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ソードアート・オンライン~ニ人目の双剣使い~

作者:蕾姫
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狩りに行こうぜ!②

小闘技場。そこは誰がどうやって連れてきたのかわからないモンスター達とハンターが戦う決戦の場

「なあ、最初に狩るのってなんだ?」

「アオアシラだった気がするが?」

青い毛と堅い手甲を持つ牙獣種アオアシラ、別名青熊獣
空こそ飛べないものの、人間の体格を遥かに凌駕する体躯と大木をもやすやすと叩き折る太い足から繰り出される無慈悲かつ豪快な一撃は下手な腕を持つ者なら抵抗すらできず、命を刈り取られてしまうだろう

……と言えば強そうなのだが、実際のゲーム内ではただの初心者向けの敵である

「アオアシラってどんなモンスターなの?」

今いるメンバーの中で唯一モンハンを実際にプレイしたことがないサチが支給されたアイテムの入ったポーチの中を漁っていたリョウコウに尋ねる

「ん?……まあでっかい熊だと思ってればあながち間違いじゃねぇだろ」

「適当だな。……サチ、熊に手甲をくっつけてデカくしたやつだ」

「五十歩百歩……」

リクヤが疲れたようにつぶやいた
明るいはずの闘技場内がリクヤの周辺だけ暗くなった気がした

「そんな相手に私の槍が通用するかな……」

このメンバーの中で唯一戦闘メンバーではないサチ。不安に思うのは当然だろう
SAOの中でも前に出るのが怖くて後衛の槍から前衛の片手剣への転向を渋ってたくらいなのだから

「ま、いざとなれば俺が守ってやるさ」

「リョウ……」

サチが熱のこもった視線でリョウコウを見るが、当の本人はポーチの中に入っていた回復薬をしげしげと見ている
その様子を見たリンとリクヤはリョウコウとサチから少し距離をとるとヒソヒソと話し始めた

「なあ、リクヤ。ブラックコーヒー持ってないか?」

「そんなアイテム、モンハンじゃ聞いたことないよ……。まあ、気持ちはわかるけど」

胸焼けがするほど甘ったるいのだ。アステルパーム(一般的な砂糖の100~200倍の甘さを誇る人工甘味料)を蜂蜜で固めたものを食べたレベルで
……想像するだけで気持ち悪くなってきた

「リョウは……無意識だな」

「なんか、キリトを彷彿とさせるな」

この場にキリトやアスナがいれば、お前たちは言える立場にいない! と叫ぶだろうが、幸か不幸かこの場にはアイテムポーチを漁るリョウコウとその世話を甲斐甲斐しく焼くサチしかいない

「……まあ、気にせずこっちはこっちの準備をしようか」

ポーチの中に入っていたのは応急薬、回復薬、携帯食糧、こやし玉、しびれ罠、ペイントボール、砥石、剥ぎ取り用のナイフ、投げナイフ、調合用錬金釜、ハチミツ、調合書①、調合書② 以上

「ねぇ、リン。これはツッコミ待ちだと思う?」

リクヤが調合用錬金釜をつまみ上げ、しげしげと見つめながらリンに問う

「……まあ、古い時代の薬作りよりはマシじゃないか?モンスターを背に調合とかやりたくない」

「……確かにそれはやりたくないぜ」

実際に想像したのか冷や汗を流すリクヤ
二次元のゲームの視点はハンターよりも高い位置にあったため、戦闘中だろうと安心して調合できたのだが三次元になった今、調合中は周りの様子がわからないため……地響きやら咆哮やらで凄まじく怖いに違いない

「まあ……調合なんて必要なのかと問いたいメンバーだから問題ないがな」

戦闘中に調合が必要となる可能性があるのは回復薬グレート、弾関連、瓶関連……ぐらいだろう
弾は使い手がいないし、回復薬や弓の瓶関連(シノンが使う)はおそらく調合分まで使うことなく終了してしまうだろう。火力が飽和してるから

「あはは……無いと言いきれないのが辛い」

「まあ、試してみるか」

リンは回復薬(瓶入り)とハチミツの入った瓶(ちなみにこやし玉も瓶入りだった)を錬金釜に放り込む
すると……何もなにもおきない

「失敗?」

「いや、違うな」

おもむろにポーチの中を漁りだすリン
そして一つの瓶を取り出した

「なるほど、自動格納なのか」

リンが今取り出したのは回復薬グレート。つまり、錬金釜に材料を入れると自動的に調合後のアイテムがポーチに格納されるというわけだ

皆さん、こんな便利な機能がついた錬金釜。なんと今ならお値段1000zです。お安いですよー
お求めの方は近くのハンターズショップまで!

