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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第二章 A's編
  第三十四話    『お引越し(後編)』

 
前書き
結構これからいくつか分割する話が多いので文字数が少ないかもしれません。 

 





それからしばらくしてアリサとすずかがやってきた。
二人はリンディさんとも挨拶をして、いくらか話をして翠屋でお茶会をする流れになった。
それでちょうど高町夫婦に挨拶をしたいというのでリンディも出かける準備をしようと部屋の奥へと消えていった。
その際、アリサが「リンディさんってフェイトのお母さん…?」と尋ねてフェイトは顔を赤くしながら、

「えっと、その…今はまだ、違う」

と言ったので結構脈アリかもと全員は思ったそうだ。
だけど、ふと玄関の前ですずかが、

「…そういえば、シホちゃんも来ている筈だよね。いないけど、どうかしたの…?」
「あー…それがね…」
「あ、あはは…」

二人が乾いた声で苦笑しているところを見て、すずか達は首をかしげた。
それでまだリンディも準備しているところだし案内するねと言われてリビングに着く。
そこにはグテー…としてソファーに身を預けてなにやら苦悶の表情をしているシホの姿があり事情を知っているなのは達も含めて急いで寄りかかった。

「う゛ー……あ、すずかにアリサ。来ていたのね…」
「ちょっと、シホ…あんたもの凄く顔色悪いわよ?」
「大丈夫、シホちゃん…?」
「ゴメン…なんていうかちょっと昨日の特訓で自爆しちゃって全身筋肉痛で無理してここまで来たのが祟ったみたい…。少しすれば良くなるから気にしないでいいわよ」

なんとかシホは言い訳を押し通した。
だがこの中で唯一シホの裏事情を知っているすずかは、シホがみんなの前でこんな弱った姿を見せるのはさすがに信じられないという思いがあった。
だから、

「…シホちゃん、それって、嘘じゃないよね?」
「え…? ええっと、すずかさん、目が怖いのですけど…」
「どうなの…?」
「えっと…黙秘はダメ…?」
「ダメ!」

それからリンディが来るまでごたごたが続き、なのはとフェイトが必死に援護してやっと信じてくれた。
それでシホは余計に疲労困難に陥ったが、なんとか顔には出さずに我慢して一緒に翠屋まで向かった。

そして翠屋。
そこでは普段なら手が開けば手伝っているだろうに、オープンテラスでシホはなのは達と会話をする事しか出来ないでいた。
手伝う事ができない……そう、どこか悲哀が感じられる呟きをしているシホはやはり職業病だろうか…?
それはともかくアリサ達は再び高町家で飼う事になったフィアット達は抱きしめられている。
その際、普段ならユーノの浮かれた姿を目にすると不潔そうな眼差しを送るフィアットだが、すずかの手に抱かれた瞬間。
「ギンッ!」という音が響くような感じでお互い同時に目が鋭くなったのはなのは達は見なかった事にした。
当然、対象のシホは気づかず、フェイトに至ってはまだすずかがシホの事を好きだという事を知らず首を傾げる。
一方で、アリサは手に納まっているアルフ(子犬バージョン)を見て、

「うーん………どこかでアンタの事、見た覚えがあるんだけど…気のせいかな?」
「ワオンッ!?」

姿は狼形態に比べればかなり遠のいたというのに勘だけでそこまで言い当てるアリサの直感力はすごいものがある。
どこかアルフは冷や冷やした顔をしているのは、以前お世話になったのだから仕方がない。

そこに一人の眼鏡をかけた青年…今は普段着だがアースラスタッフの一人、ランディが一つのケースを持ってきた。
ランディはフェイトに声をかけて、

「あの、ランディさん。これは…?」
「リンディ……っと、リンディさんからの贈り物と思ってもらっていいよ」

全員はそのケースの中を見て驚いた。
それで今現在、翠屋の中で高町夫妻と話をしているリンディの場へ急いで駆けていった。
その中で冷静に場を見守っていたシホはランディに話しかける。

