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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第63話 卑劣なる罠!V3死の弱点

 ウルトラマンとスーパーロボット達が怪獣との激闘を繰り広げていた最中、特訓に向ったメンバーは必死の特訓に励んでいた。
 フェイトの息は荒かった。見ればバリアジャケットも所々損傷しているし少々だが打撲跡が見える。そして、そんなフェイトの前には武装したクロノと風見が変身した仮面ライダーV3の姿があった。

「どうした? もう降参か」
「まだ……まだです!」
「その意気だ! どんどん行くぞ!」

 現在はフェイト対クロノとV3の特訓を行っている。戦力的にはフェイトが圧倒的に不利に見える。だが、パワーアップしたバルディッシュを使いこなせれば勝機は充分に見えるのだ。その為の厳しい特訓なのである。

「はぁっ!」

 掛け声と共にフェイトが飛び込んだ。バルディッシュからは金色の刃が出現し、その切っ先が目の前に居るV3に向けられる。速度もパワーも以前のより遥かにパワーアップした一撃だ。
 だが、その一撃もV3の前にあっさりとかわされてしまいカウンターの如く地面に叩きつけられた。

「あづっ!」
「馬鹿正直に真正面から行こうと考えるな! お前の持ち味はスピードだ。それを生かせ!」
「は、はい!」

 厳しい指摘を受けそれに頷く。すると今度は上空からクロノが魔力弾を放ってきた。咄嗟にフェイトはそれをかわす。だが、余りにも咄嗟だった為にバランスが崩れてしまった。
 そんなフェイトに向い容赦のない魔力弾の雨が降り注いだ。全身を蜂の巣にされたフェイトが再び地面に叩きつけられる。

「敵は風見さんだけじゃないんだ! 常に二対一の状況を頭に置いて戦うんだ!」
「はい!」

 クロノの言葉に頷くフェイト。そして再びV3とクロノを前にバルディッシュを手に持ち構える。
 その特訓の光景は余りにも厳しいと言える光景であった。そんな光景を遠目から心配そうに見つめるアルフが居た。

「大丈夫かなぁ? フェイトは」
「心配ないさ。あぁ見えて風見はあの本郷猛の後輩だ。若者の育成は心得ているのさ」

 そんなアルフに結城丈二ことライダーマンはそっと言ってくれた。その言葉を聞くと不思議とアルフは安心出来た。風見の事を今の所一番に理解しているのは彼なのだから。

「さ、僕達も特訓を続けよう」
「おうおう、いきがるねぇフェレット坊やは」

 ユーノを茶化しながらもまた三人は特訓を始めた。こちらは三者三様の乱戦形式だ。現在なのはを欠いてる状態で魔導師の中でのポイントゲッターとなれるのはフェイトとクロノの二人だ。
 その為アルフとユーノはその二人の完璧なサポートをする必要がある。その為の特訓であったのだ。
 それぞれの特訓はそれこそかなり熱の入った物となっていた。各々が強くなろうと必死になって特訓に励んでいる。
 特にその中でもフェイトの特訓の入れ込み具合と言ったら尋常じゃない。どんなに過酷な特訓でも歯を食いしばってついてきているのだ。
 やはり、前回の戦いを引きずっているのだろう。各々がそう思っていた。

「少し休憩しよう」

 風見が其処で特訓を一時切り上げようと持ちかけてきた。だが、その誘いをフェイトはかぶりを振り拒んだ。

「ま、まだ出来ます!」
「気持ちは分かるが詰め過ぎても逆効果だ。少し休め」

 風見の言葉に未だ納得出来ず反論しようとしたフェイトだったが、其処は黙って従う事にした。アルフ達も同様に休憩に入り一同が近くの岩場に腰を下ろす。その後は互いに今回の特訓の成果を話し合う事を行っていた。

「どうだフェイト。新型のバルディッシュを自在にこなせるようにはなったか?」
「いえ、まだ少し振り回されてる感じがします」
「それだけパワーアップしたバルディッシュが強力だって事さ。それを使いこなせるようになればきっと今まで以上に君は強くなれる筈なんだ」

 クロノの言う通りだ。新型のバルディッシュを使いこなせれば更なる戦力アップへと繋がることは間違いない。その為にも一日でも早く新型バルディッシュを使いこなす必要があったのだ。その話を聞いてると何故か他の皆も頑張ろうと言う気持ちになれたのであった。
 そんな時であった。

「ん?」

 ふと、風見が何もない空を見上げる。その目線は何処か鋭さを帯びていた。こんな目をする時は風見の時は常に決まっている。

「どうしたんですか?」
「妙だ。この辺には俺達以外に人間は居ない筈なんだが、近辺で人の気配がするんだ」

 風見は事前にV3ホッパーを飛ばしその周辺を調査していたのだ。その際には特に生体反応は感知されなかったのだ。
 だが、今になって突如V3ホッパーに生体反応が感知された。明らかにそれは異常事態であった。

