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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―洗礼を受けし愚者―

 二年生の修学旅行も終わって、しばらく経ったデュエル・アカデミアの深夜――二名の男女が、今や名実ともにホワイト寮となったオベリスク・ブルー寮へと続く道に立っていた。

 一人はラー・イエローの一年で最強とも噂される生徒、ティラノ剣山。
もう一人は、このデュエル・アカデミアという専門校へと飛び級をしてきたという、実力を証明する実績を持った女子生徒、早乙女レイ。

 立場も学年も違う二人ではあるが、自分たちが慕う人物の二年生たちのグループに押しかけている者同士で、彼らは学年が違うためにセブンスターズや三幻魔などには関わっていない、という共通点もあるために、良き友人としての付き合いをしていた。

 その二人が何故、一般生徒にとってはデュエル・アカデミアでも有数の危険地帯となってしまっているこのホワイト寮の近くにいるかと言われれば、ある人を待っているからだった。

 そして、その二人の目的の人物が――待ち構えていたから当然だが――森の向こうから姿を現した。

「……遊矢様」

 ずっとここで待っていた、彼女らの目的の人物であり、彼女が慕う人物でもある者の『黒崎遊矢』が姿を現した。
だが、その身に纏っていた青の制服は純白に染まっており、自らの名前を呼んできたレイを一瞥したのみで歩みは止めない。
そしてレイは思う――いつもならば、『様は止めろ!』とやや照れた顔で返してくれるはずなのに、と。

 そう、レイは自分が慕う黒崎遊矢を光の結社から救いに来た……取り戻しに来たと言っても良い。
光の結社に洗脳されてしまい、無口な文字通りの操り人形になってしまった黒崎遊矢を助け、修学旅行に行ってしまう前の彼に戻すために、中等部の友人や彼の友人の忠告を振り切ってここに来たのだ。

「遊矢先輩……デュエルしてもらうドン!」

 ティラノ剣山はレイに誘われて来たわけではなく、オシリス・レッド寮から自身のラー・イエロー寮へと帰ろうとした際、夜にホワイト寮へと一人で向かおうとするレイを発見し、それを追いかけて来たことによる。
無論、一人で行くなんて危険だから止めろ、と止めたもののレイは言うことを聞かず、放ってはおけないので付いてきたのだった。

 もちろん剣山もただ巻き込まれたからここにいるわけではなく、ナポレオン教頭のホワイト寮を使ってのオシリス・レッド寮の取り壊しを拒んでいる兄貴分、遊城十代に変わって遊矢を助けるためにここにいる。
それに加えて、生来人が良い彼自身も遊矢を助けることを心から望んでいた。

「……良いだろう」

 まるで幽鬼のように喋る遊矢にはかつての快活さはまったく感じられず、光の結社、ひいては斎王の洗脳が万丈目や明日香以上に念入りにされていることの証明だろう。

 遊矢一人に対して剣山とレイは自然と二人ということになったものの、遊矢はただただ無言で特に何も言わず、剣山とレイは今までのデュエルの経験から対戦相手である遊矢との実力差を充分以上に理解していた。
さらに、遊矢のデッキは光の結社になったことによって、元々の《機械戦士》から斎王が支給しているレアカードを――レイはそう考えたくはないが――デッキに入れている可能性が高いため、さらに実力差は開いていると言っても差し支えないだろう。

 だが彼を助けるために、その遺憾ともしがたい実力差を埋める為に、汚いと文句を言われても二人でデュエルをする気だった……結果的には、人形のようになっている遊矢は文句一つ言わなかったが。

『『デュエル!』』

レイ&剣山LP8000
遊矢LP8000

「私のターン、ドロー!」

 一番の先攻を取ったのはレイ……彼女の一人称は『ボク』であるが、慕う人の――遊矢の前では一人称が『私』になるという癖を持っている。
無意識に『私』を使った彼女は、必ず助けるという意思の表れか。

「《ミスティック・ベビー・ドラゴン》を召喚!」

ATK1200
DEF800

 レイのデッキの切り札を呼ぶために必要な主力モンスター、ミスティック・ベビー・ドラゴン。
相手モンスターを戦闘破壊をトリガーとする効果にしては、その貧弱なステータスは致命的ではあるが、補う手段はいくらでもある。

