| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

忍術と食を極めし者

作者:青空
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第5巻

 
前書き
 
ちょっと編集しました。
  

 
 
 
 アスカが血の海を文字通り作り出しクロヴィスという不良神父が敵前逃亡に加え軍を脱走してから暫く、メセンブリーナ連合軍によるグレートブリッジ奪還戦が開始された。



 開始早々にとんでもないことが起こる。帝国軍の船艦がビルぐらいはあるであろう巨大な大剣によって一隻堕とされた。

 その次には帝国軍が陣形を組み密集する箇所に轟く爆音を響かせた雷が落ち、帝国軍兵士たちを吹き飛ばす。

 それをかわきりに兵士は切り裂かれ、押し潰され、撃ち殺され、魔法で吹き飛ばされ、次々と圧倒的な力量を持った集団たちによって薙ぎ倒されていく。

 彼らは以前に失敗に終わった帝国軍による二回目のオスティア奪還戦に連合側として参加した『紅き翼』の面々たち。二名ほど異常に飛び抜けた実力を持っているが、他のメンバーも化物染みた一騎当千の実力を持つ者たちによって構成されている。


 そんな実力者集団である彼ら紅き翼の戦闘をアスカは船艦よりも遥か上空から、トリコの世界にて空の番長と呼ばれる大カラス『エンペラークロウ』の背に座り傍観していた。

 エンペラークロウは、遥か遠くから契約を交わした生き物を呼び寄せることが可能な口寄せの術でアスカが方舟内にある魔法球から呼び寄せたトリコの世界のグルメ生物で、グルメ界出身の生物だけあってかなりの強さを持つ全長6mの巨大なカラス。

 口寄せで呼び出すにも〝この〟世界にはNARUTOの世界のように忍術を使い人語を話せる人間染みた生活をする動物たちがいない、なので魔法球内に住むグルメ生物と契約を交わし口寄せするようになった。

 このエンペラークロウもその内の一体。

 忍術を使えなくとも人語で喋る魔法生命体はいるにはいるが、その魔法生命の代表格が白い〝アレ〟だ。

 アレは俗物過ぎるうえに思考が残念過ぎる。

 契約なんてしたくないし態々チャクラを消費してまで呼び出したくもない。何であんな存在がいる種族がケットシーに並ぶ由緒正しき妖精なんだろうか。

 本当に解せぬ。


 エンペラークロウの背に座り戦場を傍観するアスカ、今回は参加をするつもりはない。

 オスティア奪還戦の時もそうだったが、まだ紅き翼に接触、相対する時期ではないのだ。変態ロリコンの古本だけなら未だしも、ラカンが原作通りに加入したのだから尚更。

 素顔で出会った次に仮面のトビの姿で会ったら声質を変えたとしても気配だけで、勘などというふざけた方法で見破られてしまうだろう。

 例え、木遁分身体であろうともだ。

 あの筋肉は一見おちゃらけたバカなオッサンに見えるが、奴隷拳闘士から開放されるためにした努力と傭兵として戦い抜いた経験で構築された一流と呼ぶには生ぬるい程の実力を持っている。しかも、ちゃっかりとした性格なため何かと油断できないめんどくさいバグキャラだ。

 そんなラカンに裏でまだ動く必用があるため顔を会わせるにはいかない。

 だから戦場に出ずに傍観している、左手に持った酒瓶に入っている酒を飲みながら。

 今日は完全にオフとでもいうかのようにエメラルドドラゴンの背中から涌き出るエメラルド色に輝くワインを飲む。気軽に飲んでいるが市場に出せばボトル一本500万以上はするワインだ。これ程気軽に飲めるのは自分で採取しているアスカだからだろう。

 とは言っても、唯一ワインを手にすることができるアスカが市場に出してないので値段など意味がないのだが。

 ちなみにだが、ただ参加せずに酒を飲んでいるだけなのもアレなので帝国軍に罠を仕掛けといた。多重雷遁影分身を30体ほど帝国軍兵士に変化させ紛れ込るということをこの男は仕出かしていた。

 近距離攻撃はわざと喰らうように命令してあるため、不用意に近付き攻撃すれば分身を構築している雷チャクラの餌食となってしまう。

 勿論、生命体により近い分身を生み出せる木遁分身より弱い。

 そして、遊び感覚で適当に作ったため更に弱体化している、だが。それでも元が元なだけあってソコソコ強いときているので一般の連合兵士には、ちときつい。

 なのに、やっとの思いで倒したと思った直後に雷撃が放たれるという、なかなかえげつないトラップだ。

 そんな罠にかかってしまう可哀想な輩が出ないか横目で観察しつつ紅き翼の暴れっぷりを観ていたのだが、その紅き翼の面々に見知らぬ男が。


 ― 誰だ彼奴?