「何か事件の匂いがするってんだね?」
「あぁ、それもかなりやばい匂いがな」
「ふっ、こう言う時の風見の鼻は良く当たるから恐ろしいな」

 茶化すように結城がそう言う。その言葉に風見は眉を顰めたが言い返さなかった。別にけなしている訳ではないのだから一々反論するのも馬鹿らしい。そう思ったからだ。

「無駄話出来る状況じゃなさそうですね」
「あぁ、疲れが残ってる奴は残れ。一緒に来ても邪魔になるだけだ」

 吐き捨てるように風見がそういった。一見厳しい発言にも聞こえるがそれが風見の出来る精一杯の優しさなのだ。戦闘になれば疲労している者は必然的に足手まといになる。そんな者を連れて行く事は自殺行為に等しい。だからこそだ。
 そんな風見の目の前にはほぼ全員が立ち上がりついていく顔をしていた。どうやら取り越し苦労であったようだ。それを見て風見がふっと微笑む。

「よし、それじゃ全員で行くぞ!」

 号令の合図とばかりに皆に言い放つ。それに応えるかの様に皆が大声で返事をした。




     ***




 道は険しく、視界は悪い。獣道とは正にこの事を言うのだろう。そんな道の中を二人は走っていた。一人は中年の男性でありその手を掴み少年も必死に走っている。

「待て、我等デストロンから逃げられると思っているのか?」

 背後から声がした。恐らく追っ手だ。振り返らないでも分かる。足音だけでも恐らく十人以上がこちらに向って走ってきている。
 しかもその中で一人だけ歪な足音があった。恐らく怪人であろう。
 戦闘員だけでも相手に出来ないのにその上怪人が相手では最早逃げ切れるのも奇跡としか言いようがない。このまま二人捕まればそれこそ本末転倒だ。

「逃げろ! 君だけでも遠くへ逃げるんだ!」

 覚悟を決めた男性は少年を押し逃がす。少年は男性を振り向き悲しそうな目をした。そんな少年に男性が怒号を上げた。此処であの子を捕まらせる訳にはいかない。何としても逃がさなければならないのだ。
 そんな時、男性の肩を何者かが掴んだ。振り返った時其処に居たのは身の毛もよだつ程の異形であった。
 
「逃げられると思ったのか? このガマボイラー様を煩わせた罰だ。貴様はこの場で死ねぃ!」

 そう言い、怪人ガマボイラーの口からドロリとした液体が垂れ流された。その液体を体全体に男性は浴びてしまった。悲鳴など挙げる暇すらなかった。
 みるみる内に男性の体は溶けてドロドロになってしまい、最後には骨だけとなりその場に崩れ落ちてしまった。

「グハハッ、一丁上がりだ。それ! さっさとあのガキをとっ捕まえろ!」

 怪人ガマボイラーの命を受け、戦闘員達が少年に迫る。必死に少年も逃げるが戦闘員は殆どが成人男性、それも選りすぐりの肉体を持つ者が殆どだ。子供の足で逃げ切れる筈がない。
 戦闘員達の邪悪に満ちた腕が少年を捕えようと迫ってきた。
 その刹那だった。突如響いたバイクの音と共に上空に照らされていた太陽が突如隠れたのだ。
 不審に思い頭上を見上げた時、其処に居たのは一台のバイクであった。
 バイクが日の光をバックに戦闘員達の真っ只中に転がりこんで来たのだ。
 その突然の乱入に戦闘員達は対処する事など出来ず良い様に吹き飛ばされてしまった。
 木の葉を舞い散らすかの様に吹き飛ぶ戦闘員を見て、怪人ガマボイラーの憤りは更に増した。

「ボイラァァァァァ! 貴様何者だ! 我等デストロンに逆らうとはそんなに死にたいのか?」
「ふん、死ぬのはお前等だ」

 一言そう言い返し風見志郎はバイクから降りた。それと同時に背後から仲間達がやってくる。少年は間一髪であった。だが、男性は手遅れとなっていた。

「風見さん、あれって……骨?」
「遅かったか……また罪のない犠牲者が」

 人骨を前にフェイトは青ざめ、風見は自身の不甲斐なさを嘆いた。だが、その仕草を見ていたガマボイラーは鼻で笑っていた。

「ふん、何が罪のない犠牲者だ。こいつらは無力だ。無力こそ大いなる罪! だから我等デストロンはそんな人間達に希望を与えているのだ。我等の仲間となり無敵の力を得てこの地上を支配する。正しく素晴らしいことではないか!」

 諸手を振り上げて言うその仕草にはまるで自分の言葉に心酔しているかの様だった。反吐が出る。
 一同の思惑はそうであった。力がないのが罪であり、その罪を拭い去る為に人を捨てる。その行為こそが罪に他ならない筈だ。

「弱いのが罪……か。ならばお前もその罪人と言う訳だな?」
「なんだと?」
「弱者を甚振る異形よ。閻魔大王に代わってこの俺が裁きを下してやる!」

 怪人ガマボイラーに向い怒りを込めて言い放つ。それと同時に変身の動作を行いその姿を仮面の戦士仮面ライダーV3へと変貌させる。

「但し、お前の行き先は地獄しかないがな」
「ほざけ、貴様等こそ俺様が地獄へ叩き落してやる!」

 互いの啖呵が行き届いたのを皮切りに戦いは始まった。すると、何処から沸いて出て来たのかあちこちから戦闘員達が姿を現す。その数は先ほどの比ではない。ざっと見て30人は下らないだろう。

「ちっ、面倒な事だ」
「馬鹿め! 飛んで火にいる夏の虫とは貴様等の事だ! お前達をズタズタに切り裂いてその首を首領の下へ送り届けてくれる!」
「ほう、大した自信だ。だが、その為にはこの数はちと少ないんじゃないのか?」

