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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第二章 A's編
  第五十四話    『救済と戦闘準備』

 
前書き
はやてSideです。そして士郎とシホもやってきます。 

 






Side 八神はやて


「眠い……………眠い………」

私はどうしたんやろ。
なんや非常に眠いし、それになにか悲しい出来事があったようみたいやけどそれも思い出せへん。
眠りそうになるけど、だけど寝たら終わりだ、という思いで必死に起きてようとする。
それで目をなんとか開くとそこには銀色の髪に赤い瞳の女性がいた。
なんや知らないけど私、この人のこと知っているみたい。
でもとても悲しそうな目をしとる…。今にも泣き出しそうや。

「そのままお休みを、我が主。あなたの望みは、全て私が叶えます。目を閉じて、心静かに夢を見てください」

その人はそう言うとさらに眠気が襲ってくる。

でもと思う…。
私は、何を望んでいたのだろうと…。
でもそれも今は思い出せない。
とても大切なことだと思うのにモヤがかかったかのように思い出せない。

「夢を見ること。悲しい現実は全て夢となる、安らかな眠りを…」

その人はそう言うけど、

(それは、あかん…)

必死に眠気と戦う。
この人が言っていることは何かおかしい。
まだこんなところで眠ったらあかん。

「私の本当の、望みは…私が欲しかった幸せは…」
「健康な体。愛する者たちとのずっと続いていく暮らし…眠ってください。そうすれば夢の中であなたはずっと、そんな世界にいられます」

それはなんか違う。
私は首を何度も振り、手を握り締める。

「そやけど、それはただの夢や!」

意識が急にはっきりとし出す。
すると後ろから頭に誰かが手を乗せてきた。
この手には覚えがある。
この大きい手は…!

「―――そうだ。夢はいずれ醒めるものなのだからな」
「アーチャー!」
「よく頑張ったな、はやて…だがもう大丈夫だ」

アーチャーが笑みを浮かべて何度も私の頭を撫でてくる。
なんかくすぐったいけど、でもいい気分や。

「なぜだ! なぜお前がここにいる! アーチャー! ここは私と主だけの世界だというのに…!」
「何故と言われてもな。気づいていなかったのか? 騎士達の記憶を見ればすぐにわかるだろう」
「なに?………そうか、主に憑依していたのか」
「そうだ。ここまで来るのに苦労したがな。そしてはやてと守護騎士………そして闇の書、お前も救うためにやってきたのだ」

アーチャーが力強くそう宣言した。
でも、するとこの目の前にいる女の人が闇の書ということになるんか。

「それとはやてにもだが一つ言っておく。私の本当の名は衛宮士郎だ」
「衛宮士郎…それがアーチャーの本当の名前…」
「そうだ。…さて、では闇の書」
「…なんだ? お前はこれから何をしようとするのだ? 私を殺すのか?」

闇の書がそう言うと士郎は呆れた表情になり、

「先程もいっただろう。私は君達全てを救うとな。履き違えるな?
…と、言ってもここまで来れたのはいいが私のできることはないに等しい」
「ではなにをしに来たというのだ?」
「はやての背中を押しに来た、と言えばいいか?」
「なに…?」

私の背中を押しに来たってどういうことやろう?

「はやての中から見ていたがシグナム達はシホと私にはやてのすべてを任せて消えていった。
その想いに報いるためにもはやてにはある事をしてもらいたい」

…あ、思い出した。そうや。シグナム達は私に家族の誓いのような言葉をかけながら消えて行ったんや。
それで私は目に涙を溜める。

「はやて…お前にしてもらいたい事というのはな」
「うん、話して士郎…」
「闇の書の主として管理者権限を行使して、ここにいる闇の書と今外で暴れている闇の書の両方を止めてもらいたいのだ」
「え、でもどうやって…」
「それは直接闇の書に聞けばわかることだ。私もすべてを知っているという訳ではないからな。
しかし、掌握できなければこのままでははやては闇の書に飲み込まれて死んでしまうことになる。
おまけに暴走した後は外の世界を魔力がつきるまで破壊する権化とかしてしまうのだ」
「そ、それは嫌や! そないなことしたくない!」
「だから暴走するまでに闇の書に管理者権限の取得方法を聞き出すんだ」

士郎はそう言って闇の書に目を向ける。
それに闇の書は反応を示すが、

「……………無理です。私では暴走を止めることはできません。
自分ではどうしようもならない力の暴走。あなたを侵食することも、暴走してあなたを喰らいつくしてしまう事も、止められない…」