「カードを一枚伏せて、ターン終了だよ!」

「……俺のターン、ドロー」

 もはや彼自身の代名詞ともなっていた『楽しんで勝たせてもらうぜ!』との台詞もなく、遊矢はカードを引く。
そんな遊矢にレイは怒りと寂しさを覚えるが、それは後にしてまずは初手に何が来るかを考える。

 大体の確率で、攻めの《マックス・ウォリアー》か守備の《ガントレット・ウォリアー》のため、自然とそのどちらかと考えたが……

「……俺はフィールド魔法《天空の聖域》を発動」

 レイと剣山、双方の予想を大幅に上回りながら夜のアカデミアを浸食していく、天使たちが住むう天上の聖域。
レイが知る限り遊矢が自分本来のデッキでフィールド魔法を使ったことはなく、また、彼のデッキの【機械戦士】に天使族サポートカードなど必要ない。

「遊矢先輩のデッキ、【機械戦士】じゃないザウルス……!?」

 その評価から【機械戦士】を好んで使う者はおらず、半ば遊矢の専用デッキという扱いも同然となっていたレイと剣山にとって、これは想定外の出来事であった。
特にレイは、【機械戦士】は彼にとって、デュエルモンスターズというゲームに触れてから今までずっと使ってきた相棒であることを知っていて、なおさら。

「……《コーリング・ノヴァ》を召喚」

コーリング・ノヴァ
ATK1400
DEF800

 《シャインエンジェル》と双璧を成すリクルーターの登場により、遊矢のデッキは【機械戦士】ではないという事実を認めざるを得ず、そして【天空の聖域】と呼ばれるデッキの可能性が高まった。

「バトル。《コーリング・ノヴァ》で《ミスティック・ベビー・ドラゴン》に攻撃」

「ダメージステップにリバースカード《突進》を発動! ミスティック・ベビー・ドラゴンの攻撃力を700ポイントアップさせるよ!」

 似たような役割を持っている速攻魔法《収縮》には利便性で劣っているものの、コンバットトリックとしては及第点の魔法カード《突進》によって、ミスティック・ベビー・ドラゴンはコーリング・ノヴァを返り討ちにした。

「コーリング・ノヴァの効果発動。《天空の聖域》が存在する時、《天空騎士 パーシアス》を特殊召喚する」

 あまり活用されることは少ないものの、リクルーターからアタッカークラスの攻撃力と優秀な効果を持つ《天空騎士 パーシアス》が特殊召喚されるというのは、やられる側としてはたまったものではない。
だが、レイの使用した《突進》の効力はエンドフェイズまでであるため、天空騎士 パーシアスには突破は不可能であり、コーリング・ノヴァを戦闘破壊した為に、エンドフェイズに《ミスティック・ドラゴン》へと進化する。

 ……と、ここまではレイの予想通りであった。

「速攻魔法《月の書》を発動。ミスティック・ベビー・ドラゴンを裏側守備表示にし、天空騎士 パーシアスで攻撃」

 ミスティック・ベビー・ドラゴンの前で開かれた《月の書》によって、いくら攻撃力が上がっても意味がない裏側守備表示とされてしまう。
加えて、天空騎士 パーシアスにはその状態を十全に活かす貫通効果がある。

レイ&剣山LP8000→6900

「パーシアスが戦闘ダメージを与えた時、一枚ドロー……ターン終了」

「俺のターン、ドローザウルス!」

 レイのデッキが《恋する乙女》や《ミスティック・ドラゴン》によるコントロールデッキならば、剣山は恐竜族をメインに使った真正の【ハイビート】。
その持ち味は、恐竜族の強力なパワーを相手に叩きつけるという、単純明解にして有効な戦術だ。

「俺は《ダイナ・ベース》を召喚するドン!」

ダイナ・ベース
ATK0
DEF2000

 しかし、剣山が召喚したのはその前評判とは対局に位置するような壁モンスター、しかも機械族である。
だがそれも、彼の主力モンスターである恐竜のサポートカードであるためだ。

「《ダイナ・ベース》は、このカードと手札の恐竜さんをリリースすることで、エクストラデッキから《ダイナ・タンク》を《融合》のカード無しで融合召喚出来るドン! 《ダイナ・ベース》と《究極恐獣》をリリースし、現れるザウルス、《ダイナ・タンク》!」

ダイナ・タンク
ATK?
DEF?

