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IS《インフィニット・ストラトス》‐砂色の想い‐

作者:グニル
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世界合同演習

 亡国機業のことが私たちに知れ渡ってから1日経って、現在は8月15日の10時ジャスト。
 私は『ハーバーブリッジ』の艦橋で行く末を見守っています。

 亡国機業、裏の世界で暗躍する秘密結社。その発足は第二次世界大戦時とされ、50年以上前から活動しています。組織は大きく2つに分けられ、運営方針を決める幹部会と実働部隊が存在しているらしいですが、これは現在明らかになっているだけの部分で、分かっているのは亡国機業は国際テロリストと同意であり、現在の主な活動はISを狙っているということ以外は組織の目的や存在理由、規模などの詳細が一切不明……らしいです。

 らしいというのはそれが他の国家間の情報を統合した正確な部分を取り出したものであり、他の部分は国や組織でかなり掴んでいる情報が違うからです。
 うむむ、世界の諜報機関を持ってしてもこの程度しか分からないなんて……いや、むしろ情報を可能な限り秘匿したいのかもしれません。何せISを狙っているって言う以外は全て不明の組織なんて本当に組織といえるかどうかも怪しいですし、国家間で情報をかなり削減して公開しているのでしょう。そう考えるとやっぱり国という枠組みはもどかしいですね。

 そして今から始まるのは『亡国機業によるIS強奪事件の対処』という名目の合同演習。
 上記の条件を出来るだけ広げ、あらゆる展開に対応するために行われる訓練です。
 設定は赤道連合で研究中のISが強奪され、それを追撃する赤道連合を駆けつけた米国勢、アジア勢で援護、最も数の多いEU勢は包囲網を敷くという形で行われます。
 と言ってもいつからというのもどうやって、というのも一切公開されずより実戦に近い形になっています。分かっているのは今日このソロモン諸島沖のどこかでIS同士の戦闘が行われるということだけ。

 どの国の艦隊も今のところは一定の距離を保ったまま一切の動きはありません。より実戦に近い形ということで最初は赤道連合の部隊以外出撃準備もしていませんしね。
 昨日の段階で開発中のパッケージを全て公開した赤道連合としてはもうこれ以上は無いので(当然『デザート・ストーム』は隠したままですが)惜しみなくパッケージを全て使って赤道連合内のISの3部隊、合計10機を投入しています。

『こちらFフィールドよりレイヴン2、定時報告異常無し』

『Sフィールドよりシャーク1、こちらも異常無しです』

『Tフィールドよりレイヴン1、同じく異常無し。このまま警戒を続行する』

 艦橋にそれぞれの部隊の連絡係から定時の報告が行われ、各員がそのまま続行します。午前7時から始まって30分おきの定時報告も6回目。その間全ての報告はオールグリーン、異常無し。長いですね。
 ちなみにフィールドとはそれぞれの受け持つ担当のエリアの名称でF(ファースト),S(セカンド),T(サード)の3種類に分けられます。
 Fは広範囲に広く、SはFのサポート、Tは『ハーバーブリッジ』周辺の護衛を兼任しています。ちなみにコールサインの『レイヴン2』はクロエ、『シャーク1』はホア少尉です。

『……こちらレイヴン2より緊急報告』

 クロエから急に報告が入りました。基本的にこういういきなりの報告は何かある時。艦橋が俄かに騒がしくなります。

『ここから11時方向43キロの地点に未登録船舶を2隻確認。種類は……漁船。密漁船の可能性有り。これよりFフィールドの部隊による臨検に移る』

「コンディションイエローに変更・フィールドTの部隊をこちらに呼び戻せ。F-35発艦準備」

 クロエの報告を受けた艦長の声で一気に場が慌しく動き出します。コンディショングリーンは異常無し。次段階コンディションイエローは戦闘準備。最終段階コンディションレッドは第一種戦闘配置、即ち戦闘です。

「こちら『ハーバーブリッジ』よりレイヴン2へ。ターゲット『オメガ』の可能性がある。十分留意せよ」

『了解』

 『オメガ』は赤道連合内での亡国機業の呼び方です。通常の通信では相手に傍受される可能性もあるため呼び方は不定期に変えるという方針を取っています。
 クロエの視点を通しての映像が艦橋の画面に映し出されます。そこに移っているのは眼下を通過していく2隻の漁船とそれに近づく2機の『デザート・ウルフ』。『レイヴン』を装備しているクロエは見張りも兼ねて上空1万mの距離で待機しています。
 強行偵察用パッケージ『レイヴン』は索敵範囲を10kmまで狭めることによりステルス状態のISも見つけ出せるだけの索敵能力を誇ります。漁船上空1万mは正にその10kmギリギリ。これで動きが掴めるはずです。
 そう思った瞬間、クロエの視点で見ている画面が警告音を発しました。

『ステルス状態のISを漁船から確認! 数4! そいつだ!』

 クロエがそう叫んだ瞬間に漁船がいきなり爆発し、そしてその爆炎に紛れて4方向に何かが飛び出しました!

