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【完結】剣製の魔法少女戦記

作者:炎の剣製
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第一章 無印編
  第二十三話    『外伝4 各々の日常・すずかの異変』

 
前書き
警告タグに百合を追加するべきでしょうか? 

 





夏休みに入りシホは本格的になのはとフィアットの修行を自身の鍛錬と水平展開しながらも進めていっていた。
そんなある夏の一日、シホ達は月村邸でみんなで集まり夏休みの宿題をしていたのだった。
だが、そんなものごとき大学入学並の知識を持つシホにかかればすぐに終わってしまうのだ。
それなので早々に宿題をコンプリートしてしまったシホは三人に宿題で分からない点などを教えていることが多いのだが…。

(…ねぇ、アリサちゃん)
(なに、なのは…?)
(うん…最近、ね。シホちゃんとすずかちゃんが異常に仲がいいんだよね)
(奇遇ね。私もそう思っていたわ)

そう、今現在シホはすずかに付きっ切りで勉強を教えている。
それも今まで以上に二人して笑顔を浮かべながら。
それはというと、例の事件で三人の内、すずかにだけシホの真実が明かされている事が主な原因とも言っていい。
すずかはそれ以来、シホはもう完全に女性だと分かっているのに元男性だったという真実が後を押していて意識してしまっているのである。
所謂、あっちの世界に目覚めてしまったのだ。
肝心のシホはやはり気づいていないが、すずかのシホに向ける視線にはたまに熱がこもっている様に二人には見えてしまったそうだ。
それで休憩中に忍にその件について聞いてみたところ、

「うーん…二人にはまだ早い世界かなー?」

と、微妙にはぐらかされてしまった。
それでますますうねりを上げてしまっている二人に忍はクスクスと笑いながら助け舟を出した。

「シホちゃんって学校ではどんな評価を受けているの?」
「評価、か…そうですね。シホはあの性格で表裏ともはっきりしているからとても人気が高いですよ」
「にゃはは。うん、シホちゃんって学校ではかなり人気あるよね~?」

忍は思った。
すずかもだけど、あなた達二人も相当の人気を持っているわよ? と突っ込みたい衝動に駆られたが必死に耐えた。
ちなみになぜ忍はシホ達の学校事情を知っているかと言うと、そこは…ほら、権力とかで。
とにかく、

「シホちゃんってかなり自分の事に関しては鈍いところがあるわよね?」
「「はい」」

なのはとアリサが即答する辺り、シホは相当鈍感だという認識は深いらしい。

「男女問わず人気よね? それにシホちゃん、普段はキリッとしているけどいざって時に見せる笑顔や照れた顔とかは誰もが魅了されてしまう。どう!?」
「うんうん!」
「そうですね。シホって相当鈍いから、でもそれでも嫉妬とかの被害に会わないのが不思議なくらい人望が高いです」
「そうよ。そして今現在もっともその影響を受けているのが…もう分かるわよね?」
「「すずか(ちゃん)…?」」

二人は思わずすずかの方に向いた。
そこではシホとすずかの二人が紅茶を飲みながら笑顔で会話をしている。
シホは別段いつもと変わらないが、すずかはまさに恋する乙女のような目をしている。
その光景にさすがの二人も唖然としてしまっていた。
なぜかシホの肩に乗っているフィアットがライバル意識をすずかに向けているように見えたのは、おそらく見間違いではないだろうとなのはとユーノは思った。

《…そういえば、フィアちゃんもシホちゃんの事が好きなんだよね?》
《うん…なんていうか、一生ついていきます的な事を前に言っていたような…》

それを思い出したのかユーノはがっくりと肩を落としているように見えたのもなのはの気のせいではないだろう。
それで二人はそれを確認するためにすずかだけ呼んでひそひそと会話をしだした。

「…ねぇ、すずか。率直に聞くけどもしかしてだけどシホの事好きになっちゃったとかじゃないわよね?」
「えー? うーん、そうだね。うん、好きなのかも…」
「え? え? でも、シホちゃんは私達と同じ女の子だよ!?」
「そうなんだけど…シホちゃんが男性のま…コホンッ! 男性だったら本気で好きになってたかも?」
「そ、それじゃ別に本気で好きってわけじゃないのね?」
「うん。……………今のところは。」