 記憶が薄れる前にアスカが奏者の資格で作り出した方舟内にある『魔法先生ネギま! 全巻』に登場しない神父服のような黒服を着た男が紅き翼のメンバーと共に戦っている。

 好き勝手に暴れ回っているバカ二人はどうでもいいとして、前衛の剣士として前に出る詠春を主軸に開いた脇からくる敵を変態古本がお得意の重力魔法で押し潰し、詠唱を古本の後ろでのびのびと唱えた白髪小僧が魔法を放つ。

 そこまではいい。

 だが漫画に登場しない男が三人をサポートするように範囲外の討ち洩らしを的確に右手で構えた白銀の銃で的確に撃ちとっていく。

 その男が扱う銃はグリップから銃身の手前まではリボルバー、銃身はオートマチックという銃としては変わっ形状をしている。撃ち出している弾丸は普通の物ではないらしく銃口から放たれている弾丸は光輝く不思議な物だ。

 おそらくは魔法が関係しているのだろう。

 そんな銃を扱う神父に見えなくもない黒服の男。めんどくさそうにしながらも目は鋭く次々に帝国兵士たちを撃ち抜いていく。

 彼の名はクロヴィス・ザ・フィール。そう。以前に戦場でアスカを見て危険性を肌で感じ逃げ出した男だ。

 ほとぼりが冷めるまで隠れていようとしていた彼が何故か今回の奪還戦に参加し、これまた何故か紅き翼に加入していた。

 何故、この男がリアルに生きるバグ集団である紅き翼に加入し共に戦っているのか……





 ◆





 敵前逃亡をし仮宿のメセンブリーナ連合軍と所属するキリスト教から処罰される前に逃げ出したクロヴィス。

 幼少の頃にイタズラをするためだけに必死に習得した変身魔法で姿を変えて逃げたものの、彼は旧世界出身で魔法世界に来たのは今回が初。やはり慣れない見知らぬ土地。

 土地勘が働かない彼は迷いに迷い、食事と寝床は基地のを使用していたため、元々少なかったというのに早々と路銀を使い果たしてしまった。

 けっこう早い段階で路頭に迷うなど本当に計画性がない。

 『ご利用は計画的に』って言葉を知らないんだろうか。

 実家がそれなりに金持ちだったので金に不自由なく暮らしてきたので手持ちの金が無くなる経験が無い。っていうか15歳ぐらいから口説いた女に貢がせていた。何でこんな男がイケメンとして生まれてきてしまったんだろう。

 こんな最低野郎の毒牙にかかってきた女性たちが可哀想だ。

 そして果実かなにか何でもいいからてに入るだろうと考えて踏み入れた食料を手にすることはできたが森で結局迷う。

 やっとの思いで抜け出すも自慢の金髪はボッサボサで服はボロボロ。

 下級の竜種に魔獣のせいでろくに眠れず疲労は体力、精神共に限界。果物などの果実も既に食べ尽くしている。

 このままマジで死ぬんじゃないかと本気で思い始めた時、彼の鼻に香しい旨そうな香りを匂わせせ、空っぽの胃袋に急激な刺激が襲う。刺激された分、腹も鳴り響く。自分の腹の音を聴くなんて、もしかしたら初めてかもしれない。即座に匂いを辿り元の所までイケメンが台無しになるぐらい野性味溢れた凄い形相で走り出す。涎も下品にダラダラだ。

 つーか、さっきまでの衰弱っぷりはなんだったんだろうか、と言いたいよ。元気じゃんかよ。



 匂いの元はわりと近くにあり走り出して直ぐに見つけ出した。

 黒それは鍋だろうか、赤みかかった茶髪の少年に、黒いタートルネックを着た細身の眼鏡をした男と白いローブを着たこれまた細身で胡散臭そうな笑みを浮かべるイケメンの男性、そして白髪が特徴的な少年。計四名がクロヴィスが嗅ぎ付けた匂いの元である黒い鍋を囲って食事を取っていた。

 どうやら鍋は日本食のすき焼きのようだ。

 とは言っても空腹のピークを越えていたクロヴィスには四人が見えていない、見えているのは美味しそうな匂いを漂わせる鍋のみ。旨い物がオレを待っている。

 此方に向かって走ってくるクロヴィスに気がついたのだろう、四人中三人がクロヴィスの方向に目を向ける。白髪の少年はクロヴィスに視線を向けることなくタレが気に入ったのか「このタレはうまいのぉ」と呟きながら黙々と一人だけ鍋に集中し肉を食べていた。

