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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第二十六話 暗黒の皇帝

                 第二十六話 暗黒の皇帝

        「それではだ」
「はい」
 ワールがグールと話している。
「ハザルはそうしたのだな」
「左様です」
 こうズールに話していた。
「何かおかしいとは思いますが」
「そうだな」
 ズールもワールの言葉に頷く。
「普通はあの時は」
「ロンド=ベルに何かあるのか」
「裏切り者のマーグとロゼ、それにマーズがいますが」
「あの男には関係ない」
「はい、確かに」
「あの男は強欲だ」
 ハザルへの言葉に他ならない。
「そして己のことしか考えない男だ」
「はい、確かに」
「その男が我等の為に何かをするか」
「それは考えられません」
「そうだ、絶対にだ」
 ある意味においてハザルのことをよくわかっているズールだった。
「それはない」
「その通りです。それに狙ったのは連中の居住区域です」
「補給基地を狙ったのではないな」
「ならば一部隊を向かわせるでしょう」
 さらに話すのだった。
「ですから。一機だけとは」
「しかも向かったのはエイス=ゴッツォだな」
「はい」
 まさに彼だった。
「あのエイス=ゴッツォです」
「あの男はハザルの腹心だ」
「その腹心を向かわせるとなると」
「やはり相当なことだ」
 こう言うのだった。
「一機で向かうとなるとだ」
「そのエイスが一機で」
「何かある。ではだ」
「どうされますか、今度は」
「様子を見る」
 そうするというのである。
「今はだ。様子を見る」
「そうなのですか」
「バレンとグールも出す」
「はい」
「あの者達も連れて行け」
 こうワールに言うのだった。
「よいな、それではだ」
「はい、それでは」
「そしてその分あの男から目を離すな」
「わかりました」
「そして私も向かおう」
「何とっ」
 今のズールの言葉にはだ。思わず驚きの声をあげたワールだった。
 そのうえでまた彼に問うた。
「ズール様もですか」
「そうだ、ただしだ」
「ただし?」
「影だ」
 それは影だというのである。
「私の影を行かせる」
「そうされるのですか」
「そうだ、そうする」
 言葉は決意そのものだった。
「それでわかったな」
「わかりました。それでは」
「ジュデッカ=ゴッツォ達の用意はいいな」
「はい、次の戦いには」
 今の戦いには、とは言った。
「充分に間に合います」
「では今はハザルの方が問題だな」
「何を考えているかですね」
「それを見る。いいな」
「はい、それでは」
 こうして彼等の方針は決まった。彼等は今はロンド=ベルよりも友軍である筈のハザル達の方が問題だった。彼等も彼等で動いていた。
 そしてだ。ロンド=ベルもだ。彼等も次の戦いを待っていた。
 ギシン星にそのまま向かっている。その中でだ。
「フロンティアへの護りは?」
「安心していいわ」
 ミサトが応える。
「それの手配はしておいたから」
「そうですか、それなら」
「今は」
「敵は絶対に来る」
 今言ったのはだ。一目で階級がかなり上だとわかる軍人だった。
 その彼がだ。重厚な声で言ったのである。
「諸君はそれに備えておいてくれ」
「あれっ、貴方は」
「誰ですか?」
 皆その髪の毛の薄い彼に顔を向けて問うた。
「フロンティアの方ですよね」
「そうですよね」
「美知島征太という」
 こう名乗るのだった。
「階級は中将だ」
「中将閣下ですか」
「そうなのですか」
「そうだ、これから宜しく頼む」
 彼の方からの言葉だ。
「それでだ」
「はい、それでは」
「フロンティアはですか」
「至る場所に兵を配しておいた」
 美知島はこう一同に話した。
「無論戦いの中でまた見回りになるがだ」
「有り難うございます、それなら宇宙での戦闘中は」
「宜しく御願いします」
「頑張ってくれ。それではな」
