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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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日常

 
前書き
次話本編突入 

 
 現在、新幹線に乗って埼玉に向かっている。なぜ、埼玉に向かっているかというと桐ヶ谷家に泊まりに行くからだ。自分の家は、お袋が福岡に行く時に返したらしい。

 だから、電話で和人に泊まりに行くから俺の部屋開けといてといって一方的に話をして切った。なぜ、わざわざ埼玉に帰るかというと、菊岡が送ってきた名簿にアスナという名前があったからだ。

 本名は結城明日奈。

 この名前はあのアスナなのか、和人に電話で聞くと知っているアスナだった。ユキの安否も和人に聞くとユキも意識不明らしい。本名はその時に和人から聞いた。本庄雪乃。それがユキの本名だった。彼女たちは結城本家と呼ばれる、昔からいる大きな家系らしい。苗字が違うのはユキは父形の苗字だからと和人に聞いた。とりあえず埼玉に向かっている理由は、お世話になった人たちに会うために福岡から出てきた。

 そして、アナウンスで目的地の駅が言われたため、少ない荷物を持つ。その中には自分を苦しめた枷も入っている。そして、新幹線が止まると優は目的地に足を踏み入れた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「おう、カズ。一ヶ月ぶりだな。て言っても、この前電話したし声を聞くのはそこまでないか」

 駅前に出て見知った顔に声をかける。

「久しぶりだな、優。もう身体は大丈夫なのか?」

「ああ。菊岡にもらった新しい薬をもらってからはもう麻痺してるところはもうほとんどない。だけど副作用が眠くなるだったからけっこうやばかったな」

 取り合えず軽い挨拶をすると、駅を後にし、歩き始める。

「しかし、お前の母さんが再婚していたことにはびっくりしたな」

「ああ。それは一番俺がびっくりした。しかもあっちの家はやばいぞ。めっちゃデカイ道場で広いの何の、俺の通ってた道場の四倍はあったぞ」

「それはヤバイな」

「しっかし、お前は体が細いな。しっかりジム通ってんのか?俺なんて、祖父さんたちとの試合で閉じ込められる前まではいかないけど筋肉なら結構戻ってきたぞ」

 そう言って、少し袖をめくり和人に腕を見せる。

「俺はお前と違うんだよ。つうかよく一ヶ月で戻せたな。いや、それ以下でか」

 和人は後遺症のことを考えて言った。

「ああ、あっちの祖父さんと義父さんが戦闘狂(バトルジャンキー)過ぎるんだよ。マジでやってくるからいつも死に物狂いでやらなきゃ殺されそうになる」

 優は相当嫌だったらしく、渋い顔をした。それを見た和人は苦笑した。

「まあ、いいじゃんか。体の調子も戻ってきてんだろ?」

「まあな」

 そして駅を出ると、なつかしの風景が広がっていた。

「ここに帰ってくるのも久しぶりだな。……懐かしいな」

「そうだな。ここからは遠いけど歩いて帰るか?お前がゆっくりと景色を見たいならだけど」

「おっ、カズにしては、言いこというじゃんか。じゃあ歩いていくか。懐かしい場所がどうなったか見てみたいし、それにカズのリハビリもかねてな」

 そう言って優とキリトは歩いて桐ヶ谷家へと向かった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 帰り道には色々と懐かしい場所を見た。よく和人と遊んだ公園、自分のよく寄っていた古い駄菓子やなど懐かしい場所を見ていると、自然と足が進む。和人も歩きながら色々と話した。