 だが、その瞬間。四人が囲っていた鍋目掛けて大剣が飛来。飛来した衝撃で鍋は食材を散らかせながら舞い眼鏡の男の頭に。

 案の定、眼鏡の男は汁ごと鍋を頭に被る。

 出汁も滴るいい男の完成。

 他の三人は舞った食材を各自、持っていた小皿に箸で器用に余裕で納めていく。食い意地をはるのもいいが、途中で鍋を蹴るでもして助けてやればいいのに。仲間なんだから、一応。

 鍋を頭に被った眼鏡の男は硬直しているが仲間より食事を優先した三人は大剣が飛来してきた方向に顔を向ける。クロヴィスは自分の食事が台無しになったことにショックで硬直し、その場に顔から倒れこんだ。

 小皿に確保したすき焼きの具を食べながら三人が振り向いた先には


 「お食事中失礼するぜ! 紅き翼の諸君!!」


 大剣を投げた者なんだろう、金髪ロン毛で褐色の筋肉マッチョが左手で投擲した大剣に酷似した大剣を方に担ぎ、そこにいた。


 「なんじゃバカそうなあの筋肉は?」


 そう爺喋りで言葉をこぼしたのは白髪の少年。

 少年が称したバカそうな筋肉。彼の名はジャック・ラカン。帝国の生ける伝説の元拳闘士にして傭兵業を営む最強の男。アスカが最も警戒するチートを拗らせた非常識を詰め合わせたようなバグ人間。いや、バグ亜人。

 帝国側から傭兵として依頼を受けた彼は、依頼の帝国軍を苦しめこの先不安要素となりかねない『紅き翼の討伐』を果たすため、この場に現れた。

 つまりはそういうこと。すき焼きの鍋を囲って食事をしていた四人が紅き翼の面々だ、未来の英雄なのに若干一名ほど間抜けな状態になっているが。

 赤毛鳥頭の少年が原作主人公の父親であり息子を差し置いて主人公でもないのに、主人公補正を持つ生まれながらのバグ人間なナギ・スプリングフィールド。

 胡散臭い笑みを浮かべながら肉を口に運ぶローブ姿のイケメンは古本もといアルビレオ・イマ。古本と称されるとおり本体は魔導書。

 古本の隣でラカンに視線を向けつつも肉を食べるのを止めない丸ホッペの白髪の少年フィリウス・ゼクト。実は、こんなナリして数百歳の爺でナギの師匠である。

 そして最後、鍋を頭に被って硬直している間抜けな彼が紅き翼一の剣士である青山詠春。こう見えても剣の達人で自身が修める神鳴流の宗家出の天才剣士。


 そこからバトルが開始。先ずは食事を駄目にされ鍋を被せられた出汁に濡れた詠春が怒りで特攻するも、ラカンが紅き翼を調べ予め用意していた女性の姿をした裸の人工精霊による色仕掛けにより呆気なく気絶し、ダウン。

 どれだけ女性に耐性ないんだよムッツリ眼鏡。

 詠春が気絶し次に前に出たのは紅き翼のリーダーであるナギ。色仕掛けで呆気なくやられたものの、詠春と互角に剣で斬り会ったラカンに興味がわいたようだ。

 自分が強い奴と戦いたいだけで、けっしてリーダーとして詠春の仇をとるためではない。

 それでいいのかリーダー。

 こんなんでいいのか紅き翼。


 「次はオレだぜ!! 覚悟しろよオッサン!!」

 「赤毛のガキ。特徴は『無敵』……きやがれクソガキ! オレ様の方が無敵だ!?」


 開始された努力型バグVS天然型バグによる第2ラウド。

 ……詠春戦は準備運動とか消化試合とは言ってはいけない、彼があまりにも不敏過ぎる。

 バカ対バカの最中、ようやくクロヴィスに動きが。ムクリと立ち上がり転んで付いた服の汚れを叩き落としていく、顔は下を向いていて長い髪もあって表情がわからないため何か不気味だ。


