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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第三章 聖杯大戦編
  第六十六話    『暗殺者の死闘』

 
前書き
今回はアサシン対決です。
アサシンのマスターからかすかに漂うかませ犬臭を出してみました。それと鬼畜眼鏡。 

 


拠点の月村邸まで帰ってきてシホは少し疲れた表情で、

「やっぱり、セイバーの相手は骨を折るわね…」
「あれが私の変わり果てた姿だと思いますと胸が痛みます」

アルトリアも沈痛そうな表情をする。

「決着はいずれ着ける。それより奏者よ? 余は湯浴みがしたいぞ」
「でしたらご案内します」
「うむ。任せるぞ」

ネロはまったく気にしていない様子でノエルに風呂まで案内されていた。

「神経が図太いわね。さすが暴君…」

アリサのツッコミがよく通った瞬間である。
フェイトの方では、

「ランサーは、惜しかったね」
「ま、そうだが次があると思えば苦じゃねーよ」
「前向きだね」
「おうよ。…しかし令呪の使いどころがうまいな。あのタイミングで使われるとは思いもしなかったぜ。いいマスターに恵まれたな」

ランサーがそう判断する。
それを聞いていたリンディはすぐにエイミィに連絡を入れる。
すぐにスクリーンが表示され、エイミィが映りだした。

「エイミィ。ミゼという女性に関しては情報は特定した?」
『はい艦長。顔も判明していますのですぐに分かりました。
本名は『ミゼ・フローリアン』。ミットチルダに住まうフリーの魔導師です。
現在数名の捜査員が彼女の自宅を家宅捜索していますが既に自宅の契約は解約された後で誰も住んでいませんでした』
「そう…。それじゃ行き先の手がかりはなしという事ね」
『ただ、部屋になにやら私達の世界では知られていない魔法陣の跡があったらしく、その部屋でサーヴァントが召喚されたのは確かかと思います』
「わかったわ。捜査員には随時慎重に調査するように通達して。私達がむやみに挑んでも返り討ちにあい殺されるのが関の山ですから」
『了解です』

それでエイミィとの通信が切れる。
シホは少し思案顔になり、

「おそらく言峰綺礼から情報を提供されたんでしょう。そうでなければサーヴァントが召喚できるわけないし、令呪もうまく使うことはできないでしょうから…。
それにしても、もう魔術師の魔術回路が様々な人に宿り始めているのはあきらかですね。
だから魔術回路を持つ人をできるだけ把握しておきたいのが本心ですね。今後、魔術による事件は増えると思いますから…」

シホの言葉にリンディは頷き、

「魔術に対抗するための対策課を設立した方がいいかもしれませんね?」
「それは名案だな」

士郎がそれに相槌を打つ。

「特に誰かというわけではないが…シャーマニズムに似た由来の部族や、昔から続く豪族や名家などには最低一人は魔術回路が宿る可能性が一番高いだろう。
後は、大がつく魔導師など、とかにな。…肝心なのはどう世界に選定されて魔術師として選ばれ宿るかだな」

士郎はそう付け足し言う。
それにこの中で選ばれた面々は、

「私とアリサちゃんと、後お姉ちゃんはなんで選ばれたんだろう…?」
「おそらくすずか嬢と忍嬢は家…というより血がかなり継がれているからではないか?」
「あー…そうかも」

それですずかは合点いった。
夜の一族とくればかなりの歴史はあるはずだからだ。

「そしてアリサ嬢も家が有名だからなのではと推測するが…。あるいはそういう才能があったのかもしれないな」
「ふーん? そんな曖昧なものでもいいんだ」

アリサもそれで一応納得しているようだ。

「それじゃ士郎さん。私は…?」

なのはが質問する。

「なのは嬢は…やはり、才能だからではないか?」
「うーん…そんな才能は魔導師だけで十分だったんだけどな~…」
「ですがそのおかげで私はなのはと出会う事ができましたよ?」

ファイターがそう言うとなのはは嬉しそうな顔で「うん!」と頷く。

「それじゃフィアは…?」
「おそらく私とパスが繋がっていたからじゃない…?」
「そ、そうかもね…」
「ついでに言っておくと多分フェイトはプレシアの血でしょうね。多分だけど娘のアリシアにもその才能はあったと思うわ」
「そうなんだ…。母さん、アリシア…」

それでフェイトは少し物思いに耽る。
それに気づきながらもあえて見なかった事にして、シホは士郎にあることを聞く。

「そういえば士郎。月村邸の陣地はどうなっている? ネロやキャスター達が召喚された一昨日から色々と改造しているんでしょ?」
「よくぞ聞いてくれました!」
「はい!」