「お、まだここはやってんのか。懐かしいな……」

 そう言って足を止める。そこは優が通っていた道場だった。外からでも子供が頑張ってる声が聞こえてくる。

「そうだな。お前は福岡にいたし、そう思うのは無理もないか」

「ちょっと入ってくる。久しぶりに先生とかに挨拶して行くからカズは先に帰っといてくれ。それとスグにも遅くなると伝えといてくれよ」

「わかった。遅くならないうちに家に来いよ」

 そう言って和人は手を振って家に帰った。それを見送ったあと、優は道場の中に入る。懐かしい門を通ると同年代の男が急に入ってきた優を見て声をかけてきた。

「お前、道場の入門希望者か?」

「いいや、ちょっと見に来ただけだ」

 そう言うと、優は道場の中に入る。中もほとんどかわっておらず、広い稽古場は三十数人の男の子や女の子が互いに自らの腕を磨いている。しばらく見ていると、数人の女子がこっちを見て何か言っていた。聞こえないから、男の稽古を見ていると懐かしい声に話しかけられた。

「もしかして、優くんかい?」

 話しかけられたほうを見ると二年前まで教えてもらっていた先生がいた。

「そうだよ。久しぶりだな、先生」

「本当に優君なのかい!?いやー、二年前とほとんど変わってないね」

「そりゃー、二年も寝たきりだったんだ。変わるもんといったら体重と筋力ぐらいだろ」

「しかし、本当によかったよ。君があれに閉じ込められた時は、どうなるかと思ったよ。でも君ならいつかひょっこり帰ってくると信じてたけどね。何てたって君は、公式の道場主催の全国大会で優勝したんだ」

「先生、だからあの時は運良く入って勝てただけだから」

「そんな謙遜するなよ。君のおかげでこの道場も少しはましになったんだ。ほんとあの時は困ったよ」

「そうだな。ここガラガラだったもんな」

 優は久しぶりに会った先生と懐かしい思い出を語った。いつの間にかかなりの時間が過ぎて昼ぐらいから来ていたはずがもう夕方になっていた。

「じゃあ、俺そろそろ帰るよ。カズたちの家にそろそろ行かなきゃなんかうるさそうだから」

「ちょっと待つんだ」

「なんすか、先生?」

 突然、先生に呼ばれ立ち止まる。

「一回ぐらい勝負してからにしようじゃないか。体鍛えてないわけじゃないだろ」

 急に先生の表情がが変わった。獲物を狩る鷹のような目をしている。まあ、先生も戦闘狂(バトルジャンキー)だから、二年もの間強いのが来なかったのか鍛えられなかったのか相当溜まってるらしくオーラがやばい。これは、手っ取り早く片付けて帰ろう、そう思い了解といって脱衣所に入っていった。中にはないだろうなと思いながら二年前に使っていた胴着を探す。胴着はしっかりと洗濯され、元自分のロッカーに入っていた。洗濯されていたのか、においは臭くなかった。素早くそれに着替え、サポーターを身体につけて、道場に戻った。

「ようやく来たか。待っていたよ、優君」

 その口調に少し不快感を思い出す。

「その口調やめてくれ先生。なんか不機嫌になりそう」

「そうか」

 そう言って喋らなくなる。どうやら全員稽古をやめて端っこに座っている。どうせ見稽古とか言ってからやめさせたんだろう。優は素早く構え、試合の合図を待つ。始め!!と大きな開始の合図が響くと優は縮地法と呼ばれる方法で相手との距離を詰める。

「それは縮地法だね。すごいな、そんなのも覚えたのか」

 先生はそう言って蹴りをかましてくる。それを受けて逆に蹴りを入れようとする。しかし、それを防がれると今度は、近づいて肘打ちをしてくる。それを避けるため身体を捻る。そして掴まれた足を軸に身体を回転させ、ヘッドギアをつけている頭に横からかかとで蹴る。

 それを避けられると体勢を立て直していったん距離を取られる。

「さっきのはすごいね。いつの間にあんな方法を覚えたんだ?」

「ちょっと新しい家族のうちが道場だったんでそこで教えてもらいました。確か、ヨーロッパのほうでパルクールって言うスポーツがあるらしくて、そのアクロバティックな動きを取り入れた新しいスタイルの武術を思いついたとか言って俺で試したんだよ。まあ、見た奴は頑張って覚えたけど」