 《融合》の魔法カードを使わないという点では、ユニオンやコンタクト融合に近いだろうが、《ダイナ・ベース》の効果は手札から融合素材を選べるという点で前述の二種より遥かに利便性は上である。

 手札から現れた《究極恐獣》が、フィールドにいた《ダイナ・ベース》をその名の通り戦車のように扱ってフィールドに現れた。

「ダイナ・タンクの攻撃力・守備力は、融合召喚に使用したモンスターの合計ザウルス!」

 よって攻撃力は最上級モンスターをほぼ一方的に破壊出来る3000という数値、守備力に至っては4200という桁違いの数値にまで到達する。
融合素材の《究極恐獣》、の全体攻撃という効果は無くなってしまったものの、新たに《ダイナ・タンク》固有の能力を得ている。

「バトルザウルス! ダイナ・タンクで天空騎士 パーシアスに攻撃!」

 ただでさえ巨大だった究極恐獣に、戦車まで加わったその質量は圧倒的であり、特に何らかの攻撃を仕掛けずとも、近づいただけで攻撃となり天空騎士 パーシアスを破壊してしまう。

 だがその戦闘ダメージは、恐竜には触れられない聖域に住む遊矢には届かない。

「《天空の聖域》は天使族モンスターの戦闘ダメージを無効にする」

 攻撃した剣山とてそれは承知しているために、ただただ恐竜族のフィールド魔法《ジュラシック・ワールド》を引くことを願った。

「カードを二枚伏せて、ターンエンドザウルス」

「俺のターン。ドロー」

 剣山とレイのフィールドに攻撃力3000というステータスのモンスターがいるにも関わらず、特に焦りもせずにカードを引く……その表情に、ワクワクしているような感情は読み取れない。

「俺は魔法カード《光神化》を発動。ステータスを半分にして《天空騎士 パーシアス》を特殊召喚」

 手札から上級モンスターだろうと最上級モンスターだろうと、天使族であるならば特殊召喚出来る魔法カード《光神化》。
その優秀な効果に比例してデメリットは重く、攻撃力・守備力のステータスを半分にし、エンドフェイズ時に破壊されてしまう。
だが、そのデメリット効果を活かした、あるカードとのコンボカードであった。

「速攻魔法《地獄の暴走召喚》。デッキ・墓地から更に二体《天空騎士 パーシアス》を特殊召喚する」

 魔法カード《光神化》によって天空騎士 パーシアスの攻撃力は、僅か950程度……つまり、攻撃力1500以下を対象とした《地獄の暴走召喚》の対象内となる。


「くっ……ダイナ・タンクは融合モンスターだから何も特殊召喚出来ないドン……」

 先のターンでダイナ・タンクに破壊されたパーシアスも含め、計三体の上級モンスターを特殊召喚しつつ、相手には特殊召喚させないという最高のタイミングの《地獄の暴走召喚》だった。

 しかし、いくら展開しようとも攻撃力は1900、3000たるダイナ・タンクには適わない。
故に、魔法カードによる戦闘サポートカードの介入があるだろうが、その点については剣山は苦慮していなかった。

 剣山のフィールドにいるダイナ・タンクは、対象をとる魔法・罠カードの対象を相手に移すという特殊な効果を持っており、レイとのバトルフェイズに使われた《月の書》等を使われても、相手に対象を移し替えることが出来るのだ。
もちろん、ダイナ・タンクへと対象をとる効果ではないといけないので、《団結の力》や《ライトニング・ボルテックス》が来たら手も足も出ないわけだが。