「はい、それでは」
「行って来ます」
 その言葉を聞いて安心した彼等だった。そうしてである。
 彼等は今は進軍を続けていた。すると次の日にだ。
「レーダーに反応です」
「右です」 
 アドレアとナタルが言う。
「そして左にもです」
「それぞれ斜め前に出ています」
「やはり来たな」
 ヘンケンはそれを聞いて呟いた。
「それで右は」
「ハザル=ゴッツォの軍の様です」
 ナタルが答える。
「そして右はです」
「そうか」
「ギシン系の戦力です」
「今度は分かれてか」
「分進合撃でしょうか」 
 ここでナタルは言った。
「今回は」
「いや、それはその通りだが」
「何か違うのですか」
「どうやら仲違いでもしたな」
 ヘンケンはそう察したのだった。
「何かな」
「仲違いですか」
「そうだ、同じバルマー軍でもだ」
「はい」
「それぞれ思惑がある」
 指摘するのはこのことだった。
「だからだ。それが衝突したかだ」
「それともですか」
「一方が察して離れたから」
 こうも言ってみせた。
「どちらかだな」
「ではそれによりですか」
「そうだ、分かれている」
 ヘンケンはあらためて言った。
「それによってだ」
「では艦長」
 ここまで聞いてだ。沈黙していたアドレアが問うてきた。
「ここは」
「まずは一方を叩くとしよう」
 ヘンケンは言った。
「そしてその一方はだ」
「はい、その一方は」
「どちらでしょうか」
 アドレアだけではなくナタルも問うた。
「ギシンでしょうか。それとも」
「ハザル=ゴッツォの軍でしょうか」
「ここはハザル=ゴッツォだ」
 ヘンケンはこう二人に告げた。
「いいな、そちらにだ」
「外銀河方面軍にですか」
「そちらに」
「見たところヘルモーズはいない」
 このことも何気に大きかった。
「今回はあの男の直属艦隊だけの様だな」
「七個艦隊は本来の持ち場に残っているのだろう」
 マーグはこう指摘した。
「今はな」
「そうか、そうなのか」
「だがズールは違う」
 彼等はだというのだ。
「あの男の軍は違う」
「はい、そうですね」
 マーグの言葉にロゼが頷いた。
「ここは彼の勢力圏ですから」
「間違いなく本気で来る」
 戦力的にはという意味であった。
「間も無くヘルモーズ達が来てもおかしくはない」
「つまりだ」
 ここまで聞いた神宮寺が述べた。
「ここはまずは戦力が少ない方を先に叩くのか」
「そういうことになるな」
 ヘンケンが神宮寺の言葉に応えた。
「ギシン系の軍はまだ出て来るだろうからな」
「それじゃあ今はですね」
「あのハザル=ゴッツォの軍を」
 麗とマリも言う。
「それにフロンティアのこともありますし」
「ここは」
「そうですね。あのことは忘れてはいけませんね」
 猿丸もそれを言う。
「あの時と同じことをしてくるならです」
「間違いなく何かあるね」
 洸も言った。
「フロンティアに」
「それを見極める為にもだ」
「はい」
 洸はヘンケンの言葉に頷いた。
「まずは外銀河方面軍を」
「そうするとしよう」
「それでは全軍」
 ナタルがあらためて言う。
「外銀河方面軍に向かう」
「了解です」
「それなら」
 こうしてであった。ロンド=ベルはハザルの軍に向かう。そのハザルもそれを見てだった。
「ふむ」
「ここは」
「わかっている」
 こうエイスにも返した。
「エイス、いいな」
「はい」
「御前の任務は前と同じだ」
「フロンティアをですね」
「そうだ、破壊しろ」
 告げた言葉はこれだった。
「いいな、跡形もなくだ」
「わかりました」
「遠慮することはない」 
 酷薄な笑みでの言葉だった。
「戦闘中でのことだ。おられるのは知らなかった」
「はい」
「これで何の問題もない」
「ハザル様は一時謹慎になりますが」
「何、どうということはない」
 実に素っ気無いハザルの言葉だった。
「あくまで一時のことだ」
「左様ですか」
「そうだ、一時的なことだ」
 ハザルの酷薄な笑みはそのままだった。
「そのリスクの分はある」
「それでは」
