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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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GGO編
  百十三話 問いかける少女

 
前書き
はい!どうもです!

さて、今回は出撃前にちょっとしたお話。
出来がいまいちな印象なのですが……

ど、どうぞ! 

 
「うっす、戻ったぜ」
「あ、リョウ!」
「兄貴、どうだった?」
「状況、どんな感じ!?」
「おおう……」
洞窟へと入ってきたリョウに、入れ食いのように他三人が口々に問う。今この場面を見ている者が居るとして、傍から見れば女子会か何かのようにも見えるそれなのに、実際の所は男女二人ずつなのだから、画面の向こう側からすれば相当にややこしい紛らわしいだろうなと、リョウは思った。
と、そんな思考を頭の隅に置いて、少し真剣な表情に戻って、リョウは三人の問いに答える事にした。

「生き残り自体は大分減ってたぜ。後、六人だな。俺と、此処に居る三人と……だれか一人、俺達以外に隠れてる奴が居るか……あるいはもう一人死んだかだ。光点の数があわねぇ」
「っ……!」
「うそ……」
「また、一人……?」
「あくまで可能性だがな……まぁ、シノンとアイリ、両方に死銃の肩割れが居る可能性を考えりゃ、三人目が居てもおかしかねぇ。考えとくに越したことねぇってことだ」
表情を凍らせて尋ねた三人に、リョウは頷いて答えた。そうして、少し頬を掻いてから更に続ける。

「で、面倒臭ぇ事に、かざ……じゃなくて、闇風。後は、透明化してる死銃だな。脱落してる奴の光点含めっと、合計二十八、九だから……これで全員の筈だ」
言いきると、三人は神妙な顔でコクリと頷いた。

「さて、んじゃ一応プランの確認するぞ。先ず、闇風との方は……アイツには悪いが、脱出チームの相手だ。廃墟地域の向こう側に居るから、車で移動してからが勝負だな。で、二人が出てから少ししたら、俺とキリトも出る。さっきのスキャンでこの砂漠に来てる筈の死銃はもう脱出した連中を追う手段はねぇから、徒歩で追うしかねぇ。けどその前に、俺達が砂漠内でアイツを見つけ出す。俺の耳とキリトの足がありゃ十分できるこった。後はお互い目の前の敵さん倒して終わりだ。もし名無しの誰かさんが俺達の前に現れたら……そん時は各自対処だ。大雑把だが此処までで何か質問は?」
三人の顔を見まわすリョウに、キリトとシノンが頷いた。しかし一人だけ……迷うような顔で、アイリが俯いて居る。

「……アイリ?」
シノンが問うと、アイリは相変わらず浮かない表情で少しの間岩の床を見つめた後……リョウを正面から見つめた。

「あ、あのね、リョウ……」
「あん?」
「キリト君と、私の役目……逆にしてほしい」
「なっ……!?」
「…………」
驚いたように声を上げたのは、リョウではなくキリトの方だった。慌てたようにアイリに歩み寄ると、焦り顔で言う。

「あ、アイリさん、それは出来ないって、さっきシノンの時に確信した筈だ。もしアイリさんがあの銃に撃たれたら……」
「そ、それは分かってるよ!分かってるつもり……でも……」
俯き加減になったアイリに対して……その姿を腕組みをしながら見ていたリョウが聞いた。

「……理由は?」
「え……」
「あ、兄貴!?」
アイリが唖然として顔を上げると同時に、キリトが驚いたように振り向いた。リョウはふんっ、と鼻を鳴らすと、特に面白くもなさそうに言う。

「俺があんだけマジでシノンの説得してんの聞いててまだ言うんだ。理由くれぇは聞いてやる。そのかわし、くだらねぇ事は言うなよ」
「…………」
脅すような、低い声で言ったリョウに、アイリはコクリと頷くと、重々しく口を開く。

「……確かめたい事があるの」
「確かめたい事……?」
シノンが聞くと、アイリはもう一度頷く。

「あの日、私が、あの子と……アイリと話してた時、アイリは確かにこう言ってた。『教えてもらったの』……って」
「…………」
「……どう言う事?」
シノンが、訳が分からない。と言った様子で首をかしげた。アイリは真剣な表情で、リョウに問う。