「全艦コンディションレッド発令! F部隊は交戦を許可する! SとTも救援に向かわせるからそれまで持ちこたえろ!」

『もうやってる……っと!』

 クロエが焦った声で飛来した弾丸を回避する。強行偵察用パッケージ『レイヴン』はその特性上機動性、速度が非常に鈍い。そのため本来は常に1機が護衛としてつくのですが、今回は相手と数が同等ということで敵役のISの1機がクロエと護衛に、その他3機が『デザート・ウルフ』2機を囲んでいます。

 それにしても……

 敵役豪華すぎるでしょう!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「もったいないねえ」

 飛来する弾丸を回避しながら『デザート・ホーク』に身を包んだ豪州代表、オリヴィア・ウィルソンは呟いた。彼女の目には敵役の『デザート・ウルフ』ではなく、眼下で炎上し続けている漁船が映っている。
 武装は展開しているものの一切打ち返すことなく避ける。意識は船に向いているのに一切の攻撃が当たらない。しかしオリヴィアは撃ち返さない。今回の彼女の役目は奪った機体の運搬役であり、使いこなせないという設定だ。だからこそ絶好のチャンスでも撃ち返さず回避に専念する。そもそもモンド・グロッソで記録を残している彼女が回避に専念すれば国家代表であろうと攻撃を当てるのは困難になる。
 業を煮やして一機の『デザート・ウルフ』が接近戦に持ち込もうと槍を抜き放ちオリヴィアに急接近するが……

「おらぁ!」

 突然後ろから出てきたタイガーストライプの機体、米国試作第3世代ISの『ファング・クエイク』が蹴り飛ばした。操縦者は、米国国家代表イーリス・コーリング。

「オリヴィア、テメエこの野郎! 真面目にやれってんだよ!」

「うるっさいねえ。設定上扱うのに精一杯ってことになってんだからしょうがないだろ? あと野郎じゃないよ私は」

 イーリスが通信だというのに大声で文字通り切れる。本来オブサーバーの彼女だったが、急な展開で大統領直々にこの亡国機業役を任されている。内心としてはその不満が爆発を通り越して既に爆炎が上がっている状態だ。

「いや、どうでもいいけどそろそろ援軍来るよ? やばいんじゃない?」

 いがみ合う2人の真上から場に似合わないはにゃりと力の抜けた声が掛かる。イタリア国家代表、フィオナ・ジェルミとその愛機の第2世代型IS『フォルゴーレ・Ⅱ』。両肩についたプロペラに両足下部についた車輪、さらにはサンドイエローの迷彩色ははまるでレシプロ機を連想させる。古臭い見た目に似合わず速度重視の機体だ。

「うるせえ! さっきまでグースカ寝てた奴が何いきなり仕切ってやがる!」

「ふふふ、褒め言葉ど~も~」

 イーリスの言葉に反応したようにフィオナは笑いながら両手の80mm機関砲を接近してきた『デザート・ウルフ』に放つ。規格外の大きさを誇る機関砲から巨大な砲弾が轟音と共に射出され、『デザート・ウルフ』は当たっては堪らないと慌てて回避行動をとる。

「でも実際その通りだ。既に部隊が近づいてきているぞ」

 フィオナよりさらに上空、太陽の光の中にいた機体が猛スピードで降りてきて3人の近くに停止する。日本国家代表、榛名舞子の第Ⅱ世代IS『電征』である。『打鉄』と同じく鋼色一色だが一切無駄な装飾が無く、凹凸面も少ないこの機体は速度、上昇力重視の迎撃機だ。

「んー、やっぱり日本人は真面目だねえ」

「ジェルミ代表はあまりやる気が無いように見えますが?」

「これでもやる気はあるほうだよ? 普段の私を見たらきっと驚く、って!」

 会話しながらも全員が飛来する弾丸を余裕で回避するのは流石としか言いようが無い。亡国機業役は各勢力から国家代表クラスを1名選出、各4人となっている。
 米国はイーリス1名しか国家代表が来ておらず、豪州は『デザート・ホーク』の力を知らしめるために、アジア、EUは見せても問題の無い第2世代の国家代表を選出している。

