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ゼロの使い魔 新たなる物語

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第1話 気が付けば使い魔!?

 
前書き
初めだけやたら文が長いです。ここまではやっておかなきゃダメかなぁ、と思い。
これからもこんな感じで行くか悩んでます。 

 



 目覚ますと、そこには一面の青空が広がっていた。
 なぜなら、俺が仰向けに地面に横になっていたからだ。……なんでこんな所で寝てるんだ、俺?
「あんた誰?」
 と、突然悩んでいる俺の顔をまじまじと覗き込んでくる女の子が言ってきた。
 俺と年はあまり変わらなそうで、黒いマントの下に白いブラウス、ぐれーのプリーツスカートを着た体をかがめ、(あき)れたように覗き込んでいる。
 俺もその顔を見返すと……かなり可愛い。
 桃髪がかったブロンドの神と透き通るような白い肌を舞台に、くりくりと鳶色(とびいろ)の目が踊っている。
 桃色……つまりピンクの髪の毛ということは、外人であることは間違いない。だって、染めているように見えないし……ハーフかな?
 しかし、この女の子が着ている制服はどこの学校の服だ? 見たことないぞ、こんな制服。
 返事をするために頭を上げる。
「誰って……。俺は平賀(ひらが) 才人(さいと)
「どこの平民?」
 平民? と、疑問に思ったが、頭が(ひど)く痛いので頭を振ると、ついでに自分たち以外の人間が沢山いることに気づく。
 豊かな草原が広がり、遠くにヨーロッパの写真で見るような石造りの大きな城があり、その人物たちも黒いマントを()けていて……なんだかファンタジーの世界みたいだ。
 しかも、その人物たちは女の子と同じ制服を着て、手に何か棒のような物を持っていた。俺はアメリカンスクールにでも迷い込んでしまったのか?
「ルイズ、『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出してどうするの?」
 誰かがそう言うと、ルイズと呼ばれた少女以外が全員笑い始めた。
「ちょ、ちょっと間違っただけよ!」
 その笑いを聞き、その女の子が鈴のようによく通る声で全員に向けて怒鳴(どな)る。
「間違いって、ルイズはいっつもそうじゃん」
「さすがはゼロのルイズだ!」
 誰かがそう言うと、少年や少女たちがどっと笑い始める。……もう爆笑だ、あれは……。
 まあそんなことはいいけど……、辺りを再度見渡してみるとココはアメリカンスクールではないっぽい。それらしい建物が見当たらないし……。
 なら、映画のセット? なんかの撮影? ……それにしては道具を誰も持ってなくて、しかも広すぎる。
 そんなことを考えていると、
「ミスタ・コルベール!」
 ルイズと呼ばれていた女の子が、人垣に向かって叫ぶ。すると人垣が割れて、中年の男性が現れた。
 な、なんだあの格好!? 大きな木の杖持って、真っ黒なローブを着てるけど……あれじゃあ、まるで魔法使いだ。大丈夫か、あの人?
 ちょっとココおかしいぞ! と思い、次は俺の近くをよく見渡した。
 すると、今まで持っていた荷物があった。
 良かった。ちゃんと俺の荷物はあった。……ということは、少なくともこいつらは泥坊(どろぼう)のような目的で俺をココに連れてきたわけじゃなさそうだ。
 そのことを2秒かかっているか分からない速さで確認していると、中年男性とルイズという少女が気になることを話し始めた。
「なんだね。ミス・ヴァリエール」
「あの! もう一回召喚させてください!」
 そしてその言葉に男性は首を横に振る。
「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」
「どうしてですか!?」
「決まりだよ。二年生に進級する際に、君たちは『使い魔』を召喚することになっている。今、やっているとおりだ。――それによって現れた『使い魔』で、今後の属性を固定し、それにより専門課程へ進むのだ。一度呼び出された『使い魔』は変更できない。何故(なぜ)なら、この使い魔召喚は神聖な儀式だからだ。(この)(この)まざるにかかわらず、彼を『使い魔』にするしかない」
「でも! 平民を『使い魔』にするなんて聞いたことがありません!」
 ルイズがそう言うと、再び周りが爆笑する。ルイズは笑っている人たちに(にら)みつけるが、それでも笑いは収まらない。
 そんな笑い声たちも、今の俺の耳には聞こえなかった。
 使い魔召喚? 彼を使い魔にするしかない? 何言ってるんだ、この人たち?
