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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第6章 勇者の旅立ち
  第44話 そして、温泉へ・・・

「誰が、二番目に入りますか?」
「セレンさん、どうぞ」
「タンタルさんこそ、どうぞ」
「テルルはどうなのだ」
「最後でいいです」
誰が2番目に入るかで、3人がもめていた。

ちなみに最初は俺で決定らしい。
みんなに理由をたずねると、
「アーベルさん、ですからね」
「さすがです」
「リーダー、がんばって」
まあ、日が暮れる前に決めて欲しいものだ。

結局、じゃんけんで順番が決まったようだ。
この世界にも、じゃんけんがあったらしい。
自慢ではないが、俺はじゃんけんが強い方だ。
とはいえ、今回は見せ場がない。

最初が俺と決まっているからだ。
「何回言っても、変わりませんよ」
「まあ、わかってはいたけどね」
俺はため息をつくと皆に話しかける。

「じゃあ、最初に俺、次にテルル、3番目にセレンで最後はタンタルだな」
俺は順番を確認してから、ジパングで発見した洞窟内にある、井戸のようなところに向かった。
「行ってくる」
「気をつけてね」
皆の応援を受けて、俺は中に飛び込んだ。

下の世界に繋がっているかどうかを確認するため、最初に俺が潜り込んだ。
万一、落下の衝撃が強いようなら、浮遊呪文トベルーラで体を浮かせる事が出来るし、いざとなれば帰還呪文リレミトで入り口まで戻ることが出来る。

やっぱり、呪文は便利だね。

と、いいながら、しばらく自由落下に任せていると、トベルーラを使わなくても落下速度が上昇しなかった。
「物理法則がおかしいのか、それとも特殊な魔法効果がかかっているのか」
理由はよくわからないが、今のところトベルーラは必要ないようだ。

念のため、いつでもトベルーラを唱えることができるように準備はしているが。
ちなみに、俺の技量では複数同時に別の呪文は唱えられないので、暗闇を照らすためにまどうしの杖を利用していた。

「ガスが発生していたら大惨事だな」
小さいながらも火の玉を発生するので、非常に危険である。
杖を改造する技術があれば、杖に込められている呪文をメラからイオ(観賞用)に変更したのだが。
「平和になったら、研究するか」
独り言をつぶやきながら、降りてゆく。

やがて、下から広い世界が広がった。
「すげえ!」
俺は思わず叫んでいた。
上の世界でもトベルーラで上空を飛んだことはあったが、ここまでの高度で上空を飛んだのは初めてだった。
下の世界、アレフガルドと呼ばれている世界が一望できる。

光の位置で、あちこちにある町の位置を確認する。
そして、眼下にも一つの村を発見した。
「予想通り、マイラの村かな」
俺はゆったりとした落下速度に身を任せながら、マイラの北にそびえる山に着地した。


「無事に着きましたね」
「ああ、そうだね」
「無事じゃない!」
「テルル、大丈夫」
全員無事に着地したはずなのだが、テルルは不満顔だった。
「何か、問題でも?」
「見たでしょう、アーベル!」
「見ましたが、何か問題でも」

「堂々といいますか」
テルルは怒っていた。
「嘘を言っても仕方ありませんから」
俺は首をすくめた。

「それにしても、すばらしかったですね」
俺は正直に感想を述べる。
「へ、変なこといわないでよ」
テルルは顔を赤くして文句を言う。
「ひょっとして、最初から知っていて、黙っていたのでしょう」
俺はテルルに反論する。
「ある程度は、予測していましたが、それでもここまで夜景が美しいとはおもいませんでした。欲を言えば星の輝きが見たかったのですが」
「・・・」
急にテルルは押し黙る。

「どうした、テルル?」
「なんでもない」
テルルは顔を背けると、光の方向へ歩き出す。
「さあ、さっさと行くわよ!」
「はい」
「了解です」
「はいはい」
俺達は、テルルの後についていった。

さすがの俺も、テルルが俺に下着を見られたことを気にしていることぐらい、わかっていた。
俺もテルルと同じみかわしの服を着ているから、同じ経験をしていた。
俺の場合、ズボンを穿いており問題はなかったが。
下着を見たからといって、口に出すほどやぼではない。
俺はそう思っていた。
村に到着するまでは。



俺達は武器と防具の店で買い物を済ませると温泉に向かっていた。
ちなみにここで購入したのは、セレン用の「みかがみの盾」と俺用の「水のはごろも」だった。
「・・・。似合わん」
「我慢しなさい」
「似合っていると思うよ」
「そうかい」
俺は、防御力の高さから服を選んだのだが、どうもしっくりこない。
早急に装備品を見直す必要があるな。



「露天風呂しかないのか?」
「はい」
案内係の村娘は笑顔で答える。
露天風呂は、町の中央にある。
入浴すると、目立つな。

「アーベル、我慢しなさい」
「テルルも入るのか」
「入りません!」
まあ、そうだよな。
「セレンは入るのか」
冗談で聞いてみた。
「水着で良ければ、入ります」
水着で温泉か。
マナーとしてはどうだろうか。
この世界の事はよくわからないが。

「大丈夫です、セレンさん。案内係の人から許可をもらいました」
タンタルは上機嫌に答える。
対応がはやすぎるぞ、タンタル。
せっかくなので、俺は露天風呂に入った。
もちろん、1人で。
セレンはどうしたのか?ですか。
この世界で水着を持ち歩く冒険者など、俺は聞いたことがない。



俺だけが、温泉につかり、残りは宿屋で体を拭いたあと、全員で夕食をとっていた。
「この服は、スースーするな」
俺は、水のはごろもの裾をひらひらさせながらため息をつく。
「じきに慣れますよ」
セレンが慰めるが、俺は不満を漏らす。
「なれるかなぁ。この服にズボンははけないから、テルルみたいに・・・」
温泉につかって、リラックスしたためか、余計な一言を言ってしまった。
「アーベル、朝になるまで説教よ」
「・・・」

テルルさん。大魔王を倒すまで朝は来ません。
俺はなんとか、口に出すことを我慢した。 
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