「既に赤道連合軍の部隊がこちらに向かっている。米国、アジアの勢力の艦からもIS、航空機の発艦を確認。EU勢は包囲網を敷きつつあります」

 舞子がデータを解析しながら3人に告げる。各勢力のISは合計50前後、航空機に関しては各国の艦載機が30近く上がってきており、それぞれの方針に従ってこちらを取り囲むように動いているのが分かる。ISのハイパーセンサーを見ながらイーリスは舌打ちをした。

「模擬戦とは言え負けるのは趣味じゃねえ。一点突破だ。北を破るぞ」

 自分達が敵側、という時点で勝ちは絶対に許されないのだがイーリスには関係ない。いや、関係は大いにあるのだがイーリスの頭にはこんな任務を命じた大統領をどの程度まで困らせてやるかと言う思考の方が上回っているのだ。
 舞子はそんなイーリスに内心呆れつつ律儀に返事を返す。

「実戦形式ですしそれが妥当でしょう。では私とジェルミ代表が先行しますのでコーリング代表はウィルソン代表を頼みます」

 速度重視の2人が先行してイーリスとオリヴィアが続くと言うのがこの状況では一番効率がいい。いざとなれば高速戦闘と近接戦闘で前後から挟み撃ちに出来る。

「はいはい、任されましたよ。お守りはよろしくね~」

「んじゃ行きますか、護衛さん?」

「ちぃ、ついて来れなかったら置いていくからな!」

 オリヴィアの言葉にイーリスはわざと大きく舌打ちをして悪態をつく。

「戦闘機に近接戦闘なんて挑まないようにねー」

「実弾も使わないようにな」

「格闘なんてもってのほかですよ」

「だあああああああ! うるっせえんだよお!」

 まるでコントのような掛け合いをした後に4人は向かってくる『デザート・ウルフ』へと戦闘態勢に入った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「F部隊、レイヴン2を除き行動不能! なおS、T部隊によりそれら2機は保護完了! F-35は全機撃墜判定です!」

「なんという失態だ! 足止めすらもままならんとは!」

「アジア勢、米国勢の包囲も突破されつつあります!」

 艦橋内には艦長や通信員の苛立った声がひっきりなしに聞こえています。状況は不利、とはいいませんけど不味い状況です。初期の段階で4人の国家代表は『デザート・ウルフ』2機を行動不能にしてS,T両部隊に回収という足止めを与えた後にアジア勢と米国勢の包囲を北に一点突破をしている最中です。既にその2勢力の攻撃も突破されつつあります。
 相手は4機でこちらのISの数は50前後。正確には赤道連合が10、アジア勢、米国勢はそれぞれ10機、EUは30機、ロシアは国の位置的に今回は傍観している立場ですが2機は現場にいます。数の上では圧倒的有利ではありますが、それは一斉に相手にした時のことです。
 速度重視の日本の『電征』、イタリアの『フォルゴーレⅡ』が先行で手薄な敵陣を突き抜け、そっちに気を取られた隙に後続の米国の『ファング・クエイク』が道を開く。状況が不利になれば前述の2機が高速戦闘で場を掻き乱すという見事な連携を見せています。オリヴィア代表は回避に専念してるのか、4,5機を引き付けつつそれらを同時に相手にしても被弾がほぼ0。連携が取れすぎていますよこれ。
 ISに対しては艦船や航空機の援護は無意味ですし、ここまで乱戦になってしまうと他のIS隊の遠距離攻撃も行うことが出来ません。現に発艦したF-35はもともとその色だったかのように機体中にペイント弾を貰って帰還してきます。亡国機業役の方は包囲さえ突破すればいいんですから無理に相手にすることはないですし、そう考えるとこの4機の組み合わせはかなりつらいです。

「2勢力の包囲、突破されました! EU勢の包囲網に向かっています!」

「くそ……」

 すごい、本当に突破しちゃった……アジア勢には鈴さんもいたはずですし、悔しそうな顔が目に浮かんでしまいます。
 データでは亡国機業役の4人は一気に加速するとEU勢の包囲へと向かっています。その後方からは突破された赤道連合、アジア、米国勢が追撃を開始。EU勢としては足止めさえ出来れば勝ちと、

