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IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~

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number-37 one's condition and uneasiness

 
前書き


容体と不安。



この場合は、シャルロット・デュノア。織斑千冬。

 

 


結論から言えば、シャルロット・デュノアは一命を取り留めたが、今夜が峠だそうなのだ。
今夜を乗り越えることが出来ればもう安泰だろうというのが総合病院の医師の見解だった。


それを聞いて楯無は力なく椅子に座った。
だが、緊張の線を切ることはない。
まだ、命が助かったかは定かではないのだ。気を抜くことはできない。


手術に何時間も時間をかけて、もう辺りはオレンジ色に染まっていた。
あれだけ高かった太陽も水平線に沈もうとしている。
その橙色の日差しに照らされて、同じようにセシリアとラウラが椅子に座っている。
浮かない表情だ。


楯無は麗矢に会った時のことから思い出していた。


朝に麗矢からメールが来て、ここに来いと指定された。
メールに書いてあった座標から位置を特定。学園敷地内でセシリア、ラウラの二名と合流。
三人で目的地『硫黄島』へ発った。
そして『硫黄島』で麗矢と会合。しかし、後ろからシャルロット・デュノアにつけられていて、その者も会合。
敵討ちを果たすため、麗矢に向かって銃を向けるが、その麗矢が青いエネルギー体のブレードを縦に振り下ろし、シャルロットを重体にする。


麗矢が去ったのち、応急手当を済ませるも運ぶに運べない状況に。
そこで楯無は千冬に連絡、少しして学園の医療スタッフが来る。
シャルロットを運べるレベルにまで処置。その後総合病院へ。


たった数時間のことなのに何日にも亘って起こっていたように思える。
そう錯覚するまでにいろいろなことがあり過ぎた。


不意にコツコツっと廊下を歩く音が響いてきた。
その音に反応して振り向くと、千冬が歩いてきていた。


「デュノアの容体は、どうだ」
「……今夜が峠だと」


千冬は物音ひとつ聞こえない病院のエントランスロビーの壁に楯無たち三人と向かい合うようにしてよっかかる。


「……ふうっ、で? 何があった」
「それは――――」


三人を代表して楯無が千冬に説明していく。
だが、その楯無も完全に沈んでしまって、言葉には抑揚がなく、千冬と目を合わせることもなく俯き続けながら説明する。
そして、そんな様子の楯無たちを気にすることなく説明を聞いていた千冬だが、あるところで反応を見せた。


「――――待て、デュノアは夜神鳥の攻撃でああなったといったな?」
「……はい」
「それはどんな攻撃だった」


楯無は覚えているだけ千冬に言う。
青いエネルギー体であったこと。
何かを呟いた途端にブレードが伸びたこと。
そして――――


「――――一瞬だけでしたが、織斑君の単一能力《ワンオフ・アビリティー》と同じような能力でした。」


シャルロットが咄嗟に出したエネルギー体のシールド。
それを食い破るように打ち消したあの攻撃。
そこまで聞くと、千冬は何かを確信したようだった。


「おそらく『ジェノサイド』という攻撃だろう。以前私も戦った時も同じような攻撃をしてきた。それで、縦、横、どちらに振った?」
「…………縦です」


ここで一つ間を開けた千冬。
楯無がセシリアとラウラに顔を向けると、二人とも顔は千冬を見ていた。
楯無もそれに従って千冬を見る。


「あの攻撃は、横に振ると、振った範囲に斬撃が飛び、爆発を起こす。縦に振ると、斬撃の威力、爆発の威力がすべてあの一撃に込められるのだ。デュノアは、それにクラスター爆弾に詰められていた火薬の爆発の威力も上乗せされているが。やけどは爆弾が爆発した時に、体に縦に奔っていたという裂傷は夜神鳥による攻撃だ」


そこまであの攻撃に詳しい千冬でも一夏の単一能力に類似していたことは分からないそうだ。だが、予想は立てられるそうだ。
おそらくISの単一能力によるものだろうということだ。


そこまで聞いて改めて楯無は麗矢との差を実感した。
今戦ったら負けることは目に見えている。


「……麗矢はあちら側についたのでしょうか?」
「それは分からない。だが、あいつに私は依頼をしていたんだ」


千冬が麗矢にした依頼。
『織斑一夏の護衛』それを学園を卒業するまで頼んだのだ。
だが、麗矢はそれ以前に『織斑一夏の暗殺、または誘拐』を受けていた。
そして、麗矢は後者を取った。


麗矢はご丁寧に理事長に退学届を出していた。
理事長がそれを受理をしたかは分からない。
だが、完全に麗矢は学園とのつながりを切った。
麗矢は敵。
織斑一夏の命を狙うもの。
そして、楯無やセシリア、ラウラは学園所属。一夏を守るために動かなければならない。


三人はこれが意味することを分かっていた。
恋をした人と命がけの戦いをしなければならないことを。


動揺を隠せない三人を尻目に千冬は一人、頭を抱えたくなっていた。
シャルロットは重体。
生きていようが、死んでいようがフランスとの関係は悪くなる。
原因をすべて麗矢一人に押し付けるしかない。


しかし、一夏にどう言えば良いのか。
やはり正直にシャルロットの身に起きたことを言うしかない。
問題が山積みだ。


 
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