「俺はステータスが半分になった《天空騎士 パーシアス》をリリースすることで、《天空勇士 ネオパーシアス》を召喚」

天空勇士 ネオパーシアス
ATK2300
DEF2000

 しかして遊矢が出したのは魔法カードではなく、天空騎士 パーシアスの更に強化された姿の一つであった。

「天空勇士 ネオパーシアスの効果。《天空の聖域》があってこちらのライフポイントが上の時、相手のライフポイントとの差分だけ攻撃力がアップする」

 遊矢のライフポイントは《天空の聖域》のおかげで初期値の8000であり、レイと剣山のライフは貫通ダメージを受けたために6900……つまり、天空勇士 ネオパーシアスの攻撃力は1100ポイントアップし、合計3400ポイントとなる。

 この、全てが遊矢の思い通りに進んだような展開に、剣山は戦慄する――遊矢先輩は本気だ――と。

「バトル。天空勇士 ネオパーシアスでダイナ・タンクに攻撃」

 いくら珍しい効果を持っていようが発動しなければどうということはなく、自慢の攻撃力をあっさりと乗り越えられて、ダイナ・タンクは破壊されてしまった

レイ&剣山LP6900→6500

「天空勇士 ネオパーシアスの効果。戦闘ダメージを与えたため一枚ドロー。更に一体目の天空騎士 パーシアスでダイレクトアタック」

レイ&剣山LP6500→4600

「天空騎士 パーシアスが戦闘ダメージを与えたため、一枚ドロー。そして、二体目の天空騎士 パーシアスでダイレクトアタック」

「くっ……流石に遊矢先輩だドン……」

レイ&剣山LP4600→2700

「戦闘ダメージを与えたため、一枚ドロー。カードを二枚伏せてターンを終了する」

「……私のターン、ドロー!」

 もはやライフポイントも5000以上の数値が離れ、《天空勇士 ネオパーシアス》がその効果によって攻撃力7600の貫通効果持ち、という恐るべきモンスターとなっている。それに加えて、パーシアスの一枚ドローする効果によって手札もフィールドも潤沢であった。

 それでもレイは諦めず、遊矢を助けるという一心から気合いを込めてカードをドローした。

「《死者蘇生》を発動! 墓地から《ミスティック・ベビー・ドラゴン》を特殊召喚するよ!」

 万能蘇生カードによる主力モンスターの蘇生の後、気合いと共にドローしたカード、自身の切り札を呼び込む魔法《ミスティック・レボリューション》を、そのままデュエルディスクに差し込んだ。

 否、その気合いが報われることはなかった。

「リバースカード《裁きの光》を発動。手札の光属性モンスターを一枚捨てることで、《ミスティック・ベビー・ドラゴン》を破壊する」

 《天空の聖域》から光が放たれ、ミスティック・ベビー・ドラゴンの直上から降り注いでいく、まさに《裁きの光》であった。
様々な発動条件はあるものの、二つの有効な効果を選択して発動出来る罠に、切り札の《ミスティック・ドラゴン》の召喚は見送られることとなった。

「うぅ……《フォトン・サークラー》を守備表示で召喚……」

フォトン・サークラー
ATK1000
DEF1000

 光の魔術師が守備表示で召喚されるが、所詮は《恋する乙女》の効果のサポートに投入しているカードでは、この守備表示にしても意味がないこの状況ではあまりにも頼りない。

「カードを二枚伏せ、ターンエンド……」

「俺のターン。ドロー」

 圧倒的有利のこの状況にニコリと微笑みもせずにカードを引く遊矢には、やはり余裕とか自信とかそういう感情は感じさせなかった。

「チューナーモンスター《トラスト・ガーディアン》を召喚」

トラスト・ガーディアン
ATK0
DEF800

 羽根の生えた小さないかにもピクシーといった外見のモンスターが天空騎士 パーシアスの肩に降り立ち、クルリとその場で回ってみせる。
そして『チューナーモンスター』というその言葉に、今現在ターンを任されているレイは気を引き締める。

「レベル5、《天空騎士 パーシアス》とレベル3、《トラスト・ガーディアン》をチューニング」

 トラスト・ガーディアンが肩から飛び、今度は天空騎士 パーシアスの身体を包むように回転し……そのまま三つの光の輪と五つの光となった。

「神聖なる復讐の決闘、その天幕が今墜ちる。シンクロ召喚、光の騎士《神聖騎士 パーシアス》」

神聖騎士 パーシアス
ATK2600
DEF2100

 これで三種のパーシアスが遊矢のフィールドに揃い、後はパーシアスの種類で揃っていないのが《ダーク・パーシアス》だけとなるが、遊矢のデッキタイプを見る限り入っていないだろう。

