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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第二章 A's編
  第六十話      『外伝8 四家族合同旅行(後編)』

 
前書き
後編、二日目のスキーです。 

 



Side フェイト・テスタロッサ



二日目になり私となのはは最初から中級者コースを走っていました。

「なのはにフェイト。もう上級者コースもいけるんじゃない?」
「あ、アリサ…。まだ多分怖くて無理だと思うよ」
「うんうん…」
「人間慣れが大事だと思うわよ? それを言ったら空を飛ぶ方がよっぽどあたし達にとっては怖いし…」

そう言われると確かに。私達はいつの間にか自然と空を飛んでいたから。
それで物は試しということで私となのはは上級者コースに向かってみることにした。

「あ、あはは…やっぱり怖いね」
「うん…」

二人でリフトに乗りながらどんどん上へと昇っていく。
でも、ふとあることに気づいた。

「ね、ねぇなのは…? このリフトって上級者コースで降りられる奴だったっけ…?」
「え? た、多分そうだと思うよ…?」
「にしてはなんかどんどん頂上まで昇っている気がするんだけど…」
「にゃはは…。うん、そうだね…おかしいなぁ?」

そんな事を二人で言っている内になんだかんだで頂上まで到着してしまった。

「「……………」」

私となのはは二人で呆然としてしまった。
降りるコースをチラッと見たらとてもではないが普通の斜面ではなかった。
デコボコがとても多くて蛇行道でしかもおまけに斜めすぎるんだもん!
こ、怖い…。

「ど、どうしよう、なのは!?」
「どどど、どうしよう、フェイトちゃん!?」
「ナノハにフェイト。こんなところでどうしたのですか…?」
「うひゃ!」
「だ、誰!?」

振り向いてみるとそこにはセイバーさんがいた。そして後からシホもやってきた。

「…なのはにフェイト。こんなところになんでいるの? まだこんな場所は滑れないでしょう?」
「ご、ごご、ごめんなさい! ただ上級者に挑戦しようと思ったらリフトがそのまま一番上まできちゃって…!」
「う、うん! その…滑ろうとは思ってなかったんだよ?」

私達が必死に釈明しているとシホはため息をついて、

「…しょうがないわね。今回は許してあげるわ」
「ふふ。シホは二人の保護者のようですね」
「似たようなものでしょ?…でも参ったわね。迂回コースはないし、このまま二人を滑らせるのも不安だし…」

それでシホは聞いてくる。

「恥をしのんでリフトで下まで降りるのは嫌でしょ?」
「うん…」
「それは恥ずかしい…」
「そうね。それじゃ二人はモーグルコースは…滑っているわけないわよね」
「モーグルコースって…?」
「デコボコしたコースの事よ」
「あー…うん。それはまだやっていないよ。上級者コースすら試していないから」

それでシホは悩む素振りをして、

「セイバー。今回は勝負はお預けにして二人を安全に下まで降りさせるようにサポートしていこう」
「わかりました。私としましてももう十回ほどはシホと共にエクストラコースは滑りましたので満足気味です」

そんなに滑ったんだ…。さすがシホにセイバーさん。

「それでは私はナノハを担当します」
「わかったわ。それじゃ私はフェイトを担当するわね」

二人の役割分担が決まってそれぞれ動き出す。

「それじゃフェイト。私の言う事をしっかりと守って滑るのよ?」
「うん。ごめんね、シホ…」
「気にしないの。こんな事もあるわよ」

それで私とシホは急斜面のデコボコした坂を滑り落ちていく。

「いい? 膝で重心をうまく制御してコブを乗り越えるのよ」
「う、うん…」

ハの字で比較的滑らかな部分は進んでいきデコボコした箇所を通るとシホの言う通り膝に重心をかけてゆっくりと乗り越えていく。
ふと、なのはの方を見るとセイバーさんの指示でゆっくりとだが進めているようで私は安心した。
でも他人のことを気にしていたのが私の気を緩めたのか急に速度が速くなった気がして気づいた時には操作が不能になっていた。

「フェイト! 横に転びなさい!!」
「むむむ、無理だよ! シホ!!」

シホが横に転べと言ってくるけど速度が早すぎて転ぶことができない!
い、いけない! このままだと林の中に入っちゃう!

「くっ…! 追いつかない!!」

シホの声が後ろから聞こえてくるけど私は今あんまり構っていられる状況じゃない!