「そうだ、わかるな」
 また言うハザルだった。
「その様にだ」
「それでは」
「全軍に告ぐ」
 エイス専用の回線を切ってからの指示だった。
「これよりロンド=ベルに向かう」
「はい」
「それでは」
 この言葉と共にであった。
 そしてだ。ロンド=ベルに向かう。忽ちのうちに激しい戦いがはじまった。
 その中でエイスはだ。影の様に動いた。
 フロンティアに向かおうとする。だがそれは既にだった。
「来たな」
「ええ」
「やはり」
 ロンド=ベルの面々はそれを察していた。そのうえでの言葉だった。
「フロンティアに」
「やはり一機だけ」
「よし!それならだ!」
 それを受けてだった。一機動いた。
 それはダイターンだった。一直線にディバリウムに向かう。
 そのうえでだ。彼と対峙してそのうえで言うのであった。
「一つ聞きたいことがあるんだけれどね」
「何だ?」
「一体何を考えているんだい?」
 万丈は余裕のある顔で問うてみせた。
「君はどうしてそんなにフロンティアにこだわるのかな」
「答えるつもりはない」
 エイスの返答は素っ気無いものだった。
「全くだ」
「そうかい、答えないのかい」
「その義務はない」
 だからだというのだ。
「そのつもりはない」
「まあそれならそれでいいよ」
 万丈はそれを聞いても態度を変えない。
「別にね」
「いいというのか」
「実際話すとは思ってなかったしね」
「だからか」
「そうさ、君達の今までのパターンから見て」
 そのうえでの想定だったのだ。
「絶対にそれはないと思っていたさ」
「だからか」
「さからだよ。そして」
 顔が真剣なものになった。そうしてだ。
「フロンティアはやらせないよ」
「貴様を倒せということか」
「どうしてもフロンティアに行きたいならね。それでわかったね」
「わかった。しかしだ」
「しかし?」
「それは無謀な」
 こう万丈に言うのだった。
「それはだ。無謀だ」
「無謀だってのかい」
「俺のディバリウムを一機で倒すことはだ」
 言うのはこのことだった。
「それはできはしない。とてもだ」
「さて、それはどうかな」
 万丈の言葉には余裕が戻った。
「それはね。どうかな」
「どうかというのか」
「そのディバリウムは見たところ一機で多くの敵を相手にするものだね」
 その通りだった。
「その通りだね」
「見ていたのか」
「何度も戦っているからね。わかるさ」
 また言葉に余裕を見せていた。
「それに」
「それにか」
「君はいつも一機で行動するからね」
「それでもわかったか」
「わかったよ、今もそうだしね」
 そしてだった。次に言う言葉はだ。
「君を相手にするのなら一対一の方が勝手がいいしね」
「だからこそ貴様一人で来たというのか」
「そういうことさ。それでいいかな」
「行くぞ」
 言葉に感情はないが攻撃的な言葉だった。
「それではだ」
「やあやあ遠からん者は聞け!近くば寄って目にも見よ!」
 ここで万丈は名乗りを挙げた。
「世の為人の為バルマーの野望を打ち砕くダイターン3!」
「おっ、出たか」
「久し振りね、あの言葉」
 皆もそれを聞いて言う。
「この日輪の輝きを恐れぬならかかった来い!」
「死ね」
 こう言ってだった。エイスのディバリムがビームを広範囲に放った。だが万丈はそれをあっさりとかわしてみせたのであった。
 エイスはそれを見てだ。言うのだった。
「かわしたか」
「巨体と思って甘く見ないことだね」
 不敵な笑みでの言葉だった。
「こうしたこともできるんだよ」
「そうなのか」
「そうだよ、こうしてね」
 それも言うのだった。
「君の攻撃もそう簡単には当たらないと」
「しかしだ」
「しかし?」
「最後に勝つのは俺だ」
 これがエイスの言葉だった。
「それは言っておく」
「それじゃあ。今はね」
「行くぞ」
 また攻撃を仕掛けるエイスだった。万丈のダイターンと一対一で闘う。その間にロンド=ベルはハザルのぐんと全面対決に入っていた。しかしである。
 ワールはそれを見てだ。二人の美女に言うのだった。