闇の書はそう言って悲しみの顔をする。
でも、なんとかしないといけない。
幸い覚醒の時に色々とわかった事がある。
ただ悲しんでいるだけじゃダメなんや。

「士郎がさっき言った言葉。『夢はいずれ醒めるもの』。もう私は十分休んだ。
どんなに幸せの夢を見ていようともそれは胡蝶の夢でしかない。
それなら私は現実を見て歩いていきたい。どんな辛い現実がこの先にも待っていようとも…守護騎士の皆や士郎…それにあなたがいれば乗り越えていけると思うんよ」
「主…」
「それに私はそんな事を望んでいない。だから…闇の書、あなたの力を貸して…!」

その時やった。なにかこの空間にヒビが入ったような感じがした。

「来たか…」

士郎がそう言う。

「馬鹿な…! 士郎はともかく取り込まれたものが夢から醒めて、しかもここまで侵入してくるなんて!」

誰かが入ってきたみたいや。
誰やろうと見てみるとそこには士郎と似たような格好をしているシホちゃんの姿があった。

「士郎のラインを辿ってきたけどたどり着いてよかったわ。そしてどうやら話はいい方向に向かっているよね」
「ああ。後は管理者権限を握らせればどうにかなるかもしれない」
「そう…割り込みのような形で悪いと思うけど夜天の魔道書、あなたははやてを救いたいんじゃないの?」
「それは…」
「戸惑うようなら前向きに開き直ってはやてを救う手を考えなさい!
あなたのマスターの一大事でしょうが!
それに主に従う魔導書なんだから主の命令には従うのが筋でしょ?」

そうや。私は闇の書の主。

「シホちゃんの言う通りや。
今のあなたのマスターは私や。マスターの言うことはちゃんと聞かなあかん」

途端、なにかが繋がった感じがした。
魔法陣が浮かび上がる。
それといつまでも闇の書なんてけったいな名前はいらない。
だから…!

「あなたに名前を上げる。闇の書とか呪いの魔導書なんて言わせへん。わたしが呼ばせへん!
私が管理者や。…私にならそれができる」
「無理です。自動防御プログラムが止まりません。管理局の魔導師が戦っていますが、それも…」

この子が何か言うけど聞いてあげない。
止めてみせる…!
そう強く念じる。
そして外への干渉を始める。

「外にはなのはとフィアがいると思うわ。二人に語りかけてみて。はやて」
「うん。わかったわ。外にいる方! 管理局の方、なのはちゃん! 聞こえますか!? そこのところにいる子の保護者、八神はやてです!」
『その声ははやてちゃん!?』
「うん、そうや。今ここにはシホちゃんもおるで!」
『お姉様もですか! 成功したんですね! さすがです!!』
「それでなのはちゃん、ごめん。その子をなんとか止めてあげてくれる?」
『えっ?』
「魔道書本体からはコントロールを切り離したんやけどその子がああしていると管理者権限が使えへん。
今そっちに出てるんが自動行動の防御プログラムだけやから」
『え? え?』

なのはちゃんはわかっていないようだ。
と、そこでシホちゃんが私の肩に手をのせて外に話しかけるようにした。
すごい…!

「なのは! フィア! まどろっこしい説明はなんだから簡潔に言うわ!
どんな方法でも構わないからその外の奴を魔力ダメージでぶっ飛ばしなさい!! そうすれば私達は全員外に出れる!」
『さっすがシホちゃん!』
『わかり易すぎます!』
「頼むわよ!」
『『はい!』』

どうやら分りやすかったらしい。
その間に私はこの子に名前を上げる。
少し恥ずかしいけど両手でこの子の頬を持ち、

「夜天の主の名において、汝に新たな名を贈る。
強く支える者、幸運の追い風、祝福のエール……………『リインフォース』」

瞬間、この空間が光に包まれて、

「…どうやら私達も外に出られるようね。リインフォース。いい名前をもらったわね」
「はい。私にはもったいないくらいの名前です。感謝します、我が主…」
「うん」
「それじゃまた外で会いましょう。はやてにリインフォース」
「待っているぞ」

シホちゃんと士郎がこの空間から先に姿を消した。

「新名称、リインフォース認識。管理者権限の使用が可能になります」
「うん…」
「ですが、防御プログラムの暴走は止まりません。管理から切り離された膨大な力がじきに暴れだします…」
「うん。まぁ、なんとかしよう…いこか。リインフォース?」
「はい。我が主…」


◆◇―――――――――◇◆


Side シホ・E・シュバインオーグ


どうやら外に出られたようだ。
見れば私の肩には士郎が鷹の姿でとまっている。
フェイトも脱出できたようである。
あっちはどんな夢を見ていたのかな。
そこにフィアが高速の勢いで私に抱きついてきた。

「信じていました! お姉様!」
「うん。それまでよく頑張ったわね。フィアも、なのはも」
「うん!」
『みんな気を付けて! 闇の書の反応、まだ消えてないよ!!』

そこにエイミィさんの警告の声が聞こえてくる。
これからが正念場という事ね…!

