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『蒼海の世紀』短編

作者:零戦
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短編






 あの時―――

「こなくそォッ!!」

 暗殺者が叫びながら日本刀を額を負傷した武士に斬りつけようとする。

 あの瞬間―――

「さ、坂本ォッ!!」

 その近くでは、負傷した武士の名前を叫ぶ武士。



 そして暗殺者の日本刀が坂本と呼ばれる武士に………。






―――1867年(慶応三年)十一月十五日、京都近江屋―――

「はぁ…はぁ…はぁ……」

ドタドタッ!!

 一人の武士が旅館の階段をかけ上がる。

「さ、坂本さんッ!!」

 武士が部屋に入った瞬間、へなへなとその場に座った。

「ちゃ、ちゃ、ちゃ」

 部屋の奥では額を負傷した一人の武士が傷の手当てを受けていた。

「いやぁたまるかたまるか」

 負傷した武士は拳銃を片手に持ちながら笑っていた。

「さ………坂本さんッ!!」

 駆けつけた武士が泣き出した。

 泣き出した武士を見た負傷した武士―――元土佐藩士で、海援隊隊長の坂本龍馬は苦笑した。

「間違えて撃ち殺すとこじゃったきに」

「坂本さん、よくぞ御無事で………」

「ちゃちゃ。高杉君のくれたこいつにまた助けられたぜよッ!!」

 坂本は泣いている武士―――海援隊士の陸奥陽之助に、S&Wモデル2アーミー33口径6連発を見せる。

「………しかし……坂本。先刻(さっき)は君が斬られたかと肝が冷えたぞ」

 坂本を心配するのは元土佐藩士で陸援隊隊長の中岡慎太郎である。

「いやさ中岡………わしゃあ、まだ死ねんきにッ!!」

 坂本はそう言って、外を見た。

 外は蒼く澄んでいた。

「そう………世界の海を見るまではッ!!」




 この男の暗殺未遂事件より―――この物語は始まった。

 それはもう一つの二十世紀の世界だった。









「……それで君は何者かね? 妖怪か?」

「いやいや妖怪とちゃいますよ。普通に日本人ですはい……それと人を床に押し付けおいて言わないで下さい」

「黙れ小僧ッ!! 陛下の寝室に侵入しておいて何たる態度だッ!!」

 数人の衛兵に、床に無理矢理押し付けられた俺と寝間着を着た男性が話をしていた。

「……自分は楠木将と言います。貴方は?」

「朕は天皇だ」

「……はい?」

「だから朕は天皇だ」

「……本気と書いてマジですか?」

「あぁそうだ」

「……………」

「陛下に何質問しているのだッ!!」

 天皇?が力強く頷くと、俺は無茶苦茶頭を抱えた。

 ……これってネット小説にある逆行とか言うやつか? しかも天皇も何処で見たと思ったら明治天皇ぽいっし……。

「何とか言わないかッ!!」

「まぁ待て……それで楠木とやら。何故此処にいる?」

 明治天皇(仮称)は衛兵を静める。

「いや……それが自分にも分からなくて。気が付いたらこの部屋にいたので……」

「ふむ……」

「しらばっくれるなッ!! 何が気付いたらだッ!!」

「ぐッ!!」

 俺は衛兵に殴られた。痛いのでマジで止めて下さい。

「止めないかッ!!」

「も、申し訳ありませんッ!!」

 衛兵が明治天皇に頭を下げた。

「君らは下がりたまえ」

「は、しかし……」

「朕を狙う暗殺者なら既に朕の命を奪っておる。だから下がれ」

「……分かりました」

 衛兵達は寝室を出た。

「痛くないかね?」

「あたた……いえ大丈夫です。それと陛下、つかぬ事を聞きますが今は何年何月ですか? それと貴方の諱は睦仁ですか? 父は孝明天皇ですか?」

「ん? 変な事を聞くものだな。今は明治三十三年八月一日だ。諱は睦仁であり、確かに父は孝明天皇だ」

「……日露戦争前の明治日本かよ……」

「何だその日露戦争とは?」

 陛下が俺に聞く。

「日露戦争……まぁ日本とロシアの戦争ですね」

「……君が言うのはまるで戦争になるような事であるな」

「戦争になるではなくて、実際に戦争になりました」

「何?」

「陛下」

 俺は陛下の顔を見る。

「今から話す事は陛下にとって現実とはかけ離れた事になるかもしれません。ですが、自分の日本はその歴史を歩んできました」

「……話すがよい」

「ありがとうございます。まずは自分の事を話しましょう。……陛下、自分は未来から来た日本人です」

 俺は陛下にそう言って俺がいた日本が歩んだ歴史を説明した。






「……成る程。君の話は分かった。しかし、君が未来から来た日本人だと言う証拠はあるのかね?」

「そうですねぇ、何があるかな……」

 俺はそう言って持っていたバッグの中身を出していく。

「ケータイとその充電器、PSPとソフトに充電器、パソコンと充電器、そして母さんに見つかって捨てられたから新しく買ったはつ恋連○艦隊、6月発売のMCあく○ず二五号くらいやな……」