 でも、何かいやな予感がする。
「これは伝統なんだ、ミス・ヴァリエール。例外(れいがい)は認められない。彼は……」
 そこまで言って中年の魔法使いモドキが俺に指を差し。
「ただの平民かもしれないが、呼び出された以上、君の『使い魔』にならなければならない。古今東西、人を『使い魔』にした例はないが……、春の使い魔召喚の儀のルールを優先する。彼には君の『使い魔』になってもらわなくてはな」
「そんな……」
 話を聞き、ルイズはがっくりと肩を落とす。
 今の内だ! と思い、俺はそ~と逃げ出そうとすると――
「さて、では、儀式を続けなさい」
「えー、彼と? ……って、こら! 逃げるな!」
「ぐえっ!」
 ――ナイロンパーカーの首元をルイズに捕まれ、逃げるのに失敗した。
「そうだ。早くしないと、次の授業が始まってしまうじゃないか。君は召喚にどれだけ時間をかけたと思ってるんだい? 何回も何回も失敗して、やっと呼び出せたんじゃないか……いいから早く契約したまえ。今みたいに逃げられてしまうよ?」
 中年に(あと)に合わせて、そうだそうだ、という周りの声が飛ぶ。
 そして、ルイズが困った顔で俺の顔を見つめてきた。
 な、何されるんだよ、これから……。
「ねえ」
「な、なんだよ」
「何、その口の聞き方……って、今はいいわ。それよりあんた、感謝しなさいよね。――き、貴族にこんなことされるなんて、普通は一生ないんだから」
 それからルイズは諦めように目をつむり、手に持っていた小さな杖を、俺の目の前で振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を(つかさど)るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」
 ルイズの口から、朗々と呪文(じゅもん)らしき言葉が出始め、俺の額に杖が置かれる。
 そして俺の顔に左手を置き、ゆっくりと唇を近づけてきた。
「お、おい……何する気だよ……。や、やめ……」
「いいからじっとしてなさい」
 起こったような声でルイズは言ってくる。……そんな事言っている間に、さらにルイズの顔が近づく。
「ちょ、ちょっと、えと……俺……その……心の準備とかが……」
「ああもう! じっとしてなさいって言ったじゃない!」
 また逃げようとする俺を、ルイズはもの凄いスピードで顔を近づけてきて――
「んっ……」
 ――キスしてきた。
 俺の唇とルイズの唇が重なり……柔らかい唇の感触に戸惑いながら数秒が経ちルイズが、顔を俺の顔から離していく。
「終わりました」
 そしてその離れていった顔は、赤くなっていた。……照れていることが一発でわかる。
 な、なんだこいつ……いきなりキスされて、訳も分からないで照れているこっちの身にもなれっつうの……。
 そんなことを俺が考えている中で、中年男性が嬉しそうに言った。
「『サモン・サーヴァント』は何回も失敗したが、『コントラクト・サーブァント』はきちんと出来たね」
「相手がただの平民だから『契約』出来たんだよ」
「そいつが高位の幻獣だったら、『契約』なんか出来てないよ」
 何人かがそう言った後、ルイズがそいつらに睨みつけてから……モンなんとかと『香水』だの『洪水』だの言い合っていたが、今の俺はそれどころではなかった。
 体が……熱い……。
 あまりの熱さに立ち上がる。そして立ち上がった俺を見て、
「すぐ終わるわ。『使い魔のルーン』が刻まれるだけだから、待ってなさい」
 と、言ってきたので『刻むな! 俺の体に何をした!』とでも怒鳴りたかったが、ルイズの言ったようにすぐに熱さが収まり、特に熱かった左手の甲を見る。
 するとそこには文字みたいのが刻まれていた。多分、これがルーンなんだろう。