「シホ! フェイト!」
「シホちゃん! フェイトちゃん!」

遠くでなのはとセイバーさんの声が聞こえてくるけど…もう、ダメ!
そのまま林の中へ入ってしまい私は行き先を見失ってしまった。
こ、これは本気でいけないかもしれない…。
私がとうとう目を瞑ってしまったそんな時に後ろから誰かに抱きつかれる感じと浮遊感を感じたのは同時の事だった。
そこで私の意識は飛んでしまう…。


◆◇―――――――――◇◆


シホとフェイトが林の中へと消えていく光景を見ていたセイバーとなのはは顔を青くした。

「シホちゃんとフェイトちゃんが…!」
「落ち着きなさいナノハ! シホがいるのですからきっと大丈夫です。
それとナノハ、今は二人を追うよりあなたも危険になるのかもしれませんからすぐに降りて皆さんを呼ぶことに専念しましょう」
「は、はい!」

なのはが錯乱するがすぐにセイバーが必死に落ち着かせて二人でなんとか下山をして、

「あら? なのはさんにセイバーさん。シホさんとフェイトさんは…? 一緒じゃないの?」
「それが…落ち着いて聞いてください、リンディ。二人は林の中へと入っていってしまいおそらく崖の下に落ちてしまったようです…!」
「えっ!?」

そこから全員に連絡が行き渡りすぐに救助隊が動き出した。
しかし最悪なことに先程までよかった天候は急に悪くなり雪が降り出してきてしまって全員は表情を固くするのだった。


◆◇―――――――――◇◆


Side フェイト・テスタロッサ


……………、…あれ?
私は目を覚まし気がつくと周りは木がいっぱいあった。
確か、私はどうなったんだっけ?
それで思考を巡らせてすぐに私は思い出す。

「そうか…。私、崖から落ちたんだ」

とっさにさっきの出来事が鮮明に思い出される。
浮遊感を感じて下には地面が見えて私は意識が飛んでしまった事を。
でも、その前に抱きつかれる感じもした。
それは、多分…。
その考えに思い至り私はすぐに周りを見回す。

「シホ! どこかにいるんでしょ!? 返事をして!」
「……………うっ、フェイト…?」

シホの声は私のすぐ真下から聞こえてきた。
それで私は咄嗟に飛び起きる。
私、もしかして助けてくれたシホを下敷きにしちゃった!?
私がすぐにどくとそこには頭から血を流しているシホの姿があった!

「シホッ!!」
「…フェイト、あなたは、無事…?」
「うん! 私はどこも痛くないよ! それよりシホが…!!」
「そう…ヘマをしちゃったわね…」
「シホのせいじゃないよ! 私がもっとしっかりと制御していればこんな事にはならなかったのに…!」

そんな事よりシホを立たせてあげないと…!
それでスキー板をシホの足から外して立たせてあげようとした時に、

「っう…!?」

シホが足を痛める仕草をした。
やっぱりどこか痛めたのかな!?

「シホ! 大丈夫!?」
「…ちょっと、右足をやっちゃったみたいね。右腕もどうやらやっちゃったみたいで動かせない…」
「そんな…ごめんね、シホ! 本当にごめんなさい!!」
「…大丈夫よ…ちょっと待って。アヴァロンを起動して、傷を治してみるわね…」

そうだ! シホには体を治癒させる宝具、アヴァロンがあったんだ!
それで少しシホの体が発光しだした。
でもすぐにそれはおさまって、

「…どうやら、骨折までは時間をかけないと治らないみたい…。
積雪のおかげで痛みは軽減されたみたいだけど解析をかけてみたけどどうやら右足は捻挫に打撲で右腕の方は打撲がいきすぎて骨折みたい。
…で、後は頭が少しクラクラして痛むからもしかしたら頭蓋にヒビが入ったかもしれない…。
セイバーがいれば、どうにかなったんだろうけど…」
「やっぱりそんなに都合良くはないんだね…」

骨折は、どうにかなるかもしれないけど頭の痛みや揺れになると話は別になってくる!
もしかしなくても私の全体重がかかっちゃったからだ!

「それじゃ私が左側からシホを支えるよ! 元は私のせいなんだから怪我がない私がシホを支えてみせるよ!」
「…すまないわね、フェイト…」
「ううん、シホは気にしないで。私がちゃんとみんなのところに届けるからね!」

それでスキー道具も全部片方の手で持ってバインドで固定して運ぶようにしてシホを片手で支えながら道なき道を進み始めた。
携帯も圏外だし連絡を取ることができない。
そして最悪な事に、


「こんな時に雪が降ってきちゃった…急がないと! バルディッシュ、スキー場までの方角は分かる!?」
《ここから北西の方角を進んでいけばつくと思われます》
「わかった。本当は変身してシホを運んでいきたいけど無理に振動を与えるわけにはいかないから…シホ、少し我慢してね?」
「…ええ…」