 今度は入れ替わりで結城が言い放った。その言葉には嘘偽りなどない。真実であったのだ。
 こちらには自分を含めて改造人間が二人と魔導師が三人、そして使い魔が一人居る。戦力的には充分であった。

「風見、俺達が雑魚を片付ける。お前は存分にそのガマガエルの相手をしてやれ」
「ガマガエルじゃねぇ! ガマボイラーだ!」
「良いとこをくれるとは気前が良いな。遠慮なく頂いていくぞ。来い! ガマボイラー!」

 V3とガマボイラーの一騎打ちが開始された。その回りでは戦闘員達を相手に結城を筆頭としたメンバーが激闘を繰り広げていた。
 中でもフェイトの動きは凄まじさがあった。散々風見やクロノにしごかれた為だろう。今では改良型バルディッシュをいとも容易く扱っている。

(凄い、あの時とは違って少しだけどバルディッシュのパワーについて行けてる。これならもう皆の足を引っ張らずに戦える!)

 フェイトの顔には歓喜の表情が浮かんでいた。皆と肩を並べて戦える。それだけが何と嬉しい事か。そう思っていたのだ。そんなフェイトを横目で見ながらクロノは特訓の成果があったと言う実感を感じ取り思わずにやけていた。

「何にやけてるんだい? 気持ち悪いなぁ君は」

 そんな彼の背後で戦闘員達をバインドで絡め取り谷底へと突き落とすユーノが言い放つ。その言葉を聞き思わず顔が引き締まる。

「べ、別ににやけてなんかいないさ」
「どうかな。さっきまでだらしない顔してたよ。執務官様の顔じゃないね」
「悪かったな」

  互いに罵りあうもその間中迫り来る戦闘員達を蹴散らしていく。互いに喧嘩越しではあるがチームワークが悪い訳ではないようだ。
 そのすぐ近くではアルフの徒手空拳による戦闘員の撲殺劇が繰り広げられている。更にその近くではライダーマンの姿もあった。

「ヒュ~、可愛い顔つきの割にはやる事がえげつないな」
「まぁね。私こう見えて元は狼だからさ」
「おぉ、怖い。夜道は気をつけるとしよう」

 流石は紳士と言うべきか。ユーノとクロノが互いのバックをかばいながら戦うのと同じようにライダーマンもアルフの死角をカバーしつつ戦っている。互いに背中合わせになる事で背後から襲われる事をなくしているのだ。
 この戦いにより戦闘員達の数はみるみる減っていく。そして、こちらでも戦いは有利に傾きだしていた。

「どうしたガマガエル! 威勢が良いのは口先だけか?」
「黙れV3! 貴様など俺様の溶解液で溶かしてやる!」

 言うや否や突如口から先ほどの液を飛ばしてきた。だが、その液をV3は飛翔してかわす。

「馬鹿な奴だ。来ると分かってればかわすのは簡単なんだよ」
「ぐっ、俺様とした事が!」
「いい加減貴様との相手も飽きたんでな。此処らで締めだ!」

 バッと上空に飛翔しV3が空中で回転を加える。それはこの激闘の中で編み出した新たな必殺キックであった。

「受けてみろ! V3スクリューキィィック!」

 自身に凄まじい回転を加え、さながらスクリューの如く回転しながら相手に蹴りを叩き込むV3の新たな必殺キックであった。
 それを食らったガマボイラーが吹き飛び崖下へと突き落とされる。

「おのれ、こうなれば!」

 苦し紛れにとガマボイラーは突如液体を吐き出した。キックを放った直後の為動けなかったV3にその液体は全身に掛けられる。

「うわっ、何だこれ?」
「フハハッ、思い知れV3! 我等デストロンに歯向かった己の不甲斐なさをなぁぁぁぁぁぁ!」

 苦し紛れの液を放った後。ガマボイラーは真っ逆さまに谷底へと落ちて行った。戦闘は勝利したがどうにも歯切れの悪い勝利に終わってしまった。最後の最後で敵の苦し紛れの一撃を貰ってしまうなど情けないの一言に尽きる。

「大丈夫ですか? 風見さん」

 そんな風見の身を案じてなのか駆け寄ってきたフェイトの顔はとても不安そうな顔をしていた。
 それを見た風見は変身を解くと軽くフェイトの額を小突く。

「安心しろ。この通り俺は死んでない。俺が死ぬ時は奴等が滅んだ時だからな」
「そ、そうですか」

 元気な用で安心したが小突かれた額が微妙に痛いため素直に喜べないフェイトが其処に居た。それから間も無くせずに結城達が集まってくる。

「風見、怪人はどうした?」
「崖下に落ちた。恐らくは助からんだろう。確かめに行きたいがまずはあの子供だ」

 風見は一端話を切り上げて視界の先で震えている少年を見た。あの時の戦闘中ずっと物陰に隠れていたのだ。そんな少年に皆が近づく。

「安心しろ。悪い怪人は俺達が叩きのめした。俺達はお前の敵じゃない」
「う、うん……有難う。叔父さん!」

 叔父さん。
 そう呼ばれた際に風見の眉がひくつく。袖口や襟などに鼻を寄せてひくひくさせる。その仕草に不信感を抱いた結城がそっと風見に近づく。

「どうした、風見?」
「なぁ、俺って加齢臭とかするか?」

 何を聞くかと思ったらそれであった。どうやら子供に叔父さんと言われたのが相等ショックだったようだ。そんな仕草を見てフェイトは思わず笑ってしまった。が、その直後に睨みを利かせる風見に気づく。

