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ソードアートオンライン アスカとキリカの物語

作者:kento
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アインクラッド編
  攻略開幕

「・・・・いつもみたいに一番後ろ歩く方が、気が楽なんだけどなー・・・・」
「仕方ないだろ。俺たちは先発組だ。これでも先方の一番後ろにしてもらったんだぞ」
「別にボス部屋前で陣形組み直すんだしフィールド移動の時くらい気にしなくてもいいじゃんか・・・・」
「それは俺じゃなくて今回のボス戦のリーダーに言ってくれ」
「わたし〈聖竜連合〉とは仲悪いんだよ。2回も勧誘を蹴ったから」
「それこそ俺がどうこうできる問題じゃないだろ」

と、隣のキリトの愚痴に付き合いながらアスカはフィールドを歩く。

無事、“甲上の宝石”クエストを――ほぼサチのおかげとはいえ――クリアしたアスカ達7人はその次の日である今日、レイドパーティー中央で朝早くからボス部屋に向かっていた。
いつもアスカはパーティーの先頭を〈血盟騎士団〉と共に歩いているが、今日は〈月夜の黒猫団〉やキリトと共に中央あたりを歩いている。
キリトは最後方を〈風林火山〉の面々と歩くことが普通なので、後方からの視線があるからか、あまり気分がよくない様子。
相変わらずのコミュ症だ。

そんな2人の真後ろでは、

「へー! クラインさんは15層からボス戦に参加しているんですか! 凄いですね!」
「敬語はやめてくれよな、ケイタ。そんなにレベル差があるわけでもねぇしよ」
「よっ! さすがは〈風林火山〉の大将! 器が大きい」
「へへっ。そう褒めんなっての、ダッカー」

や、

「「「サチさんって今彼氏いるんすか!?」」」
「いや・・・・その・・・・い、いません・・・・」
「「「じゃあ、オレとフレンド登録してください!!」」」
「あっ・・・・はい・・・・別にいいですよ・・・・」
「「「いぃぃよっしゃーっ! 初女性プレイヤーフレンドーっ!!」」」
「・・・・サチ、凄い人気だな」
「キリトが何で心配してたか分かった気がする・・・・」
「あ、あはは・・・・・・」

などなど。

〈月夜の黒猫団〉と〈風林火山〉の面々が楽しげに会話している(後半の会話はお互いに楽しんでいるかは疑わしいところであるが)。
新参者である〈月夜の黒猫団〉が他の攻略組プレイヤーと馴染めるか懸念していたが、どうやらこの2つのギルドは気があったらしい。

「さすがクラインさん達だな。すぐに打ち解けてくれたみたいで助かる」
「アスカ、素直にあいつらの精神年齢が低いって言ってもいいんだぞ」
「おい、キリト。そりゃ聞き捨てならないぜ」

ケイタとダッカーの2人と会話していたクラインがキリトにくってかかる。

「事実だろ?」
「ノリが良いだけだっつーの・・・・・・ところで、キリト。おめぇまだ内のギルメン達とフレンド登録してやってねえのかよ」 

先ほどのサチへのギルメンの雄叫びが聞こえていたらしい。
まあ、レイドパーティー全員にばっちりと聞こえるほどの声量だったので当然ではある。
そのせいで〈風林火山〉の面々に少しだけ哀れみの籠もった視線が投げかけられている。

「連絡するだけならクライン1人と登録しているだけで充分だろ」
「別に登録しても不便な点があるわけでもねぇんだから、いいじゃねえか。おめぇさんにはサチさんみたいな優しさがねえのかよ」
「あんな対応されるって分かりきっていたから止めてたんだろ」
「まあ、ちょっと熱烈過ぎるかもな・・・・」

アスカもキリトの気持ちが分からないでもない。

アスカもしょっちゅう町中で女性プレイヤーから急にフレンド登録を申し込まれることがある。
向こうが一方的にこちらのことを知っていることが大半なので丁重にお断りしているが、休みの日に1人ゆっくりとしたい時に多くのプレイヤーに囲まれたりするのは気分が良いとは言えない。

「だろ?」

めずらしくアスカが同意したからか、キリトが意を得たりといった顔をする。

「なんだよ、アスカまで裏切りかよ」
「・・・・いや、俺も何度か煩わしく思ったことがあるんで・・・・」
「ふーん・・・・モテる男も大変だってことかー・・・・・・。良かったなクライン、全然モテなくて」

意地の悪い笑みを浮かべたキリト。
かなり失礼なことを言っている。

「ぐはっ!! キリトてめえ! ひ、人が気にしていることを―――」
「元々の容姿もアスカに惨敗してて服装もなー。どう考えても〈血盟騎士団〉の騎士服の方が格好いいし」
「―――どごふっ!!」
「せめてそのビミョーなセンスのバンダナとダサい無精ひげは止めた方がいいぞ。サチも似合ってないって思うだろ?」

急に話題を振られたサチが焦る。

「へっ!? ・・・・いや、その・・・・趣味は、人それぞれだと、私は思うよ・・・・?」

サチの言葉がトドメだった。

「・・・・・・みんな、後は頼んだ・・・・・・」

ドサッ、と擬音が聞こえそうな感じでクラインが倒れた。

「「「「リーダーっっ!!!」」」」

泣きそうな顔したギルメンが生気の抜けたクラインを抱える。

「・・・・サチ、今のは全然フォローになってない・・・・」

ケイタが屍と化したクラインを見ながらポツリと呟いた。

「・・・・はあ・・・・・・・」

いつも〈血盟騎士団〉の面々と寡黙に毅然とした様子で歩く自分たちとあまりにも違う目の前の光景に、怒りたいのか呆れたいのか、よく分からなくなったアスカも溜息を付いた。