見れば目の前に黒いよどみが出来上がっている。
見ようによっては今にも破裂して厄災を振りまく球体のように見えるわね。

『みんな! 下の黒いよどみが暴走が始まる場所になる。
クロノ君が到着するまでむやみに近づいちゃダメだよ!』

エイミィさんの報告で私達はただそれを見守る。
それと上の方に白い球体が浮いている。
周りには四つの光が浮かんでいる。
きっとあれが…。
瞬間、球体は光をあげた。
そして光が収まったらそこには守護騎士達が立ち並んでいた。

「ヴィータちゃん!」
「シグナム!」

なのは達が声を上げる。

「我ら、夜天の主の下に集いし騎士」
「主ある限り、我らの魂尽きる事無し」
「この身に命ある限り、我らは御身の下にあり」
「我らが主、夜天の王、八神はやての名の下に」

騎士達がそれぞれ宣言を述べると中心の白い球体が割れて騎士の甲冑を着たはやての姿が現れた。
はやては杖をかかげる。

「夜天の光よ、我が手に集え。祝福の風リインフォース、セーットアップ!」

その掛け声とともにはやての甲冑にさらに追加の武装が施されていき闇の書と似たような格好になった。
士郎がはやての方へと飛んでいき肩にとまる。
守護騎士達ははやてにそれぞれ謝罪の言葉をのべる。
それにはやては柔らかい笑みを浮かべて大丈夫といった。
はやてが「おかえり、みんな…」と言うとヴィータが感極まったのかはやてに抱きついて泣き出した。
どこか和やかな空気が流れる。
私達はそんな空間を邪魔しないようにしながらも近くによる。

「なのはちゃんにフェイトちゃん、それにシホちゃんもごめんな。うちの子達が迷惑かけて」
「ううん」
「平気」

なのはとフェイトがそんな事はないと首を振る。

「シュバインオーグ…約束を守ってくれて感謝する」
「ええ。これでもう素直に感謝の言葉を受け取ることができるわ。はやてを救う事ができたんだから」
「ああ…」

それで和気あいあいな空気になるかもしれないところでクロノが出てきて、

「水をさしてしまって悪いが、僕は時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。
時間がないので簡潔に説明する。あそこの黒い淀み、闇の書の防衛プログラムがあと数分で暴走を開始する。
僕らはそれを、何らかの方法で止めないといけない。停止のプランは現在三つある。
一つ、極めて強力な凍結魔法で停止させる。
二つ、軌道上で待機している艦船アースラの魔導砲アルカンシェルで消滅させる。
そして三つ目は…」

クロノは私の方へと向き、

「シホのエクスカリバーによる絶大な威力で塵も残すことなく消滅させることだ。シホ、できるか?」
「まぁ、前までならできなかったけど…私は夢の中である人の意思を受け継いだ。それによってセイバーを呼び出せる。セイバー、出れる?」
『はい、大丈夫です。シホ』

そしてアンリミテッド・エアから光が飛び出しセイバーが姿を現す。

「なっ!? セイバー、なのか!」
「ええ。シロウは私がいる事を知るのは初めてでしたね。ですが今は…シホ、いきましょう!」
「ええ! セイバー!」
『ユニゾン・イン!!』

瞬間、私とセイバーはユニゾンして赤い聖骸布の甲冑は一瞬で解ける。
そして代わりにセイバーの青いドレスが纏われその上に騎士プレートがはめ込まれて行き私の姿はセイバーに近い格好へと変貌を遂げた。
髪の色も朱色から金色に変わり、目の色も碧眼へと変わった。

《Excaliburform.》

アンリミテッド・エアが聖剣エクスカリバーフォームへと姿を変えた。

「…よし。これでいつでも準備は万端よ」
「よ、よし…これで三つ目の手段も実行可能となったな」

クロノは少し驚いているようだけどなんとか平静を保てたようだ。

「それで、でもシホのエクスカリバーも威力が甚大だからこれ以外にもなにか方法はないか?
闇の書の主とその守護騎士達に聞きたい」
「えっと、最初のは難しいと思います。
主のいない防衛プログラムは、魔力の塊みたいなものですから」
「凍結させても、コアがある限り再生機能が止まらん」