「あ、御免なさい」
「良いさ、どうせ俺は叔父さんになれない身だしな」
「拗ねるな拗ねるな」

 誰から見ても明らかに分かる。風見志郎は拗ねている。そんな風見の背中を軽く叩きながら結城は笑って励ましてあげた。
 しかし結城は知らない。その励まし自体が風見にとっては苦痛になると言う事を。

「それで、君は何処から逃げてきたの?」

 このまま風見を待っていては話が進まないと感じたフェイトは代わって少年に尋ねる事にした。少年は最初こそうろたえていたがやがて話せる位に落ち着いたのかゆっくりと話し出す。

「あ、あのね……この先にある変な洞窟から逃げてきたの。其処には僕以外にもまだ沢山捕まってるんだ」
「成る程な、それだけ聞ければ充分だ。誰かこの子を安全な場所まで運んでくれないか?」
「アルフ、お願い出来る?」

 フェイトはアルフに一任を願った。別にアルフを戦力外と考えてる訳じゃない。このメンバーの中でフェイトに次いで移動力の早いアルフならばデストロンの追撃が来ても撒く事が出来ると判断したからだ。
 それにはアルフも口を尖らせるも他でもないフェイトの頼みであった。無碍に断る訳にはいかない。仕方なくアルフは了解し、子供を抱えて人里まで行く事となった。
 そして、残ったメンバーでデストロンの基地を攻略する事となったのだ。




     ***




 少年の言う通り、向った先には崖の壁を彫った穴がありそれが巨大な洞窟となって目の前に存在していた。その穴もまた自然に出来た代物とは呼べず人工的に作られた代物となっていた。

「これがそうか。にしてもデストロンの奴等はこうして穴ぐらに住むのが好きとは。案外先祖はモグラだったりしてな」
「こんな時に冗談とは。お前らしくないな風見」
「悪かったな」

 少しでも場の緊張を解そうとした風見なりの気遣いだったのだろうが返って不発に終わってしまい風見自身少し気恥ずかしい感じになっていた。そんな仕草を見て結城もフッと笑みを浮かべる。

「ど、どんまいですよ風見さん。私は結構笑えましたよ」

 このままだと余りにも風見が可愛そうだと思ったのかフェイトが咄嗟に先ほどの冗談を褒める。だが、それを聞いた風見の背中が更に小さくなってしまうのを見て疑問に思ってしまった。そんなフェイトの肩をクロノが軽く叩きながら首を横に振っていた。

「フェイト、今の風見さんにそれを言うのは返って傷口を広げる行為だからやるべきじゃなかったんだよ」
「え? あ、あぁ!」

 正に今更であった。目の前では更に小さくなってしまう風見が居た。これから敵のアジトに乗り込もうと言うのにこんな事では士気に影響が出てしまう。が、その士気を下げてしまったのは自分なのでどうしようもないのも事実であり。

「ほら、何時までもいじけてないで行くぞ風見」
「あぁ、分かってるさ」

 だからと言って何時までもいじけている風見じゃない。自分自身を叱咤し闘志を奮い立たせる。それを見て一先ず安心するフェイトであった。




 基地の中に入ると、出迎えてくれたのはやはり戦闘員であった。だが、特訓でパワーアップしたフェイトは勿論の事、今のメンバーには戦闘員など相手にもならなかった。並み居る戦闘員を次々と薙ぎ倒していく。だが、そんな中一人だけ苦戦を強いられる者が居た。

「どうした風見、こんな奴等に苦戦するなんてらしくないぞ」

 そう、戦闘員相手に苦戦していたのは風見志郎こと仮面ライダーV3であったのだ。明らかにおかしい。変身したと言うのにその拳に全く力が篭っていないのだ。まるで猫でも撫でるかのような弱弱しい拳で戦闘員を倒せる筈がない。その為に風見だけは苦戦をしていたのだ。

「もしかして、さっきあのガマボイラーに掛けられた液体のせいですか?」

 鋭くそうユーノが尋ねる。原因は全く分からないが恐らくあるとすればそれだろう。

「かも知れないな。どうもさっきから全く体に力が入らないんだ。くそっ、デストロン基地を前にしてこの様とは情けない」
「そう自分を責めるな風見。此処は俺達に任せておけ」

 戦力にならないのであれば仕方ない。基地内での戦闘はフェイトや結城達に一任し、自分は人質の救助に専念する事にした。
 




「ふぅ、どうやら基地内の敵は粗方片付いたようだな」

 周囲に戦闘員達の残骸を目にしながらライダーマンは手を軽く叩く。その回りに居たフェイトやクロノ、ユーノ等もまた同様の思いであった。
 只一人、仮面ライダーV3こと風見志郎を除いて。

「……」

 風見は一人かなり不満そうな顔をしていた。先ほどのガマガエルの液体のせいで折角デストロンの基地に入れたと言うのに自分自身何も出来なかった。それが風見にはとても胸が痛いのだ。