そんな平和(?)なやり取りが迷宮区に入るまで続けられた。




「じゃあ、頑張ってこいよ」
「そっちもな」
「クラインさんも気をつけて」

後発のクライン達とボス部屋に最寄りの安全地帯にて別れたアスカとキリト、〈月夜の黒猫団〉一行。

余談であるが、瀕死状態のクラインはサチとフレンド登録をしてもらうことによって蘇生した。

すでに安全地帯には大量の食料と、10人の鍛冶屋が待機している。
アスカ達が〈鼠のアルゴ〉などの情報屋に頼んで攻略組の武器も扱えるほどの〈鍛冶スキル〉保持者は全て揃えた。
アスカも知り合いの1人にお願いした。

「・・・・さすがに緊張してきたかも・・・・」
「・・・・・・わ、私も」
「な、ななんだよ。け、ケイタもサチも恐がりだなあ」
「人のこと言えないぞ、ダッカー」
「どもってるぞ、ダッカー」
「ちょ、ササマル、テツオ。そういうことは黙っとけよ」

フィールドでは楽しげに会話していた〈月夜の黒猫団〉の面々も表情が硬い。
会話が出来る程度であるから問題はないはずだが、これからボス戦だと思うと少し心配だ。

「大丈夫だって。わたし達だけで倒すんじゃないし。それに2時間で交代したら昼ご飯食べられるから、それを糧に頑張ろ。わたしたちだけ長期保存の利くおいしくないパンじゃなくてアスカとサチの手料理だしな」
「・・・・こんな状況で昼ご飯の心配しているのはキリトだけだ」

リラックスさせるためなのか、笑顔を浮かべたキリトの台詞に、アスカは呆れるしかない。
ボス戦を前に考えることが昼ご飯のメニューなのはキリトだけだろう。

「・・・・・・改めてキリトが凄いって思ったよ・・・・」
「褒めても何もでないぞ、ケイタ」
「今のは褒めたのか?」

だが、いつも通りのキリトの姿を見ていたら幾分か不安も取れたのだろう、5人とも多少ぎこちないが微笑む。
そこまで考えての行動であるかは甚だ疑問ではあるが。


前述したが、この階層のモンスターはポップ率も低く、アグロレンジも大変狭い。
なので、安全地帯から100メートルほどしか離れていないボス部屋までは一度も戦闘が起きずに辿り着いた。

今回はアスカが〈月夜の黒猫団〉の支援に回ったことから全体の指示を出すのは〈聖竜連合〉のツートップだ。こちらは副団長が指示を出す。

アスカも6人に対して簡単に戦術の最終確認を取る。

「いいか。俺たちはボスの正面担当だ。基本的には昨日フィールドで練習したのと同じで、あれだけ練習したから緊張しない限り大丈夫だ。もしも失敗しても他のパーティーが援護してくれるから気負わなくていい」

全員が頷いた。
他のパーティーも打ち合わせが済んだのだろう、

「じゃあ、行くぞ」

と、〈聖竜連合〉副団長が小声で全体に言う。
いくらモンスターがそれほど出てこなくても、迷宮区において大声で叫ぶようなマネはしない。

アスカは細剣を腰から引き抜いた。
同様に、キリトが直剣を背中から引き抜き、他の5人も武器を手に取った。
全員が得物を構えたのを合図に大扉に手が掛けられた。
ゴゴゴ、と重低音を響かせながら扉が開く。

「突撃開始!!」

一気に30名近くのプレイヤーがボス部屋になだれ込んだ。



情報通り横幅30メートル、奥行き100メートルほどの部屋に、ボス正面担当のアスカ達7人が突入すると同時に色彩が広がる。
青白い炎の松明が次々と薄暗い部屋を明るく照らす。

同時にずずん、ずずん、とボス部屋全体を揺るがすような地響き。

そしてついに第40層ボスが姿を現した。


固有名〈ファランクス・タートル〉。


偵察隊の情報通りの巨軀。
直径15メートル近くある甲羅は岩を想起させる突起が無数に伸びている。
その巨大な甲羅を支える4本の足も筋骨隆々、鋭い爪が光る様はまるで恐竜のそれを連想させる。
そして顔は鋭い牙を持ち、刺々しい。
フィールドで相手していたカメのような丸みを帯びたディティールの面影もない。
現実世界に生息するワニガメを一層凶暴にさせた姿、という表現が適切かもしれない。

「ギィ・・・・が、ガアアアァァァッッッ!!!」

怪獣のようなけたましい咆吼が部屋の壁に反射し、アスカの体を叩く。

それと同時に〈聖竜連合〉副団長の凛とした声が響いた。

「戦闘、開始いぃっ!!」
「「「「「「「うおおおおおおぉぉぉぉぉっっっ!!!!!!」」」」」」」

ボスの咆吼を打ち消すような、腹の底から絞り出したような雄叫びが攻略組プレイヤーからも負けじと発せられた。

「俺たちも行くぞっ!」
「「「「おうっ!」」」」
「「分かった!」」

頼もしい返事を聞きながら、アスカもキリトと共にボス目掛けて走り出した。


 
 

 
後書き
いかがでしたか?

ようやくボス戦スタートです!
個人的に戦闘シーンを書くのは結構好きなので、手が良い感じに進みます。


作中の〈風林火山〉のメンバーの雰囲気が原作と違う、なぜかテンションが高いキャラになっており、キリトがすっかり食いしん坊キャラが定着しているような・・・・・・。
書いていると自然とこうなるのだから、余計に不思議に思う今日この頃。


話は変わりますが、なんか気づけば総合評価1000まであと少し。
感動です!
これもお気に入り登録や評価してくださっている読者のおかげです!

期待に添えるようこれからも頑張ります!
評価や感想を随時お待ちしております!

それではっ!


 
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