「バトル。天空騎士 パーシアスで、フォトン・サークラーに攻撃」

 三種類のパーシアスが揃って剣を構え、まずは一番攻撃力の低い天空騎士 パーシアスが光の魔術師に切りかかった。

「かかった! 《マジックアーム・シールド》!」

 《ミスティック・ドラゴン》召喚の失敗によるさっきまでの元気の無さはどこへやら、ペロリと舌を出して相手を罠にはめることを可愛げに示す。

「マジックアーム・シールドの効果で、遊矢様の《天空勇士 ネオパーシアス》のコントロールを奪うよ!」 

 フォトン・サークラーに装備されたシールドからマジックアームが飛び出し、ネオパーシアスを捕まえて攻撃してきた天空騎士 パーシアスの前に出した。
その後、ネオパーシアスの腕にまでマジックアームは伸び、その手に持った剣を振るわせて天空騎士 パーシアスを破壊した。

「更に速攻魔法《神秘の中華鍋》を発動して、《天空勇士 ネオパーシアス》の攻撃力分ライフを回復するよ!」

 彼女曰わく、恋する乙女の罠は常に二重。
マジックアームに捕らわれた天空勇士 ネオパーシアスは神秘の中華鍋から逃れられず、そのまま美味しくレイのコンボに料理されることとなった。

レイ&剣山LP2700→5000

 惜しむらくは、未だにフィールドに残り続けている《天空の聖域》の効果によって、遊矢にはダメージが通らなかったことであろうか。

「神聖騎士 パーシアスでフォトン・サークラーに攻撃」

 バトルの前には三体いたパーシアスシリーズも、予想だにしていなかった残り一体だったが、これ以上を望むのは恋する乙女としては高望み。
レイとフォトン・サークラーは、その神聖騎士 パーシアスの剣を甘んじて受け入れた。

「フォトン・サークラーは戦闘ダメージを半分にするよ!」

レイ&剣山LP5000→4200

「メインフェイズ2、《死者蘇生》を発動して《天空勇士 ネオパーシアス》を特殊召喚。ターンエンド」

「俺のターン、ドローザウルス!」

 万能蘇生カード《死者蘇生》によって《天空勇士 ネオパーシアス》は蘇生されてしまったものの、レイが最悪の流れを切って剣山のターンに繋げてくれたのだ。
ここで自分と自分の恐竜が、どうにかしてあのパーシアス二体を倒さなければ、と剣山は考えたのだった。

「《トレード・イン》を発ドンし、《竜脚獣ブラキオン》を捨てて二枚ドローするザウルス……良し、《キラーザウルス》を捨てて《ジュラシックワールド》を手札に加えてそのまま発動するドン!」

 遊矢のフィールドに展開していた天使たちの飛ぶ聖域が崩れていき、人間がまだ生まれていなかった古代まで時代が遡っていった。
《ジュラシックワールド》というその名の通り、そこに広がっているのは見渡す限りの恐竜たちの世界だった。

「更に《究極進化薬》を発ドン! 墓地から機械族モンスターと恐竜族モンスターを1体ずつゲームから除外することで、デッキから光属性の恐竜さんを特殊召喚出来るドン! 墓地から《ダイナ・タンク》と《ダイナ・ベース》を除外し、デッキから《超伝導恐獣》を特殊召喚するザウルス!」

超伝導恐獣
ATK3300
DEF1400

 《ダイナ・ベース》と《ダイナ・タンク》はただの融合モンスターではなく、この機械と恐竜が合体したかのような《超伝導恐獣》を特殊召喚するためのカード、《究極進化薬》の発動キーでもあったのだ。
それに、剣山の進化薬によるコンボの連鎖はまだまだ終わらない。

「ダメ押しザウルス! 《ディノインフィニティ》を召喚するドン!」

ディノインフィニティ
ATK?
DEF0

 インフィニティの名前が示すように、無限にも等しい力を秘めたティラノサウルスが召喚される……恐ろしいのは、その爆発力抜群の効果に反してレベルはたった4という、下級モンスターであるところか。

