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Muv-Luv Alternative~一人のリンクス~

作者:廃音
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日常

 
前書き
時系列的にTEの方は既に動いているので速めに登場させます
結構TEの設定を無視しているかもしれませんが、ご了承下さい

これ完全に重量過多だろ、と言うコメントもお控えください

…これSSだからさ(ボソッ 

 
「新概念OS・XM3か」

「はい。昨日シルバさんが部屋を出た後夕呼先生に申請したんですよ」

 場所はPX内部、白銀と二人で朝食を取っている所だ。

 朝偶然基地内部を歩いていると白銀と鉢合わせたので、そのままPXに足を運んだわけだ。

 今食べている食事のメニューは…蕎麦?と言う食べ物だ。初めて見る食べ物だったために思わず頼んでしまったが、初めて食べる食べ物としては悪くない。白銀はここの食事は全て合成と言っていたが、結局合成だろうが、俺にとっては慣れた味だ。向こうの世界では汚染が進み、とてもじゃないが作物なんて育てられなかったからな。

「従来のOSも俺は理解していないが…そのXM3とやらはどう言った物なんだ?」

「簡単に言いますと、一番多く使われている動作を、一定の操作入力をする事によって使えるようにするOSですかね。個人と戦術機のフィードバックシステムを利用するので、此処の動きに合わせた動きが取れるようになってます」

「中々凄いな…。それはお前が考えたのか?」

「一応元は俺なんですけど、XM3本体を作ってくれたのは夕呼先生と社の御蔭ですよ」

 今社と言う聞かない名前が出てきたが、香月と共に名前が出てきた以上、それなりの人間なのだろう。

 それにしても新しいOSを発案するとは…伊達に三度もこの世界をやり直していない、と言う事か。一体その三度のループの中でどれだけのものを手のひらから零し、悔やんだのか。俺には想像も出来ない。ましてや慰めの言葉すら白銀にとっては失礼にあたるだろう。この世界で二度に渡り大切な仲間を失うその気持ち、誰に分かる訳でもない。

 だが、それがあってこそ、今の白銀があり、そしてXM3も生まれたのだろう。もう仲間を失わないように、BETAに打ち勝つためにも、必死に白銀は生きてきたのだろう。…俺もその心意気を持ちたいものだ。

「あ、XM3で思い出しましたけど、夕呼先生、昨日シルバさんがいってたAMSを戦術機に取り入れるような事を言ってましたよ」

「なっ!」

 白銀から前触れもなく言われたその言葉に思わず驚きの声を上げてしまう。

 先日も言ったが、AMSは適正がなければまったく使えない代物だ。脳と統合制御体でのやり取りには才能がいると…確かに裏を取れば才能さえあれば、AMSは誰にでも使えると言う事にもなる。そしてAMSを使えた先にある恩地はかなりでかい。自分で思った動きが一切のズレがなく、機体に伝わるのだから。いわば自分の思った動きがダイレクトで、ラグもなく機体に伝わるのがAMSと言っても過言ではない。

 …確かに思えばAMSを香月に説明したとき、どうにか使えないかと呟いていた気がするな。だが昨日今日の話だぞ?まさかもう戦術機に組み込める打算が立ったと言うのか?天才なんてレベルではない気がするが…。まぁAMSがXM3と同時に普及する事が出来れば世界規模で戦術機の操作レベルは大幅に上がるだろう。

 ましてやダイレクトに操作することが出来れば、今の戦術機よりも更に機動力を上げた戦術機を普及させる事も可能だ。究極的に言うのならばネクストの普及。さすがにネクストの普及は無理があるが、ネクストに近い動きを取れる戦術機の普及も夢ではないだろう。

 実際AMSにはそれを実現させる程の機構だ。そこに白銀が発案したと言うXM3も加われば…かなり凄いことになるだろうな。具体的な映像は浮かんでこないが、前線に赴く衛士の生存率は間違いなく跳ね上がるだろう。引いてはそれがBETAに勝つことにも繋がる。