「元気出してください風見さん。きっと何時かまた戦えますよ」
「そ、そうだな」

 フェイトなりに風見を気遣っていると言うのは分かる。だが、今の風見にとってそのフェイトの優しさが逆に胸に突き刺さった。

「さて、俺達三人はもっと基地の奥に人質が居ないか確かめる。風見とフェイトの二人は先に地上に戻っていてくれ」

 結城の指令にフェイトは勿論風見も同意した。此処に来る道中で既に牢獄に囚われている人達を見つける事が出来た。だが、未だ戦闘員達の居る基地内で下手に解放させると危険だった為そのままにしておいたのだ。
 だが、今彼等を解放させても問題はないと判断した上での指示であった。

「任せて下さい。結城さんとクロノ達は気をつけてね」
「仕方ない。だが無茶はするなよ結城」
「フッ、生憎俺はお前みたいに無茶な真似はしないさ。ヨロイ元帥を倒すその日まで死ぬ気はないからな」

 皮肉を交えながら結城、クロノ、ユーノの三人は更に基地の奥へと進んでいく。残されたフェイトと風見は先ほど見つけた牢獄へと戻る事にした。
 牢獄内にはそれこそ多種多様な人が囚われていた。成人男性は勿論の事老人、少年などが囚われていた。
 彼等を引き連れて二人元来た道をひたすら走っていた。既に基地内の敵は粗方片付けている。後は外に出れば事は片付くだろう。
 そう思いつつ入り口に辿り付いた。入り口は塞がれていた。
 二人が入ってきた入り口には巨大な岩石が道を塞いでいたのだ。

「くそっ、入り口は此処しかないのに!」

 風見は愚痴った。そんな時、マイク越しに笑い声が響いてきた。不気味な野太い男の声であった。

「誰だ!」
『初めて会うなぁ。私の名はヨロイ元帥。栄光あるデェェェストロンの最高幹部である』
「デストロンの最高幹部!」

 フェイトは戦慄した。まさかこの基地にそんな大物が待ち構えていたなんて。もしそうならこのまま先へ向った結城達が危ない。

「ヨロイ元帥! この岩はお前の仕業か?」
『いかにも。お気に召して貰えたかな? 私の用意したちょっとしたサプライズだ。それともう一つ素敵なプレゼントも用意してあるぞ』

 不気味な笑い声と共に辺りから何かが吹き出る音が聞こえてきた。音の発信源は周囲の壁の隙間からだ。その途端、回りに居た人達が次々と倒れ始めたのだ。

「どうしたんですか?」
『驚く事はないさお嬢さん。彼等は特殊性のガスを浴びてしまい意識が保てなくなっていたのさ。このガスを浴び続ければ常人なら5分で死に至る。風見志郎、嫌、仮面ライダーV3! 貴様を除いてはな』
「下らない事に力を入れるのがお前の趣味らしいな。そう言うのを世間じゃ悪趣味って言うんだぜ」
『貴様の悪態もこうして聞くと心地良い響きよ。其処で貴様が守ろうとする者達が死んでいく様を指を咥えて見ているが良い』

 その後に聞こえてきたのは甲高い笑い声であった。その笑い声が風見の中にある怒りに火を点けた。絶対にこの人達を死なせる訳にはいかない。何としても外への道を切り開くのだ。

「こうなったら腕付くでこの岩盤を叩き壊してやる!」
「バルディッシュ、やるよ!」

 ライダーV3は拳を振り放ち、フェイトは閃光の刃を用いてその岩盤の破砕作業に入った。二人の攻撃が怒涛の如く岩盤に押し付けられる。
 だが、思っていたよりも岩盤は固く二人の攻撃ではびくともしない。

「駄目だ、パワーが入らない今の俺の拳じゃこれを破壊出来ない……」
「下がって下さい風見さん! こうなったら私の収束砲で……」

 バルディッシュを構えて収束砲を撃つ構えを取るフェイト。だが、その直後彼女の足が折れて地面に倒れてしまった。

「どうした? フェイト」
「頭が……頭がフラフラする」
『言い忘れていたが、この特殊ガスはお嬢さんの纏っているバリアジャケットとやらも浸透するのだよ。つまり君も其処に居る者達と同じ末路を辿る事になるのさ』
「ヨロイ元帥! キサマァァァァァ!」

 風見が吼える。しかし、その怒号もヨロイ元帥には心地よい音色にしか聞こえていない。目の前では徐々に死に至っている人達が居る。このまま彼等を死なせて良いのか? 
 嫌、良くない!

「こうなったら……奥の手だ!」

 V3は立ち上がり岩盤を見つめた。腰のダブルタイフーンが突如高速で逆に回転しだす。周囲から猛烈な突風が吹き荒れた。

「行くぞ! V3逆ダブルタイフゥゥゥゥゥゥゥン!」

 腰のベルトから猛烈なエネルギーが噴射された。腰のダブルタイフーンが逆に回転する事により想像を絶するエネルギーが噴射されるのだ。そのエネルギーは目の前にある巨大な岩盤をいとも容易く吹き飛ばす程の威力を秘めていた。岩盤は粉々に砕け散り、その先から太陽の光が差し込めた。

「お、おぉ……日の光だ!」
「助かった、俺達は助かったんだ!」

 わらわらと外に出て行く人達。風見もまたフラフラなフェイトを起こして外に出る。

「か、風見さん。その姿は?」
「逆ダブルタイフーンを使った影響でな。3時間は変身出来ないんだ」

 それこそ正しく致命的な弱点でもあった。逆ダブルタイフーンの威力は先ほどの岩盤を砕く程の威力だと立証された。だが、その反面膨大なエネルギーを使用してしまい風見の変身が一定時間出来なくなってしまうのだ。こんな時に怪人の待ち伏せがあれば最悪だ。
 外で絶叫が響いた、それに不安を感じ風見とフェイトは外へと踊り出る。最悪だった。外に待っていたのは先ほど倒した筈のガマボイラーと戦闘員達だ。それもさきほど以上に数が多い。今度は五十人で攻めて来たようだ。

