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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百七十八話 ディカステス

           第百七十八話 ディカステス
      ロンド=ベルはインスペクターの総司令部に入った。
そこはかなり広かった。しかもそれだけではなかった。
「何かここは」
「そうよね」
「誰もいないぜ」
皆まずはそれに気付いたのだ。
「幾ら何でも一機もいないって」
「これって一体」
「どういうことなんだ?」
「皆気をつけるんだ」
ここで万丈が言ってきた。
「いいね、絶対に何かがあるから」
「そうだよね、幾ら何でも怪しいよ」
ここで言ったのはベルだった。
「人の気配がまるでしないし」
「そうよね」
エルもそれに応えて言う。
「誰もいないなんてことはないし」
「絶対におかしいって」
「そういうことだよ。さて、何かな」
万丈のその目が光った。
「ウェンドロのその罠は」
「あはは、そんなものはないよ」
ここで子供の声がした。
「そんなものはね」
「子供の声!?」
「まさか」
「そう、そのまさかだよ」
ロンド=ベルが基地の広間に出た時だ。目の前に禍々しいシルエットに巨大な剣を持った途方もなく大きなマシンが立っていたのだった。
そして声は。そのマシンから聞こえていた。
「まさか貴様が」
「ウェンドロ!?」
「そうだよ」
それは少年だった。純粋な笑みを浮かべている金髪の少年だった。
「僕がウェンドロだよ」
「そうか、手前があの」
「インスペクターの」
「異文明監査官」
こう名乗るのだった。
「インスペクターの元首兼国家元首」
「ってことは」
「やっぱり」
「そうだよ」
そして認めて言うのであった。
「君達が言うインスペクターの親玉さ」
「まだ子供なのに!?」
「それじゃあ」
「そうだよ。外見で判断してもらわないで欲しいね」
笑みのまま話すのだった。
「それに君達だって同じだろ?」
「子供もいる」
「そのことが」
「確かにそうですね」
「だよね」
ここで小介と日吉が言った。
「言われてみれば確かに」
「おいら達は」
「それと同じだよ」
また言うウェンドロだった。
「つまりはね」
「そうか、子供か」
「それで」
「それにしても」
ウェンドロはここでまた言ってきた。
「この状況でも凄い闘争心だね」
「それがどうしたってんだ!」
豹馬がそれに叫ぶ。
「手前が喧嘩売ってきたんだろうがよ!」
「流石は未開の野蛮人だね」
そしてまた言うのであった。
「枢密院が危険視してバルマーが目をつけたのも道理だよ」
「それを言うか」
ヴィレッタがそれを聞いて呟いた。
「ここで」
「それにしても」
ウェンドロの言葉は続く。
「君達の力には色々と驚かされたよ」
「ではどうするというんですか?」
ウッソが問うた。
「それなら」
「一つ提案があるんだけれど」
「提案?」
「今すぐ武装解除して」
彼は言った。
「君達の兵器を僕達に引き渡す」
「このマシンを」
「全部か」
「そうすれば命だけは助けてやってもいいよ」
「ふざけるな!」
「そうだ!」
アポロとエイジが同時に叫んだ。
「ここまで来てそんなことするか!」
「言っておくぞおい!」
エイジは特に喧嘩腰だった。
「手前こそ武装解除するならな!」
「どうするっていうのかな」
「十億歩譲って見逃してやってもいいぜ!」
「ちょっとそれって」
「そうよ」
ルナとミヅキがすぐに突っ込みを入れた。
「全然見逃す気ないでしょ」
「それだったら」
「あいつもそんな気はねえぜ」
エイジはそのことをもう見抜いていたのである。
「どうせな」
「まあそうでしょうね」
「それは」
「僕もそう思うよ」
斗牙もそう見ているのだった。
「あれは絶対にね」
「そうだよ、ああいう奴はな。どうせ俺達も洗脳して利用するつもりなんだよ」
「やれやれだね」
そのウェンドロはわざとらしくとぼけた。
「出来るだけに穏便に済ませたかったんだけれど」
「嘘ですよね」
「そう思うわ」
エイナもリィルももう読めた。
「あれは」
「間違いなく」