「リョウなら、分かるよね……」
「成程……ラフコフを疑ってんだな、お前」
「あ……!」
「えッ……?」
ラフィンコフィンには、壊滅当時三十人を超えるメンバーが居た。しかし、何故それだけの数のメンバーが、殺人を快楽と感じるアウトロー集団として集まったのかという所に疑問を向けると、実はそれはある一つの結論へと、答えを導いてくれる。
即ち、ラフィン・コフィンリーダーである、Pohの存在だ。

彼の話術、強いては人心掌握術は、正直なところ、SAOに存在していた幾つものギルドのリーダーの中で、突出して高かったと言ってよい。
英語、日本語、スペイン語等、三ヶ国語以上の言葉を話す事の出来るマルチリンガルとして能力。そしてそれをフルに生かした、マシンガンのように立て続けに、スラング交じりにテンポよく話す、ある意味では美しくさえある独特の会話法。
そして、人の心の内を見透かし、その価値観を察する事の出来る読心術。
それらを駆使して、Pohは出会った者達の価値観を塗り替えるとともに、道徳心によるリミッターを緩め、自らと同じ殺人者(レッド)の道へと引きずり込んで行ったのだ。
此処まで言えばおわかりだろうが、アイリが疑っていると言うのは、つまり……

「私が、SAO時代に、あの子が居なくなってから、名前も知らない、手がかりも無い人を二人探したの」
「…………」
「それって……」
キリトの沈黙と、シノンの言葉に、アイリは少し苦笑気味に返す。

「一人は、アイリを殺した本人。つまり……リョウだよ」
「…………」
まっすぐに自分を見たアイリの瞳を、リョウは眼を反らす事も無く正面から受け止める。小さな言葉で、話したんだな。と問うて、キリトは思わずその言葉に頷いた。そうして、リョウと正面から見つめ合った……あるいは、睨みあったまま、アイリは言った。

「もう一人は……アイリを変えた人。アイリに、人殺しって言う選択肢を、示した人」
「…………」
「もしかしたら、逆恨みなのかもしれない……でも、それでも私は……今もその人を探してる」
「……何の、為に?」
シノンが、更に探るようなまなざしで聞いた。彼女から見たアイリの、その横顔は一瞬自嘲気味に笑うと、首を小さく横に振る。

「……わかんない」
「え……」
恨みごとを言うつもりなのか、あるいは復讐でもしたいのか……相手を探し出したとして、自分が何をするつもりなのか……それ自体、アイリには自分自身で分かって居なかった。
ならば何故、と聞かれればそれは……

「もしかしたら……思い込みたいだけなのかもね……」
「…………」
「私の知ってるあの子は、本当はあんな事考える子じゃない。きっと誰かに言われて、操られてただけなんだって、私の中の優しいあの子の事を生かしておくために、そう思いたいだけなのかも」
少し俯いて、笑うような、けれど決して笑っている訳では無く、泣くような……けれどもけして泣いて居る訳ではない言葉で、アイリは言った。

「勝手だね、私……仕方なかったのに、リョウの事恨んだり……自分の中の思い出の為に、もしかしたら全然罪も無い人を憎もうとしたり……私いっつも、誰かに罪をなすりつけようとしてる……」
「そんなこと……」
ない、と言い切る事は、口に出したキリトも出来なかった。それは、彼女の瞳が、あまりにも深く、悲しい色を宿していたのを見てしまったからだ。
そうして場に沈黙が降り……

「で……?それでもか?」
その沈黙を、リョウが破った。

「え?」
「それが分かってても、確かめてぇのかって聞いてんだよ」
「……うん」
その問いに、意外と言うべきか、アイリは即座に頷いた。

「それでも、確かめたい……だって……きっとあの子が死んだ事、ホントの事が分からなきゃ私……一生後悔するから」
それは、消えて行った彼女の友人として。そして、彼女を守る事の出来なかった、ふがいない自分を……きっと、生涯後悔し続ける事になるのだ。
それが嫌だとか、そう言う事ではない。ただそれではあまりにも無責任すぎるではないか。彼女(アイリ)が死ぬまでに感じた事、其処に至るまでの過程。全てが闇の中にあるままでは、あまりにもその死が寂しすぎるではないか……
そしてもし、その寂しさをほんの少しでも和らげられるかもしれないと言うのなら……