「でも……」

 これ突破されたらどうするんでしょう。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「邪魔だどけぇ!」

 イーリスが雄たけびとともに近場にいるEUの『ラファール・リヴァイブ』を殴り飛ばす。しかし一機に気を取られている隙にいつの間に回りこんだのか5機の『ラファール・リヴァイブ』が周囲から弾丸の雨を降らせる。

『動きを止めるな! 囲まれるぞ!』

「分かってんだよ!」

『流石に数が違いすぎるかなあ』

 いくら速度重視の『電征』と『フォルゴーレⅡ』と言えども正面に弾幕を張られれば突っ切るわけには行かない。回避した先にはまた別のIS部隊だ。包囲網が突破できない。
 EUの投入されている部隊はほとんどが『ラファール・リヴァイブ』。しかしその数は亡国機業役1機に5機を回せる計算だ。しかも『デザート・ホーク』の包囲には2機しかついていないため、他の3機には6機を相手にすることになってしまっている。
 本来戦いとはよっぽどでない限りは数で決まる。それははるか昔から変わらない。条件次第では変わってくるが、奇襲奇策でもない限り揺るがない事実だ。先のアジア、米国勢を突破できたのは奇策の部類に入る。しかしそれを最初に見せてしまったせいでEU勢はそれに対する対策をしっかり整えていたのだ。
 撹乱が聞かない以上、格闘戦主体のイーリスは確実に包囲される。さらにその爆発力が抑えられれば速度重視の2機も包囲され動きが制限されていく。

「ふっ」

 そのイーリスに向かって頭上から巨大なブレードが振り下ろされた。360度全てに気を回しているイーリスはその攻撃に一瞬だけ反応が遅れる。回避が間に合わず両手に巨大なナイフを展開してそのブレードを辛うじて受け止めた。

「ああ!? ドイツのガキか!」

 実体剣とビーム刃の複合剣を振り下ろしてきたのは銀色の鉄仮面にも近い兜に肩の四角い大型アーマーが特徴的な漆黒の機体、シュバルツァ・ヴルツェル。搭乗者……パルティス・アシュレイ。

「パルティス・アシュレイです。確保させていただきます」

 パルティスは自身の纏うISの1,5倍ほどのブレードを軽々と振り回し、イーリスはナイフを右手のみに展開して左手のものを戻して拳を作る。

「やれるもんならやってみろってんだ!」

「Jagen(狩る)」

 2つのISが高速で動き出す。互いが交差する度に火花が散り、他のISが戦闘に参加できない。しかしすぐさま状況は変化する。いくら生粋の現役軍人であるパルティスと言えども相手も現役国家代表、条件は同じだ。となればISは基本的に稼働時間で決まる。既に国家代表まで上り詰めているイーリスにパルティスが勝てる道理は無い。
 パルティスのブレードを右手のナイフで受け流したイーリスの左拳が的確に腹部に突き刺さる。衝撃でパルティスが後ろに下がり距離が少しだけ開く。

「ぐ…」

「はっ! この程度で私とやりあおうってのか!」

「いえ、終わりです」

「あ? ちぃ!」

 パルティスの言葉の一瞬後にイーリスが機体を横に回避させる。今までイーリスの頭のあった場所にプラズマ砲の弾丸が轟音とともに通過した。

「『イェーガー』の狙撃か!」

「落とす」

 イーリスがデータに映し出された情報を見て悪態をつくが、そのイーリスに向かって再度パルティスがブレードで切りかかる。そしてパルティスが離れれば毎回違う方向からプラズマ弾が飛んでくる。パルティスがいなければ1km離れた空中でプラズマ収束狙撃砲を構えたロベルティーネ・シャルンホルストが操る『シュヴァルツェア・イェーガー』が見えただろうが、イーリスにはその余裕は無い。

 相手は狙撃型ISである。それに加えて周りは敵ISだらけだ。この状況でISを索敵しようにもそっちに意識を持っていけば周囲からの攻撃をモロに受ける。それに正確性から見ればロベルティーネは国家代表クラスに相当する。自動索敵には引っ掛かるような真似はしないだろう。
 