「文明監査官として処分を下さないといけないようだね」
「処分!?」
今度は健一が眉を顰めさせた。
「一体何の権利があってそれが言えるんだ!」
「それは勿論あれだよ」
「あれとは何だ!」
「そうよ、何なのよ!」
一平とめぐみも問う。
「まあ大体予想はつくがな」
「それは」
「そうだよ。この銀河の秩序を守る為にね」
それだというのであった。
「その権利を使うのさ」
「銀河の秩序」
大次郎も言う。
「それでごわすか」
「ヴィガジ達が言っていただろう?」
ウェンドロは涼しい顔で続ける。
「君達は銀河に争いを広げる病原菌なんだよ」
「よお言うわ」
「全くでごわす」
十三と大作がここで言った。
「そお言うてやってることはや」
「ゲストやバルマーと全く同じことでごわす」
「僕達はそれを駆除する為にここに来たんだよ」
「私達が戦っているのは」
ちずるがそれに反論する。
「戦う為じゃないわよ」
「何を言っているんだい?それだけの兵器を持って」
だがウェンドロは彼女にも反論した。
「それでは理由にはならないよ」
「それを言うのか」
他の世界から来たがマリンにもわかった。
「やはり」
「バルマーもそうだけれど」
彼はバルマーのことも話に出した。
「君達は銀河の秩序を乱す存在なんだよ」
「あくまでそう言うんだな」
「そうだな」
アレルヤとティエリアも言った。
「こういう手合いは」
「何処までも自分達を正当化する」
「君達は野蛮で危険な下等生物なんだよ」
さらに言うウェンドロだった。
「僕達の監視がなくては危なくて野放しにできない」
「そういう御前は何だ?」
「そうだな」
今度は刹那とロックオンが言った。
「お世辞にも高貴とは言えないようだがな」
「その本音はな」
「君達地球人は闘争心と軍事技術レベルが突出しているんだよ」
ウェンドロは今度はこのことに言及した。
「それで以前から注目されていたんだよ」
「だからバルマーも来た」
「ゲストも」
「そうさ。バルマーもだけれどね」
ここに彼のバルマーへの感情が見えた。
「極秘裏に交渉や接触を持ったり矯正を試みたりした連中もいたけれど」
「ゲストもバルマーもだね」
万丈はそれはわかった。
「そういうことか」
「ゼントラーディといいメルトランデいといい銀河にはそうした存在が多くてね」
「そういう連中とも揉めてるって訳か」
「困ったことだよ」
今度はフォッカーに返すのだった。
「そこに地球人まで来たらね。たまったものじゃないんだよ」
「そして俺達の兵器を手に入れて」
「どうするつもりだ」
イサムとガルドが問う。
「手前等で使うんだな」
「そうするつもりだな」
「全ては銀河の秩序の為にね」
遂に本音が出た。
「それは当然じゃないか」
「これでわかったぜ」
バサラにはもうそれで充分だった。
「手前こそがその銀河の秩序の敵だ!」
「おやおや、凄い曲解だね」
「曲解じゃねえ!俺の目が誤魔化せねえ!」
「言い切ったわね」
ミレーヌが彼に突っ込みを入れた。
「それはまた」
「そうさ、こいつはただ銀河の覇権なんてのを欲しいだけだ」
バサラは言い切った。
「それだけだ、手前はな!」
「まあそう思うなら思えばいいよ」
ウェンドロは彼は意図的に相手から外した。
「君達はやがて銀河の秩序を大きく乱す。だからその前に」
「倒すってわけかい」
「そうさ、このディカステスでね」
万丈に対して述べた。彼はそのディカステスという言葉に返した。
「確かその言葉はギリシア語で裁判官だったかな」
「その通り、君達の言葉を使わせてもらったよ」
「ふざけるな!」
「そうだ、何だよそれ!」
ケーンとタップがすぐに彼に抗議した。
「俺達の言葉使ってよ!」
「裁くっていうのかよ!」
「よくもここまで傲慢になれるものだね」
ライトはシニカルだがはっきりと怒っていた。
「これはまた」
「君達は相手を倒す為の武器は凄いものを持っている」
またこのことを言ってみせたのだった。
「だが精神的には未熟」
「こ、こいつ」
「ああ、そうだな」
「同じこと言うな」
ガルにゴル、ジンが言った。
「おでにもわかった」
「へっ、そうは言ってもな」
「俺達はともかくとしてだ」
「あんた達はどうなのさ」
ミンが彼に問うた。
