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魔法大戦リリカルクロウcross【Z】‐無印篇‐

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第3話『翠屋』

翠屋…

クロウは士郎から渡されたエプロンを装着していた。ジャケットは勿論、脱いで待機状態のブラスタもぶら下がっている。

「で、士郎さん…俺は何をすれば良いんだ?」

「ん…それじゃ掃除をしてくれないかな?大丈夫だよね?」

「勿論。それも俺の特技の1つだ。」
そして掃除を任されホウキを持つクロウ。まだ、開店時間前なので客はいない。

(ほう……手際が良いな。しかも、手が抜かれてない……)

翠屋は飲食物を扱う店なので店の衛生状態はかなり気をつかう。さらに、人の出入りが多いので汚れが溜まりやすい。
その店内を素早く的確に掃除していくクロウに感心する士郎。
数分後にはバケツとぞうきんを持ち出しぞうきん掛けを始めた…。

「クロウくん、君凄いね。」

「いえ、それほどでも…(まあ、チーフに頼まれる掃除に比べればこれくらい…)」


「よし、あと少ししたら開店だから少ないけど…」

そう言いながら士郎がクロウに出した物…

(これは…!)

長方形の紙が三枚…

クロウはこれが何なのか知っていた……

(これは……これは……!!)







(金!)



そう、この紙は紙幣…千円札という奴だ。

「まあ、だいたいこれくらいあれば好きなモノ買えるでしょ?今回は頑張ってくれたししばらく自由時間にしよう。」

「ヤッホーい!」

クロウは士郎の計らいに感謝し、思わず叫ぶほど喜ぶ。
 

だが、最後の言われた言葉がクロウを硬直させた。




 
 


「そうだ!なのはと一緒に行ってきてね。」







「え?」



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???…



研究施設らしき建物…


「竜馬、また勝手にゲッターを動かしたようだな?」

「…」

1人の少年が竜馬を問いただしていた…。外見は竜馬と同い年っぽいが身体は細身で熱血、というよりはクールという言葉が当てはまりそうだ。

「んだよ、隼人?文句があるならジジイに頼んで拘束なり、なんなりすれは良いじゃねえか。」

当の竜馬は反省の様子はない。これには少年…隼人も腹立たしくなってくる。

「貴様が何を調べるも勝手だがゲッターは三人で乗る物…つまりチームで動かすモノだ。」

「…」

「お前がいくら早乙女博士のお気に入りだろうがこれ以上勝手な行動をするならゲッターチームから外れてもらう。」






「その必要はない。」


「「!」」

突然、割り込んでる鈍重な声…。2人が振り向けば向こうからずんぐりとした白衣の老人が歩いてくる…。

「早乙女博士…」

「ジジイ…!」

彼こそが早乙女博士こと『早乙女賢』。クロウの上司であるトライアとはまた別の分野でマッド・ドクターである。

「竜馬、そして隼人よ…。貴様らに任務を与える。今回は竜馬の調べ物も許してやろう。」

「!早乙女博士…!!」

「異論は認めんぞ隼人?まあ、いずれにせよ貴様の調べ物と今回の内容はいずれ関わってくるであろうからな。」

「なんだと…!?」

早乙女博士の言葉に驚きを隠せない竜馬。そんな彼を見据えながら早乙女博士は任務について語り出す。

「任務の内容は『ジュエル・シード』と呼ばれるロストロギアの回収じゃ。管理局にバレると後々厄介なことになるからの、くれぐれも慎重にだ。だが、万一妨害があったりジュエル・シードが他の者の手に渡っていてら強奪しても構わん。手段は選ぶな!」






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海鳴市…

商店街…


クロウはなのはを引き連れ…というよりは彼女のお守りという形で翠屋近くの商店街に来ていた…。

「あれがお魚屋さんで…ええっと、あっちがお肉屋さん!スーパーも近くにあるんだけどここの商店街の方が安くて美味しいんだよ!」

なのはは必死に周りについて説明しているがクロウの関心は別にあった…。それは先程、士郎から貰った紙幣。
これさえあれば、運が良ければ自分がどこの世界にいるか分かるかもしれない。