これで第一プランは消えたことになる。

「アルカンシェルも絶対ダメだ! こんなところでアルカンシェルなんか撃ったらはやての家までブッ飛んじゃうじゃんか!」
「そ、そんなにすごいの?」
「発動地点を中心に数十キロ範囲の空間を湾曲させながら反応消滅させる威力を起こさせる魔法、っていうとだいたいわかる?」

ユーノの説明にとりあえずなのは達はその凄さをわかったらしい。

「あの、私はそれ反対!」
「同じく! 絶対に反対!」
「僕も艦長も使いたくないよ…でもあれの暴走が本格的に始まったら被害はそれより遥かに大きくなる」
「暴走を開始すると触れたものを侵食して無限に広がっていくから」
「それで第三プランだ。シホ、エクスカリバーの範囲はどれくらいだ?」
「限定して撃てば被害は海上だけだと思うけど…それだとやっぱり津波が起きちゃうからね。どこか別の場所で広い空間が必要になってくる…」
「あるではないか?」
「士郎…?」
「一つだけそんな場所があるじゃないか」
「まさか…!」
「そう…固有結界内部だ」

そうか。固有結界内部でエクスカリバーを使えば被害はなくて済む。
でも、

「でも、固有結界とエクスカリバーだけでも消滅は難しいと思うわ。そこは保険でどうするの?」
「やっぱり振り出しに戻ってくるわけか…」
「ええ。それに固有結界を展開するだけの魔力は…あるけど時間が少ないわ。でないと暴走してまた剣が体を突き破ってくる」

それで私はそれで残りのまだいくつか持ってきていた魔力の籠った宝石を取り出しそれを飲み込む。
その光景に全員は呆気にとられたらしい。
でもすぐに再起動して、

「シホちゃん! なんで宝石なんて飲んでるの!?」
「魔力補充の為よ。まだいくつかあるけどその中で一番魔力が篭っている宝石を飲ませてもらったわ。これで多分大丈夫…」
『シホ、私の魔力も使ってください。あれをするのならそれくらい持っていったほうがいいでしょう』
《私の魔術回路も直結して使用していいわ、シホ。これでかなり補えるはずよ》

セイバーとイリヤからも魔力を受け取りこれでかなり万全な状態になった。

「今、セイバーの声と一緒にイリヤの声が聞こえてきたな…」
「それも後で説明するから、ね?」
「…わかった」

それで最後の保険としてやっぱりアルカンシェルで消滅させる件だが、その話になり反対の意見が大多数を締めた。
それで色々意見を交わされるがどれもダメだということになった。
それでアルフが痺れを切らして、

「ああもう、なんかごちゃごちゃ鬱陶しいなぁ! みんなで纏めてズバッとふっ飛ばすってんじゃイケナイの!?」
「アルフ、これはそんな単純な話じゃ…」
「ううぅ…」

それでアルフは押し黙るが代わりになのは達がなにやらブツブツ言いだし始める。
それで三人娘はなにかを思いついたのか提案をしてきた。

「ねぇ、クロノ君! アルカンシェルって、どこでも撃てるの?」
「どこでもって、例えば?」
「いま、アースラがいる軌道上」
「宇宙空間で」

そこでエイミィさんから通信が入り、

『管理局のテクノロジー、舐めてもらっちゃ困りますよ。撃てますよ。宇宙だろうとどこまでも!』

どうやら宇宙空間までコアを転送して滅ぼそうということらしい。
なかなか面白いことを思いつくな。この子らは…。
それでプランは固まっていった。

「実に個人の能力便りでギャンブル性の高いプランだがまぁ、やってみる価値はある」
「防衛プログラムのバリアは第四層まで破る」
「そして私が固有結界とエクスカリバーを叩き込む!」
「それでもダメだったら本体を抜いて私達の一斉攻撃でコアを露出」
「そしたらユーノ君達の強制転移魔法でアースラの前に転送!」
『後はアルカンシェルで蒸発、っと』

リンディさんがそう言って締めくくる。
クロノがグレアム提督と話しているようだけど今は固有結界を展開するために集中しなければいけないので構っていられない。


 
 

 
後書き
とうとうはやても覚醒し次回決戦です。 
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