「そういうあんた達はね」
「確かに僕達も人間さ」
人間なのは認めるのだった。
「二人以上集めれば僕達の世界でも争いは起こるさ」
「そういえばゲストは」
「そうですよね」
綾人はグン=ジェムの言葉に頷いた。
「同じ兵器を使っているな」
「確かに」
「しかし精神的には非常に未熟」
また言うウェンドロだった。
「持っている力と精神面の釣り合いが取れていないから命の無駄遣いをするんだよ」
「それでか。兵器を」
「我々の兵器を」
「それを名目として」
カール、ウェルナー、ダンが問う。
「奪ってそのうえで」
「貴様が手中に収め」
「意のままにするというのか」
「子供にピストルを持たせる大人はいないだろう?」
何処までも傲慢なウェンドロだった。
「だから僕達は君達からその危険な玩具を取り上げに来たんだよ」
「勝手な理屈だな」
一矢は忌々しげに言い捨てた。
「貴様のな」
「そして二度とそんなものを作り出さないようにお仕置きしてあげるんだよ」
そして言うのだった。
「僕のお仕置きは生易しいものじゃない」
「傲慢ね」
ミサトはそんな彼の言葉を一言で言い捨てた。
「ただそれだけね」
「僕に歯向かった者は全て始末する」
その笑みに凄みが宿った。
「君達の技術を応用して作ったこのディカステスでね」
「地球の技術を使った!?」
「まさかそれで」
皆その言葉に反応した。だがそれより先にまたウェンドロが言ってきた。
「さあ来るがいい、野蛮人共。僕が裁きを下してあげよう」
「よし、それならだ!」
「やってやるわよ!」
ロンド=ベル全軍でディカステスに向かう。そうして総攻撃を仕掛ける。
ありったけの攻撃を各機でぶつける。しかしであった。
「何っ!?」
「無傷!?」
「まさか」
「やるねえ」
ウェンドロの余裕に満ちた声が響いてきた。そのディカステスから。
「やっぱり色々な組織を倒してきただけはあるね」
「馬鹿な、あれだけの攻撃を受けて」
「立っているなんて」
「そんな・・・・・・」
「無傷じゃないのは言っておくよ」
ウェンドロからの言葉である。
「それはね」
「ちっ、余裕だな!」
「それでも!」
「さあ、僕からも行くよ」
こう言ってである。今度は彼から攻撃を仕掛けて来た。それは。
「ビッグバンウェーブ」
「!!これは!」
マサキがその光を見て叫んだ。
「シュウのネオ=グランゾンにもある」
「ええ、それね!」
「間違いない!」
リューネとヤンロンも叫んだ。ディカステスから光の波が放たれたのだ。
「あの武器よ」
「それではやはりディカステスは」
「そうだよ、僕は嘘はつかないよ」
こう言うウェンドロだった。
「この通りね」
「ちっ、避けろ!」
マサキが皆に叫ぶ。
「これを受けたら只じゃ済まねえぞ!」
「いえ、それよりもマサキ!」
「攻撃を中和しないと!」
テュッティとミオがそれを言ってきた。
「これはまず避けられないわ」
「それだったら!」
「中和だっているのかよ!」
「私はケルヴィンブリザードを出すわ!」
「私はレゾナンスクエイクをね!」
それぞれの魔装機神の誇る広範囲への攻撃兵器である。
「それを出して!」
「打ち消すしか!」
「よし、わかった」
「それじゃあね!」
ヤンロンとリューネがそれに応えた。
「僕もメギドフレイムを出す」
「あたしのヴァルシオーネのサイコブラスターもね」
「わかったぜ、俺もだ」
そしてマサキもであった。
「サイフラッシュだ!それで打ち消してやるぜ!」
「できるかな、君達に!」
ウェンドロはビッグバンウェーブを放ちながら彼等に問うた。
「このディカステスのビッグバンウェーブを打ち消すことが!」
「ふざけるなニャ!」
「確かに御前のマシンは凄いニャ!」
クロとシロが彼に言い返す。
「けれどそれでもニャ!」
「御前も万能とかじゃないニャ!」
「言うねえ。じゃあやってみせたらいいよ」
その笑みは決して消えなかった。
「この僕に対してね」
「いっけえええええええーーーーーーーーー!」
マサキを中心として五機が攻撃を放つ。それでビッグバンウェーブに対した。
五機の攻撃とそれが拮抗する。そうしてであった。
「何っ!?」
「見やがれ!」
マサキがウェンドロに対して叫んだ。