すずかは付け足すようにそう言って、少し頬を赤らめて眩しい笑顔を浮かべた。
そしてなのはとアリサの二人は思った。

『すずか(ちゃん)がなにかに目覚めちゃった!?』

…と。
それで二人はその後絶句をしていたのは言うまでも無い。ついでにユーノも。
と、そこにくだんの人物であるシホがやってきた。

「みんなどうしたの? って、え? なに??」

そこで今度二人は有無を言わさずシホを連れ去っていった。
いきなりだったのでシホも対処できなかったのか困惑しているが悪意は感じられないのでされるがままに連行された。
そしてすずかとそれとなく似たような事を聞いてみたが、やはりそこはシホ…、

「え? 別にすずかは可愛いと思うけど、やっぱり…色々とね。それに…」

そこでシホは言葉を切った。
なのはとアリサはどうしたのかと思ったが、シホはすぐに、

「それに私は誰の想いにも応える事は、きっとできないから…」

もとが男だという事実、こんな中途半端な存在が誰を愛せようか?
そう言ってシホは少し淋しそうに微笑した。
二人…もといユーノとフィアットを入れて四人はシホの底知れない気持ちを理解することはできなかった事が少し悔しかった。
だが、これ以上踏み込んでもいい試しがないと判断して、すずかを再度呼んで違う話をアリサが持ち出した。

「あ、そうだ! 話は変わるけど今度ウチで別荘にいくんだけどみんなを招待するわ!」
「いいの?」
「あったりまえじゃない! 日にちは後日決まり次第教えるから準備しときなさい!」
「わー、楽しみだね。ね? シホちゃん」
「そうね、なのは」

そこでいつもの笑顔を見せたシホに一同は安堵した。
そんなこんなでまた一つ夏休みの思い出が加算されるのだった。
その後に女物の水着を着る事に気づいたシホはすずかに必死に相談したという。
当日、シホは悶死してしまうのではないかというくらい真っ赤になったという。


◆◇―――――――――◇◆


「そういえばお姉様…?」
「ん? なに、フィア?」

それから数日、
シホは自室でなのはとフィアットの訓練内容を計画している時にフィアットに話しかけられた。

「どうして今までお姉様はもとは男性だという事を隠していたのですか?」
「ぶっ…!」

フィアットの直球な質問に思わずシホは吹いてしまった。
それで気を取り直して、

「まぁ…やましい気持ちとか、そんなものは特にないんだけど…ただ、普通信じがたい話だしあの時話した内容で後ろめたさとかもあったからかな。
それに最初の頃はこの世界にも私の世界のような機関があるかもしれないとかで色々と慎重にならざるを得なかったのが正直なところ。
でも今じゃまだ時空管理局は完全に信用したわけじゃないけど、少なくともアースラの人達は信用に値する人達だから頃合いを見て真実を話そうとは思っているわ」
「そうだったんですかー…すみませんでした。お姉様もたくさん嫌な思いをしてきたから疑心暗鬼になっちゃうのも当然ですよね?
あ、それとは別に。それじゃもとは男性なのになんでお姉様はそこまで魅力的な女性になったんですか?」
「魅力的…か、どうかは一時置いておいてなんていうのかな?
最初はこの体に引っ張られているのと、世界を越えた時に女性の魂に塗り替えられたのが原因かと思ったんだけど…。
この世界にきて少ししてから男性時の記憶はしっかりと残ってはいるんだけど、
まるで抜け落ちていくような、もしくは塗り替えられていくような奇妙な感覚で男性の時の諸々の仕草、思考、感覚がなくなっていっているのよ。
ま、戦闘に支障を来たさなければ別に構わないけど、変わりに女性の諸々が知識としてどんどん浮上してきて最初の頃は気持ち悪くてしかたがなかったけど今じゃもうそれが普通になっている感じね」
「それじゃもうお姉様は完全に女性という訳ですね」
「そうなるわね…少し寂しいものがあるけど。まぁこの話はいずれなのは達にも話すことになるから慎重に言葉を選んでいかなきゃいけないわ」
「…そうですね。もし交渉が失敗して管理局の上層部に真実が知られちゃったら、お姉様の世界ではないですけど何をされるかわかりませんから…」
「そうなのよねぇ。今はそこがネックだから立ち回りも考えていかないと…」

