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とある六位の火竜<サラマンダー>

作者:aqua
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佐天と能力

システムスキャンの日は午前中で学校は終わりとなる。生徒たちはシステムスキャンの結果を話して盛り上がりながら昇降口から出て行く。一人で家でゆっくりしようとする者、友人たちと遊びに行く者。誰もがこの平日の午後を有意義に活用しようと学校から足早に出て行く。そんな様子を蓮は大きなため息をついて3階の教室から眺めていた。

「いいなぁ・・・。俺も遊びに行きたいなぁ・・・」

理由は先ほどのシステムスキャン。ずぶ濡れの体育着をそのまま鞄に入れるわけにもいかず能力で乾かしているのだ。小さな炎を使って少しずつ乾かしていく。本当はもっと大きな炎で乾かしていたのだが通りかかった先生に

「危ないからもっと炎を小さくしなさい!!」

と言われ、先生が納得する頃には炎は蝋燭の炎くらいになっていた。そのせいで想像以上に乾かすのに時間がかかるわストレスはたまるわで蓮のイライラはピークに達しようとうとしていた。

「確かに燃えない特殊な素材でできてるのは俺の持ち物だけだし危ないのは分かるけどさぁ・・・。あ~もうめんどくせぇ!!!周りの被害なんか関係なく・・・」
「あれ?神谷なにしてんの?」
「うわぁっ!!!」

ついに我慢の限界に達し周りに構わずに炎を大きくしようとしたとき、後ろから声をかけられて蓮は驚いて声をあげてしまう。

「そんなに驚かなくても・・・」
「ああ、佐天か。ごめんごめん。」

後ろにいたのは佐天。もう帰るところなのだろう。体育着から制服に着替えていた。

「で、佐天はなにしてるんだ?」
「あ、あたし?あたしは・・・そう、初春探してるんだけんど見なかった?」
「初春?う~ん見てないな。」

微妙な間が気になったがとりあえずスルーする。佐天の顔が赤い気がするがどうしたのだろうか。

「そっか、どこ行ったのかな・・・。」
「一緒に探すか?ちょっと待ってもらうことになるけど。」
「うん、一緒に探してくれると助かる。けどさ、神谷はなにやってんの?」

佐天が濡れた体育着と蓮の炎を交互に見ながら聞く。

「システムスキャンでちょっとね・・・」
「へぇ~、でもなんで発火能力者の神谷のシステムスキャンでびしょ濡れになるの?」
「なんか頭から大量の水ぶっ掛けながらじゃないとまともに計測できないらしくて・・・」

思い出して少し落ち込む蓮に、佐天はかわいそうに・・・と哀れみの視線を向ける。

「と、とりあえず早く終わらせて初春探しにいこう!!」
「はぁ・・・そうだな。もうちょいで終わるから」

蓮を元気付けようと明るくする佐天に笑顔を向け、蓮は少し炎を大きくする。そして佐天と話しながら作業を続けること10分後

「よしっ、終わり!」
「じゃあ初春探しにレッツゴー!!」

体育着を鞄にしまい、佐天とともに廊下にでる。そしてしばらく歩いていると、ふと佐天が立ち止まる。先ほどまでの笑顔は消えてしまっている。

「どうした?」
「・・・神谷はシステムスキャンのこと聞かないんだね。」

佐天の言葉に蓮は少し黙りこむ。

「聞いてほしいの?」
「・・・分かんない。」

蓮の問いに佐天はそう答える。

「能力なんかなくても平気って言っててもやっぱり憧れるし、無能力者の自分が惨めにもなるし・・・」

そう言って佐天はうつむいてしまう。佐天はレベル0。無能力者だ。普段は能力なんかなくてもなんともないと言う様に明るく元気な佐天がたまに見せる能力者への憧れ。コンプレックスのようなもの。レベル5の蓮にはどうにもできない。高レベルの能力者が同情してもそれは慰めにもならない。