「グール」
「はい」
「バレン」
「ここに」
 二人はそれぞれワールの言葉に応える。
「わかっているな」
「はい、それではすぐに」
「参りましょう」
「いや、まだだ」
 しかしだった。ここでワールは言うのだった。
「まだ動きはしない」
「動かれないのですか」
「それは」
「そうだ、まだだ」
 それをまた言うのだった。
「まだ動きはしない」
「では何時なのですか」
「それは」
「今七個艦隊を呼んでいる」
 ここでこう言ってみせたのである。
「それが戦場に着いてからだ」
「ではここは」
「留まっておくというのですね」
「今はだ」
 また言う彼だった。
「いいな、留まる」
「よし、それなら」
「今は」
「英気を養っておくのだ、いいな」
「畏まりました」
 ゴッチも言う。
「では」
「そうだ。しかしハザル=ゴッツォ」
 目の前で戦う彼の軍を見てまた言うワールだった。
「やはり。企んでいるな」
「はい、確かに」
「それは」
 グールとバレンも答える。そのうえで今は積極的に動かない。
 やがて情勢が変わった。ハザルの軍が押されだした。
 彼はそれを見てだ。すぐに判断を下した。
「今日はこれで終わりだ」
「それではここは」
「撤退ですか」
「そうだ、退く」
 こう部下達に答えるのだった。
「いいな、それではだ」
「はい、それでは」
「これで」
「ハザル様」
 エイスもここでモニターに出て来た。
「ではこれは」
「うむ、今はこれでいい」
 彼にも撤退を許すのだった。
「さがれ、いいな」
「わかりました」
 こうしてハザルの軍は撤退した。そうしてであった。
 彼等の軍が去るとだった。戦場に新たな群が姿を現した。
「!?この数は」
「間違いない!」
「来たわね!」
 誰もがレーダーを見て叫んだ。そして。
 バルマーの大軍がまた出て来た。そこにいるのは。
「ヘルモーズか」
「しかも七隻共来るなんて」
「ここで」
「我等の分身が世話になったようだな」
「話は聞いている」
 エペソとラオデキアであった。
「それは存分にな」
「銀河辺境方面軍を壊滅させたそうだな」
「ああ、そうさ!」
 エイジが彼等に答える。
「俺達がやってやったぜ!」
「そうか、やはりな」
「確かに聞いた」
 ジュデッカ=ゴッツォ達もそれに応える。
「既に調べはついていた」
「それを実際に汝等の口で聞いた」
「ならばだ」
「それで間違いないな」
 七人がそれそれ言うがだ。区別はつきにくかった。声も外見も、それこそ髪の色以外は全て同じなのだ。それで区別するのは容易ではなかった。
「それではだ」
「戦わせてもらう」
「よいな」
「何か同じ奴が言ってるようにしか聞こえないけれどね」
 ルナがこのことを実際に言う。
「それでもよ。いいかしら」
「よかろう。来るがいい」
「相手をしてやろう」
 その態度はまさに全く同じだった。
「ではだ」
「戦いをはじめよう」
「待て」
 しかしであった。ここでまた声がしたのだった。
「私もいるのだ」
「むっ、来られたのですか」
「ここに」
 ジュデッカ=ゴッツォ達はその言葉に顔を向けた。
 そしてだった。その大軍の中に巨大な漆黒の男がやって来た。それはまるで機械に見えた。機械がマントを羽織っているかの様である。
 その男が今名乗った。
「我が名はズール」
「ズール!?」
「この軍の指揮官の」
「あいつが!?」
「そうだ、私がそのズールなのだ」
 ズール自身もこう言ってみせたのだった。
「全てを支配する者だ」
「誰事を」
 サンドマンがその彼に対して返した。
「宇宙は誰のものでもない」
「では誰のものだというのだ」
「誰のものでもない」
 彼は己の持っている理想をここで述べてみせた。
「全ての者のものだ」
「戯言を」
 ズールはサンドマンのその言葉をせせら笑ってみせた。
「銀河は、いや宇宙は優れた者の為にあるのだ」
「ではそこに至るまでにいる者は」
「やっぱり」
「そうだ、奴隷でしかない」
 はっきりと言い切ってみせてきていた。
「所詮はだ」
「それならだ」