『そうすることはきっと……私の義務だ……』
「そうかよ……」
はぁ……と、一つ大きな溜息をつくと、リョウはキリトの方を向いた。キリトはかなり悩んでいる様子だったが、やがて重々しく頷く。

「わあったよ……キリト、お前とアイリ、交代(チェンジ)
「リョウ……!」
少し顔を明るくして自分を見たアイリを、リョウが睨む。

「ただし、俺の前にはあんま出るな。お前は銃で援護を基本にしろ。んでついでに言っとく。死ぬな」
「う、うん……」
半ば恫喝するような威圧感で言ったリョウに、二の句も次げずにアイリは頷いた。
と、其処にシノンが入り込む。

「ね、ねぇ……?」
「なんだ?……あ、まさかお前まで……」
「そうじゃなくて!……あの、だったら何もキリトの事こっちに来させなくても、私一人で闇風を……」
「んー……」
シノンの言葉に、リョウは考え込むように俯いた。と、顔を上げると、少し鼻を鳴らして言う。

「お前を信用しねぇ訳じゃねぇけどな……ただよ、遮蔽物の多い都市方面で戦う事を想定すんなら、お前一人よりアイリかキリトを付けた方が確実だと思うんだよな」
「それは……そうだけど……」
言いながらシノンは悩むように俯いた。恐らくは、アイリに生命の危険がある事を心配しているのだろうと思えた。と、詩乃が元来、他人とあまり積極的に関わることは無い物の、本質的には思いやりのある子であった事を涼人思い出した。

「まぁ、よ、仮に死銃とやりあってる時にアイツに乱入されて来たんじゃ、どんな危険があるかなんざ分かったもんじゃねぇ……それを考えりゃ、闇風には確実に止まってもらう必要がある訳だ……」
言いながら、リョウはシノンの顔を覗き込んで、ニヤリと笑った。

「だからまぁ、頼むぜ。お前らがアイツに勝つって信用してりゃ、俺は後ろ気にせずやれるんだ。そうなりゃ……先ず負けはねぇからよ」
「…………」
その全く揺らぎの無い言い草に、シノンはポカンと口を開け、少し苦笑して言った。

「凄い自信」
「まぁな」
相も変わらずニヤリと笑って言うと、シノンは軽く呆れたように肩をすくめて……アイリを見た。

「まったく……アンタも大概よ……死ぬかも知れないって言うのに……」
「あははは……なんか、ごめんね?色々と……」
窺うように言ったアイリに、少し不機嫌になったようにシノンは小さな溜息をついた。

「別に良いわよ……アンタが行くのはアンタの勝手だし……勝手……だけど……」
「?」
そ、そこで言葉に詰まったようにシノンは言うと、少しだけ目を反らした。

「ただ、その…………行くのは勝手だけど、死なないでよね……」
「……!」
その言葉に、一瞬驚いたように、アイリは眼を見開く。そして少しだけ俯いてフルフルと震えると……

「あっ、りがとー!!」
「きゃあっ!?」
いきなり正面切ってシノンに抱きついたかと思うと、何かスリスリしだした。殆ど反射的に無理矢理アイリをひきはがしたシノンを、アイリはうらめしそうに見る。

「ちょ、いきなり何してんのよ!?」
「うー!だってシノンずっと冷たかったのに行き成りそんな事言われたら驚いて抱きついちゃうよ」
「等と、意味不明な供述をしており……」
言ったアイリを傍目に、リョウはのんびりとそんな事を言っていた。やがてようやくリョウが助け船を出す頃には、戦闘をした訳でもないのにシノンは少々息を切らしていたのだった。