「ふむ……珍しいルーンだな」
 俺がルーンを見ていると中年が近づいてきて俺のルーンを見た後、そう言った。
 しかしすぐにみんなに向かって、
「さてと、じゃあみんな教室に戻るぞ」
 と、言った後、宙に浮いく。……さらに、それに続いて他の人たちも浮き始める。
 俺は開いた口が塞がらなかった。
 と、飛んだ!? ワイヤーか何かか? でも、そんな物見えないし……じゃあ、あれって……。
「ルイズ、あなたは『フライ』はおろか、『レビテーション』もまともに出来ないんだから、歩いてきなさいよね――そんなあなたには、その平民はお似合いよ」
 飛んでいく生徒の一人がルイズにそう言い残し、あれだけの人が一気(いっき)にいなくなった。そして――
「あんた、なんなのよ!」
 ――二人きりになった瞬間、ルイズが俺に向かって怒鳴ってきた。
「それはこっちの台詞(せりふ)だ! いきなりこんな(わけ)の分からない所にいたあげく、体に何かさせるわ、人が空を飛ぶわ……。ホント、何なんだよお前たち! ココは何所(どこ)なんだーっ!!」
 流石(さすが)に俺も訳がわからず、最後の方はもはや俺の心の叫びだった。
 その俺の心の叫びを聞いて、ルイズは呆れたような顔で言ってきた。
「ったく、どこの田舎(いなか)から来たのかしらないけど……いいわ、説明してあげる」
 『田舎? ココの方が東京より田舎じゃないか!』……とも思ったもだが、ココはどう考えても日本じゃなさそうなので、ルイズの話を大人(おとな)しく聞くことにした。
「この国の名前はトレステイン! そしてここはかの高名なトレステイン魔法学院よ!」
「……はい? ……ということは、さっきの空を飛んでたのって……魔法?」
「そうよ。そしてそこのメイジであるわたしは、二年生のルイズ・ド・ラ・ヴァリエールよ。今日からあんたのご主人様だから、しっかりと覚えておきなさい!」
 (えら)そうに喋るルイズの言葉を聞き、自分の体からみるみる力が抜けていくのが分かる。
 さっきまで中年たちが言ってた『召喚』、そして『魔法学院』に『トレステイン』という知らない国の名前。嫌な予感しかしない。
「なあ、ルイズさんよ……」
「なによ」
「俺……ホントに召喚されたの?」
「何度もそう言ってるじゃない。口がすっぱくなるほど。……もう、諦めなさい。わたしも諦めるから。……はぁ、なんでわたしの使い魔がこんな()えない平民なのかしら……。もっとカッコいいのがよかったのに……ドラゴンとか、グリフォンとか、マリティコアとか。それでなくても、せめてワシとか、フクロウとかの方が……」
「ド、ドラコンにグリフォン? ……それって、ど、どいうことだ?」 
「いや、それが使い魔だったらいいなぁって、そう思っただけよ」
 な、何言ってんだこの子は……。
「そ、そんなのホントにいる訳ないだろ?」
「いるわよ。なんでいないことになってるの?」
「……うそ……だろ? は、ははは……」
 そんなのが本当にいるとするなら、もう笑うしかない。現にもう、乾いた笑いが止まらなくなっている。……そんな俺のことを見ながらルイズが笑わずに、呆れたような声で独り言のように言った。
「……まあ、あんたは見たことないのかもしんないけどね」
 その言葉をちゃんと聞こえた俺。今の感じはとても冗談を言っているように見えない。
 さっきまでのファンタジーみたいな単語と、飛んでいった人たちのことを思い出し、嫌な方に考えが走り始めた。それにつれ、俺の背筋が寒くなってきて、冷や汗が流れる。
 確認の為に、ルイズの肩に手を置き俺は聞いた。
「お、お前ら、マジで魔法使い?」
「そうよ。わかったら、肩に置いた手を退()かしなさい! 本来なら、あんたなんか口が聞けるような身分じゃないんだからね!」