「待っていたぞ風見志郎! 逃げ出した奴等共々始末してくれる!」

 ガマボイラーの目がギラリと輝く。狂気に満ちた輝きだ。彼としてはこの時を待っていたのだろう。そして、風見志郎にとってはそれは最悪の場面であった。今の風見は変身も出来なければ戦闘能力もない。加えてフェイトは未だガスが抜け切っていないのか風見の腕の中でかなり弱っている。とても戦える状態ではない。

「お前等は逃げろ! 此処は俺一人で何とかする」
「そんな、無茶ですよ風見さん!」

 フェイトの言う通り正しく無茶だった。今の風見にこれだけの相手が出来る筈がない。だが、此処で二人揃って倒れるよりはマシなのだ。

「お前も行けフェイト。お前がこいつらを守ってやるんだ!」
「でも、風見さんはどうするんですか? そんな体じゃ戦えないじゃないですか!」

 フェイトの言う通りである。今の風見には戦闘員と戦う事さえ困難な状態なのだ。その上これだけの人数に加えて怪人も居る状態なのだ。とても勝ち目などない。それは火を見るより明らかであった。

「グフフ、逃がすと思ったか? その小娘も逃げた奴等も全員皆殺しだ! 俺様の溶解液で骨も残さず溶かしてやるよぉ」

 ガマガエルの様な下卑た笑い声が響く。その笑い声が今の風見にはとても悔しく聞こえてきた。何も出来ないのだ。このまま何も出来ず皆殺されてしまうのか。家族の仇も討てず、先輩達の無念も晴らせないまま終わると言うのか?
 何処からともなくギターの音色が聞こえてきた。聞いた事のない音色だ。とても儚げで、悲しげにも聞こえて来る曲だ。そんな音色が近くから響いてきたのだ。

「な、何だ? この耳触りな音は? 誰が弾いてやがる!」

 ガマボイラーや戦闘員達も躍起になって探し始める。だが、それらしき姿は何処にも見当たらない。一体何処で弾いているのだろうか。

「あ、あんな所に人が!」

 そんな時、逃げ出した人の中の一人がそれを見つけた。それは霧だった崖の上であった。その上で一人の青年が白いギターを持ち先ほどの曲を弾いていたのだ。

「おい、その耳触りな曲を止めろ! 折角の良い気分がぶち壊しじゃねぇか!」
「やれやれ、人が折角気持ちよく弾いてたってのに、風流が分からない奴はこれだから困るぜ」

 まるで美学も糞もない馬鹿野郎だなお前は。
 とでも言うかの様に肩を上げ、その青年はガマボイラー達と風見達の丁度真ん中に降り立つ。その衣服は一言で言うなら黒であった。
 黒のジャケットにズボン、黒の帽子と全身黒一色なのに対し、手袋とギターは白でありマフラーは赤であった。
 そんな青年が一同の前に突如現れたのだ。

「やい貴様! この俺様の前に現れたと言うことは余程死にたいようだな?」
「ふん、天下のデストロン怪人ガマボイラーさんかい? 流石の俺も不細工じゃ二本で二番目だな」
「なにぃ! それじゃ日本一は誰だ?」
「当然、お前だろ? 不細工顔の日本一」
「な、なんだとおぉぉぉぉぉぉぉ!」

 青年の皮肉に怒り沸騰する。無理もないだろう。誰だって顔を責められたら怒らずにはいられないのだから。

「おいおい、折角人が珍しく褒めてやってるんだから少しは喜んだらどうだ?」
「ふざけるな! 貴様も纏めて骨にしてやる!」

 怪人と戦闘員達の狙いがその青年に向けられる。戦闘員達が周りを取り囲み青年の逃げ道を塞ごうとしだす。

「おい、早く此処から逃げろ! お前の手に負える相手じゃない!」
「そうです、早く逃げてください! でないと貴方まで……」

 風見とフェイトがそう言うが、其処で青年は突如指を鳴らしだす。

「安心しな。こんな程度の輩、俺一人で充分だぜ」
「随分な自信だな。冥土の土産に貴様の名前を言ってみろ! このガマボイラー様に喧嘩を売った度胸のある奴として覚えておいてやる!」
「悪党に名乗るほどの名前はもっちゃいねぇんだが、名乗れと言われちゃ名乗る他ねぇな」

 そう言い、さっきまで顔半分を隠していた帽子の唾を二本の指でそっと持ち上げてクルリとその場で一回転する。皆に自分の顔を見て貰う為だ。そして、その顔を見た途端、その場に居た殆どの者が仰天した。

「か、風見志郎が二人だとおおおおおおおおおおおおおおお!」
「お、俺ぇぇぇ!」
「か、風見さんにそっくり!」

 それには風見もフェイトも驚いていた。そして、その驚きの際にフェイトはふと思い出したのだ。
 それは、かつて風見志郎を始めてアースラに招き入れた際にクロノが風見の事を別の名で呼んだ事だ。確か、その名前は―――