「そうか、それは是非とももっと知りたいね!!」

 そう言って突っ込んで来る。優は自分の間合いを円に例える。そして自分から二メートル半ぐらいまで、自分の攻撃範囲を領域にして示す。これはいわゆる絶対領域に近い感じでこの円の中は優の十八番でこの中なら不確定要素がない限り絶対に外すことはない。そして先生は、その領域に入ってくる。瞬間、優は先生の向けて本気の蹴りを繰り出す。先生はそれをガードしようと腕を出すが、すぐに引っ込めて間合いから出た。

「さっきのは骨を砕くつもりかい?相当な速さとその後のハンパない衝撃の風だったけど」

「いや、先生なら避けてくれると思ってマジで蹴った」

「今の君の蹴りはもう足刀の域に達してるだろ……」

 そう呟く、先生に距離を縮め、突きを出す。それを避けられると横から蹴りが飛んでくる、それを伏せてかわすと身体を捻りしたから顔面に蹴り上げる。それは直撃ではなかったものの掠った。

「すごいね、二年前とはぜんぜん違う動き出し。君は努力の結晶のような人間だよ。どれほど自分を磨けば気が済むんだ」

「うーん、俺的には答えが出せるまで。親父の遺言で強くなれって言われたから心体ともに鍛えてんだけど、まだ見つからなくてね」

 そう言って再び突撃する。今度は、もう出し惜しみのない力で。今までとは比にならないくらいの速さでかけ、掌底を突き出す。驚く先生はそれに反応出来ず、モロに食らって倒れてしまった。優はやりすぎたと思い素早く駆け寄り起こす。

「すまん、先生。マジでさっきのはやりすぎた」

「げほっ、げほっ!!ああ、今のはやりすぎだ。でも、君の腕が落ちてなくてよかったよ」

 そう言って肩をポンと叩かれる。

「まあ、あんたよりも恐ろしい戦闘狂との試合が毎日のように続いたからな」

 優は渋い顔をしながら先生に言った。

「それは気の毒だ。それよりも、もう家に帰っていいよ。久しぶりに来てもらって自分の血が騒ぎすぎたせいで遅れたし」

「まあ、気にすんな。俺も久しぶりに先生と試合して楽しかったし」

「ふっ、君ももう私と同じ戦闘狂(バトルジャンキー)の仲間入りだな」

「俺はそんなのに仲間入りしたくねえよ。俺はただの戦闘馬鹿なだけだ」

「どっちも変わらないだろう」

「それもそうか」

 二人は笑う。先生は自分で立ち上がり自分の教え子達に向かって言った。

「さっき戦ってくれたのが、私の元教え子で二年前の大会の優勝者だ。さっきの彼のように君達も自分の道を精進してくれ」

 そう言うと、先生は皆に稽古するように言って、優のところに来た。

「ほんとうにすまなかったね、優君」

「いいよ。じゃあ、帰らせてもらいます」

「ああ、いつでもおいで。君が来るのを楽しみに待ってるよ」

「ああ」

 優は道場を後にし、桐ケ谷家に向かった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 和人の家に着き、家の中に入る。玄関の前ではジャージを着た年下の女の子がいた。

「よう、久しぶり。スグ。元気か?」

 挨拶をすると笑顔を咲かせたが直に不機嫌そうな表情になる。

「優君、遅いじゃない!お兄ちゃんが言うには道場で挨拶してから帰ってくるって言ってたけど、こんなに遅れるんだったらメールとか電話の一本ぐらい入れて欲しいかったよ!」

 そう言って拗ねたみたいに頬を膨らませてそっぽを向いた。優は直葉に近づいて、頭にポンと手を置き耳元でささやく。

「ゴメンな、スグ。俺のことを一番に心配してくれてたのに連絡の一つもしないで。本当に悪かった」

 確か、前に本を読んで大体の女性はこうしてくれると許してくれると書いてあった。どんな本かは忘れたがスグは顔を真っ赤にして俯いてから言う。

「……いいよ。私も少しことで拗ねてゴメン」

「外で待ってたんだろ。寒かっただろうし、温かいもんを作ってやるから中に入ろうぜ」

「うん」

 そして、優は桐ケ谷家に入った。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「やっぱり、優君の料理は美味しいわ。直葉の婿になってもらいたいぐらい」