 ダバがそのズールに言い返す。
「俺のヤーマン族もだというのか!」
「ふむ。カモン=マイロードか」
 そのダバを見ての言葉だ。
「知っているぞ」
「知っているというのか、俺を」
「無論だ」
 号ガンナ返答だった。
「知らぬ筈がない」
「そのうえで言うか!」
 何時になく感情を見せているダバだった。
「奴隷だと!」
「従うならよし。逆らうならだ」
 一応区切ってはいた。
「奴隷にして使う。それだけだ」
「くっ・・・・・・」
「ダバ、よせ」
 ギャブレーがさらに言おうとするギャブレーを止めてきた。
「あの男とはそもそも考えが違う」
「だからなのか」
「そうだ、だからだ」
 こう言うのであった。
「これ以上は言っても無駄か」
「そうか、それなら」
「どちらにしろ戦いは避けられない」
「ああ、そうだな」
 ギャブレーに対してラー=カイラムからキャオが答えた。
「どっちにしろ敵の大ボスが出て来たからにはな」
「それは避けられはしない」
「それならね」
「行くぞ」
 アムとレッシィも言う。
「ここで決着といきたいわね」
「あのズールを倒してな」
 今ワールの軍とそのズールの大軍が合流した。そうしてであった。
 ロンド=ベルに迫る。戦いは第二幕だった。
「いいか!」
「はい!」
「総攻撃を続けろ!」
 ブライトの指示だった。
「数は向こうが圧倒的だ」
「ええ、確かに」
「バルマーの七個艦隊勢揃いですし」
「ここでも」
 それぞれ言うのだった。
「それならですね」
「もう遠慮なしに」
「補給タンクは山程ある」
 シナプスも言ってきた。
「それこそ一分で全て撃ち尽しても構わない」
「それですぐに補給ですね」
「そうして戦えってことですね」
「その通りだ」
 まさにそうだというのだった。
「わかったな。それではだ」
「わかりました」
「それなら!」   
 こうして迫るバルマー軍に総攻撃を浴びせる。ダバもだ。
「ダバ、あれを使うのね」
「ああ、そうする!」
 こうエリスにも答える。そしてだ。
 巨大なバスターキャノンを構えてだ。
 それを放った。巨大な一条の光が敵を切り裂く。
 それで数多くのマシンと戦艦が数隻沈んだ。しかしだった。
 敵はまだ来る。数は健在だった。
「数が」
「まだ来るかよ!」
「よし、それならだ!」
 エリスとキャオが叫ぶその中でだ。また言うダバだった。
 再びバスターキャノンを放つ。それでまた敵を撃つ。
 そのうえでだ。ダバはキャオに対して言ってきた。
「キャオ!」
「ああ!」
「エネルギータンクを出してくれ!」
 こう彼に言うのだ。
「こっちにだ!早く!」
「ああ、そっちだな!」
「一個じゃない!」
 しかも一個ではないというのだ。
「あるだけだ!出してくれ!」
「他の奴のものか」
「当たり前でしょ!」
「私達も戦っているのだぞ!」
 アムとレッシィが叫ぶ。二人もそれぞれバスターキャノンを放っている。
 誰もが総攻撃を放ってだ。エネルギーも弾薬もかなり消耗していた。
 だがそれだけのものはあった。二時間程度戦うとだ。バルマー軍も次第にその数を減らしてきていた。
 それを見てだ。ダバは言った。
「よし」
「ダバ、どうするの?」
「ヘルモーズを狙う」
 見れば一隻射程に入っていた。
「バスターランチャーなら」
「そうね、いけるわね」
「一撃で決める」
 こう言ってであった。狙いを定めてだ。構えて撃った。
 それが貫きだ。ヘルモーズは動きを止めた。
「やったか!?」
「いや、まだだ」
 撃ったダバがキャオに対して言った。
「まだ撃沈していない」
「まだだってのかよ」
「そうだ、大破しただけだ」
 それだけだというのだ。
「それだけだ」
「そうなのかよ」
「そうだ、まだ撃つ」
 こう言って再び構えようとする。しかしだった。
 そのヘルモーズは姿を消した。撤退であった。
「撤退!?」
「間違いない」
 ダバが驚くエリスに対して答えた。
「ここでは撤退するか」
「ズフィルードは出さないの?」
「ああ、それちょっとないだろ」
