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ルサールカ

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第二幕その七


第二幕その七

「お爺さん」
「わしも信じられんが奇跡が起こったのじゃ」
 お爺さんは言う。
「本来ならば今ので王子は死んでおった」
「やはり」
「精霊の世界での裏切りは死、だからそうなる筈じゃったのだが」
「私のこの髪は」
「奇跡の証じゃよ」
 ルサールカにまた述べた。
「愛の奇跡じゃ。王子が助かっただけでなくルサールカはもう一度人になれた。そして」
 さらに言う。
「声もそのままなのじゃ」
「どうしてこんなことが・・・・・・」
「神の祝福なのかもな」
「神の・・・・・・」
 お爺さんの言葉に呆然としたように応える。
「左様、あくまで王子を想ったルサールカと死をも受け入れてルサールカのところへ来た王子への。神の祝福なのかもな」
「神が」
「私達を許して下さったのか」
「わしも長く生きたがこんなことははじめてじゃ」
 お爺さんは大きく息を吐き出して述べた。
「人と精霊の恋が実っただけでなく。奇跡まで起こるとは。だがこれは事実なのじゃ」
「王子様、私は今度は」
「ああ、今度こそそなたを離しはしない」
 二人は見詰め合って言い合う。
「ずっと一緒に」
「永遠に。同じ時を暮らそう」
「さあ、行くがいいルサールカよ」
「お爺さん・・・・・・」
「そなたはもう人じゃ。じゃがわし等のことは忘れないでくれよ
「はい・・・・・・」
 お爺さんの言葉にこくりと頷く。
「わかりました、ずっと」
「わしのこともな」
「お婆さん」
 お婆さんだけではなかった。姉や妹達も姿を現わす。
「こんなことはわしの魔法でもないことじゃ。こんなことがあるとはのう」
「ルサールカ、貴女は今奇跡を実らせたのよ」
「私達はそんな貴女の幸福を見られたのね」
「姉さん、そして妹達・・・・・・」
「ルサールカおめでとう!」
「何かよくわからないけれどその王子様とよりを戻したんだね」
「貴方達も」
 木の精達もそこにやって来てルサールカを祝う。
「皆祝福してくれるのね、私達を」
「そうじゃ。だから笑顔でお行き」
 お爺さんが皆を代表して声をかける。
「お城へ」
「けれどたまには思い出してね」
 姉や妹達も言う。
「私達のことも」
「わしのこともな」
 お婆さんも当然そこにいる。
「僕達もいるから」
「ここにいるからね」
「ええ、また来るわ」
 ルサールカは笑顔でそれに応える。
「その時はまた」
「私もよければ」
「勿論じゃよ」
 お爺さんは今は王子にも明るい顔を見せていた。
「二人はいつも一緒なのじゃから。無論」
「二人でどうぞ」
「待ってるよ」
 水の精達も木の精達も声をかける。
「宜しくね」
「ああこちらこそ。ではルサールカ」
「ええ、王子様」
 二人は手を取り合って見詰め合う。そして湖から離れていく。
「私達の出会いの湖よ、今はさようなら」
「そしてまた来るその日に再会の言葉を」
「待っておるからな」
 お爺さんがまた言った。
「ではな」
「その時また」
「ええ、また」
「会う日まで」
 二人と精霊達は別れた。そして王子とルサールカはそのまま城へと向かう。二人が永遠の愛を過ごす城へ。もう二人の間にわだかまりはなかった。愛が全てを消し去り、結びなおしていたのだから。愛は奇跡を起こし、全てに勝る。愛より尊いものはこの世にはないのだから。


ルサールカ   完


                   2006・9・9
 
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