 そう考えるならば、俺も武装の発案などを香月に頼もうか。今ストレイドにつまれている武装は月光と呼ばれるレーザーブレードが二つ。慣れ親しんだライフルANNRが二つ。背面武装は拡散型ミサイルに中型のレーザー兵器。そう言えば今回は肩部にも拡散ミサイルが付いていたな。長期任務と言われた為に長期戦を予想していたからな。ハンドガンも二つ格納してあるだろう。…かなりの数の武装が積まれてあるな。

 取り敢えずこの上記の武装が戦術機にも回す事は出来ないだろうか。格納庫で見た戦術機にはパッと見拡散ミサイルなどの類はなかったからな…。それに数で押し寄せてくるのがBETAならばグレネードや大型ロケットランチャーなども有効ではないか?…その手の武装に詳しくなかった自分が悔やまれる。火力兵器ならば有沢重工を思い出してしまうが…あいつが此方の世界に居るはずもないからな。

「香月はもうAMSを普及かさせる目処が立っているのか?」

「んー、俺も詳しくは分からないんですが、脳と機械でのデータのやり取りが認識しずらいなら、他を使えばいい、なんて言ってましたね。俺にはさっぱり分かりませんが」

 他を使えばいい…?脳と統合制御体の間に何かを挟むと言うのか?否、それだとAMSの効力が薄まって…。そうか!別に今ネクストに使われているAMSをそのまま使わなくとも、劣化させたAMSならば誰にでも使える可能性が出てくる。確かに現存するAMSと比べるとある程度の動作にズレが生まれてしまうかもしれないが、それでも機体制御のしやすさが上がる事は間違いない。只それすらどうやるかは俺にも分からない。そこら辺の事は香月に任せるしかないだろう。

「でも俺もAMSって言うの気になりますね」

「お前ならAMSを使えるだろうな。確証はないが」

「本当ですか!?そんな事言われたら期待しちゃいますよ」

 とまぁ白銀に期待を持たせてしまうような事を言ってしまったが、あのシミュレーターを見た俺はそう言わざるを得なかった。あの映像で見せた白銀の動き。反射神経が良いなんてレベルですまない。それに直感も鋭く動きもしなやかで迷いもない。最早完成された動きだ。

 そんな白銀はAMSを苦もなく使ってしまいそうだ。反射神経がよかろうが、それがAMS適正に繋がる訳ではないのも事実だが、実際AMS適正が高い人間は何かしろ身体的ステータスが高い。かくいう俺も身体能力はかなり高いからな。

「期待してもいいんじゃないか?それで、白銀の立場はどうなったんだ?」

「あ、はい。あの後夕呼先生と話した結果階級は俺の少佐になりました。…どんなに皆を守りたいと言う意思があってもこの世界では所詮…それは思いにでしかありません。その思いを実行するには権力や肩書きが必要ですからね」

 そう自傷気味に呟いた白銀の表情は重く暗い。前のループで思い当たる事があるのだろうか?

 どちらにせよ、白銀の言っている事は正しく、事実だ。どんなに人を守りたいと思っても、力がなければそれは意味をなくしてしまう。人を動かす意思や思いと言うものが重要だと言う事は俺にも何となくだが分かる。しかし、現実はそんな言葉だけで動く程甘くない。人を動かし、何かを守りたいならそれ相応の力が必要なのだ。

「そうか…そうだな。所属は?俺と同じヴァルキリー隊なのか?」

「いえ、俺もヴァルキリーに入るよう言われたんですが、我侭で207小隊に上官として入れてもらう事にしました」

「207小隊?どんな部隊なんだ?」

「そこの部隊は皆まだ訓練兵ですよ。…そして俺が守りたい仲間でもあります」

「ッ!!」

 そう言う事か…。そして白銀の方に視線を向けると、白銀の視線がある所に釘付けになっているのに気が付いた。俺もそちらの方に視線を向けてみると、四人の少女が朝食を取っていた。