そこにキャスターとついでにシャマルが出現してきた。

「私自身は陣地作成スキルは低いものの作れないわけではありません! 土地も良いものですし十分です!
それにシャマルにも協力してもらい魔術と魔導のダブル結界を現在構築中ですのでかなり強力です。ですので二度とこの地には侵入させません!」
「はい。こういった作業はお手の物です♪」
「だ、そうだ」

キャスターとシャマルに全部言われたので手持ち無沙汰を感じている士郎であった。

「でも、閉じこもっているんじゃいつまでたってもあの金ピカを殺せないわ! 早くこの手で八つ裂きにしてやりたいのに…!」
「呵呵呵。確かに儂も早く強者と一戦交えたいものよ」

ファニーヴァンプが物騒なことを言い出す始末である。
アサシンもそれに乗るで結構空気が緊迫する。

「ファニーヴァンプ。もう少しだけじっとしててな。
あなたはサーヴァントの中で切り札といってもええ。だから力は温存しておきたいんよ」
「まぁ、はやてがそう言うなら従うけどさ…」
「アサシンもよ。早く戦いたい気持ちは分かるけど今は待つのが先決よ」
「はっはっは。委細承知した」

どうにかマスターであるはやてとアリサが二人を落ち着かせたようだ。

「それと、大師父はこんな時にどこにいったの…?」

そう。ゼルレッチは今この場にはいない。
なにやら裏で動いていそうだが今は判断できない。
唯一情報を知っている士郎は、

「今後の地盤を整える、らしい…。魔導師社会に魔術社会が加わるのだ。そうすればおのずとすぐに混乱が発生するだろう。
魔術回路を持つ子を魔術師として育成させるかの判断もこの世界の人々に一任されたわけだからな」
「それはありがたいですが…。でしたら管理局にも協力してもらいたいのですが…」
「それは無理だろう。大師父は好む事は自分からやりだすが、気に食わないことやつまらない事に該当するものには目もくれないからな」
「それは納得ね。大師父に弟子入りした魔術師は成功するか破滅するかの二択しかないと言われているくらいだし…」
「け、結構物騒な御仁なのね…」

それでリンディは汗をかく。
なのはが話に入ってきて、

「でも、それだとシホちゃんと士郎さんって大師父さんの修行に成功したんだ?」
「ま、そうね…」
「あまり思い出したくない過去だ…」

シホと士郎はそこで難しい顔になる。
元が同じ魂なだけに考えることは一緒なのだろう。
何をされたのかと疑問顔になる一同だが二人は決して内容を明かさなかった。


◆◇―――――――――◇◆


それから一日が経ち、マスターであるシホ達は月村家に居座りながらも学校に通っている。
まだ学校に復学していないはやてと、もう大人で管理局で本勤務ではないが働いている士郎は月村邸で待機しているがこれといって事件は起こっていない。

《しっかし、こんな時に学校に通うなんてマスターもよくやるよな》
《しょうがないよ、ランサー。学校は休むわけにはいかないから…》

フェイトとランサーは念話でそう話している。

《スズカの事は私が守りますから…》
《うん。ありがとねライダー》

すずかとライダーはもう数年来並の絆が出来上がっている。
やはり同じ吸血種の血を引いている者同士で分かり合えているのだろう。

《学び舎か…襲われるとしたらまずそこだろうな》
《ちょ!? アサシン、物騒なこと言わないで!》

アサシンはまるで予想がついているかのように話し始めてアリサは慌てている。

《モノを教える場所ですか。いいですね、こういった繁栄の営みは昔から変わりません》
《うん。そうだよファイター。さすがにこの世界に魔法はないから教えていないけどね》

なのはとファイターは呑気に念話をしている。

《ネロ…もしまたセイバーが襲ってきたら今度こそ勝つわよ》
《うむ。奏者がそう言うなら必ず勝ちを拾おうぞ!》

シホとネロは今後の活動について色々と話し合っている。
全員が全員、念話で話をしているので教室で普段話している五人があまり話していない光景に他の生徒達は不思議そうに見ているのだった。
そして何事もなく学校は終わり五人は帰り道を歩いている時だった。

「やぁ、お嬢さん方。ご機嫌麗しく…」

そこにはメガネをかけた長身の優男がいてニコニコと笑顔を振りまいてきていた。
だがその笑顔はすぐに陰険なものだと五人はすぐに感じ取って一歩後ずさる。

「…誰ですか?」
「僕の名は『三菱彩(ミツビシ・サイ)』。君達を殺しに来たものだよ」

三菱彩と名乗った男はその手にナイフを構えると疾駆してきた。
狙いはアリサだった。
だがすぐにアサシンが姿を現しそのナイフを弾くようにして防ぐ、が。

「む…? 破壊するつもりで振るったのだが、躱されたか?」
「あ、ありがと。アサシン…」
「いや、何も言うな。しかし解せんな…。その右手の令呪を見る限りマスターということだろうが真正面からかかってくるとは…阿呆かそれとも、やり手か…?」

