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ソードアート・オンライン ~無刀の冒険者~

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SAO編
  episode4 とある祭りの全員集合

 「ぷっはーっ! いい湯だったーっ! みんなも入るーっ?」
 「わわわっ!? 何やってんスかギルマスっ!?」
 「てめっ、服着てこいやアホっ!!!」

 出てきたソラに、ファーがあわてて目をそらして鼻を抑えた。この世界では鼻血はでないわけだが、こういった現実世界での癖は一年以上が経過した今でも抜けないらしい。かくいう俺も見えないように咄嗟に手で目を覆ってしまった。

 理由は、一つ。

 この世界では珍しい入浴設備を使った風呂を終えたソラが、タオルを巻いただけの格好で浴室から出てきやがったからだ。

 「……ソラ、レッドカード」
 「痛ったあっ!? あたし退場!?」
 「……風呂場、戻る。着替える」
 「ああっ、ごめんごめん、装備フィギュアそのままだったね、着替えてくるよっ!」

 音も無くするすると歩み寄ったレミがパカンと(コードの発動しない強さで)脳天空っぽ女の頭を叩くと、そのままがっちりとホールドして風呂場へと消えていく。やれやれだ。見やるとファーも同じ心境のようで、顔を真っ赤にしている。

 「ギルマスも、好きっすね。二日に一度は風呂入ってるッス。オイラどうにもこの世界の風呂はなれないから、相当に疲れた時でもシャワーで済ませちゃうッスよ」
 「……まあ、好みってのは人それぞれだしな」

 不意をついた言葉に、一瞬だけ反応が遅れてしまった。

 俺は知っている。ソラが、現実世界では病院暮らしをしていた事を。いくら最新鋭の再現エンジンとはいえ現実世界には流石に劣るこの世界の風呂も、ソラにとっては現実ではできない贅沢なのかもしれない。まあ、詳しくは聞いていないから想像に過ぎないのだが。

 「それにしても、シドさん今日は随分機嫌がいいっすね。なんかいいことあったんスか?」
 「お?顔に出てたか?」
 「はいッス。シドさん、なんかこの家にいるときには外で見るより表情が分かりやすいッスよ」

 お前に言われちゃおしまいだな、とは思うものの、ファーの言うことも的を得ている。ギルドが結成されて、ホームとして購入したこの家で寝泊まりしている間は、俺の心が随分と休まっている。というか、気が緩んでいるのを感じていた。ソロプレイヤーだったころも、そこまで張り詰めていたつもりはないのだが、ここでの暮らしでの脱力具合を見ると自分の思っているより体は参っていたのかもしれない。

 「まあ、それも、悪く無い、か」
 「そッスよ。多分」
 「なになにっ!? 男の子二人でなに話してるのっ?私のスリーサ」
 「アホ」
 「ちがうッス!!!」

 突然飛び込んできたパジャマ替わりの長袖Tシャツ姿のソラの問い詰めは、軽くかわしておく。この辺が俺とファーの差だろう。年の功、というやつだろうか。俺ももう若くないしな。

 「で、なになにっ? 結局なに話してたのさっ?」

 真っ赤になって飛び退ったファーは追わずに、ソファに沈んだままの俺へと詰め寄ってくる。ちけえよ、と言いながらその顔をぐいっと押しやるが、負けずに押し返してくる。こいつは小学生か。いや、バカだったか。

 「明日だよ。一緒にクエストやろうってお前から言ってきたんだろーが。前回は失敗したからな、ちょっとツテでいろいろと手を打っておいた。明日はちょっとしたお祭りだぜ」
 「おおっ!!! お祭りっ!!! それは楽しみだっ!!!」
 「まじッスか!? オイラ達も参加できるっすか!!!」
 「んー、ちょっとやってもらいたいことがあるけど、参加には変わらん。楽しいと思うぜ」
 「……楽しみ」
 「おお。やることは説明する。なんとか主役は来てくれることになったんでな」

 今日一日走り回った甲斐あって、必要面々は揃った。
 さあ、お祭りだ。明日は、ずっと気になっていたことの確認をさせてもらおう。

 ずっと気になっていた。
 あの男の、実力を。


 
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