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西部の娘

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第二幕その三


第二幕その三

「あいつの正体がわかった」
「正体!?」
「そうだ。あいつがラメレスだ」
「えっ!?」
 ミニーはそれを聞いて思わず声をあげた。危うくカーテンの方を振り向きそうになったが首を止めた。
 ランスはその様子に何かを察したようだがあえて言わなかった。
「嘘でしょ!?」
「本当だ。俺は嘘は言わない。保安官の誇りにかけてもな」
「どうやらあいつはポルカに盗みに入ったらしいな」
 アッシュビーが言った。
「けれど盗まなかったじゃない!」
 ミニーは激昂して言った。
「そういえばそうだな」
 ソノーラはそれを聞いて呟いた。
「盗もうと思えば出来た筈なのに。どうやら一人になった時もあったようだし」
「この小屋に来てるんじゃないかと思ってな」
 ランスはミニーを疑う目で見て言った。
「私を疑うの!?」
 ミニーはランスに対して言った。
「ああ、悪いがな」
 ランスははっきりと言った。
「あんたはあいつにやけに親しげだったしな」
 彼は自分がジョンソンに嫉妬しているのを感じた。それを慌てて打ち消した。
「いや、とりあえず奴がいそうなところは一通り回ってみることにしたんだ」
「そう」
 ミニーはそれを聞いて言った。
「そうだ。そして一つ伝えておきたいことがある」
「何!?」
 言葉が刺々しいものになってしまっていた。
「ニーナ=ミケルトレーナだけどな」
「ああ、あのあばずれね」
「あいつの女だ」
「そういう噂だけどね」
「本当だ。証拠もある」
 ランスは言った。
「あのカストロの野郎が俺達を仲間のところに連れて行こうとした。それに気付いて白状させたんだ。そしてあの女のことも言ったんだ」
「嘘ね」
 ミニーは顔を横に向けて言った。
「信じないならそれでいい。だが俺は真実を言ったんだ。それは覚えておいてくれ」
 そう言ってランスは踵を返した。
「じゃあな」
 ソノーラとアッシュビーも帰って行く。
「さよなら」
「お休みなさい」
 ミニーも言葉を送った。彼等は小屋を後にした。
「・・・・・・どういうこと!?」
 ミニーは後ろを振り向いて言った。
 ジョンソンはカーテンから出て来た。
 顔を右に向けてミニーの方を見ようとしない。だがその顔は蒼白である。
「・・・・・・・・・」
 何も答えない。否、何も答えられないのだろうか。口を固く閉ざしている。
「盗賊だったのね」
「・・・・・・・・・」
「盗みに来たのね!」
 ミニーは激昂して言った。
「違う・・・・・・」
 ジョンソンはようやく口を開いた。そして重い声で言った。
「どう違うのよ、この嘘つき!」
 彼女は泣きそうな顔で叫んだ。
「違うんだ」
 ジョンソンはまた言った。
「じゃあどうしてポルカまで来たのよ!」
「それは・・・・・・」
 ジョンソンは顔を俯けた。
「何もやましいことが無いのなら答えられるでしょう!?」
「・・・・・・・・・」
 ジョンソンは答えられなかった。
「ほら、答えられないじゃない、やっぱり嘘なのよ!」
「いや、違う!」
「違わないわ、貴方は盗賊よ!」
「ミニー、僕の話を聞いてくれ!」
 今度はジョンソンが激昂して言った。
「・・・・・・いいわ」
 ミニーはその声を聞いて気を落ち着けた。そして一呼吸置いて言った。
「言って御覧なさい。聞いてあげるわ」
「・・・・・・有り難う」
 ジョンソンも気を落ち着けた。そして息を大きく吸い込んだ後語りはじめた。
「あの保安官の言ったことは本当だ。私の本当の名はラメレスという。盗賊達の首領だ」
 ミニーはそれを聞いてそれ見たことか、という顔をした。
「私は盗賊達の首領の息子として生まれた。だが私はそれを知らなかった。父は事業をやっていると聞かされていただけだった。そして裕福な生活の中で暮らしていた」
「人々から盗んだお金でね」
「・・・・・・否定はしない。父が盗賊だということを知ったのはほんの半年前だった」
 彼は言葉を続けた。
 
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