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ソードアート・オンライン ~無刀の冒険者~

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SAO編
  epilogue 夢か現か幻か

 目が覚めたとき、俺の視界はあまりの眩しさにはっきりしなかった。
 ぼやけた世界の中でなんとか分かったのは、とにかく全体が白いということくらい。

 そう。俺は、目が覚めた。

 (……何が、起きたんだ…?)

 生きている。
 俺は、あそこで死んだんじゃないのか。

 思い出すのは、あの死闘の、最後の風景。キラリと光る、七色の宝玉を持つ指輪…《リヴァイブ・リング》。効果は、「五十パーセントの確率でHP五十パーセントの状態で蘇生する」というもの。まだはっきりとしない記憶の中で光る、虹の光。

 (……アレが、発動だったのか…?)

 それが発動したのだろうか。
 そして俺は、意識を失ったままここに連れてこられた…?

 (いや、それにしては……)

 この世界は、異質に過ぎる。だんだんと慣れてきた視界はやけに白い上に、その天井や床はタイルのように整っている。こんな部屋のある場所は、俺の知る限りどの層にも存在していない。その上俺は今なぜか全裸で、やたらと柔らかい…ジェルのようなベッドに寝ていた。

 あまりにも、「ソードアート・オンライン」らしくない。

 (ならば……ここは……)

 死んだ後の世界か?

 なるほどそれも考えられる。死んだ後の世界だと言うのならこのよくわからん…しいて言うなら、病院のような世界観も頷けるだろう。実際死んだことが初めてな以上、その世界が死後かどうかは確認できない。確認する手段がない以上、死後の世界だと断言も出来ないわけだが。

 「う……」

 声を上げようとしたところで、喉に鋭い痛み。

 (……喋れねえのかよ…)

 理屈は分からないが、声が出ないらしい。とりあえず起き上ろうとしたところで、腕と体がやたらと重たいことに気づく。おいおい、動きも出来ないじゃないか。とりあえず、感覚は有るから、ゆっくりと、少しずつ体を動かして、慣らしていく。

 肩、腕、肘、手首、指。
 感覚を確かめて、次に動かくべく、指に力を込めて。

 (ん……?)

 握った右手が、何かに触れた。

 それは細く、けれども温かく、そしてSAOの世界ではありえない、掌紋や指紋の感触を持っていた。どこか懐かしい、体温以上の暖かみを感じるその感触は。もう何年前になるのか思い出せないほどの昔、記憶の中にだけあるその感触は。

 「う……っ」
 「あ、あ……」

 痛む体を無視して、上体を持ち上げる。
 はたして、そこにいたのは。

 「ああ、ああっ…っ!!!」
 「かあ、さん…」

 俺の、母親だった。

 実に、二年ぶりとなる再会。少し、いやかなり痩せている。もともとは俺と姉弟に間違われていたくらい若づくりだったのに、一気に年を取ったように感じた。それは間違いなく、二年の歳月のせいだけでは無いだろう。

 「ああ……かった……よかった…っ!!!」

 その母親は、言葉もなく、ただただ涙を流して俺を見つめていた。左手で感極まったように口元を抑え、右手は俺の手を力強く握りしめる。俺は何か言うべきだったかもしれないが、呆然と見つめることしかできなかった。

 そして、急に動いて疲れたのか、一気に眠気が襲ってくる。

 眠りに落ちる、その直前。

 ―――SAOが、クリアされました! 患者たちが次々と目を覚ましています!…SAOが……

 よく分からない、誰かの声が聞こえた気がした。


 
 

 
後書き
 以上を持ちまして、ソードアート・オンライン~無刀の冒険者~のSAOクリアとなります。ここまで読んでいただき、またご意見、ご感想、ご評価なども多数お寄せいただいて、誠にありがとうございました。

 次回はエピソードごとの小話と、話別評価についてのお話の執筆後記を上げる予定です。
 皆さんはどのエピソード、どの話、どの一文・一セリフが一番良かったでしょうか? どうやらこの暁では話別評価の詳細やアクセス数などは投稿者のみ見れるようになっているようなのですが、見ていると非常に楽しいですね。いい機能です。

 ご意見、ご感想、ご評価、いずれもお待ちしておきます。
 繰り返しになりますが、ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。 
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