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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第34話 新生ロマリア王国

「どうしても、反対なのかね」
俺は、再度みんなに確認する。

俺たちは、円卓のテーブルに座っている。
俺たちがいつも会議を行う場所である。
そして、いつものメンバーが集まっていた。

俺が都市解放計画を成功させてから、メンバー達の俺への態度は完璧に変わっていた。
積極的に俺の考えに賛意を示すようになっていた。
だが、俺の提案に対して反対した内容が2つある。

一つめは、解放した都市ウエイイの名前をそのままにする提案だ。
外務大臣のレグルスが、王の功績をたたえてアーベリアに変更すると言い出したからだ。
「アーベリサンドリアのほうがよろしかったのですか?」
「いや、アーベルブルクのほうがいいだろう」
「やはり女性形のアーベリアではなく、そのままアーベルという名前が」
「ここは、アーベルバークで」
「・・・」

結局都市名変更に経費がかかるという理由で強引にウエイイの名前を残した。
やはり、由緒ある名前は大切にしなければ。
ウエイイの由緒は知らないが。

もう一つは、今日も提案した内容である。
俺が王に就任してから、もうすぐ1年になる。
俺が、退位して前王の息子に王位を譲る提案だ。

俺は、冒険を再開する必要がある。
この提案もなんとしても、承認させるつもりだ。
「あらためて、みなの考えを聞きたい」
俺は、メンバー全員に問いかける。


俺の右隣にいるのが、近衛兵総統デキウスだ。
いつものように、会議は退屈らしく、新しい技のことを考えているようだ。
会議ではおとなしくしているので、俺は文句を言わない。

文句があるとすれば、顔を合わせると、しきりに転職を進めることだ。
「おまえ、20を過ぎたんだろう、そろそろ」
「いやです」

ちなみに20というのは、年齢ではなくレベルのことだ。
20以上になれば転職ができる。
どうやら、俺を戦士に転職させたいらしい。

「俺の訓練に付き合うのが、怖いのか?」
「そう、うけとってもらって結構です」
こいつのレベルは40を超えている。

こいつは、ロマリアの近衛兵なので、半年前の訓練以外は国外に出たことがない。
いったい、どんな訓練をつめばこんなところで、ここまでレベルがあがるのか。
「つまらん奴だな」
「だったら、退位を認めてください」
「それとこれとは、話がちがう」


デキウスの隣に座っているのが、ライブラ家の新当主メテルスだ。
ガイウスは引退し、ライブラ家の別宅で生活している。
ちなみに、別宅が俺の母親の生家だったり、ガイウスと母ソフィアとは知り合いだったりするのだが、どうでもいい話だったりする。

メテルスは財務大臣補佐官として、徴税員を率いている。
当然、これまでのような厳しい取り立てを厳禁しているので、「息子はやさしい」と国民からおもわれている。
俺たちは、メテルスも父親の悪事に荷担していることを知っているが、何もしらないふりをしている。
家をとりつぶさない事を決めた以上、いかに有効につかうかが問われている。
メテルスも自覚しているので、真面目に職務に励んでいる。

一方で徴税員たちも、過酷なノルマから解放されたことに喜び、メテルスに従っているようだ。
当然、俺が財務大臣を兼務している間は、問題を起こさせるつもりはない。
「王様。私は、口を挟むつもりはありません」
「そうか」
メテルスは、自分の立場を理解していて、積極的に発言はしない。
それでも、彼と話をすればまともな意見をもっていることがわかる。
監視の目をゆるめるつもりはないが、今の働きぶりなら問題ない。


メテルスの隣にすわるのが、総務大臣兼都市開発担当大臣マニウスだ。
このメンバーのなかで、もっとも忙しい男だ。
都市開発のリーダーは俺なのだが、国王なのであまり城外にはでられない。
このため、マニウスに大臣の地位を与えて、マニウスの元部下に実質的な業務を任せていた。
しかし、くろうにんの性格と俺の激励に奮起したのか、寝る間も惜しみ働いている。
俺も、しつこく休めというのだが、素直に従わない。

「王をやめて、私にさらに苦労を担わせるのですか?」
俺は黙るしかない。
しかし、俺は、マニウスの部下から1人を選んで、担当大臣に抜擢させる考えでいた。
俺が退位すれば、そいつに仕事を任せるつもりだ。


最後に外務大臣のレグルス。
当初、俺を嫌っていたが、俺が魔王を倒した事を知ると、態度が急に変わった。
どうやら、俺を勇者と勘違いしているようだ。

「レグルスは反対なのか」
「魔王を倒したのです。どうかこの地をお治め下さい」
「いや、まだバラモスは生きているのだが」
「問題ありません。もうすぐ新たな勇者が倒しに行きます」
さすが外務大臣。
アリアハンの情報も、ばっちり入手している。


「わかった。今回の会議はこれで終了だ」
俺は、みんなを帰らせた。

「どうしても、俺を辞めさせないつもりか」
俺はため息をついた。
戦勝したことで、国内での支持率は高まっているようだ。
そして、都市を奪回したことで、新しい時代の始まりを国民達が実感していた。
そのような時に、理由もなく王が退位すれば、国民から失望感が生じかねない。
都市の復興に目処がつくまでは、王を努めるのが普通だろう。