 14回目のプラズマ弾を避けた際にわずかに左肩にかすったせいでイーリスの体勢が崩れた。

「もらった」

「しまっ……!」

 イーリスが知覚した瞬間には、体勢の崩れた左から『シュバルツァ・ヴルツェル』のブレードが振り下ろされていた。
 叩きつけられた衝撃で海面ギリギリまで弾き飛ばされたイーリスが何とか受身を取り、再度上昇しようとした時には既に勝負が決していた。イーリスの周囲には今まで戦いに参加していなかった『ラファール・リヴァイブ』6機がほぼ0距離で合計12の銃口を突きつけていた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「コーリング代表とウィルソン代表が捕縛……か」

「どうする? 後1分くらいで日本、アメリカ勢が来ちゃうけど」

 舞子とフィオナが横に並びながら飛ぶ。ちなみにオリヴィアはイーリスが捕まった直ぐ後に

『ごめんなさいね。捕まっちゃった』

 との通信と共に捕縛された。そもそも機体がそこまで使えないと言う状況だったのだから護衛役のイーリスが捕まれば仕方ないと言えば仕方ないのだが。

『ではそろそろ降伏してもいいのでは?』

『そうねえ。ここまで来たんだからもういいんじゃないかしら?』

 2人の間に通信が入り、直後目の前が爆発する。2人が急上昇して避けて相手を確認する。

「『ラファール・リヴァイブ』が4機に『テンペスタ』が3機それに……『ラファール・リヴァイブ・ヴィクトリアカスタム』!? ……ウィンザー王女殿下か!」

「うっわ、イギリスの『クゥラグィー』とウチの『スタンティス』ってことはジェーンとユリアも一緒だよー。これ諦め時じゃないかなあ」

 眼下には合計10機のISが展開し、その内3機が前に出ている。その内一機、明るい青色をした『ラファール・リヴァイブ・ヴィクトリアカスタム』が前に進み出てくる。

『そこは安心して。私は見届け役だから手は出さないわ。もう貴方達しか残っていないからこちらに来ただけよ』

「そうですか」

「て言ってもねえ。変わらないんじゃないコレ」

 ヴィクトリアの言葉に舞子は多少ホッとしたようだがフィオナの言うとおり9対2と最悪な状況は一切変わっていない。

『こ、降参してくださいジェルミ少佐!』

「んー、可愛い後輩の頼みならそれも聞いてやりたいんだけどねえ」

 そういいながらもフィオナは両手の80mm機関砲を構え、それ見た舞子も近接用の小太刀を構える。『電征』の武装の多くは高速戦闘時用に背中の翼やユニットにそのまま装備されているため、手にもてる武装はかなり少ないからだ。

『ユリアさん。無駄なようですよ』

『な、何でこんな時だけやる気あるんですかあ!』

 群青にも近い深い青色の『クゥラグィー』を操るジェーンは52口径特殊レーザーアサルトライフを取り出し、少し明るいグレーの『スタンティス』のユリアはそれに続いてロングレールライフルを構える。
 舞子とフィオナが滑空しようと準備した時……

「な!」

「うわっと!」

 2人が同時に回避行動を取り2人より更に上空から降り注いだ弾丸を回避した。

『わ! か、回避してください!』

『くっ、米軍か』

 その弾丸は2人の下にいたEU勢に降り注ぐ形になり、慌てて全員が回避行動を取る。

『やっと追いついたぞ!』

 通信を通じて声が入る。

「『イーグル』と『ヴァルチャー』か」

「どっちもアメリカの第3世代だね。豪勢なことだよ」

 データを見た舞子が小さく舌打ちをしてフィオナが軽い感じで返す。上空には名前の通り鷹のようなこげ茶色なIS、エリス・ジャクソンの『ヴァルチャー』とそれよりも少し薄い色のIS、リーゼ・ノームの『イーグル』が太陽を背にしていた。予定より少し早く、2機しか存在しないということはこの2人だけ先行してきたらしい。

『ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと降参しやがってください』

『リーゼ、言葉遣い滅茶苦茶じゃない』

「それを言われて降参するなら……」

「ウチら(EU勢)に囲まれた時点でするってんだ!」

『私たちも行くぞ!』

『は、はい!』


 EU勢、アメリカ勢対亡国機業役の2人の戦闘が始まった……


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 午後13時29分。演習終了。
 結果報告、
 全勢力航空機32機全機撃墜判定 全勢力艦隊3隻撃沈判定
 赤道連合、『デザート・ウルフ』2機行動不能、戦果0
 アジア、被害0、戦果0
 米国、被害0、戦果、亡国企業1機捕縛
 EU、被害0、戦果、亡国機業3機捕縛
 
 

 
後書き
お待たせしました。 
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