「…あれが?」

「はい」

 短く答えた白銀の目には光るものが溜まっていた。白銀もすぐさまそれに気づき、服の裾で擦る様にして拭った。

「行って来い。お前は上官としてあの部隊に入るんだろ?挨拶ぐらいは必要だと思うが?」

「ッ!分かりました。ありがとうございます!」

 頭を下げる白銀に対し手を上げて答える。

 そのまま少し小走りで少女達の方に向かう白銀の背中を見ながら少し笑みを零す。

 四人の少女は突然現れた自分達の新しい上官に驚いている様子だったが、白銀は慣れた様子で皆に話しかけ、そのまま溶け込むように四人の輪の中に入っていた。その表情は今にも泣きそうなものであり、そして俺にも分かるほど輝いていた。

 何か良い事をした気がする。そう思うと朝から気分が良くなった。

 残りの蕎麦を食べたら体でも動かすか、と思い前の方に振り返ったのだが、其処には先程まで居なかった速瀬と涼宮中尉の姿があった。

「…あんたって優しいのね」

「いきなりなんだ?」

 突然そんな事を言われ、俺もよく理解出来なかったが、俺の言葉に速瀬は返事を返す事なく、そのまま俺の前の席に腰を下ろした。涼宮中尉は何か戸惑っている様子だったが、その場を動こうとしない速瀬を見て諦めたかのようにため息を少しだけ吐くと、速瀬同様その隣に腰を下ろした。

 そして場に広がる沈黙。俺自身速瀬に多少の苦手意識を持っているのでどう切り出していいのか分からない。それに先程の言葉が何を指しているのかが俺には理解出来なかった。タイミング的には白銀の事だろうが、今のを見て何が優しいのか…。

「なんで俺が優しいんだ?」

「…さぁ?私もよく分かんないけどそう思っただけ」

 速瀬の身も蓋もない言葉に思わず頭を抱えたくなる。直感的に感じたと言う事だろうが、そう言われると更に混乱するだけだ。
 
「まぁ、私がそう思ったんだから自分はそうなんだって思っとけばいいのよ!」

「み、美月、それは無理があると思うよ」

 速瀬の傲慢な言い様に涼宮中尉が突っ込む。少し無理がるだろ…。やはり俺は速瀬は少し苦手なタイプかもしれない。どうもペースに飲み込まれてしまう。

「自分勝手な奴だな…」

 決して口に出すつもりはなかったのだが、自分でも意図せずそう口走ってしまった。

 言ってしまった、と気づいた時には既に遅く、目の前を見てみれば肩を少しだけ震えさせている速瀬の姿。…今ので怒ったのか?沸点低くないか?と思うが、それは決して口に出さず、念のため身を少しだけ引いておく。

「あ、あんたねぇ!出会って日も浅い女の子にそんな事言う普通!?」

 女の子、と言う単語に突っ込みを入れたくなるが、それを言ってしまったらこの場が更に酷くなる事は容易に想像できるので、口に出さず、心の中にしまっておく。

 しかし、何故か怒りのメーターが競りあがっている速瀬。確かに俺も悪かったが、まさかあの言葉だけでこうなるとは思わないだろう。事実、既に付き合いが長そうな涼宮中尉もこの事態は予想してなかったのか、かなりあたふたしている。

 速瀬自身、何か俺に思う所でもあったのだろう。そんな俺に何か言われたからこそ、こうして怒っている…と。そう捕らえいいかもしれない。だが俺が癪に障るような事をしただろうか?いきなり現れた俺が気に食わなかったのか?…だめだ分からない。