だが、俺はこの国のことよりも冒険を続けることを優先するつもりだ。
そのためには、退位する理由を作らなければならない。
俺は、最後の案を実行に移すことにした。
「これって、原作への伏線なのか?」



俺はシャンパーニの塔にいた。
「俺を誘拐して、どうするつもりだ?」
俺は、目の前の盗賊たちに問いつめる。
「何を言っている?」
「勝手に侵入したくせに!」

どうやら、目の前の盗賊達は俺の言葉が理解できないようだ。
「意味がわからない。ロマリア王である俺が、なぜわざわざここにいる必要がある?」
「は?」
「なんだと!」
「そういえば、凱旋式でみたことあるぞ」
「本当か」
「確か、魔王を倒したとか」
ジンクか、話を広めたのは。

「俺は、邪神を倒したと聞いたぞ」
「いや、倒したのは竜の王様だったはずだ」
「たしか、恋人を殺された・・・」
すげえ、いろいろと変な噂が混ざっている。

否定するのも面倒なので、話を続ける。
「目的はなんだ、身代金か?」
「だから、お前が勝手に侵入しただけだろう」
「だいいち、俺たちのほうがつかまっているし」

おかしい。
どうも、意志の疎通が図られていないようだ。
俺が、反抗したときに放った、爆発魔法イオラの影響か。
「仕方がない、もう一度魔法を使えば、いいのかな?」
「すいません」
「勘弁してください」
平和的に話が進めば、こちらも助かる。
とりあえず、夜が明けるまでには帰りたい。

「そうか、この王冠が目的なのだな?」
俺は頭に身につけている装飾品を指し示す。
「えっ?」
「どういうことですか?」
「どうしたら、お話を聞いてくれるのかな?」
俺は、再び魔法を唱えようとする。

「そうです!」
「そのとおりです!」
盗賊達は、あわてて頷く。
前の世界で有名な、魔法少女の交渉術を参考にしたのだが、本当に効果があるようだ。

「じゃあ、俺の命と引き替えにこの冠はおいてゆく」
俺は冠を外し、地面に置くと、リレミトを唱えて塔から脱出した。


「・・・。というわけで、卑劣な盗賊団にさらわれた俺は、王冠と引き替えに命からがら脱出しました」
「・・・」
俺は、いつもの会議室で誘拐事件の報告をした。

「偶然、塔にいたテルルとセレンのおかげでここまで帰ることが出来ました」
「・・・」
俺の隣にいるセレンとテルルを紹介する。

「俺の不注意で、こうなってしまった。責任をとりたい」
「まさか!」
「王を辞める」
「!」
「なんだと」
「ふざけるな!」
参加している四大幹部(今では4大貴族とは呼ばなくなっていた)たちは激怒した。

「ふざけてなどいない」
「この国の将来はどうするのだ」
「俺がいなくても十分だ」
本当のことだ。
すでに、政務の大部分を大臣達に任せている。

「しかし」
「王の権威を失った俺は、王の資格はない!」
俺は言い切った。
ここからが、勝負だ。
「王の権威を持つものは別にいる」
俺は、入り口にいたジンクに合図を送る。
ジンクは前王とその息子を会議室に招いた。

「前王!」
幹部達は起立し、挨拶する。
「俺は、彼に王位をゆずる」
俺は前王の息子に譲位を宣言した。
「しかし!」
「俺は、もう王位は継げない。かといって、王冠がない今、継承できるものは彼しかいないのだ!」

幹部達はため息をついた。
俺が、計画的に退位すること。そして、拒むことが出来ないことを知ったのだ。
「許せ、みなのものよ」
俺は頭を下げる。
「この国には未来がある。そして、ロマリアの者で未来を切り開いてほしいのだ」
「・・・」
「お前達には、その責任がある。そして、能力もあるのだ。たのんだぞ」
俺は再び頭を下げる。
幹部達も俺に頭を下げていた。

「皆に感謝する」
俺は、会議室を後にした。
もうこの部屋に入ることもないだろう。
いろいろあったが、楽しい一年だった。
だが、俺にはしなければならないことがある。

部屋を出ると、そこにはテルルとセレンが待っていた。
「待たせたな」
「うん」
「本当に、待ちくたびれたわよ」
セレンとテルルは俺の手を握ると、そのまま城をあとにした。

交渉魔術王と呼ばれたアーベルの治世の最後であった。
 
 

 
後書き
第4章が終了しました。
ようやく、冒険が再開します。

第4章終了時点でのステータス

テルル
商人
ぬけめがない
LV:19
ちから:41
すばやさ:41
たいりょく:54
かしこさ:39
うんのよさ:32
最大HP:106
最大MP:77
攻撃力:79
防御力:78
EX:23885
鉄の斧、みかわしの服、魔法の盾、毛皮のフード

セレン
僧侶
ふつう
LV:17
ちから:38
すばやさ:33
たいりょく:49
かしこさ:42
うんのよさ:54
最大HP:100
最大MP:78
攻撃力:73
防御力:80
EX:23885
ホーリーランス、みかわしの服、魔法の盾、鉄かぶと

アーベル
きれもの
LV:25
ちから:26
すばやさ:63
たいりょく:52
かしこさ:106
うんのよさ:76
最大HP:105
最大MP:214
攻撃力:34
防御力:81
EX:87740
ブロンズナイフ、みかわしの服、魔法の盾、皮の帽子
 
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