 俺は手を退かすと同時に、腰の力が抜け地面に膝をつける。
 ……夢だ。これは何かの夢に違いない。……それなら……。
「ルイズ」
「呼び捨てにしないで」
「じゃあ、ルイズさん。お願いがある……殴ってくれ」
「……え?」
「もう一度言うぞ。……俺を思いっきり殴ってくれ」
「な、なんで?」
「そろそろ夢から覚めたい。いい加減、夢から覚めてインターネットがしたいんだ」
「インターネット?」
「インターネットも知らないのか、俺の夢の住人は……。まあいいや、気にしなくていいから、俺を早く殴ってくれ」
「……よく分からないけど、殴ればいいのね?」
 そう言いながらルイズは(こぶし)を握り締める。
 お願いを聞いてくれるんだから、夢の住人だけど一応お礼はいっておこう。
「おりがとう。……それじゃあ、お願いします」
 拳を受け入れる体勢になった俺に向かって、ルイズは拳を振り上げながら、(けわ)しい顔で言ってきた。
「……なんで、あんたはのこのこと召喚されたのよ? このヴァリエールの三女が……。由緒(ゆうしょ)正しく(ふる)い家柄を誇る貴族のわたしが、なんであんたみたいのを使い魔にしなくちゃいけないの? ……契約の方法がキスなんて、誰が決めたの?」
「知らん。むしろ俺が聞きたいくらいだ。……いいから、早く殴ってくれ。悪夢から覚めたい……」
 俺の今思う正直な気持ちを普通に伝えた。……マジで知らねえよ。魔法が実在する事だって知らないんだから。
「……悪夢? それはこっちの台詞(せりふ)よ!」
 俺の言葉を聞いて頭にきたのか、ついに俺に拳が落とされ、頭を思いっきり殴られる。
「ファーストキスだったんだからね!」
 恨みこめたルイズのパンチのあまりの威力に、俺もそうだよ……と思いながら、意識が薄れていった。



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 高校二年生の十七歳。運動神経、普通。成績も中の中。彼女いない暦十七年の俺は、つい先ほど突然あった女の子からキスをされた。
 今日はノートパソコンを修理しに、ゴールデンウィークなので母さんの実家に一週間ほど遊びに行く為、肩にかける式の大きくて重いバックと小さ目のバックを一つずつ肩にかけながら、両肩にバックというヘンなスタイルで修理の店に向かった。
 そしてノートパソコンを受け取りバックにしまいながら、これでインターネットが出来るー……なんて思っていたら、その店の『大売出しがある』と店員に言われてくじ引きがあったので、引くと――二等のサバイバル道具が当たった。
 懐中電灯にナイフとマッチ、お米に乾パンに水、カップラーメンに調味料などといった、災害があった時に家族で一週間ほど生きられるように色々な道具が入ったセットだ。
 それを母さんの実家まで一駅だからということで、送ってもらわずに持って駅に向かい始めた。……歩いて五分もしない内に後悔したけどな。重すぎて。
 そうやってやっとの思いで駅まで歩いていると、目の前に突然光る鏡のようなものが現れた。
 今思えば、その鏡に興味をもってしまったのが運のツキだ。好奇心に身を任せて指先を少し鏡のようなものに触れたら、引きずりこまれて、その後に電気ショックのようなものが体を走り、気絶して目が覚めたら――ファンタジーな世界が広がっていた。


「……それ本当?」
「嘘をついてどうする」
 ルイズが疑わしい目で俺を見ながら言ってきた。手には夜食のパンが握られており、俺と二人でテーブルを挟んだ椅子(いす)に座っている。
 俺が目を覚ますと、すでにこの十二畳ほどの大きさのルイズの部屋にいた。
 覚ましてすぐに外を見てみると、すでに日が沈んでいて、月が二つ出ていた。……月が二つあった事から、ココは日本はおろか地球ですらないことを改めて実感させられる。