「じゃあ聞かないよ。いつか佐天が笑って自分から話せるようになるまで俺は聞かない。」

だからこんなことしか言えない。佐天は顔を上げる。

「いつか笑って話せるのかな・・・?」
「それは佐天しだいだな。ただ・・・」

佐天の目をまっすぐに見て言う。こんなことしか言えないけど、それでも心をこめて言ってやる。

「佐天ならできるって俺は信じてる。」
「ありがと、神谷・・・」

佐天は暗かった表情を笑顔に変えてお礼を言う。

「あたしがんばるよ。神谷と笑ってこの話ができるように。」
「おう、がんばれ。」

蓮の返事に佐天はとびきりの笑顔をつくる。そして蓮の手を引いて走り出す。

「よ~しっ、じゃあ早く初春見つけて遊びに行こう!!!」
「さっきがんばるって言ってたのに遊び!?能力の練習とかじゃないの!?」
「それはそれ、これはこれ!今日は遊びに行かなきゃ損でしょっ!」
「うわっ!分かった!分かったから引っ張るな!!」

蓮の手を引いて走りだす佐天の笑顔はいつもの明るいものだった。





それからいろんな所を探したが初春は見つからない。2人は走りつかれていったん立ち止まる。

「う~ん、いないな・・・。帰っちゃったのかな?」
「初春に限ってそれはないだろ。」
「ならどこにいるんだろ?」
「もう外で電話したほうが早くない?これ以上走り回りたくない。」
「そうだね。」

そうして佐天と蓮が階段を下ると外に頭に大きな花飾りをつけた少女がなにか電子機器をいじっているのが見えた。

「あっ!あれ初春じゃない?」
「あんなとこにいたのか・・・。じゃあさっさと声かけて・・ってスケボー教室に忘れたし・・・」
「取りに行く?」
「うん、先に初春のとこ行っといて。あ、あと挨拶は済ませといてね?」
「分かった。待ってるね。う~い~は~るぅ!!!」

そう言って佐天は初春めがけて走り出す。そして蓮がため息をついて階段を上り始めた頃、佐天の挨拶スカート捲りをされたのだろう初春の悲鳴が響いた。





「ひどいです・・・」
「ごめんごめん、調子に乗っちゃって。代わりにあたしのパンツみる~?」
「あのさ、そういう話は俺のいないところでしてくれる?あと佐天、まったく反省してないだろ。」

蓮がスケボーを持って佐天と初春を止め、現在3人は街路樹の下にあるベンチに座って休んでいた。蓮は頬をふくらませる初春に同情し、まったく反省の色のない佐天にあきれる。

「見せてもらわなくて結構です!まったくもう、佐天さんは・・・」
「そんなことより、そういやどうだった?」
「どうって・・・」
「なにが?」
「決まってんじゃん。システムスキャン。」

首をかしげる蓮と初春に対しさも当たり前かのように答える佐天。

「神谷はだいたい分かるからいいとして・・・初春はどうだった?」
「私は・・・」
「ってちょっと待って!?聞きもしないの!?なんか寂しいんだけど!!」

慌てて待ったをかける蓮を苦笑いで見る佐天と初春。

「だって神谷のレベル知らない人なんていないじゃん。」
「そうかもだけど・・・こういうときさみしいなぁ・・・」
「仕方ないですよ。なんてったって柵川中学初のレベル5なんですから。」

