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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第3章:武器屋トルネコと幼女騎士リューラ
  第1話:一期一会

(レイクナバ周辺)

一人の中年男性がモンスターに追われ逃げ惑っていた。
「ひゃ~! わ、私は戦闘が苦手なんですぅ~!」
多数の荷物を背負い、手にはゴツイ破邪の剣が一本。

彼の名は『トルネコ』。
数時間前に故郷のレイクナバを出立し、長年の夢である世界一の武器屋を目指し旅立ったのである。
ただ漠然と…

ボンモール王国領の外れにある田舎町レイクナバを出て、幾ばくも経過しないうちにモンスターに囲まれ、現在逃亡中のトルネコ。
そこで運命的な出会いをする事となる。

物語はそこから始まる………



(レイクナバ周辺)
トルネコSIDE

あぁ…いい加減使われる身が嫌になって、偶然購入出来た『破邪の剣』を頼りに旅立ってはみたが…
外の世界がこんなにも恐ろしいとは思いもよらなかった!
スライムなんてザコだと思っていたのに…
大軍で迫られると、その恐ろしさは尋常じゃない!

どうしよう…町に一旦帰りたいけど、ドンドン距離が離れて行く。
このままでは世界一の武器屋になるどころか、生き延びる事も危ういぞ!
戦闘経験のない四十(しじゅう)手前の中年に、夢を追う事は不可能だったのか!?

(ガサガサ!)「伏せてろ!」
夢を諦め死を受け入れようとしていた時、突如前方の茂みから小柄な人物が現れ私に指示を出した。
最早逆らう気力もなかった私は、素直に従いその場でしゃがみ身を縮める。

(ざしゅ!)(ぐしゃ!)
少しの間、何かが切り捨てられる音が響き、そして静寂が訪れる。
私は恐る恐る顔を上げ周囲を見渡す…

そこにはまだ幼い…息子のポポロ(10)よりも幼そうな美少女が一人佇んでいる。
どう見でも子供…しかし見た事もない剣を腰の鞘に収めながら、周囲を警戒しつつ私に近付いてくる…
本当に先程の敵をこの少女が倒したのだろうか?

「大丈夫?」
私の側で立ち止まり屈んで目線を合わせると、クールな表情で無事を確認する。
大人として、これはかなり恥ずかしい姿な気がしますね。

「だ、大丈夫ですよ。危ない所をありがとうございます! わ、私はこの近くのレイクナバという町に住む、世界一の武器屋を夢見るトルネコと申します」
私は恥ずかしさを吹き飛ばす為、素早く立ち上がり礼と自己紹介をする。

「私…リューラ………気を付けてね」
美少女騎士は自らを『リューラ』と名乗り、私の無事を確認すると踵を返し立ち去ろうとする。
何とも無口で恥ずかしがり屋な少女の様で、助けた私の無事を知るとそそくさと何処かに出発しようとする。

この少女は強い…少なくとも戦闘経験のない私などより遥に強い。
レイクナバから一番近い村まで、急いでも5日はかかる。
私一人ではこの危険な世界を旅する事は不可能…でもレイクナバに一緒に旅立てる人物など居ないだろう。

この少女は私にとってチャンスの女神なのかもしれない!
何とか彼女と一緒に世界を旅する事が出来れば…
兎も角ここで別れるのは惜しすぎる!

「あ、リューラさん! 危ない所を助けて頂いたお礼に、今夜は我が家でお食事でもどうですか? 妻のネネも息子のポポロも喜ぶと思うんですよ。このままでは危険な森の中で夜を明かさねばならない…一旦レイクナバに戻って、我が家で食事をしませんか?」

幼いとは言え相手は女性…
いきなり見ず知らずの男が“我が家で食事しよう”などと言っても、警戒されるだろう。
私には妻子が居て、家にはその二人も居る事をアピールすれば、私が危険な男でない事を理解してもらえる……と思う。

「………でも………私…お父さんを捜してる」
お父上を捜している……?
一体どういう事でしょうか? もっと詳しく聞いた方がいいですね!



「なるほど…気が付くと3日程前に、この森に落とされ迷っていたんですね!?」
話を聞けば凄い事になっていた。
何でも異時代より、姉妹の我が儘で巻き込まれこの世界に落とされてと言う。

しかもその際、共に巻き込まれたお父上達とはぐれてしまい、森の中を必至で探し回っていたらしい…
こんな幼い少女が、とんでもない試練を受けているのですね!?
しかし…私にとってもチャンスであろう。
ご家族を共に捜す為、一緒に世界を旅する口実が出来る!