 キャオがまた言ってきた。
「今敵のラスボスが出てきてるってのによ」
「どういうことだ?」
 ギャブレーもそれがわからなかった。
「敵の総司令官が出てだ。決戦ではないのか」
「それはわからないがだ」
 レッシィは冷静に述べてきた。
「けれどね」
「けれど?どうしたのよ」
「ここでズフィルードが出ないのはいいことだね」
 割り切っての言葉だった。
「それはね」
「そうだな」
「ええ、確かにね」
 アムは彼女の言葉に素直に頷いていた。
「そのこと自体はね」
「ならそれに乗らせてもらう」
 また言うレッシィだった。
「ここはだ」
「そうだな。じゃあここはヘルモーズを撤退させていこう」
 ダバが頷いてだった。
 そのうえでロンド=ベルはヘルモーズを狙っていく。そうしてだ。
 七隻のヘルモーズが全ていなくなった。後はだ。
「数もかなり減ったし」
「後はあいつか」
 ズールを見ての言葉だ。
「あいつを倒して」
「それで」
「マーグ様」
 ロゼがマーグに言ってきた。
「私がまず引き付けます」
「ゼーロンでか」
「はい、その間に」
「そうだな」
 ここでケンジも出て来た。
「コスモクラッシャーもいる。これで引き付けて」
「タケル、御前はだ」
「その間に頼むな」
 ナオトとアキラも言ってきた。
「それであいつを倒せ」
「いいな、それで」
「そうだね、僕達五人だし」
「やれるわ」
 ナミダとミカもそれに賛成した。そうしてだった。 
 まずゼーロンとコスモクラッシャーが動いてであった。それでズールを引き付ける。
「来たか」
「ズール、貴方が」
「話は聞いている」
 自分の方に飛んで来るロゼのゼーロンを一瞥しての言葉だった。
「裏切ったのだな、マーグ共々」
「真実を知っただけです」
 こう返すロゼだった。冷静にだ。
「ただそれだけです」
「詭弁だな。だがいい」
 ズールの言葉がここで変わった。
「何故ならだ」
「何故だと?それは」
「貴様は今私によって倒される」
 だからだというのだ。
「だからいいのだ」
「そう言うのですか」
「そうだ。裏切り者を許す訳にはいかん」
 こう言ってであった。破壊光線を放つ。しかしそれはあえなくかわされてしまった。
「ほう」
 それを見てだ。ズールはまた言うのだった。
「今のをかわしたか」
「それが何か」
「見事だ」
 こうは言った。
「その動きは褒めておこう」
「それはですか」
「そうだ。しかしだ」
 だが、だった、ここで言い加えてきたのだった。
「最後には敗れる。こう言っておこう」
「貴方によってですか」
「私はこの宇宙の支配者になる男だ」
 これがズールの野望だった。
「その私にだ。貴様は殺されるのだ」
「何というプレッシャーだ」
 彼を見てだった。クワトロが呟いた。
「あそこまでのプレッシャーはだ」
「そうだな。そう感じたことはない」
 ハマーンも言う。
「それだけの力の持ち主か」
「そういうことになる。二人共いいか」
 クワトロは今度はタケルとマーグに対して言った。
「用心することだ」
「用心ですか」
「ズールとの戦いは」
「気持ちはわかる」
 こう言いもした。
「だが、だ」
「落ち着いてですね」
「それでなのか」
「そうだ。あのズールという男」
 ズールを見ながらの言葉だ。その彼をだ。
「どうやら尋常な人物ではない」
「確かに」
「超能力もかなりのものだ」
 タケルとマーグがまた話す。
「それを考えると」
「この戦い、容易ではないか」
「容易な戦いなぞありはしない」
 ハマーンらしい言葉だった。
「それも踏まえておくことだ」
「わかりました」
「それならだ」
 コスモクラッシャーも前に出てそのうえでズールの目を引く。その間にだった。
 二機のゴッドマーズが前に出て。そしてだった。まずマーグがタケルに言った。
「いいか、マーズよ」
「うん、兄さん」
「合わせる」
 そうするというのである。
「完全にだ。いいな」
「わかったよ、兄さん」
 タケルも兄のその言葉に頷いてだった。
 そうしてだ。一気に前に出てだ。