「…ケースの中身が聖祥大附属小学校の制服っていう事はもうフェイトの聖祥入学の手続きは終わったんですか?」
「うん。週明けにフェイトちゃんは聖祥に入学する予定になっているよ」
「相変わらず手回しが早いですね…。やっぱり色々と大変だったんじゃないですか?」
「そこは、ほら…ひとまず艦長の手腕ってことで…」
「それを職権乱用ともいいますけど、まぁそれでフェイトが喜んでくれるなら私は構いません」
「手厳しいね…でも、確かにフェイトちゃんには効果覿面だったろうね。お店の中を覗いてみてもそれがよく分かるから」

お店の中では顔を赤くしながらリンディに感謝の言葉を送っているフェイトの姿が映っていた。
それでシホも微笑を浮かべた。
それを見てランディが少し頬を染め、必死に平静の表情をしていた。
だが、心の中で『僕はロリコンじゃない…僕はロリコンじゃない…僕はロリコンじゃない…クロノ執務官と一緒くたにされたくない…!』とクロノにとって失礼極まりない事を念仏のように唱えていた。
ちなみに一緒に残っていたフィアットはその視線に気づいてかランディを睨んでいたり…。


………そして、とうの本人であるクロノはなぜか謂れの無い怒りを感じて休憩中に飲んでいたリンディ茶(エイミィが隠れて仕込んだ)を飲んでも気づいていないのか全部飲みきってまた仕事を始めていたり…。
そしてそれを見て「あれ…?」と予想が外れたような表情をしたエイミィの首をかしげている姿があったり…。
まだ設定確認の終わっていない他のスタッフが「南無南無…」と祈っていた。
しかしなんでもないように仕事を再開したクロノを見て『ついにリンディ提督に辿り着いたのか!?』と違った意味での尊敬の眼差しを向けられていたりと…。
中々に場はカオスチックな事になっていた。


閑話休題


「ところで、傷の方は大丈夫かい? 結構辛そうだけど…」
「そこは聞かないでください。今は歩くのだけでも必死なんですから…。
それ以前に自分の立てた捏造話があんまり信じてもらえなくて昨日から追求の嵐だったから余計疲労もたまって今はもうあまりその話題に触れたくないんです」
「そ、そうなの…」

シホの表情は中々に哀愁が漂っていたのをランディは感じてもうこの話題には触れない事にした。
それほどに今のシホは疲労が激しかった。シホらしからず願うのならば今すぐにでも横になりたい衝動が起きているくらいに…。

「とりあえず私も中にいってきます」
「うん。それじゃ僕も仕事に戻るとするよ」
「頑張ってくださいね」

ランディは笑顔を向けながらその場を去っていった。
しかしやはり心の中で…(もういい…。)

ともかく中に入っていったシホはフェイトに寄って、

「よかったわね、フェイト」
「うん! これからよろしくね、シホ。それにみんな!」

フェイトの言葉は全員に行き渡ってそれぞれ言葉を返して、少ししてその場はお開きになった。
それと帰り際、すずかがシホに話しかけた。

「どうしたの?」
「うん。シホちゃんってはやてちゃんって知っているよね?」
「え? うん、私のメール友達よ。最近はタイミングが悪いのか会わないけど前はよくスーパーや図書館で会ったりしたりするから…でもどうしてすずかがはやての事を…?」
「うん。私もはやてちゃんと図書館で会って友達になったの。それでね…」

それで色々はやての事で二人は話し合っていた。
幸い守護騎士達の名が語られなかったのは、さて吉と出るか凶と出るか…。
まだ分からない。


◆◇―――――――――◇◆


Side 八神はやて


ん…? すずかちゃんからメールがきとる。
えっと、なになに…?
あ、シホちゃんに私の話をしたんか。
嬉しいわ。今度、シホちゃんの手があいた時があったら連れてきてくれるんか。
そういえばシホちゃん、私の家に招待した事ないから楽しみやなぁ…。
でもどうも実家が忙しいらしく期待はあまり出来ないかぁ。まぁ年末近いからしかたないか。