「信じられないわ」
「俺だって信じられないよ」
 ルイズの言葉に大いに乗っかる。俺もまだ夢なんじゃないかって思うよ、ホントに。
「別の世界って、どういうこと?」
「魔法使いがいなくて、月が一つしかない」
「そんな世界がどこにあるの?」
「俺の元いた世界がそうなんだよ!」
「怒鳴らないでよ、平民の分際で」
 わたしは偉いから、わたしに向かって怒鳴るなという態度でルイズが言ってきた。
「誰が平民だ!」
「だって、メイジじゃないんでしょ? だったら平民じゃない」
「なんでメイジじゃなきゃ平民なんだよ?」
「もう、本当にあんたって、この世界の人間なの? そんなことも知らないなんて、どんな田舎から来たのよ」
「だから違うって何回も行ってるんですけど……」
 俺がそう言うと、ルイズは呆れたようにテーブルに肘をつく。
『まだ言ってるよ、この使い魔……』みたいなことを考えてるんだろうなぁ。
 俺だっていい加減帰りたい。親がすごく心配しているはずだ。
「ルイズ……お願いだ……」
「なによ」
「家に帰して……」
「無理」
 この女、即答しやがった!
「な、なんで!?」
「だってあんたはもう、わたしの使い魔として契約しちゃったの。あんたがどこの田舎者だろうが、別の世界から来た人間だろうが、一回使い魔の契約をしたからにはもう動かせない」
「ふざけんな……」
「わたしだってイヤよ! なんであんたみたいのが使い魔なのよ!」
「なんで文句言われながら使い魔なんてやらなきゃならないんだよ……。だったら帰してくれよ……」
「本当に別の世界から来たって言うの……?」
 ルイズが困ったように、俺に再び聞いてくる。
「ああ」
 俺が(うなず)いて返すとルイズは、
「なら、なんか証拠を見せてよ」
 と、言ってきた。
 俺は椅子から立ち上がり、親切にすべて持ってきてもらっていたバックに近づき、あける。そしてノートパソコンを取り出した。
「なにこれ」
「ノートパソコンだ」
 そう言ってパソコンを起動すると、修理したばかりのノートパソコンが光り出した。
「確かに、見たことないわね。なんのマジックアイテム?」
「魔法じゃない、科学だ」
 起動画面の黒いところが終わり、デスクトップが表示されてより輝きを放ったパソコンを見て、ルイズが驚いたように(つぶや)いた。
「うわあ、なにこれ?」
「ノートパソコンの画面だよ」
「綺麗ね……。(なん)の系統の魔法で動いてるの? 風? 水?」
「だから、科学だって」
 俺の言葉を聞いて、ルイズはきょとんとした無邪気な顔で、俺の顔を覗き込んでくる。
「カガクって、何系統? 四系統と違うの?」
「だから、魔法じゃないって!」
 俺が手を振りながら講義すると、ルイズは自分のベットに深く座り込み、足をぶらぶらし始める。そして、済ました顔で言ってきた。
「ふーん……でも、これだけじゃ分からないわよ」
「なんで? こんな物、こっちの世界にあるのか?」
「……ないけど」
 ルイズが口を(とが)らせる。……絶対信じてないな、この顔は。
「無いんだったら、信じてもいいだろ! なんなら、もっと(ほか)の物を見せようか!?」
 俺は自分の荷物に指を差しながらルイズに言う。こちとら大変な思いをして持ってたんだ。こっちの世界では無い物も沢山あるだろう……多分。
 するとそんな俺を見て、ルイズは長い髪を振り乱して、頭を振った。
「わかったわよ! 信じるわ!」
「ほ、本当か!?」
 腕を組んで、くいっと首をかしげながらルイズが怒鳴って言った。
「だってそう言わないと、あんた凄くしつこいんだもん! これ以上ヘンな物見せられるのも嫌だしね!」