「今だ!」
「よし!」
 二人の動きが重なった。そうしてだ。
 二機のゴッドマーズが同時に光を放った。
「マーズフラッシュ!」
「マーズフラッシュ!」
 それでズールを撃った。
「うっ、これは」
「そうだ、ズール!」
 マーグが動きを止めたズールに対して告げた。
「こうして動きを止めてだ」
「そして!」
 タケルも続く。そのうえでだ。
 同時に剣を抜く。そして。
「今だ、兄さん!」
「よし、マーズ!」
「ダブルファイナル」
「ゴッドマーーーーーーーズ!!」
 二人同時に切り裂く。右と左から。それはズールといえど受けきれるものではなかった。
 切り裂かれたズールはあちこちから火を噴いた。そうしてだ。
 そのまま大爆発を起こす。これで勝負は決した。
「何っ、ズール様がか!」
「敗れたというのか」
「まさか」
 バルマー軍はこれで完全に浮き足立った。ここでだ。
「今だな」
「はい」
「そうですね」
 トーレスとサエグサがブライトの言葉に頷いた。そうしてだ。
「一気に勝敗を決する」
「はい、この戦いはこれで終わりですね」
「ここでの攻勢で」
「そうだ、終わる」
 はっきりと言うブライトだった。
「いいな、それではだ」
「はい、全軍総攻撃!」
「一気に勝負を!」
 二人はブライトの言葉を受けてだ。そのまま攻撃に出た。これでバルマー軍は壊走し勝敗は完全に決したのであった。
 残ったのはワールと指揮官達、そしてその僅かな部下達だった。他は碌に残っていない。
 ワールもここで止むを得なく撤退を命じた。しかしここで。
「ロンド=ベルよ」
「何っ!?」
「その声はまさか」
「そうだ、私だ」
 こう言ってであった。彼が出て来た。
 何と宇宙空間にその巨大な姿を見せてだ。そうして言うのだった。
「あれで倒したと思っていたのか」
「違ったっていうのね!」
 アスカが忌々しげに返す。
「それでそんな派手な映像で出て来たっていうのね!」
「全てわかっているのだな」
「わからないものですか!」
 怒った声で返すのだった。
「そんなこと。わからない筈ないでしょ!」
「元気がいいな地球人というものは」
「いや、アスカは特別なんだけれど」
「そんなことは言わなくていいのよ!」
 シンジにも噛み付かんばかりだ。
「大体私は普通よ!」
「その割には凄い闘争心だけれど」
「っていうか何処の山の猿なんだよ」
 甲児も呆れて言う。
「ったくよ」
「そういうあんたは馬鹿猿じゃない」
 いつものやり取りだった。
「全く。ノミ取りでもしていなさい」
「うるせえ!風呂は毎日入ってるぞ!」
 論点がずれていた。
「俺はな!ちゃんと清潔にしてらあ!」
「お風呂は当然でしょ」
 アスカの言葉は厳しいままだった。
「大体ね。あんたはね」
「不潔だっていうのかよ」
「馬鹿だから」
 不潔ではなくそれだというのだ。
「まず頭悪いから。どうしようもないわね」
「あのな、俺はこう見えても手造りで円盤作られてるんだよ」
「ああ、あのUFOね」
「どうだ。凄いだよ」
「全然凄くないわよ」
 また言い返すアスカだった。
「あんなのあたしだって作られるわよ」
「無理だな」
「いいえ、出来るわ」
「手前には絶対無理だ」
 まだ言う甲児だった。
「それはな」
「ふん、何時か絶対に造ってやるわよ」
 そんな話をしながら全員でそのズールを見ていた。彼は言うのだった。
「先程倒したのは私の影だ」
「影だったというのか」
「あれだけの強さの相手が」
「そうだ、私の影だ」
 また言うのだった。
「それに過ぎない。私を本当に倒したければだ」
「へっ、言われなくてもな!」
「今からギシン星に出向いてやるからな!」
「その時にその首貰うさ」
 ケーンとタップ、ライトの言葉だ。
「いいな、それでだ!」
「その首洗っていやがれ!」
「この戦いで御前の戦力もかなり減ったしな」
「生憎だが戦力はまだある」
 ズールはライトの言葉に応える形になっていた。
「我が軍にはだ」
「えっ、まだかよ」
「あれだけ倒してもまだかよ」