「む……ハレンチな……」

 陛下はあく○ずの烈風を見て顔を赤くしている。

「取りあえずパソコン起動させよっと」

 俺はパソコンを起動させた。そういやこの時代ってコンセントはあったかな? 無かったらパソコンは使われへんな。携帯は一応ソーラー発電の携帯やから使える事は使えるな。

「……流石にネットは使われへんからな。陛下、『抜刀隊』でも聞きますか?」

 俺はそう言って『抜刀隊』を再生させて陛下に聴かせる。

『~♪~♪~♪』

「オオォォォッ!!」

 陛下はパソコンから流れる『抜刀隊』に驚いている。まぁそりゃあそうだ。

「……今の日本では到底作れまいな。恐らくアメリカやドイツでも……」

「他にも見せましょう。じゃあこのPSPのソフトをします」

 俺はPSPを起動させる。

 ちなみにソフトは某野球ゲームだが気にしない。

「……まるで神隠しにでもあった気分だ。これだけで、君が未来から来た日本人だと証明出来る」

 陛下はそう言った。

「それで……未来での日本は平和かね?」

「平和と言えば平和なのかもしれません」

 俺は平成の日本の話をした。




「……そうか、日本は……そのような事になっているのか……」

 俺が全て話終えると、陛下は静かに泣いていた。

「陛下……」

「いや済まない。思わず泣いてしまった……」

 陛下は涙を拭く。

「……楠木君、君の話はとても興味がある。しかし、海援隊やハワイ王国の話が無いが何故かね?」

「……海援隊ですか? 海援隊は暗殺された坂本龍馬が設立したものですがそれは幕末で消えたのでは?」

「何ッ!? 坂本龍馬が暗殺されただとッ!!」

 かなり驚いているな陛下……てか何で?

「……ありがとう楠木君。疑問に思っていた事が全て結び付いた」

「どういう事ですか?」

「坂本龍馬は暗殺されていない。坂本龍馬はハワイ王国を独立させてハワイにいる」

 ……へ? あの坂本龍馬が生きている?

「ど、どういう事ですか? 坂本龍馬は近江屋で暗殺されたのではないですか?」

「確かに坂本龍馬は近江屋で暗殺されかけた。坂本は一命をとりとめて日本を出てハワイを独立させた。そして西郷隆盛をも救って反乱を回避させた」

「なッ!?」

 嘘? マジで坂本龍馬が生きている? そんで西郷隆盛も?

 ……待てよ。そういやそんな漫画が同人にあったような……あ。

「……『蒼海の世紀』や……」

 そうやそうや。『蒼海の世紀』やと坂本龍馬は暗殺未遂、そして西南戦争は回避されている。

 ……て事俺は、過去の明治にタイムスリップやなくて『蒼海の世紀』の明治にタイムスリップしたと?

 タイムスリップするような出来事あったか? 日本橋からの帰りの電車で寝てはいたけどさ。

 でも陛下の話やとマジみたいやし……。

「陛下、確かに自分の日本が歩んだ歴史とこの日本の歴史は少々異なっています。自分達の歴史では坂本龍馬は暗殺され、西郷隆盛は西南戦争で破れて切腹しています」

「……異なる日本というわけか?」

「そうです。壮大な話になりますが、世界は無数にあると言われています。例えば薩英戦争で勝った薩摩や蝦夷地が独立国となる世界もあると自分の世界の学者は言っていたりします」

 言わば平行世界やね。

「その中で、自分は坂本龍馬や西郷隆盛が死ななかったこの世界に時間(とき)を越えて来たのかと思います」

「……確かに話を聞く限りでは壮大な話だ。だが、君の持ち物は今の日本は元よりアメリカや他の国で作られる技術ではない」

 陛下はパソコンや携帯を見て頷く。そして俺を見た。

「……朕個人としては君を信じてみようと思う」

「……ありがとうございます」

 陛下の言葉に俺は頭を下げた。

「ところで君はこれからどうするのかね? 未来へ戻れるのか?」

 ……それが問題やな。

「……分かりません。戻れるなら戻れるでしょうが……自分としてはこの時代にいたいですね」

「ほぅ? 未来は技術が進んでいるのにか?」

「確かに未来の日本は生活が楽です。後アニメとかゲームとか……ですが、日本をあの戦で負けわすわけにはいきません」

 そして俺は陛下に土下座をする。

「陛下ッ!! 俺の……自分の後ろ楯になってはくれませんかッ!! 陛下が後ろ楯になれば政府関係者は元より陸海の軍人も逆らうわけにはいきません」

「……確かにな。しかし、君の後ろ楯になって日露戦争とやらに勝ったとしても国民は兎も角軍は勝ったと思うのか?」

「……確かにその通りです」

 そうなんやなぁ。俺としては突撃精神は捨ててほしいけどな。

「兎も角、君の身分は朕が保障しよう。君が行動するのはそれからでも遅くはない」

「……分かりました」

「いや気分を悪くして済まない。いきなり未来人と名乗る人物が未来を教えるなどと戯れ言を言うと精神が可笑しいではと思うてな」

「……その通りですね、少し早すぎました」

 だよな、そんな御都合は無いよな。

 兎も角、身分の保障は陛下にしてもらえる事になった。






 とまぁ、蒼海の世紀ネタでした。

 続編をと思ってましたが、主人公視点でしたので何となく皆さんには違和感を感じるかなと思い御蔵入りですかね。(標準語じゃなくて関西弁ですし)

 タイムスリップネタはなろうで執筆している架空戦記から修正してやりました。御都合であり、皇居に出現はやり過ぎかなと御蔵入りの原因の一つでもあったりします。

 ちなみに蒼海の世紀は単行本からです。同人誌なのは知っていたんですが、値段が千円を越えていたので断念して単行本で購入した経緯です(笑)

 取り合えずは早く次巻が出てほしいですね。好きなキャラは美紀、雪姐、黒河、ヒルデカルト少佐ですね~。



 
 

 
後書き
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m 
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