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ソードアート・オンライン ~無刀の冒険者~

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SAO編
  episode3 戦姫(+α)、襲来

 「ぅんまいっ!!!」
 「すっげー!」
 「……ぐっじょぶ」

 三者三様に歓声を上げる皆を見るのは正直、悪い気はしない。

 俺が今いるのは、ギルド、『冒険合奏団(クエストシンフォニア)』のギルドホームだ。ちなみにここの費用を出したのは、殆どが俺。というか、俺の余った金の使い道がやっと見つかった、というべきか。『隠蔽(ハイディング)』ボーナスだけしか考えなくていいために高価な装備品を殆ど必要としない俺のプレイスタイルでは、今までクエストやら商売やらで稼いだ金を使う用途が無かったのだ。

 ギルドが本部を構えるこの場所は、三十二層の小さな村にある二階建ての家。転移門の無い村で主街区までもそう近くないせいか、値段も他の部屋に比べてそれほど高く無かったが、部屋が四つ、さらに二階にかなりのストレージ容量をもつ倉庫があるという、まさに俺達向けの物件だった
のだ。

 「《ブラック・ピッグの肉》! あんな複雑なクエ、よく解けたッスね!」
 「ま、ファーが料理スキル上げてくれてるから食えるんだがな。俺だけなら売っ払ってたよ」

 鍋に入った肉をつつきながら、ツンツン頭の少年…ファーがハイテンションに言う。普段会うときは完全装備の鎧姿のため、今の姿は妙に新鮮だ。ファーの今の格好は、簡素な白のシャツに緩い長ズボン。季節は既に冬の足音が聞こえ始めているが、何かのスキルの効果か生来頑健な性質なのか、寒そうには見えない。

 「……頭、いい」
 「まーな。もっと褒めたっていいんだぜ?」
 「……でも、バカ」

 箸を片手に行儀悪くビシッ、と俺を指差すのは、無表情娘、レミ。こちらはモノトーンのワンピースで、普段も幼く見えるその外見を更に幼く見せる。ワンピースの胸元にあるのは、虹を背景とした大きな音符…このギルドのエンブレムだ。

 とりあえず一言俺の心を抉った後、レミが唐突にウインドウを操作し、アイテムをオブジェクト化する。カタリ、と軽い音を立てて転がったのは、薄緑色に輝く片手用円形盾派生装備である、手甲。俺の数少ない装備品の一つ、《ミスリルド・ガントレット》。

 「お、もう出来上がったのか?」
 「……ぶい」

 アホなセリフを言いながらも相変わらず無表情。
 間抜けな振る舞いだが、手に取ったそれにはきちんと注文の処理がなされている。

 「ん、ちゃんとギルドのエンブレム入ってるな。『細工師』も便利だなぁ。俺も欲しいわ」
 「……趣味、だし。絵とか、描くの、すき」
 「いやいや、シドさん探索系スキル殆ど一人でカバーしてるんスよ。さすがにそんな余裕はないッスよ。オイラやレミは早くからビルド絞ってたからスキルスロットに余裕があるからできるんス」

 ファーの言う通り、確かに俺には職人系のスキルを入れる余裕はない。昔取った激レアアイテムの効果や、こっそりと取得したエクストラスキルのおかげで他の同レベルプレイヤーよりスキルスロットは多いものの、それでもこのゲームのスキルは無数に存在するのだ。一人で出来ることには限界がある。

 「そーそー。出来ることは出来る人に任せるっ! これも大事だよっ!」
 「さすがに戦闘しかできないヤツは言うことが違うなあ」
 「まーねっ! 助け合い助け合いっ!」
 「ほめてねえよ!」

 はぐはぐと肉をほおばりながら笑うのは、ソラ。ダボダボのズボンにゆったりしたTシャツ。その上にはいつもと全く変わらない、花が咲いたような笑顔。俺のスキル構成も相当おかしなものだが、この女は『戦闘系スキル全取り』を言う更に訳のわからないビルドだ。スキルの余裕の無さは俺より深刻だろう。てゆーか、はっきり言ってここまで生きていられるのが不思議なレベルだ。

 とにかく。

 なんだかんだ言いながら、適当に楽しみ、適当に頑張る。それが、影ながら攻略の連中の助けになるというならそれでいい、と思いながら、俺はそれなりに平和な日々を過ごしていた。

 だが、いつの時代もどこの世界も、平和というものは唐突に崩れるものだ。

 ―――コンコン。

 夜中に響いた軽い音は、ドアをノックする音。その音は。

 「夜分遅くに申し訳ありません。私はKoB所属、アスナと申します。お話があってきたのですが、あけて頂けないでしょうか?」

 とびきりの来客が、平和を崩しにやってきた音だった。


 
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