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ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~

作者:脳貧
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第六話

 
前書き
駄女神に頼らずに書けるようになりたい。 

 
 駄女神来襲の翌日からというもの、兄上のグランベル士官学校への留学の準備の為だろうか城内は大忙しになった。
 そんな中、俺にも仕事が出来た。
 それは、父王への謁見を求めてやってきた比較的優先度の低い者達が集まるロビーのような場所で彼らを取り次いだり、--必ずしも王が願いを聞き遂げてくれるとは限りませんが--と前置きをして彼らの話を直接聞いたり嘆願書を受領したり、時には世間話に付き合うなどだ。子供などで馬鹿にして! などと、直接態度に出して怒りを表す者が居ないのは俺がカルフ王の第二王子の~と身分を明かしてから話しかけるためであろう。世界も洋の東西も問わず、肩書というものは強力アイテムである。

 もちろんこれらは一日の内に占める割合は多くは無いので訓練訓練勉強と頑張らねばならないのだが、相変わらず馬とは触れ合えぬ日々が続いている。
 この前は業を煮やした父上の命により大人が数人がかりで無理やり押さえつけた馬に俺は跨ったのだが
 信じられないくらいの力で暴れ出して、押さえつけていた者とその従者などのうち1人が大怪我、軽傷が3人、暴れすぎた馬は足を折った。
 幸い馬の骨が治る見込みはあるようだが俺が厩舎に近寄ったせいで馬が興奮して暴れたらどうなることかわからないということで厩舎自体に近寄ることを禁じられている。
 その時の俺は馬の脚が折れて振り落とされたけれど落下先に居た人物にしがみついて軽い打撲で済んだ。
 しがみついた相手には大怪我を負わせてしまい、教区の聖職者による治療が遅れていたら後遺症が残っていたかもしれないという噂話を偶然聞いてしまい、馬が関係する兵種はもちろんのこと、馬車にすら乗ることは出来ないんじゃないかな・・・と思っている。
 まぁ、リムジンくらい胴長の荷台を引かせてその最後尾あたりなら可能性はあるかもしれないけれど。

 それと前後して父上の腹心であるドリアス伯爵が領地の鎮撫から戻り、王宮へと出仕してきたのだが
その傍らに多くの部下とその従卒に加え、ご自身の息女であるセルフィナ嬢の姿があった。
 なんでも、レンスターの王宮で本格的に宮廷作法や馬術・武術・学問を学ぶ為らしい。--兄上が少なくとも3年は居なくなるので--父上の要請かはたまた周囲の別の人物の配慮によるものか俺と同い年くらいの上級貴族かつ、馬のことで俺を軽んじたりしないような人物として選ばれたのであろう。皆さんのご配慮に心がズキズキします。でもありがとう。




 神父上がりなのか現職の神父なのか、そんな雰囲気を出す教師役の人物のもとで俺はセルフィナ嬢と机を並べて学んでいます。青春ですねー
 講義の後、俺は行かねばならない場所へ行く為に手が空いてる大人を探していたのだが、折からの多忙な王宮なこと、容易には見つからなかった。
 そんな俺の様子を見かけたのかセルフィナ嬢が声をかけてきた。

「殿下、いかがなさいまして?」
「はい、先日わたしの責で怪我をした者がおりまして、せめて見舞をと思うのですが、わたしは一人で王宮を出ることを許されてはおらず付き添って頂ける方を探しておりました。」

と、応えておいた。

「それはおいたわしや、殿下お一人の責ではございませんでしょうに。よろしければわたしの係累の者に声をかけてみますがいかがでしょう?」

 セルフィナさんは優しいなと思いながら、

「これは願っても無いこと、ここは姫のお力におすがりするよりこのミュアハございません。」

 とグランベル貴族風の敬礼を行い出来るだけ丁寧に答えた。
 ほどなくドリアス卿の従騎士と従卒が2人やってきて、街区にある治療院へと向かった。
 その前に王宮の庭師から許可をもらい見舞の花を摘んだ。それを手伝ってくれたセルフィナ嬢はなんとも可憐であった。





 治療院の寝台に横たわるのはグレイドという名のまだ見習い騎士であり、物事が定められた通りに進むならセルフィナ嬢の伴侶となる人物である。年齢に比して大人びた--悪く言えば老けた--容貌をしている。
 そしてそれに比例しているかのように落ち着いた人格の人物でもある。

「先日はわたしのためにグレイドに大怪我をさせてしまいました。傷の具合はいかがでしょう?」

 上体を起こそうとした時に顔をしかめたのを俺は見逃さなかった。ごめんなさい。

「殿下の御顔を拝見し、ぐっと傷のほうが癒えて参りました。いまはお役に立てぬこと申し訳ございません。そちらの小さなレディにも見舞って下さったこと御礼申し上げます。私はグレイドと申すまだ見習い騎士にございます。」

 さらに続けてグレイドはドリアス卿の従騎士とその従卒にも挨拶を交わしていた。

「ドリアスの娘セルフィナと申します。グレイドさま、どうかお体を労ってくださいましね。」

 そう言うとセルフィナ嬢は花瓶に摘んできた花を生ける。

「ドリアス様のお嬢様と存じあげず、ご無礼申し訳ございません。」

 恐縮し姿勢を正そうとしたグレイドは一瞬苦しそうな表情を浮かべた。身じろぎした彼をセルフィナさんは手ぶりで押しとどめ、御無理はいけませんなどと言ってから続けて

「わたしは領地より王都に上がったばかりの身でございます。グレイドさまがわたしをご存じなくて当たり前のことです。どうかお気になさらず。」

 セルフィナさんはすごいなー
 俺は兄上から預かっていた手紙と兄上の従卒であるフィンからも預かっていた手紙を渡すとグレイドの元を辞去した。名残惜しそうなグレイドの表情を見て、これはグレイドのほうのフラグが立ったなwとか下世話な事を考えていた。ごめんなさい。
 




 帰りは来たのと同じ道を通るものと思っていたのだが荷馬車の横転事故から始まった諍いが起こっていた・・・もしかして俺のせい?だったとしたらあんまりだー
 仲裁の為なのか衛士が幾人か集まって当事者をなだめたりすかしたりしているが騒ぎは収まりそうにない。街の治安を守る為の衛士と国家の兵力である騎士とでは表立った対立こそ無いものの互いの仕事の領分は侵さないよにしているようであるのだが、こういう現場で、争いの当事者はそんなことは露知らず、衛士が思い通りにならなければ騎士さん何とかしてくれと絡んでくることがままあるはずだ。

「致し方ありませぬ、辺民街区を抜けます。」

 という従騎士であったが、彼は被っていた帽子を脱ぐと葛藤していた。
俺はちょっと察することがありったので思い切って声をかけてみた。

「すみません、【いま行くぞー!】が来るんですね? それならばセルフィナ様にそれを」
「!」
「殿下のご明察恐れ入ります」

 と従騎士がガシャっと踵を鳴らして敬礼した。

「姫、不本意かとは思いますが私の帽子をお被りいただけますようお願いします。」

 従騎士に続いて俺も

「セルフィナ様、私からもお願いいたします。そして、わたしに付き合わせてしまったばかりに皆さんにご迷惑おかけします。」


 ……走って抜けたほうがいいのか、注意深く上や下を観察しながら抜けた方がいいのか悩みどころだな……


 
 

 
後書き
さて、ロンドンやパリでは14~19世紀くらいまでは当たり前だったことがこのあと起こります。 
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