 「……フ、フフフ。フフフフフフフフフフフ」


 黙っていたのに突如、肩を震わせ不気味に笑いだす。


 「上等だコラァァァァァァッ!?」


 肩の震えと笑いを止めた次の瞬間、何が上等なのかは不明だが転んで真っ赤になった顔を怒りの形相にしてバカ二人の元に迎い走り出して行った。


 「おや……?」

 「む?」


 バカ二人が放つ魔法と技による被害を受けないよう空に浮いていた二人の下を通りながら。

 そうして三人よる乱闘に。

 乱闘は13時間におよび、クロヴィスはそうでもなかったがナギが広範囲の魔法を、ラカンが無茶苦茶な威力の気を連続で放ちまくったおかげで周辺は更地と化していた。完全に戦いという名の自然破壊行為。

 地図を書き換える程の規模の威力を持つアスカの切り札よりマシではあるが、もっと周囲をよく見て戦うべきだ。

 この戦いの後、クロヴィスとラカンは紅き翼のメンバーと意気投合し、いつの間にか仲間になっていた。行き場を失っていたクロヴィスはともかくラカンは仕事だったというのに、傭兵としてそれでいいのか問いたい。





 ◆





 そういった訳が分からぬ経緯でクロヴィスは紅き翼に加入していた。

 ついでに言えば「コイツらと一緒に居ればうやむやになんねーかな」と打算的思考もあったりする。実質、紅き翼は戦場に出るたびに大活躍をしているのであり得なくもない。

 こんなのが未来の英雄か……世も末だ。


 「うんだよ、いねーじゃねーか!!」


 ナギが帝国兵を薙ぎ倒しながら不満げに一人を叫ぶ。何やら誰かを探しているが、お目当ての人物がいないようだ。


 「フフフ。もしかしたら今回の戦いには出てないんでしょうね、彼」

 「出てないならそれで結構。あんなバケモンの面なんざ二度と拝みたくねぇ」


 ナギお目当ての人物を良く知るアルビレオは微笑みながら推察しながら、いないなら今日は出てこないと確信。その目的の人物が原因で逃げたクロヴィスは弱りきったように愚痴る。


 「オ、ラァッ!! オレ様も一度は戦ってみたかったんだがな。いねーならしょうがねぇよ」


 船艦をアーティファクトで出した巨大な斬艦剣で堕としながらしれっと日常会話の如く会話に参加してくるラカン。傭兵として参加した戦場で幾度か観たことがあるらしい。

 そんな仲間に溜め息を吐きながら帝国兵たちを真面目に倒していくのは詠春とゼクトの二人。それは、まるで堅実に仕事をこなす仕事人。

 彼らというかナギとラカンだけだが二人のお目当ての人物とはマダラ。

 つまりは、ナギが探しているなど知らずに上空にてワインをラッパ飲みしているアスカのことだ。

 何故、ナギがアスカを探しているかというとクロヴィスから仲間になった時に聞いたのだ。『戦場にとんでもない化物が居やがったから面倒で逃げた』と。その際にアルビレオの昔の知り合いだと判明し『彼は新・旧両世界合わせて世界最強の人間』だと言った、言ってしまった。

 アンチョコを見ながらじゃないと詠唱をろくに覚えないため魔法が使えないくせして、自称最強の魔法使いを豪語するナギに火をつけてしまい今に至る。

 その時に詠春は『またはじまった……』と溜め息を吐きながら額を押さえ、クロヴィスを『な……!』と唖然とさせていた。もちろん、こうなることを予想して口をこぼしたのでアルビレオは完璧な確信犯だ。

 バカを煽ってバカ騒ぎ。

 結局、アスカは参加しておらずナギとラカンの消化不良と終わる。クロヴィスは一人内心ホッとする。

 実際は彼らの頭上の遥か上空に居て『志村、後ろ後ろ!!』ならぬ『ナギ、上! 上!』な状態。

 


 ナギの不満の中で奪還戦は終わりを迎え紅き翼の活躍によって連合の勝利で幕を閉じた。

 この戦いで一気に名が売れた紅き翼というかナギ、彼にはファンクラブができる。ほぼ女性会員しか在籍しないミーハーなクラブではあるが。

 ちなみにラカンには拳闘士時代からのファンクラブが存在する。しかし七割が『アニキィィイッ!!!』って感じにラカンに憧れる野郎で構成されているムサイクラブ。

 あれだよね、しょうがないよね。男って強い存在に憧れる生き物だから。

 でも、ムサイのは嫌だよね。



 そして彼らは帝国軍はそうだが、彼の組織に目をつけられることになり、その組織と20年もの因縁の幕開けになるとは誰も知らない。








  
 

 
後書き
 
今回は見所が全然ないな……
それなのに文字数増えた、何故に?

大まかな流れは決まっているんですが毎回見切り発射なんで毎回ネタがない。

  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