「……まあ少し納得(なっとく)出来(でき)ない所もあるけど、分かってくれたならいいや。……それじゃあ、家に帰して?」
「だから無理よ」
「どうして!?」
 ルイズが困った顔で俺に向かって、俺が一番聞きたくない言葉を告げる。
「だって、あんたの世界とこっちの世界を繋ぐ魔法なんて――『ない』もの」
「……え? な、なら俺はどうしてこの世界にやって来れたんだよ!」
「そんなの知らないわよ!」
 帰る方法が『ない』と聞かされ声を大きくあげると、ルイズも声を大きく出す。その後、少しの間俺たちは睨みあう。……そしてルイズが目を()らしたと思ったら、真面目な声で言ってきた。
「あのね……ほんとのほんとに、そんな魔法はないのよ。大体、別の世界なんて聞いたことがないもの」
「召喚しといて、それはないだろ!」
「召喚の魔法……つまり『サモン・サーヴァント』はハルケギニアの生き物を呼び出すものよ。普通は動物や幻獣なんだけど……人間が召喚されるなんて始めて見たわ」
「他人事のように言うな。……だったらもう一度、その召喚の魔法を俺にかけろ」
「どうして?」
「帰れるかもしれないだろ?」
 俺の言葉を聞いた後、一瞬悩んだような顔をしたが、すぐに首を横に振った。
「……無理ね。『サモン・サーヴァント』は呼び出すだけよ。それに今は唱えたところで発動しないわ。再び唱える為には――呼び出した使い魔が死ななきゃいけないの」
「……マジで?」
「……死んでみる?」
「いや、いいです……」
 はぁ……マジで帰れないのかよ。それに、手にはヘンなのは刻まれるし……本当に使い魔になっちまったんだな。
 そう思いながら自分の左手に刻まれたルーンを見ていると、ルイズもそのことに気が付く。
「ああ、それね。わたしの使い魔です――っていう、印みたいなものよ」
 そう言ってルイズは立ち上がりながら、腕を組む。……その姿は、ムカつくけど本当に可愛(かわい)らしい。
 こんな可愛い子の使い魔なら、普段の俺なら飛び上がって喜んでいたかもしれない。……ここが地球ならだけど。
 でも、(しばら)くはこの世界で暮らさなきゃならないし、この世界には行く()てもないので……。
「……わかった。しばらくはお前の使い魔とやらになってやる」
「なによそれ」
「なんだよ。文句あんのかよ」
「口の聞き方がなってないわ。『なんなりとお申しつけください、ご主人様』でしょ?」
 得意げに指を立てて言っているのだが、流石(さすが)にそれは嫌だったので、話を逸らすことにした。
「でもよー、使い魔って具体的に何をやるんだ?」
 俺の知っているマンガとかで出てくる使い魔って、具体的には何もしないで、ご主人の肩に乗っているだけだったような記憶がある。
「……まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」
「……それで、俺の見てるものは見えてるのか?」
「見えないわよ。……あんたじゃ無理みたいね、わたし何も見えてないもん」
 ……そうだろうと思ったよ。
「それから、使い魔は主人の望む物を見つけてくるの。例えば秘薬とか……特定の魔法を使うときにしようする触媒(しょくばい)を見つけてきたりするんだけど……。あんたじゃ無理ね、硫黄(いおう)とかコケとかの存在もしらなそうだし……」
 硫黄とかは学校で習っているから知ってはいるけど、見つけるのは無理そうなので、「無理だ」と正直に言った。
 ルイズはそこまで話してながらイライラしてきたのか、苛立(いらだ)たしそうに言葉を続ける。
「そして、これが一番大事なんだけど……使い魔は主人を守る存在なのよ! その能力で、主人を敵から守るのが一番の役目! ……でも、あんたじゃ無理ね」
「……人間だからな」
 魔法使いの相手はおろか、さっきルイズが言ってた『ドラゴン』とかにもとてもじゃないが勝てる気がしない(見たことないけど)。