「も、もしかして……貴方は、早川健さんですか?」
「ほぉう、こんな綺麗なお嬢ちゃんに覚えて貰ってるとは、男として鼻が高いねぇ。以下にも、俺は早川健。さすらいの私立探偵さ」

 正しくその通りであった。これはクロノが風見を間違える訳である。何しろ同一人物と思えるほどそっくりだったのだから。

「あんたが、早川健か」
「ほぉう、良く見たら結構なイケメンじゃねぇのあんた。流石は俺のそっくりさんだ」
「でも、性格は全然違いますね」

 確かに全く性格が違っていたのには驚きであった。風見が動の人間ならこの早川は静の人間と言える。まるで正反対だったのだ。

「ん? お前さん、良く見たら本郷と似ているな。もしかしてお宅も例の改造人間って奴かい?」
「あんた、本郷さんを知ってるのか?」
「知ってるも何も、一緒に戦ったことがあるんだよ。こう言う不細工な奴等とな」

”なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおお!”

 背後で聞こえて来るガマボイラーと戦闘員達の怒号を無視して話を進める。

「ま、そんな訳だ。どうやらお前さん特殊な液体なり何なり掛けられたみたいだな。腰のベルトにベッタリくっついちまってそれじゃ自慢の風車が回らないだろうが」
「何! そうか、さっき逆ダブルタイフーンを放った際に徐々にだが力が戻ってきたのはそのせいだったんだな!」

 どうやら先ほどの特殊な液体がベルトに付着してしまい風力エネルギーを得られなかったようだ。そのせいで変身してもパワーが得られず苦戦を強いられていたと言うのだろう。

「えぇい、もう我慢ならん! その生意気な男を叩き殺せ!」

 ガマボイラーの号令と共に一斉に戦闘員達がなだれ込む。だが、その刹那、早川の姿が突如として消えてしまったのだ。
 突然の為に対応しきれず戦闘員達がドミノ倒しの要領で倒れこむ。

「何をやってるんだ馬鹿共! それよりもあの男は何処に言ったんだ?」

 正しく突然であった。突然現れた後は突然消えてしまったのだ。一体何処に消えたのか?
 そんな時、動けなくなった戦闘員達を突如紅い何かが吹き飛ばした。それは紅い車であった。フロントボディにZのマークを頂いた粋な井出達の車であった。そして、その車にはやはり紅い姿をした者が乗っていた。

「な、何だ貴様は!」
「フンッ、教えて欲しけりゃ教えてやる」

 車から降りてその者は怪人を睨み構えを見せた。

「ズバット参上! ズバット解決!」

 名乗りながらポーズを決める。その姿には力強さと共に頼もしさが感じられる。そして……

「人呼んでさすらいのヒーロー……快傑ズバット!」

 紅いそいつは名乗った。彼こそさすらいのヒーローにして復習の鬼、もう一度言おう。彼の名は快傑ズバット。

「か、怪傑ズバットだとぉ!」
「おいおい、字が違ってるぜ。怪傑じゃねぇ! 快傑だ! 覚えておけガマガエル」
「だぁかぁらぁ、俺はガマボイラーだって何度も言ってるだろうがぁ!」

 流石に切れたのか声を荒立てる。そんな敵を前にしてもズバットは冷静でいた。

「能書きは良いからさっさと来な。相手してやるよ」
「上等だ! 今度こそ叩き殺してやる!」

 最早頭に完全に血が昇っていた。そんな状態でズバットと対峙出来る筈がない。敵の猛攻を余裕で回避した後手に持った鞭で敵をグルグル巻きにしてしまいその上にズバットが乗りあがる姿勢が出来上がってしまった。

「ば、馬鹿な……この素早さは人間業じゃねぇ!」
「はん、俺が早いのそうだが、それ以上にお前がノロマなんだよ」
「お、おのれぇい!」

 悔しがるが所詮は後の祭りだ。溶解液が放たれては不味いとばかりにガマボイラーの口は地面に向けられている。これでは放ったとしても地面が溶けるだけで何の解決にもならない。

「さて、トドメを刺す前にお前に一つ聞きたい。2月2日に飛鳥五郎と言う男を殺した男はお前か?」
「な、何? 飛鳥五郎だと? ふん、知るか! 第一俺様が今までに殺した人間など星の数ほど居るんだ! 今更一人の人間の名前なんて覚えてられるか!」
「そうかい、やはりデストロンは外道の集まりだったか。だったらてめぇに用はねぇな」

 そう言うとズバットはガマボイラーの拘束を解き出した。そのまま起き上がるとガマボイラーは即座にズバットから距離を置く。

「馬鹿め! この距離からでは攻撃できまい! 俺様の溶解液で溶けて死ぬが良い!」
「おい気をつけろ。あんまり下がり過ぎると……」

 いざ溶解液を放とうとした刹那。何かに躓きガマボイラーは倒れてしまった。それは横たわっていた戦闘員であった。既に事切れていた戦闘員の足に躓き仰向けに倒れてしまったのだ。
 しかもその拍子に溶解液が上空に発射されてしまう。
 天に唾を吐けばその唾は自分に返って来る。そのことわざの通りにガマボイラーの放った溶解液はそのままガマボイラーに返ってきたのだ。
 全身に吹きかけられた溶解液がガマボイラーの体をドロドロに溶かしていく。