アサシンがそう殺気をだし彩に話を振るがそれでも笑顔を消さずにナイフを舐めて、

「ただ僕は君達が切り刻まれる光景を見たいだけなのさ。お分かり…?」
「わかんないわよ! この変態!!」
「特に金色の髪のお二人さんは両手足を刻んで飾ったらさぞ映るだろうね!」
「「ひっ!!」」

それでフェイトとアリサは小さい悲鳴を上げる。
シホが前に出て、

「あんまりこの子達を怖がらせないでくれる? この変質者」
「…君、いいねー、その強気な顔。実に君の心の底から泣き叫んで歪んだ表情を見てみたい!」
「…性格歪んでいるわね。汚物消去として撤去しても許されるかしら?っていうか颯爽と警察に捕まりなさい。あんたみたいな奴は刑務所の方がお似合いよ」
「ダメだね、あんな場所。ブサイクな奴らしかきっといないんだろう? だから僕の欲求は収めることは決してないと断言できるよ」
「なら自殺したらどう? あんたならきっと地獄の閻魔様がきつく折檻してくれるでしょうね?」
「それもなかなか魅力的な提案だねぇ…」
「まさか、これに乗ってくるとは…。強敵ね」
「シホ、話がずれてるよ?」
「そうね…」

フェイトの言葉で正常に戻るシホ。

「さて、それじゃさっさとやられてください。みんないくわよ!」
『待ってました! 結界を展開するよ!』

シホ達は全員サーヴァントを実体化させる。
そして事前にフェイトから通信を受けていたエイミィからの通信で結界が構築される。

「ふふふ…面白くなってきたね。それじゃいきますとしましょうか。アサシン!」

彩の背後に一昨日に姿を見せた目に白い布を巻いているボロボロの黒い外套を羽織っている男が出現した。

「…こいつらが敵か?」
「そうだよアサシン。令呪一個使ってお前は僕の操り人形になっているんだからせいぜい働いてくださいよ?」
「…わかった。マスターの命令は守る。しかし、令呪を使いきってみろ。即貴様を八つ裂きにしてやる」

シホ達はこのやりとりでアサシンと彩は反りが合ってなく不仲だとさとる。

「ふん。令呪による強制か。なかなかお主も不幸よの、アサシン」
「黙れアサシン」

アサシン同士にチリチリとした殺気がぶつかりあう。

「しかし同じアサシンのクラス。色々とややこしいだろう? どれ、一つ真名を名乗り合うのはどうだろうか?」

アサシン(李書文)がそう切り出す。

「…いいだろう。どうせこの世界には俺を知る者はいないだろうからな」
「いいぞ! では儂の名は李書文だ!」
「これは有名な格闘家が来たな。…そうだな、俺の事は『殺人貴』とでも覚えておけ」
「殺人貴!?」
「シホちゃん、心当たりがあるの?」
「えぇ…」

それゆえにシホは大いに驚く。それは士郎時代には何度も切り結びある時は共闘もした相手だ。
あちらはシホを知らないだろうがシホはよく知っている。
本当の真名は『遠野志貴』…いや『七夜志貴』と言ったほうがいいだろう。ファニーヴァンプ…アルクェイド・ブリュンスタッドを守る殺人貴と言われた青年だ。

「まさかあなたがアサシンとはね。ファニーヴァンプが喜ぶわ」
「誰かは知らないが俺を知っているという事はあの世界の人間か」
「えぇ」
「やぁやぁセイバーのマスターよ。儂が戦おうとするのに邪魔立ては遠慮願おうか」
「わかったわ。でも気を付けてね。彼の宝具はおそらく『直死の魔眼』だから」
「直死の魔眼…? シホ、それってなに?」
「魔眼には種類があるのはライダーは分かるわよね?」
「えぇ」
「彼の魔眼は別名『バロールの魔眼』。それは見たものを死に至らしめる魔眼を持つバロールから取られているわ。
その効果は人の死の線と点を見れるもので切られたら二度と再生はしないし点を刺されたら消滅するわ。
そしてそれは宝具も例外なく切り裂くわ」
「本当に何者だ…? 俺の事をそこまで詳しいとは…」
「さて、ね…」