(まあ、ブラスタが次元ネットワークに繋げられればだがな。)

だが、頼みの綱であるブラスタは不調。オート修理システムを発動させてはいるものの、復帰にはまだ時間がかかりそうだ。

「クロウくん、聞いてる?」

「ああ…。それと俺はクロウで良いぞ。」

「ええ~……だってクロウくん、私より年上みたいだし………なら、クロウお兄ちゃ………」







「わかった、クロウくんで良い!」


こんなやり取りをしながら気がつけば時は昼下がり…。なのはも『お腹空いたな~…』とぼやきだす…。

「クロウくん、お金もってる?」

「え?」

くるっと振り向き訊ねるなのは。その笑みは天使のようだがクロウには悪魔に見えた。

(金…)

たしかにある。自らの手に握り締められている三千円…。だが、ここで簡単に使ってしまって良いのか?この世界の通貨の価値もいまいち解らないし、万が一……






「おじさん、まぐろ饅2つ下さい!」

「はいよ!」






とか考えていたが時既に遅かったりとかする…。








数分後…


海鳴市・某公園…


「んん~!美味しい!」

「…」

なのはは大好きなまぐろ饅を頬張り、クロウは小銭だらけになった所持金を暗黒面な顔をして見つめている…。

「クロウくん、食べないの?」

そんなクロウに無垢な笑顔を向けるなのは。自分が原因だと露とも思わず……
(買っちまった物はしょうがないか…)

結局、仕方ないとクロウはまぐろ饅に口をつける。

ああ…なんて美味しいんだろう…。こんな食事…したのは何時以来か……

「クロウくん、泣いてるなの?」

「ああ……これが自分の血と汗の味なんだなって…」

「?」

思わず涙を流すクロウに首を傾げるなのは。無理もない、まだ彼より年下の幼い彼女がこんな彼ならではの比喩が理解できる訳がない。
「クロウくんの血と汗ってまぐろ饅みたいに美味しいの?」

「はは…んな訳ないだろ。」

「??」










【助けて!】




「「!」」
その時、クロウとなのはの頭の中に声が響く。おそらく少年…そして、クロウはこの声には聞き覚えがあった。

(確かこの声…スクライア!)

自分が船に乗った時、一緒にいた少年、ユーノ・スクライアの物だ。つまり、それは彼はワームホールに巻き込まれながらも生きておりこの近くにいるということだ。

「あれ…今の……」

「!」

「あ、待ってクロウくん!」

この声に戸惑うなのはであったがクロウはそんな彼女に目もくれず、声の発信元に急ぐ。なのはもまたその後を追う…。

「どこだ!どこだ、ユーノ!」

【ここです!】
近くの藪を必死に掻き分け彼を捜すクロウ…。

そして…







「む?」

見つけたのは一匹の首から赤い真珠(?)を紐で引っさげて倒れているフェレットらしき生物。

「ユーノ…スクライアなのか?」

【その声!確かクロウさんですね!】

どうやらこの生物があのユーノという少年なのだらしい。クロウを見るや否や嬉しそうに首をもたげる。
「お前…どうしたんだその格好…」

【…緊急時ですので………】

何はともあれ、再開を果たしたことを喜ぶ2人であった…。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 
そして、クロウやなのはと別の次元世界…


1人の少女が自宅の電話にかじりついていた…。クロウが助けた少女、箒である。

「だ、だからね…調べてほしいの!」

どうやら何か頼み事をしているよう…。そして、電話の相手は…




 

「待っててね箒ちゃん…。お姉ちゃんがすぐに見つけてあげるから。」








彼女の姉、束である。


(クロウ・ブルースト…血祭りにあげてやる。)

口と心が真逆ながら愛すべき妹の声に笑顔で応える。

クロウ・ブルーストという妹を汚した存在をぶちのめす姿を目に浮かべながら……


 
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