「ぎゃああああああああああああああああああああ! か、体が溶けて行くウうううううううううううううう! た、助けてくれえええええええええええええええええ!」
「はん、今更虫の良い事言いやがって。今までそう言って一体何人の人間んが死んでいった。地獄に行って少しは頭を冷やして来なこのガマガエル」

 吐き捨てるように言い放ちガマボイラーを見捨てるズバット。それからガマボイラーは断末魔の叫びを上げた後、骨も残さず溶けてしまった。あっけないと言えば余りにもあっけない最期であった。
 そして、その光景を風見とフェイトの二人は黙って見ているしか出来なかった。

「凄いな、あんた生身で怪人と渡り合えるなんて」
「なぁに、俺は何をやらせても日本一なんでね。怪人の相手もお茶の子さいさいってな訳よ」

 戦闘を終え、ズバットスーツを脱ぎ元の姿に戻った早川がギターを肩に担ぐ。

「あの、これから何処へ?」
「さぁね、風の向くまま気の向くまま。フラリフラリの一人旅さ」
「だったら、俺達に力を貸してくれ! この世界を守る為にもあんたの力が必要なんだ!」

 風見が言う。確かに今彼の力が借りれるのはとても大きい。だが、そんな風見の要求に対し早川は指を鳴らす。

「折角の誘いだが、今は受けられねぇな。お前さんらは今戦う相手を見誤っている。そんな奴等とは一緒に戦えないね」
「私達が、相手を見誤ってるんですか?」
「その通りだ可愛いお嬢ちゃん。何と戦い、誰と共に戦うのか。それをよぉく考えるんだな。その答えが分かった時、そん時ぁ肩を並べて戦わせて貰うぜ」

 その言葉を残し、早川は去って行った。去り際にあの時の曲を弾きながら。
 二人は早川が去り際に言い残した言葉を胸の内で深く考えていた。何と戦い、誰と共に戦うのか。それの指し示す意味とは一体何なのか。その意味の答えに辿り着くのは、もう少し先になるだろう。何故なら、この後二人の身に起こる事が余りにも壮絶な事だったからだ。

「な、何だ?」

 突如、激しい振動が襲い掛かった。振動は後ろからだった。振り返ると、其処には巨大なミサイルが飛び立つ姿が映し出されていたのだ。
 大きさからしてかなりの質量だ。

『聞こえるか? 風見』
「その声は、結城、結城なのか?」
『あぁ、俺は今ミサイルの中に居る』
「何だと!」

 風見は自らの耳を疑った。だが、事実であった。聞こえてきた言葉は一語一言間違えず覚えている。そう、ライダーマンは今あの巨大ミサイルの中に居るのだ。

『これはデストロンが首都攻撃用に開発していたプルトンロケットだ。これを首都に打ち込み首都の機能を麻痺させる計画だったようだ』
「そんな事をしたら大勢の人が……」

 フェイトの脳裏には大勢の人々がロケットの影響により死んで行く地獄絵図が映し出された。それこそ正しくこの世の終わりを連想させる光景でもあった。

「止めろ結城! 死ぬぞ」
『良いさ。俺一人の命で数万人の命が救われるのなら、それも本望だ。それにな、俺は俺の夢を叶える為とは言えデストロンに加担していた。そのせいで大勢の人の命を奪ってしまったんだ。今度は、この俺の手で大勢の人の命を守りたいんだ。分かってくれ、風見』

 結城の決意は固かった。彼は人知れずデストロンに協力し、悪の手伝いをしていた事を悔いていたのだ。そして、その罪滅ぼしの為にと命がけのミサイル首都激突阻止を行ったのだ。

「結城さん、すぐに助けに行きます! 待ってて下さい」
『無駄だフェイト。クロノもユーノも例のガスを吸っちまって満足に動けない状態になっちまった。俺自身ももう意識が朦朧としちまってるんだ。このロケットを安全な場所まで持っていくだけで精一杯な程にな』
「ライダーマン! お前の覚悟、そして犠牲は無駄にはしない! お前こそが……お前こそが仮面ライダー4号だ!」

 風見は声を大きく叫んだ。それは、彼を仲間と、共と認める証でもあった。
 その言葉を聞いた結城ことライダーマンの口が笑みを浮かべた。

『有難う。風見志郎……嫌、仮面ライダーV3。この仮面ライダー4号の称号を一生の誇りにする。そろそろ通信圏外だ。さようなら……友よ』

 そう言い残し、プルトンロケットは遥か上空へと飛翔した。それは、日本を越え遥か海の上まで行った。其処でロケットは木っ端微塵に砕け散った。中に居た結城丈二こと、ライダーマン諸とも。
 その光景はホッパーを通じて風見志郎に直接届いていたのだ。

「か、風見さん……結城さんは……」
「フェイト。結城丈二は……仮面ライダー4号としての使命を……全うした。彼の功績を……称えてやってくれ」

 風見は俯いてしまった。それを聞いたフェイトはボロボロと涙を流した。また、頼もしい仲間が一人消えた。
 復讐に燃え、それでも世界の平和とか弱き命を守る為に青き空の彼方へと散って行った仮面ライダー4号こと、ライダーマン。
 彼の勇姿は永遠に語り継がれる事であろう。




「さらば……友よ」




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

悪の組織が一致団結し、遂に本格的な侵略作戦を開始しだした。
だが、それに対しヒーロー達は未だ結束が出来ていない状況であった。

次回「第二次日本攻略作戦」お楽しみに 
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