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ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜

作者:カエサル
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GGO編ーファントム・バレット編ー
  48.バレット・オブ・バレッツ

 
前書き
第48話投稿!!

ついに幕を開けようとするバレット・オブ・バレッツ!!
 

 


「走りながら説明する!」

大通りを北に向ってダッシュする少女を俺とキリトは追いかけた。

「......このGGOには、プレイヤーが起こせる瞬間移動現象はたった一つしかないの。死んで、蘇生ポイントに戻る時だけ。グロッケン地区の蘇生ポイントは総統府の近くだけど、街中じゃHPは絶対減らないから、その手は使えない.......」

見事な身のこなしでNPCやプレイヤーの間を縫うように全力疾走。

「.......総統府は、あそこ。市街の北の端だから、まだ三キロはある。エントリー操作に五分はかかるから、あと三分で到達しないと......!」

遥か彼方に見える巨大なタワーまでの通行人を避けつつ一キロを一分で走るのは不可能だ。

「......お願い.......おねがい、間に合って.......」

直感的に、少女にとって、この《バレット・オブ・バレッツ》大会は大事な大会だと悟った。

あたりを見渡すと、俺の眼に看板が飛び込んだ。

「キリト、その子と一緒に先に走っててくれ!」

「え.....しゅ、シュウ!?」

針路を傾け左側に見える【RentーAーBuggy!】という看板があるところへと向かう。

そしてそこに並んでいる、前に一つ、後ろに二つのタイヤの三輪バギーに乗り込み、メーターパネル下部に、右手を叩きつけ、精算を行いエンジンを掛ける。

「キリト!乗り込め!」

俺の声にキリトは、少女とともにバギーの後ろに乗り込むと同時にアクセルを全開にして遠くに見える巨大なタワー目指す。

「このバギー、運転がめちゃくちゃ難しくて、まともに走れる人もほとんでいないのに.......!」

後ろの席で少女が少し驚いたように言う。

「従兄妹がゲーム好きで、それでレース系のゲームは慣れてるんで.......」

(まぁ、あいつには勝てなかったけどな.......)




総統府へと続く広い階段の手前に、三輪バギーを荒々しく停止させ、さっと時計を見ると、三時まで五分少々残ってる。

「これなら間に合う!こっち!」

少女は俺たちの手を握って走り出す。階段を駆け上がると、目の前に、途轍もなく巨大な金属のタワーが立っていた。
前後に長い流線型のフォルムに所々からアンテナのような円盤や、レーダーのようなドームが突き出している。

「これが総統府。通称《ブリッジ》。あなたたちが出てきたゲーム開始地点、《メモリアル・ホール》のちょうど反対側」

「ブリッジ?橋.......?」

キリトが訊ねると、少女が小さく首を傾ける。

「じゃなくて、《艦橋》っていう意味かな?グロッケンが宇宙船だった時代の司令部だから、そう呼ばれてるみたい」

「宇宙船......、ああ、それで街がやたらと縦に長いんですね」

「そう。正式名称についてる《SBC》ってのは、《宇宙戦闘巡洋艦(スペース・バトル・クルーザー)》の略なんだって。イベントのエントリーとか、ゲームに関する手続きは全部ここでするんだ」

俺たちはタワー改めブリッジ一階のエントランスを通り抜けた。

内部は、かなり広い円形のホールだった。周囲の壁には大画面のパネルモニタがぐるりと設置され、いろんなイベントが告知されており、その中で一番派手なのは、正面の大モニタに映し出される、《第三回バレット・オブ・バレッツ》のプロモーション映像だ。

俺たちは見とれていると、少女に引っ張られるまま、右奥の一角へと急ぐ。壁際には、縦長の機械が数十台並んでいる。コンビニのATMみたいな形だ。俺とキリトを機械の前へと導き、少女は早口に言った。

「これで大会のエントリーをするの。よくあるタッチパネル式端末だけど、操作のやりかた、大丈夫そう?」

「はい、やってみます」

「たぶん、大丈夫です」

「ん。私も隣でやってるから、解らなかったら訊いて」

モニターに視線を落とし、映し出されるホーム画面には《SBCグロッケン総統府》のメニューを辿り、すぐに第三回バレット・オブ・バレッツ予選エントリーのボタンを見つけ押す。すると、画面に名前や職業などの各種データの入力フォームへと移る。

一番上に驚くべきことが書かれていた。【以下のフォームには、現実世界におけるプレイヤー本人の氏名や住所等を入力してください。空欄や虚偽データでもイベントへの参加は可能ですが、上位入賞プライズを受け取ることはできません】

つまり入力しなければいくら入賞してもアイテムはもらえないってことか........。
でも、俺たちは《死銃》と接触しにきたというのが第一の任務だ。

泣く泣く俺は全フォームを空欄にしたまま、一番下のSUBMITボタンを押した。

エントリーを受け付けた旨の文章と、予選トーナメント一回戦の時間が表示される。日付は今日、時間は.......わずかに三十分後だ。

「終わった?」

隣から不意に聞こえた少女の声を聞き、あちらも無事エントリー完了したようだ。

「ええ、なんとか。.......ほんとに、何から何までありがとうございます。その上、すごい迷惑かけちゃって........」

キリトの謝罪に、少女は小さく微笑む。

「いいよ、バギーで走るの、ちょっと楽しかったし。それより、二人は予選のブロックどこだった?」

「「ええと......」」

もう一度画面を見直す。

「Fブロックですね。Fの37番」

「俺はCブロックの13番です」

「あ......そっか。同時に申し込んだからな、私もFブロックだよ。12番だから......よかった、君と当たるとしても決勝だね」

「良かった、って、何でです?」

「予選トーナメントの決勝まで行けば、勝ち負けにかかわらず本戦のバトルロイヤルには出られるの。だから、私たち全員が本戦に出場できる可能性はゼロじゃないわけ」




予選の準備のため一階ホールから【B20F】へとエレベーターを使い向かった。

扉が開くとそこは、まるでBFOの時のような気配が俺に降り注ぐ。ここにいるプレイヤーたちは、俺やキリトのようにモンスター相手に戦ってきたわけではない。こいつらは、BFOのように対人と戦ってきたのだ。