シホの声にいつもの覇気がない。
それに体を触ってわかったことだけど体温が低い。
雪が降ってきて気温も低下してきているのにこのままだとまずい…!
リニスに習ったことだけど急な体温の低下は視覚や聴覚すらも奪ってしまうと…。
吹雪いてきたら今のシホの体には毒にしかならない。
どこか洞窟か小屋があったらそこで体を休ませないと。
それから私とシホは吹雪いてきた中を必死に一歩一歩進んでいく。

「シホ、寒くない…? まだ平気?」
「…まだ、平気よ…だから先を、急ぎましょう…」
「うん…」

涙が出そうになるけど必死に出るのをおさえて私はシホと歩いていく。
そして歩き出して少しして、

「くっ…吹雪のせいで完全に道を見失っちゃった…!」
「どこか…吹雪をしのげる場所を探しましょう…。一度そこで休んだほうがいいわ…」
「うん…。それまでなんとか頑張ってね、シホ!」
「…ええ、頑張るわ…」

今頼りになるのはバルディッシュのレーダーだけ。
それで必死に進んでいく。

《サー。前方に建物らしきものを補足しました》
「本当!? それじゃそこまで急ごう…!」

それでなんとか歩いていくとバルディッシュの言った通りに小屋が見つかった。
それで中に入り、

「…吹雪が止むまでここで休みましょう。フェイト…」
「うん…」

シホをすぐに横に寝かせてなにか体を温めるものはないかと巡らせてみると暖炉が見つかった。
すぐに火を起こそうと思って魔法を使って電気の摩擦で火を起こした。
火はついてくれてそれによってなんとか暖を確保できた。薪もあるし当分は凌げるだろう。
でも、それでもシホは顔には出さないけど体を震わせている。
そ、そうだ! ウェアが体を冷やしてしまう。
脱がせないといけない!

「シホ、ごめんね。ウェアを脱がすよ? 痛みがあったらすぐに言って…」
「…ええ…」

それで私も乾かさないといけないので一緒に脱いだ。
そしてウェアは暖炉の近くに干して乾かすことにして、それで後は体を温めるものはなにかないかと探すがなかった…。
それでどうしようかと思って、そこで私は自身のバリアジャケットのマントを思い出す。
それでマントだけ出してシホを包む。

「シホ、どう? 暖かい…?」
「…ええ。暖かい…。でも、頭の痛みのせいで体があまり言う事を聞いてくれないのは、痛いわね…」
「…ごめんなさい…」
「…もう、さっき言ったでしょう? 気にしないでって…」
「そうじゃないんだ…。こんな時にリニスに習ったことが活かせずシホをうまく助けることができない自身の力の無さに腹が立っているんだ…」
「…フェイト…誰だってやれる事は限られてくるわ。
その中でフェイトは今出せる最善の手を使って私を助けてくれている…。
今はそれだけで私はとても嬉しいわ…。だから、自分を責めないでね…?」

それで私はショックを受ける。
シホはこんな状況だっていうのに私に気遣いの言葉をかけてくれている。
やっぱりシホは私の立派な目標の人だ。
だからこんなところで弱気な発言をしている私を戒めないと…。
それで私は両手で頬を叩き、

「ごめん、シホ。弱気になっていた…でも、もう弱気な発言はしない!」
「…うん、よかった…。フェイト、あなたも下着だけじゃ寒いでしょ? 一緒にマントで温まりましょう…?」
「うん…」

それで私とシホは一緒にマントを包んでウェアが乾くのと一緒に吹雪が止むのを待つ。
そうしてしばらく二人でそうしていると、

「…シホの体、温まってきたね…」
「…ええ。フェイトのおかげね。きっと私だけだったらこううまくはいかなかった」
「私こそ。シホがいなかったらずっと錯乱していたと思う」
「それは…って、やめましょうか。これじゃいたちごっこになっちゃうわ…」
「ふふ、そうだね」
「…やっと、笑ってくれたわね。これで私ももう少し頑張れるわ…」
「あ…」

そういえばこんな時だっていうのに私は笑みを浮かべている。
心に余裕が出来てきたのかな…?
やっぱりシホと一緒だと心が落ち着いてくるなぁ…。


………………
……………
…………


それから時間は過ぎていって外から吹雪の音が聞こえなくなってきた。

「シホ…どうやら吹雪がやんだみたいだよ?」
「…そ、そうね。…はぁ、はぁ…」
「シホ…?」

シホの吐く息が荒い…? ッ!?

「シホ! 大丈夫…!? やっぱりどこか我慢していたの!」
「…大、丈夫よ。ちょっと腕の骨折が急に痛み出しただけだから…」
「それだけじゃないよね!」

シホの顔色が少し悪くなってきている!
早く何とかしないと…!
それで私は動こうとしたその時だった。

ゴトッ!