ビッグバンウェーブは消えた。一気にであった。
だがマサキ達の攻撃もだ。消え去った。結局中和されたのであった。
「俺達の力を甘く見るな!」
「今ね!」
「そうですね」
ここでシモーヌとデメクサが出た。
他の魔装機もそれに続く。十二機でそれぞれの最大の技をぶつけるのだった。
「これなら!」
ザッシュが黒い霹靂を放つ。それが攻撃を放ったばかりのディカステスを撃った。
そこにマサキ達もだ。最大の技を放ったのだ。
「クロ!シロ!」
「わかったニャ!」
「あれだニャ!」
「ああ、行け!」
魔法陣を出してであった。
「アカシックバスターーーーーーーーーーー!」
火の鳥を出してそれで撃つ。さしものディカステスもそれで揺れた。
「やったか!」
「いや、まだだニャ」
「立っているニャ」
見るとであった。ディカステスはまだ立っていた。しかしダメージを受けたのは明らかであった。攻撃の隙を衝かれてなのは間違いなかった。
しかしであった。彼はまだ立っていた。そうして言うのであった。
「ふふふ、流石だね」
「認めたわけじゃないみたいだね」
テリウスが彼に言う。
「それは」
「命を捨てて向かって来るだけのことはあるよ」
こう言うのである。
「ここは出なおした方がよさそうだね」
「手前逃げる気か!」
「冷静な戦況判断に基く戦略的撤退だよ」
マサキに対してこう言うのだった。
「僕は他の連中とは違うよ」
「ふん、そうしてまた」
「己だけを高みに置くんだな」
リューネとヤンロンも既に彼がわかっていた。
「他の連中とは別だってことにしてね」
「そうするのだな」
「命の無駄遣いはしないよ」
だが彼の言葉は変わらない。
「それこそ野蛮人のすることだからね」
「じゃあ聞くわ」
ウェンディも彼には怒りを見せていた。
「貴方の部下は何だったというの?」
「そうだ、インスペクターだって真面目に戦ったんだぞ!」
タスクがそれを言う。
「それは何だっていうんだ!」
「彼等は能力が低かっただけさ」
これで終わりであった。
「同情の余地なんてないね」
「指揮官としてその判断は正しいのかも知れん」
ゼンガーはその観点では認めた。
「だが」
「だが?」
「それは人としてはどうなのだ」
「軍隊なんだよ?当然じゃないか」
またこんなことを言うだけだった。
「兵士は与えられた命令を遂行して死ねばいいんだよ」
「それだけだというのか」
「そうさ、それだけだよ」
あくまでこう言うのだった。
「兵士は与えられた命令を遂行して」
「そしてか」
「死ねばいいんだよ」
こう言ってみせるだけであった。
「代わりなんて幾らでもいるからね」
「そうか、それがか」
「御前か」
ラミアとアクセルは今の彼の考えにはっきりと嫌悪感を見せていた。
「それが貴様なのだな」
「他でもない」
「それがどうかしたのかい?」
二人に対しても笑みを向けたままである。
「それが」
「正しいかも知れん」
今度はリーが言った。
「だが。あの男が言えばだ」
「納得できんか」
「あの男には自分しかない」
リーはブレスフィールドに対してこう述べた。
「それしかない。自分もそうだとは決して言わないのだからな」
「そうだな、その通りだな」
彼等もまたウェンドロがわかっていたのであった。
「所詮はな」
「そうした輩だ」
「大体だね」
だがウェンドロは彼等のそうした目に気付くことなく述べ続けている。
「下らない情に流されていたら指揮官なんて務まらないよ」
「御前にとっては部下はものも同然か」
「そうだよ」
ゼンガーに対して平然と答えた。
「君達もね」
「人はものではない」
ゼンガーはこう返した。
「ただのものがここまで来られる筈もない」
「そう言うんだ」
「貴様は見誤っている」
鋭い目で告げた。
「我等の力、そして意思を」
「人をか」
クォヴレーはそれを聞いて述べた。
「あいつは」
「確かに見積もりは甘かったね」
ウェンドロが認めたのはこのことだった。
「そのことは認めるよ」
「それだけか」
「他に何があるんだい?本国に帰って」
また言う彼だった。
「対策をもう一度練り直した方がよさそうだね」
「待て!」
「ここで!」
「もう遅いよ」
ロンド=ベルは追いすがろうとする。しかしであった。