「強い幻獣だったら並大抵の敵には負けないんだけど……あんたはカラスにも負けそうじゃない」
「うっせ」
「だから、あんたに出来そうなことをやらせてあげる。洗濯(せんたく)掃除(そうじ)、その他雑用」
「ふざけんな。その内絶対に帰る方法を見つけてやるからな!」
「はいはい。そうしてくれた方が、わたしもありがたいわよ。あんたが別の世界に消えれば、次の使い魔が召喚出来るんだもの」
「こ、この……」
「さてと……(しゃべ)ってたら、眠くなっちゃったわ」
 そこでルイズはあくびをしながら言った。そういえば……
「俺はどこで寝れば良いんだ?」
 ルイズは当たり前のように、床に(ゆび)()す。
「犬や猫じゃないんだけど……」
「しょうがないでしょ。ベットは一つしかないんだから」
 ルイズはそう言うと、俺に毛布を一枚投げてきた。そしてベットから立ち上がり、そしてブラウスのボタンに手をかけ――一個ずつボタンを外して、服を脱ぎはじめた。
「なな、なにやってんだよ!」
 俺は慌てた声で言うと、ルイズはきょとんとした顔で言ってきた。
「寝るから着替えてるのよ」
「俺のいないところで着替えろよ!」
「なんで?」
「だ、だって……まずいだろ、色々と」
「まずくないわよ。使い魔に見られたところで、なんとも思わないわ」
 な、なんだそれ。まるで犬か猫扱いだ。
 俺は気に入らないので毛布とって頭からかぶり、横になりながらこいつのことを可愛いと思ったことを取り消した。気に入らない。こんな奴の使い魔をやれだって……冗談じゃない。
 すると、横になった俺の上に何かが飛んできた。
「じゃあ、これ、明日になったら洗濯しておいて」
 なんだろう、と思い手にとって見てみると、ルイズのパンツ……いわゆるパンティというやつだった。……ふざけやがって!
「なんで俺がおまえの下着を! 嬉しいけどふざけるな!」
 思わず立ち上がってルイズの方へ向くと、大きめのネグリジェを頭からかぶろうとしているところだった。
 淡いランプの光でルイズの肢体(したい)があらわになっているが、薄暗くてはっきりとは見えない。でも、本当に恥ずかしくなさそうだ。……なんか、男として否定された気分だ。
 そしてネグリジェを着て、ベットに横になったルイズに決定的なことを言われた。
「誰があんたを養うと思ってるの? 誰があんたのご飯を用意すると思ってるの? ここは誰の部屋?」
「うぐっ!」
「あんたはわたしの使い魔でしょ? 洗濯、掃除、雑用は当然じゃない。……それじゃあ、お休み」
 そう言って指をぱちんと弾いてランプを消して、すぐに寝てしまった。
 ね、寝付くのはや! ……ダメだこいつ。根っから俺を男だと思ってない。
 でも、凄く気に入らないこともあるけど、ルイズが言ったことも事実だ。いくらサバイバル用の非常食があるからって、そんなに長い間は持たない。
 とりあえず非常食は長持ちするから緊急用で、こいつにとっては俺は使い魔らしいからメシは食べさせてくれるらしい。そいつを食べさせてもらっていこう。
 携帯とパソコンの充電ももったいないから電源きっておこう。さっきのランプを見る限り、この世界じゃ電気なんてなさそうだ。
 他にもとりあえず帰る方法なんかも、俺は横になりながら前向きに考えるようにした。すると眠くなってきたので、今日は寝ることにした。疲れたし。

 こうして、俺の使い魔としての生活が始まった。




 
 

 
後書き
原作と同じようにストーリーを進めました。
たまにアニメのストーリーも入れるかもです。よろしくお願いします!
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