────

「さて、行ったか……」
「うん」
キリトとシノンを乗せたハンヴィーが走り去り、洞窟の入口を眺めながらリョウが言った呟きに、アイリが小さく答えた。

「さて、俺らもすぐ出るんだ。準備良いか?」
「うん」
岩壁に寄りかかって座ったアイリに振り向きながら言うと、彼女は軽く頷く。

「…………ふぅ」
溜息をつきつつ、リョウはアイリの正面に座り込んだ。と、そんなリョウに探るように、アイリが口を開いた。

「ねぇ、リョウ……怒ってる?」
「は?」
行き成りの発言に首をかしげて聞くと、

「あの……昔の事、二人に勝手に話した事……」
「あぁ、何だ、んなことか……」
ふん。と鼻を鳴らして、リョウは肩をすくめた。

「別に、お前とアイツらだけになったら、どうせキリトの事だから聞くだろうと思ってたしな……第一、お前がアイツらにどんな話しようが、そりゃお前の勝手だ。俺に口出しする権利はねぇよ」
「…………」
そんな答えに、アイリは少し黙り込む。
別にキリトやシノンの答えを知っている訳でもないのに、この動じ無さは本当に驚きである。アイリが見てきた中でも、リョウコウという人物は、本当に我のしっかりとした人間だった。
何を言っても動じず、初めて学校で自分と顔を合わせた時も、「あぁ、前に会ったな」程度でひとかけらの動揺すら浮かばせて来なかったのだ。その圧倒的な精神力には感服しているが……しかし同時に、やはりどうしてもアイリの中で強く頭に残っている“殺人者”としてのリョウのイメージを補強することにもなってしまって、一概に好意的な印象ばかりとは言えない。

「やれやれ……お前と二人きりっつーと、こないだの生徒会室ん時以来か……」
「そうだね……ねぇ……ひとつ、聞いて良いかな」
リョウの目を正面から見て言うと、彼は一瞬此方を見返してきた後……少し溜息をついて答えた。

「リョウは、人を殺したかった訳じゃ、ないよね?」
「……行き成りヘビーな質問だなオイ」
「聞きたいの……リョウはさっき、私に自殺みたいな事するなって言った……それってきっと、リョウが命を大切に思ってるって事だと思う……だから……「はぁ……何度も言わせんな」っ……」
真剣に言うアイリにしかし、リョウは遮るように溜息と共に言葉を吐き出す。

「死に目見るのに……殺しに好きも嫌いもねぇってんだよ。俺の答えは今も昔も変わらなねぇし、変えるつもりもねぇ……俺は、俺の命を守るためにあの女を殺した。そんだけの話だ」
「……そっか」
そう言うと、二人は再び黙り込む。そのまま数分の時が過ぎ……やがて……

「さて……行くか」
「うんっ……」
リョウが立ち上がるのと同時に、アイリも勢いよく立ちあがった。
その様子を見つつ、少しばかり呆れたようにリョウは言う。

「しかしまぁ……親友の為っつったってお前も怖い物知らずだよな」
「あはは……そんな事、ないよ」
しかしそれに、アイリは首を横に振った。

「怖いのは……今だって怖いよ……凄く、ね……」
「…………」
「でも、それ以上に知りたいってだけ……あ、えと、死んだりするつもりはないからね!?」
「当たりめぇだ、阿呆」
慌てたように言ったアイリに、リョウは馬鹿にするように言って、背を向けると歩きだした。アイリはシュンとしたように俯き、リョウの背に続く。と、そんな背中から、アイリに声が飛んで来た。

「自分で言ったんだ。お前、死ぬんじゃねぇぞ……何聞いても、前には出るな……お前に死なれちゃ、俺も困る」
「えっ……」
目を丸くして、顔を上げてリョウの背を見る。
その背中はそれ以上何も言わずに歩いていたが……何となく、何処か自分を守ろうとしてくれているようにも見えた。

「リョウ……」
「あん?」
「……ありがとね」
「意味分からん」
二つの人影が、洞窟の外へと進んで行った。
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

ダメだ……部活が忙しすぎて切れ切れ書いたから展開に勢いがない……

えっと、コラボ感想への返信は今日から明日に書けて行います!
ありがとうございました!

あ、そうだ!僕、今日で(所属的な意味で)大学生になりました!
さようなら!生徒としての僕!そして初めまして!学生としての僕!

きっと大学に入学すれば忙しくなるんだろうと思いますが、頑張っていきますのでよろしくお願いします!

ではっ! 
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