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ハイスクールD×D 蒼き凶鳥

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原作前
第一章 大戦期
  第十二話

 
前書き
先週更新できなかったので今日は二話更新します。 

 
辺りを見回すがどこも同じような樹海にしか見えない。
空を見上げると月の光さえ見当たらず、星の明かりもない夜空。
時折バサバサと、大きな鳥のようななにかが飛び立っている。
しかし俺の周りには誰もおらず寂しさがつのる。
「つーか……一人いないのに部隊引き上げるって、どーなんだ?」




始まりは今日、司令部に入った一つの報告だった。
[前線にほど近い樹海(通称ジャブロー)に天使側の大軍がいる]と。
この樹海は前線のちょうど真横に位置しており、もし本当に天使側の大軍がいた場合、こちらは大打撃をうけることになる。
そのため司令部は報告の真偽を確かめるため、俺を含めた三十人ほどで樹海の調査をしたのだが……。
「天使の大軍なんてものは見当たらず、極めつけは俺を置いて調査隊は引き上げるし。はぁ~~、ついてない」
モビルスーツを使ってさっさとこの樹海から出たいところだが、この暗闇ではモビルスーツの出す微量の光さえ目立つため、もし敵がいた場合発見される可能性が高くなるため使えない。
とはいってもこの樹海には魔獣たちが多く生息しているので、俺は銃火器を装備している。




今装備している銃火器はすべてハルファス家本来の能力である武具創造で創られたものだ。
どうやら俺は魔剣などを創るより銃器を創るほうが向いているらしい。
そのため学院にいたときは、銃器を創造できるようになるためにかなり努力をした。
最初に創ったときはオモチャとしかいいようがないものが出来上がり挫折しかけたが、学院で過ごした六年の間に完璧に創りだせるまでになった。
「ん?」
視界の中のある木々の揺れに違和感を感じる。
風による揺れにしては少々大きい…。




俺は即座に近くの岩陰に隠れると、今さっき俺がいた場所に光の槍がささった。
(光の槍ってことは……、魔獣じゃなくて天使か)
スイスの新型SMGクリス・ヴェクターを構えながら周囲を警戒する。
するとさきほどの木々の中から天使と思われる影が出てきた。
(暗くてよくみえねぇな……。とりあえず仕掛けるか)
俺は岩陰から飛び出しクリス・ヴェクターの引き金を引く。
フルオートで放たれた45ACP弾に気づいた敵はすぐさま草陰に逃げ込む。
「逃がすか、よっと!!」
懐からSIG製1911キャリーナイトメアを草陰に撃ちこむ。
しかし、当たったようすは見られない。まぁ相手の姿が見えず、尚且つ片手撃ちで当たったら逆に奇跡だが。
岩陰に隠れながらナイトメアをリロードする、ヴェクターもリロードするか迷ったが一瞬とはいえ無防備になるのでやめた。
ガサガサと辺りの草や木が揺れる。
恐らくゆさぶりをかけてきているのだろう。
(あえて乗ってみるか、このゆさぶり)




岩陰から体を出し、周囲を見回す。
すると案の定俺の真後ろから天使が光の槍を構えて飛び出してきた。
即座に俺は振り返り天使の槍を持った右腕を左腕でつかみ、右手に持ったナイトメアのグリップで天使の顎を殴る。
後ろにのけぞった天使をそのまま押し倒し、顔面に銃口を突きつける。
そしてようやく相手の天使の顔を確認できた。
が、
「女!?」
どうやら今まで戦ってきた相手は女だったらしい。




とりあえず女天使の腕をロープで拘束し、近くの洞窟で夜を明かすことにした。
たき火の反対側で女天使が睨んでいるのでとりあえず睨み返している。
たき火のおかげで相手の顔が確認できるが、金の長髪にサファイアの瞳、全体的に整った顔立ちから可愛いというより綺麗、美少女というより美人といった感じだ。
…………………………………。
いい加減にらみ合いに飽きたので変顔をしてみた。
「ブッ!!」
あ、吹きだした。
「ア、アンタいったいどんな神経してんのよ。このタイミングで変顔はないでしょうよ」
「その変顔を見て吹きだしたお前に言われたくはない」
「そのことについては忘れなさい。今すぐに!!」
さっきのことはどうやら彼女の黒歴史に認定されたらしい。
「で、なんでお前はこんな樹海のど真ん中に一人でいたんだ?」
「それはアンタも一緒でしょうが。とりあえずアタシはこの樹海に悪魔の大軍がいるっていう情報があったから調査にきたのよ」
「ん? 俺もこの樹海に天使の大軍がいるって情報があったから調査にきたんだが……」
「…つまり」
「両方ともガセってことだな……」
「やっぱり。最初から怪しいと思ったのよ」
「あぁ~~、ついてない」
二人して一気にやる気がなくなってしまった。




「そういや、お前なんて名前なんだ?」
俺はクリス・ヴェクターを整備しながら質問する。
「なんでそんなこと聞くのよ?」
「いや、いつまでもお前じゃ失礼かと」
「両手拘束してる時点で失礼よ……」
「だってそれは危ないから」
「さっきからずっと武器いじってるアンタに言われたくないわ」
そう言って彼女は深いため息をつく。
「ペネムよ」
「なにが?」
「アタシの名前よ」
「了解ペネム。俺は鏡夜・N・ハルファスだ」
「ふーん、鏡夜・N・ハルファスねぇ。ん? 鏡夜・N・ハルファスってもしかしてガンダム?」
「知らないうちに敵味方関係なくそう呼ばれているが……。まぁ、そうだ」
「ついてない。とことんアタシついてない……」
なぜか凄くペネムが落ち込んでいる。




「いったいどうしたんだペネム? そんなに落ち込んで」
「こんなところでガンダムに出会って落ち込むなっていうほうが無理よ」
「失礼だな。そういえば今俺は天使側にどう思われているんだ?」
「えっ、曰く体力ゲージをゼロにするとパワーアップする。曰くどこに隠れても見つかる。曰く「ゴメン、もういい」えー。とりあえず一番最近だとエクスカリバーを折った化け物だけど、あれって本当なの?」
「……だって折れたんだもん。しょうがないじゃん」
エクスカリバーを折ったと報告したときは司令部にいた全員から生暖かい目でみられた。
あのときほど世の理不尽さを呪ったことはない……。




そのまま互いに機密を喋ることもなく、かといってすることもなかったのでグダグダと駄弁りつづけていたら夜が明けた。
「ほれ」
そういいながら俺はペネムの腕を拘束していたロープを切る。
「本当にいいの? アタシを逃がしちゃって」
「無用な殺生はしたくないからな。それともこれから戦う?」
ほんの少しペネムは考えるそぶりをしたが……。
「……やめておくわ。勝てる気しないし、命は大切にしないとね」
そう言い残し立ち去ろうとする。
「なぁ、ペネム。また会えるといいな」
俺がそう言うとペネムは振り返り。
「戦場で会うことだけは勘弁したいわね」
と、半ば呆れたような顔でそう答えた。
「確かに、それは同感」
俺もこうして一時とはいえ、長い時間過ごした彼女とはできれば戦いたくはなかった。
それに、彼女とはなぜか長い付き合いになる、なぜかそんな気がした……。
こうして二人はそれぞれ樹海を後にする。








ちなみにこの二人の再開はそう遠くない未来に訪れる。
 
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