「……だそうだ」

「……なんでこんな宣伝が入ってるんだろ」

ポーチの奥の方に入っていた折り畳まれた一枚の紙
そこに書かれていた文字を見た瞬間、リンとリクヤは呆れたようにつぶやいた

「おーい、リンとリクヤ。準備はできたか?」

「ああ、もうちょっと待ってくれ」

リョウコウのその声に呆然としていた意識をリンとリクヤは現実に引き戻した

「なにかするの?」

「ああ、回復薬をすべて回復薬グレートに変えておこうと思ってな」

「ああ……なるほど。じゃあ俺もやっておくか」

二人して回復薬とハチミツをすべて投入する
そんなに時間がかかるわけでもなく即終了した

「すまん、待たせた」

「いや、大丈夫だ。武器の素振りもできたしな」

そう言って手に持った冷裂を振り回すリョウコウ
ブンッブンッという盛大な風切り音を聞いて微妙な表情をするリンとリクヤ

「じゃあ、行くか」

「俺、敵が可哀想に思えてきた……」

エリア移動などは存在しないため、闘技場へと入る道には頑丈な門が存在する
門というよりサイズ的には扉か

当然闘技場のモンスターを狩るためにはこの扉をくぐらなければならない

リン、リクヤ、リョウコウ、サチもその扉をくぐる

そして、くぐった先にいたのは……

まあ、アオアシラなんだけど

「大きい……」

「小っさ……」

「ん?」

サチがアオアシラを見て率直な感想を漏らすと、同時にリン、リクヤ、リョウコウがサチとは違った感想を漏らした
そして、互いに漏らした感想を聞いて全員が疑問の声をあげた

「えっと……大きい?」

真っ先にこの膠着状態から脱出したのはリン
一人異なった反応を見せたサチに思わず問いただした

「昔動物園で見た熊よりずっと大きいし……」

「……アインクラッドにはあれよりデッカイやつもいただろうが」

「私はそんな相手と戦ったことないよ……」

74層の悪魔とサイズを比べればまるで大人と子供だ

しかし、それは例外中の例外。ボス級エネミーはともかくとしてフィールドエネミーにはそんなに巨大なやつは存在しない

サチは中層プレイヤー。しかも全くフィールドには出ていないプレイヤーのため、そういった巨大なエネミーに出会う可能性は皆無であろう

つまり、この反応の差は攻略組としてボスを屠るうちに幸か不幸か巨大なエネミーになれてしまった先駆者たち(戦闘バカ共)と安全な場所で人の心配をしつつ家を守っていた自宅警備員(内縁の妻)の差によって引き起こされたものだ

「……まあ、なるようになんだろ。あちらさんは待たせる気は無いようだし、なぁ!!」

話している間にドスッドスッという重厚な音を立ててこちらに走ってきたアオアシラに向けてリョウコウが冷裂を一閃

振り下ろしたアオアシラの太い腕についている手甲とぶつかり合い火花を散らすが、その拮抗は一瞬だった

運動エネルギーや重力、質量の不利など無かったどころか逆に跳ね返し、リョウコウの冷裂はアオアシラをピンポン球のように弾き返して闘技場の壁に叩きつけた

「相変わらず常識はずれな力を持ってるな……」

「……あり得ねぇ……」

「……え?え!?」

リンは呆れた声で呟き、リクヤは見たことが信じれないようで目を擦り、サチはそもそもアオアシラが向かってきていたことに気付いていなかったため、急転する事態についていけず、困惑の声をあげた

「全く……リョウがソロで行けばよかったんじゃないか?」

「……俺たちがいる必要性、全くないな」

「あ、あはは……」

「おう、バカなこと言ってねぇでさっさと狩るぞ」

アオアシラが起き上がったのを見てリョウコウ以外苦笑いを浮かべて、全員武器を構えた

「はぁ……前衛はリクヤ。後衛はサチ。遊撃は俺。リョウは……サチの専属タンカーで行こうか」

「了解!」

「うん!」

「……なんで俺はサチ専属なんだ?」

「リョウがアタッカーに入ると戦いにならんから」

アオアシラはリョウコウが攻撃を加えると踏ん張りが足りないのか吹き飛び、スタンしてしまう。そこからおきるのは狩りではなく、ただの一方的な虐め(ワンサイドゲーム)である