「まず、控え室に行こう。あなたたちも、さっき買った戦闘服(ファイティーグ)に装備替えしないと」

プレイヤーたちの合間をぬって行く少女を追う。そこには、素っ気ない鉄のドアが幾つも並んでいた。

少女は、その一つの扉を開け、少女とキリトが入り、俺も入ろうとすると、

「あなたは隣の部屋を使って」

そう言い残し、扉が閉まった。

少し、疑問を抱えながら俺は隣の扉の中へと入り、さっき買った黒色のコートを身に纏い、腰に暗剣《シンゲツ》とファイブセブンをつけて扉から出る。




「ついてこないで」

「で、でも、この後どうすればいいのか.......」

「ついてこないで」

「で、でも、他にこのゲームに詳しい知り合いもいないし.......」

「ついてこないで」

数分後、この有様だ。

やはり、少女はキリトのことを女だと思い込んでいたようで.........まぁ、あとはかくかくしかじかです。

「おい、どうすんだよ.......キリト。お前が正直に話さないから.....」

「俺だって隠してたわけじゃ....」

不意に少女がぴたりと止まり、俺たちも同じく止まると少女が振り向く。藍色の瞳がキリトを睨みつけ、傍のボックス席に腰を下ろす。俺たちも向かい側の席におそるおそる座る。

ドーム中央のホロパネルには、予選開始まで十分を切っていた。

少女は深いため息をつく。

「.......最低限のことだけ説明しておく。その後は本当に敵同士だから」

「あ、ありがとう」

「どうもです」

「勘違いしないで、あなたたちを許したわけじゃない」

(あれ?......いつのまにか俺まで敵視されてる)

「あのカウントダウンがゼロになったら、ここにいるエントリー者は全員、どこかにいる予選一回戦の相手と二人だけのバトルフィールドに自動転送される」

ふむふむ、と二人で合図ちをうつ。

「フィールドは一キロ四方の正方形(スクエア)、地形タイプや天候、時間はランダム。最低五〇〇メートル離れた場所からスタートして、決着したら勝者はこの待機エリアに、敗者は一階ホールに転送される。負けても武装のランダムドロップはなし。勝ったとして、その時点で、次の対戦者の試合が終わってればすぐに二回戦がスタート。終わってなければ、それまで待機。各ブロック六十四人だから、五回勝てば決勝進出で本大会の出場権が得られる。ーーこれ以上の説明はしないし、質問も受けない」

「大体わかったよ。ありがとう」

「ありがとうございます」

少女は一瞬だけキリトに視線を向け、すぐに横に向く。

「ーー決勝まで来るのよ。あんたは勝ち抜きなさい。これだけ色々レクチャーさせたんだから、最後のひとつも教えておきたい」

「「最後?」」

「敗北を告げる弾丸の味」

その言葉に、思わず微笑する俺たち。

「ゲームで死ぬのはゴメンだからな......」

「......楽しみだな。しかし、君のほうは大丈夫なのかい?」

少女はフン、と小さく息を吐く。

「予選落ちなんかしたら引退する。今度こそーー」

広いドームに満ちる敵手たちを凝視する瞳が、輝く。

「ーー強い奴らを、全員殺してやる」

少女が放つプレッシャーは、凄まじいものだ。
それは........氷のような戦慄

少女が右手を振ってメニューウインドウを開き、小さなカードを出現させる。

「こうして話すのは今日が最後だろうから、ここで名乗っておくわ。ーーそれが、いつかあなたたちを倒す者の名前」

俺の元にもきた表示に目を落とす。表示された文字はーー【Sinon】

「シノン」

キリトが呟くと、名乗り出す。

「キリトだ。よろしく」

「俺はシュウ。よろしくな」

シノンに手を伸ばすが彼女は、そっぽ向いて俺の手を握りはしない。

「はは....」

とりあえず手を下げ、モニタを確認すると残り時間は五分も残ってる。

(残り五分をどうするかなぁ)

すると俺の体の中の何かが俺に告げる。俺は慌てて振り返りさっき横を通りすぎたプレイヤー目で追う。

........黒色のボロボロなマントを身に纏うプレイヤー

「.......今の感じ」

思わず立ち上がりそのプレイヤーを追う。

あの気配........あの感覚......あの感じ......まさか!?

目で追っていたプレイヤーの姿がいつのまにか俺の前から姿を消していた。

(どこに行きやがった......)

あたりを見渡すが黒いボロマントのプレイヤーは何処にも見当たらない。

「クッソ......」

俺の気のせいならいいんだが..............あのプレイヤーからは..........殺意のような気配を感じた。

突然としてドーム内に大音量でアナウンスが響く。

『大変長らくお待たせしました。ただ今より、第三回バレット・オブ・バレッツ予選トーナメントを開始いたします。エントリーされたプレイヤーの皆様は、カウントダウン終了後に、予選第一回戦のフィールドマップに自動転送されます。幸運をお祈りします』

進行するカウントダウンが残り二十秒となる。あのプレイヤーのことが気になるが今は目先の試合のことだ。

俺の体を青い光の柱が包み込む。 
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