小屋の扉が急に開かれて、

「シホちゃん!! フェイトちゃん!!」
「士郎さん!?」
「フェイトー!」

士郎さんを筆頭に恭也さん、鮫島さん、アルフ、セイバーさん…他にも救助隊の人達が小屋の中まで入ってくる。

「士郎さん! シホの体調は悪くなってきているんです! 私を庇って頭に怪我をおって右足を捻挫して右腕も骨折していて、それで…!」
「わかった、フェイトちゃん。だから今は落ち着こう。救助隊の皆さん、シホちゃんの事をよろしくお願いします」
「わかりました」

それでシホは待ち構えていたタンカに乗せられてセイバーさんも一緒についていきヘリコプターで運ばれていく。
その光景を乾いたウェアをすぐに着た私は見ていることしかできないでいた。

「アルフ…」
「フェイト、シホは大丈夫だから。だから今は帰ろう…?」
「うん…。…うぅっ…アルフ、アルフ…」
「フェイト…大丈夫だよ」

それで私は溜め込んでいた想いが溶けてしまったのかアルフの胸で泣き出してしまった。
そして私に新たな思いが生まれた。
こんな事態になったらすぐに助けられるように実力をつけよう、と。


◆◇―――――――――◇◆


「フェイトさん!」

家に帰ったらまずリンディさんに抱きしめられました。
それでまた泣き出してしまいました。
それからなのは達に心配されたけど、

「シホが私の下敷きになってくれて助けてくれたんだ。だから私は平気だよ…」
「そう…。それじゃシホに関しても帰ってきたら叱らなくちゃね!」
「アリサちゃん!?」
「ま、待って、アリサ! 悪いのはちゃんと制御できなかった私だから…!」
「まぁ、フェイトがそう言うなら何もしないけど。
…でもそう考えると最初にあたしがなのはとフェイトに上級コースを試してきたら、って言ったのが原因だし、う~…」
「ま、何はともあれ二人共無事でよかったよ。なのは達を落ち着かせるのには骨を折ったからね」

クロノがそう言う。
それでクロノ達にも心配をかけちゃったので私は。

「心配かけてごめんなさい、お兄ちゃん…」
「き、気にするな…(反則だろう…)」
「おや~? どうしたのかな、クロノ君?」
「え、エイミィ、なんでもない!」

…? どうしたんだろう、クロノ。
まぁ、みんながそこで笑顔を浮かべてしばらく経ってシホが帰ってきました。
シホは頭に包帯を巻き、右腕には骨折を固定するギプスを巻いていました。右足はどうやら包帯だけで済んだようみたい。

「ご心配をおかけしましてすみませんでした…」
「まったくです。体が頑丈なのが取り柄なのですから今度からはあまり心配をかけさせないでください」

セイバーさんが代表でシホを叱っていました。
それであらかた皆に絞られたシホに私は向かって、

「シホ、ごめんなさい…。そして私を助けてくれてありがとう…」
「うん。フェイトにも何もなかったようでよかったわ」

そう言ってシホは遭難時には見せなかったいつも通りの笑顔を浮かべてくれました。
私はそれで心から安心しました。


◆◇―――――――――◇◆


…そして帰宅後、数日して八神家で、

「はぁー…そんな事があったんやね」
「うん…」
「あはは…」

私はつい思い出して畏まってしまい、シホは苦笑していた。

「ま、なにはともあれ無事が一番や! よかったよかった」
「そうだね、はやてちゃん」

なのはとはやてが笑みを浮かべて話していました。

「それとこれとは関係ないんだけどね。シホちゃんの名前にね、やっと高町の苗字が入ったんだよ」
「え? そうなん。それじゃこれからは『シホ・E・シュバインオーグ』が『シホ・E・S・高町』になるって事? 長くなるね」
「うん。いつまでも高町の名前を入れないと本当の家族になれないって桃子お母さんに駄々をこねられちゃってね…」

そうなのである。
桃子さんから頂いたバツが実はこれだったのだ。
それで私もその話を聞いて「よかったね」とシホを祝った。

「だが、私はこれからもシュバインオーグと呼ばせてもらうからな?」
「ええ。シグナム」

シグナムはこれからもシュバインオーグで通すらしい。
それとはやてがこの話を聞いて士郎さんの苗字をどうするかを検討すると言っていた。
なにはともあれこれは私の一つの失敗と教訓としてまた新たな目標ができたいい旅行の話でした。マル。


 
 

 
後書き
雪山ではお決まりの展開ですが遭難と相成りました。
今回はアヴァロンの治癒効果も少し限界値も定めてみました。 
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