 桐ケ谷翠は優の作った料理を食べながら、そんなことを言う。それを聞いた直葉は顔を赤くしながら、ガタッと音を立てて立ち上がる。

「ちょ、お母さん!!何言ってんの!?」

「スグ、母さんの冗談だぞ?」

「おばさん、少しはスグのことを考えてやろうぜ。スグだって高校に入ってるし好きな人ぐらいできるだろうし」

 そう言うと翠は、ため息を吐いた。小さな声で何か呟いていた。

「やっぱり、鈍いわね。もっとわかるように言わなきゃ駄目かしら……」

「おばさん、なんて?」

「え、ああ、なんでもないわよ」

 優がそう言うと、翠は何か残念そうに言って再び食事を食べ始める。

「スグもそろそろ座ったらどうだ?飯が冷めたらうまくないぞ?」

「う、うん」

 直葉も椅子座ってご飯を食べるのを再開する。優たちは楽しい会話をしながら食事を終えて、それぞれの部屋に戻った。優は和人と話すため、和人の部屋にいた。

「おい、カズ。お前のほうがこっちにいたんだからいくらかユキのことを知ってるだろ。わかってることだけでもいい。教えてくれ」

「そう言わなくても、教えるよ。お前の気持ちは俺もよく分かるからな」

 和人はそう言って自分の手を強く握っていた。和人もアスナに会えないと聞いているため自分と同じ気持ちなんだろう。

「本庄雪乃、いやユキは所沢の病院にいる。そこで、まだ眠り続けているよ」

「……そうか……」

 それを聞くと優はゆっくりと息を吐きながら答えた。

「ユキもアスナも、その他約三百人もの奴がまだ閉じ込められている。カズ、お前が思うにこれはあいつ、茅場晶彦の仕業なのか?」

「いや、それは違うと思う。お前が消えた後、俺とアスナとユキは消えていく浮遊城を見た後、茅場晶彦と会ったんだ。そこで、茅場晶彦は俺達にクリアおめでとうって言った。俺はあいつは自分の目的が終わったのにこんなことをするとは思えない」

「そうか。俺もそう思うんだが、もう一つ。俺は何か手がかりがあると思うんだ」

 そう言って優は自分の部屋から持ってきていたカバンから、ヘッドギアを取り出す。所々傷やはがれている部分はあるが底まで目立った傷などがないヘッドギア、ナーヴギアだった。それを見た和人は疑問符を浮かべる。

「それがどうしたんだよ。もしかしてSAOの中に手がかりがあるって言うのか?それは絶対にない。俺は何度も、もう一度あの世界に行こうとしたが無理だったぞ」

 和人の言葉に首を振る。

「大事なのは、この中に入ってる奴だ。俺を蝕んだあいつら」

 そう言うと和人は、はっと何かに気がついたように驚く。

「まさか、ウィルスの仕業なのか」

 和人は言うと優は首を振る。

「いや、この中に入っている一人が言ってた言葉が気になるんだよ。『お姉ちゃんとは次の世界で会えるよ。大事な人を助けに行くんだったらね』って言われたんだ。大事な人は多分ユキだろう。だけど、あいつの言うお姉ちゃんってのがよくわからん」

「そんなことを言われたのか。それなら次の世界?次の世界っていうのはこの現実世界か?それだったら、もう会うことになるから違うのか?」

「わからん。まあ、急ぐことはないだろ。少しずつ情報を集めたりしてアスナたちが目を覚ますのを待とう」

 そう言って優は和人の部屋を出て行く。そして、和人の部屋の扉に背を預け、呟いた。

「ああは言ったものの、俺自体はそんなに待てねえよ」

 優は拳を硬く握って今の感情を抑えた。 
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