「また戦力があるのか」
 ケーン、タップ、ライトは彼の今の言葉に驚きの声をあげた。
「糞っ、どうやらこの軍隊もよ!」
「数だけは本当に凄いな!」
「銀河辺境方面軍と同じか」
 今度は忌々しげに言う三人だった。そうしてだ。
 ズールはだ。ここで言うのだった。
「ではギシン星に来るのだな」
「言われなくとも」
 タケルの声だった。
「そこに行き貴様を」
「ふふふ、そしてマーズよ」
「何だ!?」
「貴様の身体だが」
 彼への言葉だった。
「わかっているな」
「反陽子爆弾か」
「そうだ、貴様からそれを取り除きたければだ」
「貴様を倒すしかないんだな」
「その通りだ。ならば来るのだ」
 また言ってみせるズールだった。
「貴様の命は私が持っているのだからな」
「くっ!」
「待て、マーズ」
 マーグは激昂しようとする弟を宥めた。そのうえでだった。
 ズールに向き直ってだ。そうして問うのだった。
「今はだ」
「追うべきじゃないっていうのかい」
「そうだ」
 まさにその通りだというのだ。
「ここはだ」
「罠がある!?」
「充分考えられることだ」
 それを警戒してのことだというのだ。
「それにだ。おそらく本体は今はいない」
「そうですね、それは間違いありません」
 ロゼもここで言った。
「ここで影を出してきたということは」
「本体はギシン星にいる」
 また言うマーグだった。
「それは間違いない」
「じゃあ今は」
「追うべきではない」
 またタケルに告げた。
「わかったな」
「ああ、それじゃあ」
 彼もそれに頷いた。そうしてだった。
「今は」
「そうだ。まずは戻ろう」
 軍はだというのだ。
「そしてまた進もう」
「帰ろうか、艦に」
 こうしてだった。戦いを終えてそのうえで再び艦艇に戻りフロンティアに入った。そこでだ。
 フロンティアの中でだ。万丈が言った。
「間違いないね」
「このフロンティアにですね」
「いますか」
「ありますか」
「うん、いるにしろあるにしろね」
 万丈は皆に答えていた。
「ここにはあの男が気になるものがあるね」
「ハザル=ゴッツォはだ」
 ここで言ったのはヴィレッタだ。
「ああした男だ。野心家だ」
「野心家のうえにまだあるね」
「そうだ。策謀家でもある」
 そうだとも万丈に話すのだった。
「そして何もなければ動くような男ではない」
「無駄な動きはしないってことだね」
「そうだ。間違いないな」
 また言うのだった。
「どうやら侵入者はいなかったそうだが」
「侵入者の危険もある」
「そうなるのか」
「それも考えておくことだ」
 また言うヴィレッタだった。
「今はなかったにしてもだ」
「そうですね。今は」
「フロンティアに何があるかまだわかりませんけれど」
「それでも」
 こう話されるのだった。
「それでも何をしてくるかわからないから」
「今はですね」
「用心して」
「用心はしていく」
 ヴィレッタの言葉は鋭い。そしてだ。
「だがだ。進撃は続けるべきだ」
「このままギシン星にまで」
「第一の敵はズールですか」
「それは変えたら駄目だな」
 ケンジは真面目な顔で話す。
「絶対に」
「ハザル=ゴッツォの軍は第二攻撃目標でしかない」
 それに過ぎないというのだ。
「第一はやはりギシン星、そして」
「ズールの軍」
「それだな」
 アキラとナオトもそれを言う。
「あの連中を倒さないと」
「今は」
「そうね。それが第一ね」
 ミカもここで頷いた。
「まずは。何といってもね」
「よし、それなら」
「今は」
 皆顔をあげた。そうしてだった。
「フロンティアのことは万全に護りつつ」
「そのうえでギシン星を目指そう」
「今は」
 こう話をしてだった。彼等は戦いに向かう。あらためてギシン星に進路を定める。ズールとの決戦をそこに見ていた。


第二十六話   完


                          2010・5・8 
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