ウェンドロはその前に装置を動かしていたのであった。
「空間転移装置作動」
彼は動かしていた。もう。
「転移対象物固定」
動作が続いていく。
「ディカステス、転移座標軸」
「追え!」
「逃がすな!」
リーとテツヤが同時に叫んだ。
「あの男はここで倒す!」
「そうしなければ宇宙に大きな災厄が!」
「もう遅いよ」
しかしウェンドロの方が先であった。
「これでお別れだよ、野蛮人の諸君」
「くっ、これで!」
「逃がすっていうの!」
誰もが歯噛みする。しかしその時であった。
何かが破壊された。基地の何処かが。
「何っ、転移装置が!」
そしてであった。戦場に。彼が姿を現したのである。
「そう来ると思ったぜウェンドロ」
「メキボス!」
ウェンドロは彼のグレイターキンを見て叫んだ。
「どうしてここに」
「空間転移装置は破壊した」
彼はこのことをウェンドロに告げた。
「もう逃げられねえぜ」
「やれやれ」
しかしそれでもウェンドロの余裕は変わらなかった。
「兄さん、こんなところで何をしているのかな」
「!?今」
「兄って」
「確かに」
「ああ、そうさ」
メキボスは今のやり取りに驚くロンド=ベルの面々に対して答えた。
「こいつは俺の弟さ」
「弟・・・・・・」
「そうだったの」
「あんた達は」
驚く彼等をよそにだ。ウェンドロは今度はメキボスに対して言うのであった。
「やはりその程度だったみたいだね」
「俺がか」
「そうさ。野蛮人に感化されるどころか僕に歯向かおうなんて」
こう兄に言うのだった。
「やはりあの時に始末しておくべきだったかな」
「そう言うんだな」
「それにしても」
ここでウェンドロは言葉を替えてきた。
「地球人を認めるっていうのかい?」
「だとしたらどうする?」
「それは兄さんだけかな」
「いや、俺達全員だ」
そうだというのである。
「俺達なりに考えたのさ」
「ふうん、そうなんだ」
「俺達がこの連中に敗れた理由をな」
考えたというのだ。
「それはあれじゃないのかい?」
「あれとは何だ?」
「軍塩技術と戦闘能力だよ」
ウェンドロが指摘するのはこの二つだった。
「それが優れていたからじゃないか」
「それだけじゃない」
メキボスはそれを否定した。
「この連中。バルマーの奴もいるな」
「同じだね」
ウェンドロにとってはであった。
「所詮はね」
「そう言う考えが間違いなんだ」
だがメキボスはそれを嗜める。
「この連中には心がある」
「心が?」
「そうだ、俺達と同じだ」
それがあるというのである。
「それもだ」
「まだあるんだね?」
「そうだ、その心が強い」
「ふうん、そうなんだ」
「だから俺達は敗れた」
四天王はというのだ。
「そういうことだ」
「下らないね」
だがウェンドロは彼の言葉を聞こうとしない。
「精神面で彼等が僕より勝っているだって?」
「どう御前にとて贔屓に見ても同じだ」
「馬鹿を言っちゃいけないよ」
笑みはそのままであった。
「この連中はあれだよ?」
「この星をか」
「そうだよ。たった一つしかない自分の星をだよ」
言葉を続けていく。
「戦争で汚染する様な連中だよ」
「それは事実だな」
「バルマーと同じなんだよ」
彼の頭の中では地球とバルマーは完全にそうであった。
「そんな連中は放っておけないよ」
「バルマーを何もわかっていないわ」
ヴィレッタはそれを聞いて呟いた。
「何もかもが」
「そして」
ウェンドロの言葉が続く。
「この連中やバルマーによって銀河全体が戦場になるかも知れないんだよ」
「御前はいつもそう言うな」
「だからだよ兄さん」
また兄と呼んできた。
「僕達インスペクターはそれを防ぐ為に異文明を監査してるんじゃないか」
「今まではそう思っていた」
「銀河を蝕む病原菌を見つけ出し駆除する」
「それが御前の役目だな」
「そうだよ」
まさにそうだという。
「僕のやることはね」
「しかしだ」
ここでメキボスは言った。
「御前はその手に入れた技術をだ」
「何かな」
「どうするつもりだ?」
このことを問うのである。
「一体それを何に使うつもりだ」
「何にだって?」
「そうだ、何に使うつもりだ」
問うのはあくまでこのことだった。
「一体それを何にだ」
「僕の監査は銀河全土に及ぶんだよ」