せっかく皆で協力するゲームなのに

「わぁったよ。今回は大人しくしてる」

「じゃあ、久しぶりのモンハンを楽しもうか!」

リョウコウは渋々頷くとリクヤが双大剣を構え、叫んだ

リクヤもリクヤでモンハンの常識を打ち破る大剣二本装備ではあるのだが

装備でまともなのはリンの双剣くらいだろう

サチは槍なのに盾を持ってないし

「行くぞ!」

リクヤはこちらに向かって再び走ってくるアオアシラに対抗するかのようにアオアシラに向かって一直線に走りだした

「一人で先行して……バカか?」

「そんなこと言わないで早く私たちも行こ?」

「……そうだな」

上がるテンションをそのままに一人で突っ込んで行ってしまったリクヤに辛辣な言葉を投げ掛けるリン。もちろん聞こえているわけがない

その辛辣な言葉を投げ掛けられたリクヤはというと……

「うぉぉぉ! 乱舞だぁぁぁ!」

絶好調だった
ただ、惜しむらくはさっきも言ったように彼の得物が双大剣であるといったところか

「ぐおっ……」

「だから言ったのに……」

アオアシラの真正面から乱舞をしていたリクヤはアオアシラの腕の横振りに吹き飛ばされ、地面を転がった

「えい!」

すかさずサチの突きがアオアシラの腹の柔らかい部分に突き刺さる
しかし、アオアシラはそれを無視。先程、リクヤを吹き飛ばしたのとは別の手をサチに向けて凪ぎ払った

もちろん、そのままサチがリクヤのように愉快に飛んでいくことを夫(リョウコウ)が許すわけがない

「ったく、危ねぇな……」

「あ、ありがとう……」

「はぁ……おい、リン」

ちょっと真剣な顔になったリョウコウがリンに向き直る

「だいたい想像はつくがなんだ?」

「アオアシラは俺にやらせろ」

「……わかった。ただまあ、ほどほどにな」

「善処する」

絶対にわかっていない声でリョウコウが答えるとリンはやれやれとかぶりを振った

リョウコウが一振り冷裂を振ればアオアシラはスタンし、もう一度振れば手甲が壊れ(部位破壊)、三度振れば地面に転がった

以下単調なワンサイドゲームなため割愛

「ほらな……やっぱりゲームにならないだろ」

「うるせぇ」

「俺が気絶してる間に……」

出番の無かったリンと無双したリョウコウ、アオアシラの一撃にKOされたリクヤ、リョウコウの心に火をつけた(やる気スイッチ。パンドラの箱でもよし)サチの四人は今、アオアシラの剥ぎ取りを行っている

「これ、する必要はあるのか?」

「いや……モンスターの死体があったら剥ぎ取るでしょ」

手際よく剥ぎ取りを終えた(ゲームと同じく三回)リンが疑問を呈すると剥ぎ取りに苦戦しているリクヤが答えた

何げにこの剥ぎ取り作業、めんどくさい

「……どうせ素材なんか使わないだろ」

「まあ、様式美ってやつだろうな」

どうでもよさげにリョウコウは答えると立ち上がった

「んじゃ、そろそろ行きますかね」

次の狩りはリオレウスである 
 

 
後書き
リョウコウと戦うにはアオアシラの体重が足りなかった。まともにやりたいならその三倍は持ってこい(キリッ

と、コラボ第二話でした

戦いの時間が短かったのは仕様です。ただでさえヌルゲと噂されるモンハン3rd、その中でも最弱の大型モンスター(ドスジャギは狩りにくい)であるアオアシラにまともな勝負を期待する方が間違ってます

役目の無かったリンとカッコ悪かったリクヤは次回活躍します!たぶん……めいびぃ……。あと、涙カノさん……ごめんなさい

余談ですが、この話を書いている最中に真剣な戦いを書きたくなりmixiにリン対PoHの小話をあげてしまいました(笑)
そのためにこの話をあげる日が一日遅くなったことをお詫びします

では次回はリオレウス編。空を駆ける羽虫……もとい飛竜に対してリンたちはどう挑むのかっ!というところですか
まあ、シノンがメンバーにいるところでバレバレかもしれないですがね

では次回もよろしくお願いします! 
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