「取り敢えず落ち着け。口が滑っただけだ。確かに出会ってまだ二日だが、お前は何か気を許してしまうんだ。…すまなかった」

 俺いも悪い所はあるのだから、一先ずは謝罪を、と思い頭を下げる。

 すると速瀬は鉄砲玉をくらったかのようにキョトン、とした表情になる。そのまま耳を少しだけ赤く染める。

「ふ、ふん!上手い事言っても駄目だからね!」

 そう言いながらも満足気に頷く。俺が誤ったのが以外だったのだろうか。取り敢えず何事もなく済みそうなので下手な事は言わないで置こう。

「有難う」

 最後にそう言った俺に対し、速瀬は俺から視線を逸らし、べ、別に…と小さな声で呟いている。その姿に少しだけ可愛いと思ってしまったが、その考えを打ち消す。

 まぁ速瀬には気を許してしまう、と咄嗟にあの先程は言ってしまったが、それは決して嘘ではない。速瀬のこの性格と身に纏う雰囲気からか、気を許してしまうのは事実だ。何か、こうとっつきやすい性格をしている気がする。気難しい俺が言うのだから間違いない。

「そ、そう言えば!シルバ少佐はこの後一緒に訓練受けるんですか?」

 話題を逸らそうと涼宮中尉がそう話しかけて来る。

 俺は既にヴァルキリー隊の一員だが、香月からは訓練に参加しろ、などとは言われていない。それに訓練に参加するとしても、俺は戦術機には乗れないのだ。当たり前だろう?ACとは全く異なる操縦なのだから、乗れる筈もない。

 香月が何れAMSを普及させ、それを戦術機の方に付けてくれたら俺も乗れるようにはなるだろうが。一応今ストレイドに付けているAMSを戦術機に付け替える事も可能かもしれないが、それをするだけの利点が見当たらない。

 基本性能は全てストレイドが上回っているのだから、その性能をわざわざ低くする必要性はないのだ。最も、異なる世界の機体を世間に知らせないためにも戦術機に乗り換える、と言う必要はいつか出てくるかもしれない。…むぅ、そう考えると俺も戦術機に慣れる必要があるかもしれない。

「そうだな…涼宮達と一緒に受ける予定はないが、一人ででも体は動かそうと思っている」

「なら私達と一緒に訓練受けませんか?今日はシミュレーター訓練なので、皆さんの動きも把握出来ると思いますよ」

 ヴァルキリー隊メンバーの動きか。確かに、それは一日でも早く覚えないといけない事だ。…だが戦術機に乗れない、と言う事がやはりでかい。

 ACのデータさえあれば、それをシミュレーターの方に転用出来ると思うのだが、生憎俺はこの世界に来てまだ二日目。当然シミュレーターにACのデータがあるわけもない。そうなると…今日の所は断ろうか?いや…せめて見るだけでもいいなら、一緒に行こう。

「すまないが後ろで見ているだけ、と言うのは駄目か?此方にも少しばかり事情があるんだが…」

「い、いえ此方こそすいません。突然こんな事言い始めちゃって。でも後ろで見ているだけでも全然構いませんよ」

「それは助かる。それじゃあ言葉に甘えて今日はそちらに邪魔するとしよう」

「はい!一緒に頑張りましょうね!」

 そう笑顔を浮かべる涼宮中尉の表情を見て、俺も気分が晴れやかなものになる。

 何かこう…涼宮中尉は喋っていて気分が穏やかになる。速瀬とは真逆の性格をしているな。何故真逆の性格をしている二人は一緒にいるのだろうか?凸凹で気があうのかもしれないが。

 自分が考えている事は二人にとってかなり失礼だとは分かっているものの、そう感じずにはいられない。

「あんたシミュレーターには乗らないの?あんたの操縦が見れると思ったのに」

「悪いが暫くは見せれそうにない。ちょっと…な」

「あー。あの新型?何、操縦概念でも違うの?」

 やはり速瀬は鋭いな…。

「何でもいいだろう?それよりも時間はいいのか?」

「むっ…気になるけど時間もないから今回は見逃してやるわ」

 そう言ってくれたことに少し安堵しつつも、俺も残り少ない蕎麦に口を付ける。

 その後全ての朝食を食べきった俺達は訓練を受ける為、格納庫の方へと足を向けた。 
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