少し落ち込んでしまう蓮をなぐさめる佐天と初春。蓮のレベルはほぼ全生徒に知れ渡っているのでこういう話に入れないのも仕方がない。

「で、初春はどうだったの?」
「ぜんぜんだめでした。相変わらずのレベル1。小学校のころからずっと横ばいです。」

苦笑いしながら言う初春。少し落ち込んでいるのが見て取れた。こういうとき蓮は黙り込む。2人より圧倒的に高位の能力者の自分がどう言えばいいのか分からないから。

「担当の先生にも、お前の頭の花は見せ掛けか、その花の満開パワーで能力値でも咲き誇れ!って・・・」
「誰だよ、その担当の先生・・・」

それでも担当の先生の言葉が気になりついツッコんでしまう蓮。佐天も同じ気持ちだったのか、

「え~っと、その担当の説教にもいろいろツッコミたいところだけど・・・」

そう前置きしてから話し出す。

「まぁとりあえず元気だしなよ。だいたいレベル1ならまだいいじゃん。あたしなんかレベル0。無能力者だよ?」
「あっ・・・」

初春を励ました後、指で0の形を作りながら言った佐天の言葉に初春は気まずそうな悲しそうな暗い表情で黙り込んでしまう。佐天はそんな初春の様子を見てはっきりとした声で

「でもそんなの気にしない。」

そう断言する。

「あたしは毎日が楽しければそれでオッケー!」
「佐天さん・・・」

(佐天、お前すごいよ・・・)

指で作った0を覗き込みながら言った佐天の言葉を蓮は純粋にすごいと思う。今の言葉は佐天の本心だろう。でも、さっき学校で言っていたように能力に憧れもあるはずだ。それでもそれをおくびにも出さずあのように断言できる人は、能力がかなり重要視されるこの学園都市でそうそういないだろう。元気だしなよ、と言って初春に音楽を聴かせている佐天はいつもどうり元気な笑顔。その笑顔を蓮は本当にすごいと思う。

「ダウンロードしたのにCDも買うんですか?」
「うわっ超無駄遣い・・・」
「初回限定版の抽選券であたるグッズを手に入れてこそ真のファンというものでしょーが!!というわけで、今日は一緒に買いに行くよ、2人とも!」

こういうところは共感できないとも思う。

「あっ、でも私今日は白井さんと約束が・・・」
「白井さんって風紀委員<ジャッジメント>の白井黒子?」
「ああ、聞いたことある。つかまったら最後。身も心もボロボロにされて再起不能になるっていう。」

白井は初春と同じ風紀委員177支部に所属する人で学園都市でも有数のお嬢様学校、常盤台中学の生徒だったはずだ。蓮も佐天も初春から話は聞いたことがあった。蓮はどこからか余計な情報も仕入れていたが。

「はい。念願叶い御坂さんに会わせてもらえることになったんです!学園都市に7人しかいないレベル5、常盤台のエース御坂美琴さんに!」
「常盤台のレベル5~?」

目をきらきらさせて言う初春とは対照的に微妙な表情になる佐天。

「ど~せまた能力をかさにきた上から目線のいけ好かないやつなんじゃないの?ああいう人たちって自分よりしたの人間を小ばかにすんじゃん?むかつくんだよね~。」
「・・・・・・ごめんなさい・・・」
「あっ、違う!神谷は違うから!!」

かなり嫌悪のこもった佐天の言葉に自分のことを言われた気分になったレベル5の蓮がちょっと落ち込み、謝ってしまう。そんな蓮を慌ててフォローしてから佐天は続ける。

「しかも常盤台のお嬢様なんて・・・」
「いいじゃないですか、お嬢様!!いえむしろお嬢様だからいいんじゃないですか!!」
「う、初春・・・?」

お嬢様という言葉に反応してさらに目の輝きを増す初春。引き気味に声をかける蓮を気にもしない。

「あんたそれ単にセレブな人種に憧れてるだけなんじゃ・・・」
「そ、そんなことないですよ?ちなみに私の出身が西葛西だってことも関係ないですよ。」
「いや訳分かんないし・・・」

顔を少し赤くして反論する初春にあきれる蓮と佐天。そんな2人に初春が提案する。

「そーだっ!この際だから佐天さんも神谷さんも一緒に!」
「ええっ、あたしは別に・・・」
「俺もめんどうかなって・・・」
「大丈夫大丈夫!」
「大丈夫ってなんだよ・・・ってちょっ初春!?」
「こんな機会滅多にないですよ~!」
「っちょ、待って、初春!!」

2人の話も聞かず初春は2人の袖を引っ張り歩き出す。こうして3人で白井と常盤台のエース、レベル5の御坂に会いにいくことになった。
 
 

 
後書き
本当にうまく書けない・・・。
こんな駄文ですが感想いただけたらうれしいです。 
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