「ディノインフィニティは、除外されている恐竜さんの数×1000ポイントの攻撃力だドン! 更にリバースカード《生存本能》を発動! 墓地の恐竜さんを全部除外して、その数×400ポイントのライフを回復するザウルス!」

 もはやライフポイントを回復する効果などおまけに過ぎず、《生存本能》は《ディノインフィニティ》の攻撃力を更に引き上げる撒き餌のような物だ。
除外された恐竜は《究極恐獣》を始めとする三体のため、レイと剣山のライフポイントは1200ポイント回復し、ディノインフィニティの攻撃力は《究極進化薬》の時に除外された恐竜を含め、攻撃力は4000というハイパワーとなった。

レイ&剣山LP4200→5400

 《究極進化薬》から連なる剣山の魔法カードによるコンボは、ここが終着点ということとなる。
《ダイナ・ベース》で《ダイナ・タンク》を融合召喚しつつ墓地に機械族と恐竜族を墓地に送り、《究極進化薬》と《生存本能》で除外とライフ回復とデッキからの《超伝導恐獣》の特殊召喚をこなし、ハイパワーの《ディノインフィニティ》を召喚し、フィールド魔法《ジュラシックワールド》でサポートする――という。

 デッキの理想的な回り方の一つとして考えられていたが、剣山自身ここまで上手く回ったことはなく、遊矢を救いたい気持ちが、自身と自身の恐竜さんに力を貸してくれていると信じてやまなかった。

「バトルザウルス! ディノインフィニティで天空勇士 ネオパーシアスに攻撃! インフィニティ・ファング!」

 もはや遊矢のフィールドに《天空の聖域》は無いため、《天空勇士 ネオパーシアス》のライフの差分攻撃力を上げる効果もおらず、戦闘ダメージもルール通りに適応される。

「リバースカードオープン。《攻撃の無力化》を発動」

 だがその絶好のロケーションや高攻撃力も、攻撃力が届けばの話――いや、ディノインフィニティの攻撃は《攻撃の無力化》により発生した時空の穴に吸い込まれていく筈なのだが、ディノインフィニティは止まる素振りを見せなかった。

「カウンタートラップ《ジュラシックハート》を発ドン! 恐竜さんを対象にした相手のトラップを無効にして破壊するザウルス!」

 《攻撃の無力化》によって現れたはずの時空の穴は、ディノインフィニティがその強靭な爪で天空勇士 ネオパーシアスごと切り裂いてまるで意味を為さなかった。
そして切り裂かれた天空勇士 ネオパーシアスにはもう《天空の聖域》の加護はなく、そのまま何の抵抗も出来ずに破壊された。

遊矢LP8000→6300

「更に、超伝導恐獣で神聖騎士 パーシアスに攻撃だドン!」

 超伝導恐獣の機械部分からレールガンが放たれ、神聖騎士 パーシアスの胸を貫いた……だが、そのままボロボロになっても破壊される気配はない。

「トラスト・ガーディアンがシンクロ素材となったモンスターは、攻撃力・守備力が400ポイントずつ下がる代わりに一ターンに一度戦闘では破壊されない」

 破壊される前に半透明の《トラスト・ガーディアン》が神聖騎士 パーシアスを守り、超伝導恐獣のレールガンで空いた穴を無理やり塞いだ。

「だけど、戦闘ダメージは受けてもらうザウルス!」

 神聖騎士 パーシアスの胸をそのまま貫通したレールガンは、威力は減じたものの遊矢に届き、《天空の聖域》の加護がない遊矢はそのままダメージを受けた。

遊矢LP6300→5600

「これでターンエンドだドン!」

「俺のターン。ドロー」

 剣山による、自身の手札もリバースカードも全て使い切ったラッシュにより、今までノーダメージを誇っていた遊矢もダメージを受け、レイと剣山双方のライフを回復するリバースカードもあってライフポイントはほぼ並ぶ。
だが、ボード・アドバンテージは圧倒的に《ディノインフィニティ》と《超伝導恐獣》、《ジュラシックワールド》を展開したレイ&剣山のタッグだった。

