは」
 ステファノは彼等に気付いて恭しい様子で滑稽な一礼をする。
「キャブレット家の皆様方。御機嫌麗しゅう」
「モンタギュー家の者だな」
「如何にも」
 ステファノはそれを隠そうともしない。
「だとすればどうされるのですか?」
「さっきの歌は何だ」
 グレゴリオは彼に問う。
「我々を馬鹿にしているのか?キャブレット様を」
「おや」
 ステファノはその言葉にシニカルな笑みで応えた。
 
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