シホは一度溜息をついて、スッとまたフィアットの方に向き直り、

「…それで、後まだなにか聞きたい事があるの?」
「え?…どうしてわかったんですか?」
「いや、なにか聞きたそうな顔をしていたから…」
「あはは…そうですね。はい、私はこれでも一応スクライアの血が流れていますから語学の為にお姉様の魔術について聞きたくて…。
管理局には転送系と言っていますけど実際は投影という特殊な魔術の一つなんですよね?」
「ええ。フィアには隠す必要はなくなったから教えてあげるわ。
本来の投影魔術は自己のイメージからそれに沿ったオリジナルの鏡像を魔力によって複製する魔術。
でも、自己のイメージなんてそうそう完璧なものはないから穴だらけで綻びが生じてイメージを崩してしまうとすぐに霧散して消えてしまうの。
すでにないものをその場で作り出すなんて、それこそ矛盾の極みだから…。
だから使いどころが悪くて使い手もあまりいなくて、いても魔術の儀式で一時的にその場に再現するくらいの程度の低い魔術なのよ」
「…あれ? ですけどお姉様の投影魔術は消すか壊されない限り存在し続けていますよね?」
「そう、そこが普通の投影と私の異常な投影の違いなのよ。
前に一度真実を隠す嘘で私には“武器庫”があるっていったわよね。
でも、あながちそれも嘘ではないのよ。
私の投影は一度見た―――解析の事ね―――事があるものなら私の心象世界に登録されてそれを何度でも作り出せるものなのよ」
「お姉様の過去の話に出てきた“固有結界”という魔法に最も近いという禁呪の事ですね」
「そう。今はイリヤの魔術回路が私の中には別に存在しているから使える魔術のレパートリーは増えたけど、本来私が使える魔術は固有結界という魔術一つだけ…。
強化に投影、解析、変化といった魔術はこれから零れ落ちた副産物に過ぎないのよ。
そしてその固有結界“無限の剣製”があるからこそ私は一から十までをすべてイメージできて投影したものは世界の修正に逆らっていつまでも存在し続けるもの…。」
「そ、それじゃ今まで使用した武器もすべてお姉様が魔力だけで作り上げた贋作という訳ですか!?」
「そういう事。真偽はともかくとして私の投影は限りなく本物に近い贋作を作り出せる能力と言うこと。
ただ、私の属性は“剣”だから武器以外のものを投影すると魔力もより喰うし、なにより外見だけで中身が空だからあまり自慢できる能力でもないわね」

それを聞いてフィアットは反論の声を上げた。
シホは自慢できるものではないと言ったが、話を聞く限りシホの魔術は異常を既に通り越している。
それなら確かに封印指定というものを受けてもしかたがないが、フィアット達の世界にしてみても生唾モノの能力である。
だからフィアットはシホに、

「そんなに自身の能力を卑下しないでください。
その力も含めてお姉様なのですから…。だからもっと自信を持っても文句は言われないです!
それにいう奴は私が懲らしめます!」
「ありがとう、フィア…」

それでシホは嬉しくなってついつい笑顔を直球ストライクでフィアットに浴びせてしまった為、フィアットは思わず気絶しそうになった。

(うう…お姉様の笑顔はやっぱり堪えます。本当に以前は男性だったのですか? 真実を知っても未だに信じられません…)

フィアットは顔を赤くしながらも「?」という表情をしたシホを見つめていた。
しかしいつまでもそうしているわけにもいかず、フィアットは次の質問をする事にした。
実は以前からフィアットは用が無い時は図書館に人間形態になり一人で向かいネットや神話、歴史の本などを使い今までシホが使用した武具を独自に調べていたのである。
シホ本人に聞くのもそれはそれでアリなのだけど、やはりそこはスクライア一族。自身で調べないと反則かな? という思いでいくつか発見できなかったが大体調べ上げた。

「それでお姉様。今までお姉様が使用した武具ですけどあれってやっぱり全部実際に見たものなんですか? その、聖杯戦争という戦いで…」
「まぁ殆どはそうかな。それともう過去の話だからそう畏まらなくていいわよ?」
「あ、はい」

それからまたフィアットの質問タイムは続行されていった。


 
 

 
後書き
すずかとフィアットがいますので今後二人にはシホを巡って争ってもらいます。
もしかしたら今後も女性が増えていくかもしれません。 
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