「《貪欲な壷》を発動。墓地から五枚のモンスターをデッキに戻し、二枚ドロー。……《天空の聖域》を発動」

 先程剣山の《ジュラシックワールド》に上書きされて沈没していた《天空の聖域》が、再び《ジュラシックワールド》を押し上げて出現し、そこから放った神々しい光によって《ジュラシックワールド》を破壊していく。

「ああ……恐竜さんたちの世界が破壊されるドン……」

 ソリッドビジョンとはいえ、自身が愛する恐竜たちが暮らす世界が破壊されていくのが悲しく、ついつい剣山は嫌な声を出した。

「《ゼラの戦士》を召喚してリリース。《大天使ゼラート》を特殊召喚する」

大天使ゼラート
ATK2800
DEF2300

 《天空の聖域》を目指し旅をしていた《ゼラの戦士》が悪魔の誘惑を振り切って遂に到着し、天使たちの洗礼を受けて最高位の天使である《大天使ゼラート》となって、その新しく生えた翼をはためかせ昔からの剣を振りかぶって特殊召喚された。

「大天使ゼラートの効果発動。光属性モンスターを墓地に送ることで、相手モンスターを全て破壊する。聖なる光芒」

 そのやや難しい特殊召喚条件に見合って、光属性モンスターを一枚捨てるだけで禁止カードである《サンダー・ボルト》を使うことの出来る強力な効果。
大天使ゼラートが持っている剣を恐竜たちに振りかざすと、《天空の聖域》から今までに無いほど強力な、しかも神々しい光が放たれ、剣山のフィールドの《ディノインフィニティ》と《超伝導恐獣》はその光に耐えられずに破壊された。
いかに高攻撃力の強力なモンスターであろうと、効果破壊に耐性がない以上、この運命は変わるはずもない。

「恐竜さんが……全滅だドン……」

「バトル。神聖騎士 パーシアスでダイレクトアタック」

 シンクロ素材となった《トラスト・ガーディアン》のおかげで、攻撃力・守備力は減じているものの戦闘破壊耐性を得、先程のターンの恐竜たちのラッシュを耐えきった神聖騎士 パーシアスが、その時の恨みというわけではないだろうが、剣戟によって剣山にダイレクトアタックを加えた。

レイ&剣山LP5400→3200

「更に《大天使ゼラート》でダイレクトアタック。聖なる波動」

「ぐあああっ!」

 剣山の恐竜たちを全て効果破壊した時とは違い、《天空の聖域》からではなく自身から白い光を照らして剣山にダイレクトアタックを加え、レイと剣山のライフを僅か400ポイントにまで減じさせた。

レイ&剣山LP3200→400

「ターンエンド」

「私のターン……ドロー! 《天使の施し》を発動して三枚ドローして二枚捨てる!」

 相手が天使族デッキである時に、《天使の施し》を使うことになるとはなんとも皮肉な話ではあるが、この状況を鑑みれば施しを受けてもお釣りが来るぐらいである。

「私は……《恋する乙女》を召喚!」

恋する乙女
ATK400
DEF300

 この最悪の状況に満を持して召喚されたのは、あまりにも扱いにくいコントロール奪取コンボの起点となるレイのフェイバリットカードである《恋する乙女》であった。

「このカードは私自身……遊矢様と初めて一緒に組んだデッキのフェイバリットカード……思いだしてよっ……!」

 《恋する乙女》の召喚によって、心の内に忍ばせておいた思いが止まらなくなり、彼女なりに涙ながらに訴えるものの、遊矢は眉を少しひそめたがやはり万能を返さない。
そんな遊矢の反応に、今は泣いている時じゃないと考え直したレイは、デュエルで彼を救うためにターンを再開した。