シホは今のところはもう話すことはないという意思表示をする。
それに反応した李書文は動きを開始する。

「では、一戦交えようではないか…」
「いいだろう…」

李書文が構えると殺人貴もナイフを取り出し構える。

「ほう。ナイフがあやつの武器か」
「見た感じはただのナイフだな」
「しかし、魔眼使いはただのナイフでも武器として使います。おそらくは…」
「見ているだけいうのは辛いですね…」

観戦ムードに入った残りのサーヴァント達は二人の戦いをじっと見ている。
まず李書文が円の構えをしだす。
すると段々と李書文の体が透け始め出す。

「ぬっ!?」

それに殺人貴は警戒の色を示す。
そして完全に消えた李書文は誰の目にも映らなくなり、

「っ!」
「ひゅっ!」

突如として殺人貴の背後から李書文の拳が見舞われる。
それにおそらく直感だったのだろう、殺人貴は高速で回避する、が。

「こ、これは…!」
「ほう…左腕だけを壊したか」

見れば殺人貴の左腕はダランと下がっている。
何が起きたのかは簡単なことでただ李書文が己の拳の一撃を首の頚動脈に放つつもりが殺人貴はそれを避け損なったものの致命打にはできなかったのだ。
もしこれが命中していれば殺人貴はすでに消滅していただろう。

「透化か…やっかいな術を。だが、もう気配は読めた。右手が使えればそれだけで十分だ」
「もう儂の気配を読むと申すか? 面白いことをほざく。ならば、我が次なる一撃を交わしてみよ!」

そこから気で強化して鋼鉄と化した拳とナイフが何度も交差した。
左腕が使えないというハンデがあろうと李書文の猛攻についてこれる殺人貴の技量は確かなものなのだろう。

「ははははは! お主、なかなかやりおるではないか! やはり戦いというのはこうでなければいかんな! 血が滾ってくるわ!!」
「うるさいぞ…! 次には、殺しきる!」

殺人貴は一度拳を受け止めた後、弾いて一度ナイフをしまい右手で目を覆っている包帯を取り払う。
それによって殺気が倍以上に増したのを見学していた一同は感じる。

「アサシン! 気をつけて! 直死なんとかが来るわよ!」
「うむ。どんなものか見定めてやろうか」

アリサの注意の言葉に、しかし李書文は警戒をしながらも一度目にしてやろうという気になっている。

「その油断が命取りだ! 貴様の身体、尽く分割する!」

まるで獣が四肢を伸ばして威嚇するかのように体勢を低くしてクラウチングスタートをしようとする構えをして、

「教えてやる。これが―――………!」
「ッ!!?」

殺人貴のとてつもない殺気にアリサはものすごい悪寒に襲われて令呪のある右手をおもわず握り締める。
すぐに殺人貴は李書文へと走り出す。

「モノを殺すということだ!!」
「アサシン! 避けてーーー!!」

殺人貴のナイフが李書文の身体を通過しようとするのとほぼ同時にアリサの令呪が一画消え失せた。
それによって李書文は五体満足でなんとか助かっていた。
そしてその数秒後には李書文の体があった場所の空間にあった空気が振動を起こしていた。

「…かたじけない。アリサよ。もう少しアリサの判断が遅かったら儂の体はとうの昔に切り刻まれていただろう」
「いいわよ。それより、傷はない…?」
「なんとかなった…。しかし、これが直死の魔眼か。なかなか肝が冷えるものよ。一度見据えようとしたが思わぬものだった」
「殺り損なったか…」
「どうしたんですかアサシン? まだ殺していないですよ? あなたはここで引くんですか? ダメですよ。そんなんじゃ~」

いまだに状況が不利だと分かっていないのか、はたまた分かっていてわざと発破をかけているのか彩は笑顔を顔に貼り付けながらも命令を下す。
殺人貴は左腕が負傷していてさらに宝具も避けられたというのだ。さらにもし李書文がやられたとしてもまだ四人のサーヴァントが控えているのだ。
これほど不利な状況はないだろう。

「わかった。次は殺すぞ…」
「一度どういうものか晒したもので儂を殺せると思うなよ?」

仕切り直しといった感じで二人は再度構えるが、そこにおそらく外側からの轟音が響く。
それによって一部結界が破壊され何者かが中へと侵入してくる。
新たな敵の襲来である。


 
 

 
後書き
ステータス閲覧の方で保有スキルに『殺人衝動』も入れたかったんですけどうまい言葉が見つからず、そしてもう殺人貴と自分で名乗っていますので書きませんでした。
殺人貴のステータスはこれくらいがちょうどいいと思ったんですけど大丈夫ですかね?

 
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