「でも、ほんまに嬉しいなぁ…」
「どうしたの、はやて…?」

そこで私の隣で食後に一緒にテレビを見ていたヴィータが話しかけてきた。
ふふふ、そうやな。ヴィータにも報告せな。

「うん。私の友達になったすずかちゃんの事、知ってるやろ?」
「うん。今度うちに来るとか言っていた奴だろ」
「そう。その子なんやけどシホちゃんの友達なんよ」
「!? そ、そうなんだ…」

…ん? どうしたんかな。ヴィータの顔が一瞬だけ変わったみたいやけど。
まぁ、気のせいやろ。

「それでな。今すずかちゃんからシホちゃんの事を聞いたんやけど、なんでも昨日に家での稽古、かな? それで自爆したらしくて全身筋肉痛なんやて」
「そ、そうなんだ…」

うん? やっぱり普段と違って様子がおかしい。
どうしたんやろうな?

「…なぁ、ヴィータ。どうしたの? いつもシホちゃんの話をしてもそれほど驚かないのになんか今日はやけに反応違うなぁ…」
「え!? な、なんでもないよ、はやて! ただ、そのシホって奴、はやての友達じゃんか。だから大丈夫かなと思って…」
「ほうか。うん。なんでもすずかちゃんの話だと早くても一週間くらいしないと完全復帰は無理そうだっていうんや。ホント、なにがあったんかな…?」
「………良くなるといいな」
「そうやね。それにシホちゃんはとっても笑顔が可愛いんよ。
だから笑顔が消える事はしてほしくないんよ。ただでさえシホちゃんは今の家族に引き取られるまでは一人やったんだから」
「そいつも、一人だったの…?」
「そうらしい…。詳しくは教えてくれなかったけどな。
でもきっとヴィータもシホちゃんの笑顔を見たら納得すると思うよ? ほんまに可愛いんやから!」
「は、はやての方が可愛いに決まっているだろ!」
「あかんで? まだ見ていないのにそう決め付けちゃ…今度もし会う事があったら見たらええよ」
「うん。もし会う事があったらな」
「うん、よろしい。それじゃもうそろそろ時間も遅いし眠るとしようか」
「うん、わかった」

そして私達は寝室に向かっていって眠りについた。すずかちゃんとシホちゃんと一緒に楽しく遊べる夢を見れたらええな…。


◆◇―――――――――◇◆


ヴィータははやてが寝静まった頃合いを見計らって部屋から出て行きある場所に向かった。
そこはあるビルの屋上。
そこにはすでにヴィータ以外の守護騎士とアーチャーが待っていた。

「主には気取られなかったか?」
「ああ。今はもうぐっすりと眠ってる…それよりシグナム、それにみんな。いい話なのか悪い話なのか分からないけど聞いてくれるか?」
「どうしたの、ヴィータちゃん…?」
「実は―――………」

ヴィータははやてとの話をみんなに話した。

「…そうか。シュバインオーグは無事か。しかし心配させまいと必死に外面の傷だけでも塞いだのだろうな。あの傷は筋肉痛だけで済まされるものではない」
「シホちゃん…前にスーパーで会った時、家族の心配した顔を見たくないと言っていましたから…」
「………」

それで全員暗くなる。特に一番攻撃を浴びせてしまっただろうザフィーラは無言で沈んでいる。だがそこでアーチャーが声を上げた。

「お前達の覚悟はそれだけか…? はやてを救うと決めたのだろう…? ならば今はその感情は心の奥に閉まっておく事だ。感情移入したら戦いにもならんからな」
「お前は薄情だよなー…」

ヴィータが呆れた声を上げるがアーチャーは、

「放っておけ。私とて気にかけないといえば嘘になるが、そうでもしなければやってられんだろうに…」
「そうだな…。確かにアーチャーの言うとおりだ。今は主を救う事だけ考えればいい。それにシュバインオーグが生きている事だけ分かればもう気にしなくて済む」
「そうだ。それでいい。…さて、では今日も行くとしようかね。我等の家族を救う戦いに…!」
「おう!」

アーチャーが仕切るかのように全員が声を上げて甲冑をその身にまとい、それぞれ違う方へと飛び去っていった。



 
 

 
後書き
今回はクロノとランディに笑いを取らせました。 
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