「恋する乙女で大天使ゼラートに攻撃! 秘めたる思い!」

 当然、デュエルで負けそうだからといって自殺行為に走るレイではなく、発動するのはやはり光属性かつ打点が低めなレイには欠かせないサポートカードの出番であった。

「ダメージステップに《オネスト》を発動して、《恋する乙女》の攻撃力を《大天使ゼラート》の攻撃力分アップさせるよ!」

 光属性の戦闘に関する必須カード《オネスト》の力を借りて、恋する乙女の背中に天使の羽根が生え、大天使ゼラートを戦闘破壊した――レイにとっては、斎王の支配から遊矢を解き放つ意味も込めての戦闘破壊だったのだが、その自身が使用したカード《オネスト》こそが、遊矢が敗北した要因の一つだとは、その場にいなかった彼女には知る由もない。

「メインフェイズ2、《進化する人類》と《キューピッド・キス》を装備してターンエンド!」

 ひとまず《大天使ゼラート》による《サンダー・ボルト》の危険は封じ込め、《進化する人類》によって《恋する乙女》は《神聖騎士 パーシアス》の攻撃力を超える……今のレイの手札では、ここまですることが限界だった。

「バトル。《神聖騎士 パーシアス》の効果を使用し、《恋する乙女》の表示形式を変更する」

 だがそんなレイの奮闘も空しく、遊矢は無慈悲に《神聖騎士 パーシアス》の効果によって、《進化する人類》のステータスの上昇が関係ない表示形式である守備表示へと変更する。

 ――そしてもちろん、《神聖騎士 パーシアス》にはパーシアスシリーズ共通の貫通効果がある。

「神聖騎士 パーシアスで恋する乙女を攻撃する」

「……っ、きゃあああっ!」

レイ&剣山LP400→0

 完敗。

 このデュエルを終えての状況はその言葉が一番相応しく、レイと剣山の二人がかりのデュエルの結果は《マジックアーム・シールド》や《ディノインフィニティ》によって一矢報いたものの、まさしく完敗と言って差し支えなく、遊矢を救えぬ悲しみからレイは大地に膝をついた。

 当の遊矢は勝利の余韻に浸ることもなく、敗者に言葉をかけることもなく、ただデュエルディスクをコンパクトに収納すると、涙を流して放心状態のレイの横を通り抜けてホワイト寮へと向かっていった。

「……レイちゃん、大丈夫ザウルス!?」

 一足先に完敗のショックから立ち直った剣山が、未だに放心状態となっているタッグパートナー、レイへと駆け寄った。
今の遊矢は正真正銘光の結社の一員であり、光の結社に敗北したものは、ほぼすべからく構成員へと洗脳されてしまっている。

 ティラノ剣山本人は、身体に恐竜の骨が埋まっている影響からか、光の結社の洗脳を受けつけないのは、先日に行われた斎王とのデュエルで証明済みだ。
だが、レイを光の結社にしてしまっては、自分がついてきて一緒にデュエルをした意味もないし、何より遊矢に申し訳がたたない。

「うん、大丈夫。ありがと、剣山くん!」

 放心状態はどこ吹く風、と言った感じで急に明るくなり、剣山の手を借りて立ち上がったレイの手には、一枚のカードが握られていた。

 剣山の見たところ、光の結社には洗脳されていないようだ。

「ボクたちじゃ遊矢様には適わなかったけど、一つ分かったことがあったよ」

 レイが手に持ったカードを剣山にも掲げて見せる……そのカードとは、黒崎遊矢のマイフェイバリットカードたる《スピード・ウォリアー》。
先程、遊矢がレイの横を通り抜けてホワイト寮へと行く時に渡されたカードで、クリップで『すまない』と遊矢の筆跡で書かれたメモが一緒に付いていた。

「遊矢様はまだ、ここにいるよ」

 《スピード・ウォリアー》とメモを託し、敗者であるレイを光の結社にしなかった……これを、レイは遊矢がまだ光の結社に染まりきっておらず、抵抗しているのだと考えた。

 しかし、自分の力量では遊矢を救えないことが分かった彼女は、遊矢を救うことを剣山と共にお願いに行くことにした。

 彼の親友、三沢大地の元へ――
 
 

 
後書き
白遊矢vsレイ&剣山ペアのデュエルでした。

……どっかのずっと出番なしメインヒロインより、レイの方がよっぽどヒロインしててヤバいヤバい。


どっかのメインヒロイン再登場の時、メインヒロインに出来るか心配ですね。

では、感想・アドバイス待っています。 
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