だが今日は一旦レイクナバに戻り、暖かい食事とベッドで休息した方が良いだろう。
リューラさんも3日間この森を彷徨ったのだろうから、今日くらいは我が家で休んで、明日からご家族捜し&私の冒険を再開させよう。



(レイクナバ)

夕方になり、故郷レイクナバへ舞い戻った私は、早速家に帰り(ネネ)息子(ポポロ)にリューラさんに出会った経緯を話し、彼女を迎え入れる。
私の命の恩人という事で、ネネもポポロも快く迎え入れてくれた。

まだ出会って数時間だが、リューラさんは本当に寡黙だ…
ネネとポポロの歓迎にも、俯き顔を赤くして「ど、どうも…」と言うだけ。
う~ん…寡黙と言うより、恥ずかしがり屋さんなんだろうか?

ネネは早速彼女をお風呂へと誘う。
3日も森の中を彷徨っていたのだ…外見は幾分薄汚れている。
女の子は清潔な方が良いだろう。

しかし…ポポロが何時もより落ち着きがない。
少し観察していると、頻りにお風呂場を意識している。
なるほど…息子もやはり男なのだな。

リューラさんは美少女だ。
中年の私が口に出して言うと、何かと疑いを持たれるだろうが…
その手の趣味の人からしたら、これ以上ないくらいの美少女だ。

ポポロとも歳が近く、そんな美少女が我が家のお風呂を使用している…
これは落ち着けなくなるのは当然だな。
食事の用意をしているネネも気付いたらしく、私に目配せをして微笑む。

暫くしてお風呂からリューラさんが上がり、食事の用意が出来たテーブルに近付いてくる。
「あの…暖かいお風呂…ありがとう…ございます」
「いえいえ…私は命を救われたのですから…このくらいは何でもありません」

恥ずかしがり屋な彼女の気分を解す為、戯けた感じで言い席に着く様促した。
彼女の服装は、私が帰りがけに購入した衣類と、腰には室内にも拘わらず愛用と思われる剣が…
見た事もない不思議な剣…

「大切な剣なのですか? 家の中では外しておいても大丈夫ですよ。盗んだりはしませんから…とは言え、見た事のない剣ですねぇ。詳しく見せて頂いても良いでしょうか?」
職業病なのだろうか? 不思議な武器を見ると心が躍る感じがする。

「………どうぞ」
最初は戸惑いがちだったが、私の事を…いや、私と家族の事を信用してくれたのだろう。
腰から外し恐る恐る手渡してくれた…だが視線は鋭く、剣から外さない。

見れば見る程不思議な剣だ…
リューラさんの様な少女が使うのに打って付けの軽さ…
細身の刀身だがその鋭さはかなりの物。
グリップ部分は可愛らしく羽があしらわれている。

「この剣はどうされたんですか?」
剣を鞘に戻し、リューラさんにお返しする。
そして手に入れた経緯を教えてもらおうと問いかけた。

「お父さんが…」
「お父上が?」
「お父さんが…以前(まえ)にくれたの……お母さんと同じ騎士を目指してるから…」

「ほぅ…お母上は騎士殿ですか!? かなりお強いみたいですね。リューラさんの実力をみれば私でも判ります」
リューラさんは私の言葉を聞き嬉しそうに頷いた。
余程お母上の事を褒められたのが嬉しいのだろう…初めて笑顔を見せてもらえた。

「でもね…お父さんはもっと強いの! 強いし、優しいし、格好いいし、面白いし、凄い人なんだよ!」
どうやらご両親を慕っているみたいで、急に饒舌になり此処には居ないご両親を自慢し始めた。

「こ、このイヤリングもお父さんがプレゼントしてくれたし…」
そう言うとリューラさんは耳からエメラルドで出来たイヤリングを外し、私達に見せ自慢する。
うむ…武器ではないので詳しい事は解らないが、見た感じからして値打ちのありそうな代物だ…

「それにね、あの服…汚れちゃったけど洗濯してくれた洋服も、3日前の誕生日プレゼントでもらった服なのよ! 凄く可愛いでしょ! 私のお父さん、センスが良いのよ!」
あの服か…確かに可愛らしい服だが、それ以上に気になったのは、魔法への防御力が幾分ある事だ。

つまりあの服を着ていれば、普通の服を着ている時に受けるメラより、ダメージを落としてくれる効果があるのだ。
服もそうだが、イヤリングに剣と…どれも高価な物ばかり。

もしかしたら彼女は随分と裕福な家庭で育っているのかもしれない…
上手く仲良くなり、ご家族捜しを協力すれば、後々有益な事があるかも………
うむ…是が非でも彼女のお父上を捜さねば!

トルネコSIDE END



 
 

 
後書き
私の描くトルネコは、世界一の武器屋になると言う夢を持っていながら、至る所でリアリストになります。
リアリストというか、打算的というか…… 
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