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国連宇宙軍奮闘記

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悲しい帰還

――2199年5月28日――
――地球 日本上空 国連科学局所属 ホワイトタイガー改――


「損傷が酷い、これは修理が大変だぞ。」
彼の横ではボロボロになった『えいゆう』が地上に向かっていた。
「修理ができれば、だがな・・・。」
国連宇宙軍には修理するだけの力はもうなかった。


――地球 国連宇宙軍横須賀地下基地 大型艦ドック――


「このドックは昔水で一杯だったそうだ。」
 島が連絡通路を歩きながらドックが完成した当時の事を話している。
 が、上の空の古代を見かねて島が聞く。
「古代、どうした?兄さんのことか?」
「兄さんの船、『ゆきかぜ』が先に帰っていないかと思ったんだが・・・。」
 ドックにいる艦は『えいゆう』の一隻だけだった。
「きっとほかの基地に帰還したんじゃないか。」
 島はそういうも古代の顔はまだ暗い。
「そうだと良いんだが・・・。」
「とにかく司令部に言ったら細かい事も分かるだろ。」
 島はとにかく前に進もうとしている。
「どうせ司令部にはこの火星で採取した試料を届けないといけないんだし。」
 島は両手に抱えたトランクを見ながら言った。
「そうだな。」
 古代も同意する。
「よし、それならトランクを持つのを代われ。」
 島は手に持ったトランクを古代に手渡そうとする。
「島の担当は地下都市連絡列車までだぞ。」
 古代はそれを拒否しながら言う。
「結構重たいんだよ、このトランク。」
 島が愚痴を言い始める。
「ジャイケンで負けたんだ、諦めろ。」
 それをスパッと切ると古代は歩き出した。


――地球 地下都市連絡列車――


「汚染は地下1キロまで来ているな。」
 汚染計を見た古代が言う。
「このままのペースだとあと1年で人類は絶滅してしまうぞ。」
 肩で息をしていた島も汚染計を覗き込みながら言った。


地球 国連軍司令部 士官室
「高須大佐、火星観測基地所属の少尉二名をお連れしました。」
 案内していた兵士が言うと中にいる高須大佐が答えた。
「入れ。」
「は、失礼します。」
 古代たちは部屋に入った。
「こちらが火星で謎の宇宙船から採取したデータと試料です。」
 古代がトランクを開けながら言う。
「ふむ、これが報告に在った例の通信カプセルか?」
 士官がカプセルを手にしながら言う。
「はい、おそらくそうだと思われます。」
 島が高須大佐に答える。
「恐らくとは?」
 今度は古代が答える。
「は、火星観測基地の調査機器ではそれが限界でした。」
 もう一度報告書に目を通した高須大佐は古代たちに向きなおす。
「いや、よくやった、もう一人前だな、受け取りたまえ。」
「これは・・・中尉でありますか。」
高須大佐に手渡されたのは中尉の階級章だった。
「そうだ、このたびの火星での特別訓練、並びに謎の宇宙船の調査、国連軍はこれらの功績から貴官ら二名を中尉とする判断を下した。」
「は、有り難う御座います!」
 高須大佐に対して敬礼しながら答える。
「久しぶりの地球だろ、今日は二人ともゆっくり休め。」
「は!」
 高須大佐に言われて二人は士官室を後にした。


――地球 国連軍司令部 休憩室――


「「いたいた、おーい相原。」」
 古代と島が声をかけると相原が振り返った。
「あ、古代さんに島さんか、何か用?」
「いや、火星から帰ってきたから。」
その後世間話をした後古代が本題を切りだす。
「『ゆきかぜ』がどうなったかを調べられるか?」
「『ゆきかぜ』?」
相原が聞き返すと古代が答える。
「兄さんが乗っていたんだ。」
 ちょっと待ってというと相原が端末を操作しだす。
「『ゆきかぜ』は行方不明、古代守艦長以下26名はMIA・・・。」
MIA、すなわち戦闘中行方不明。
「おいどういう事だ、それ?」
「これしか書いてない。」
 古代が相原から端末をひったくる。
「・・・本当だ。」


――地球 地下鉄道――


「記録が無いならこれ以上は調べられないか。」
 島が言うと古代が答える。
「沖田提督に会って直に確かめる。」
「お、沖田提督に聞くってどうするんだ、どこにいるかもわからないんだぞ?」
 島が驚きながら言うと古代は冷静に言い返した。
「沖田提督は怪我をしていた、きっと司令部の病院区画に行ったんだ。」


――地球 国連軍病院 病室――

「沖田提督、兄の船はどうしたんでしょうか?」
「君は?」
「古代守の弟、古代進です。」
「古代君の!そうか…。」
「古代君は男だった。」
「え!」
「勇敢な男だった、しかし彼はもう戻ってこない。許してくれ。」
「兄さんが!」
「無駄死ににはさせん!」
「どうして兄さんを連れて帰ってくれなかったんですか、艦長」
「すまん。」
「古代、いつか宇宙に出てきっと敵を討とうぜ!」
 
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