ウェンドロは言う。
「完璧な監査の為にはね」
「おい待て」
「それって」
「まさに」
ここでロンド=ベルの面々は確信した。
「銀河の支配」
「それも人とかじゃなくて」
「神!?」
「だよな」
「本当に」
「そうかもね」
そしてウェンドロはそれを否定しなかった。
「それもね」
「その言葉訂正はしないな」
「何で訂正する必要があるのかな」
また兄に返す。
「それはどうして」
「・・・・・・やはり御前は間違っている」
彼は言った。
「御前は神じゃない、人間だ」
「裁判官だよ」
「そう己を絶対と思うことがだ」
それこそがというのだ。
「御前は何もかもわかっちゃいない」
「戯言だね」
メキボスの言葉は全く通じない。
「決断を下すのは僕だよ」
「まだそう言うんだな?」
「僕が奴等を駆除する」
それを言う。
「それだけだよ」
「・・・・・・こうなるしかないか」
メキボスはここで遂に決めた。
「俺達は地球人を知った。御前より余程立派な奴等だ」
「わかったよ、兄さん」
一応兄とは呼んだ。しかしだ。
「そこまで言うのならね」
「覚悟を決めたんだな」
「覚悟?それはないよ」
これはないと返す。
「だって君が僕に勝つことはできないから」
「その手の台詞でいっていたから今がある」
また言うメキボスだった。
「それを身体でわからせてやる!行くぞ」
「来たね」
「俺がこの手で始末をつけてやる!」
グレイターキンのフォトンビーム砲の照準を合わせる。
「それが兄として御前にしてやれる最後のことだ!」
「これでいいかな」
「何っ!?」
「もう気が済んだだろう?兄さん」
こう言うとであった。
「何っ!!」
「ふふふ」
グレイターキンが動けなくなった。急にであった。
「何だこれは!」
「システムダウンだよ」
それだというのだ。
「僕のマシン以外には全て備えてあったんだよ」
「くっ、何時の間に!」
「権力者は一人だけ」
彼は言い切った。
「自分以外の人間が造反した時の為にね」
「くうっ!」
「くっ、こいつ!」
「何て奴なの!」
ロンド=ベルの面々も今のウェンドロを見て叫ぶ。
「本当に自分だけ」
「自分が神だと」
「そう、僕は神」
それを堂々と肯定してみせる。
「その神の裁きを今から行うんだよ」
「メキボス!」
万丈がメキボスに対して叫ぶ。
「脱出するんだ!」
「駄目だ、脱出装置も動きはしねえ」
それもだというのである。
「俺はこれでだ」
「ウェンドロ!それが御前なのか!」
「そうだよ、それじゃあ」
グレイターキンに照準を合わせてであった。
「これで終わりだよ」
「メキボス!」
紫と黄金のマシンが動き。一条の光が放たれた。
「これは審判の光さ」
「その光が」
「裁判官の」
「そうさ、メガフラッシャーーーーーーー!!」
それが放たれ。グレイターキンを貫いてしまった。
それで終わりだった。グレイターキンの各部が火を噴きはじめた。
「機体が!」
「言ったろ?」
ウェンドロが自信に満ちた笑みを向けていた。
「君は僕に勝てないってね」
「ウェンドロ、貴様!」
「甘いんだよ兄さん」
爆発していくグレイターキンに向けた言葉だった。
「こうなることは予測がついていたからね」
「俺が。こうして」
「だから言ったろ?神は一人なんだよ」
その神こそは。
「神に逆らうことは許されないんだよ」
「俺達は人間だ・・・・・・」
「いや、僕は神だよ」
あくまでそうだと確信していた。
「それは言ったよ」
「御前は・・・・・・」
「さよなら、兄さん」
爆発するグレイターキンに告げた。
「今度こそ永遠にね」
「ウェンドロ!」
メキボスの声が最後に響いた。グレイターキンは炎の中に消え去った。
「メキボス!」
「愚か者の末路だよ」
叫ぶ万丈への言葉である。
「同情の余地はないね」
「その言葉撤回しないんだね」
「必要はないね」
あくまでこう言うのだった。
「何もね」
「・・・・・・訂正はしないか」
「さて、空間転移装置が壊れてしまったからには」
そうなっていても彼はまさに神だった。
「僕も腰を据えるしかないね」
「戦うんだな」
「お仕置きを続けようか」
彼にとってはそれでしかなかった。
「このティカステスでね」
「腰を据える」
万丈はその言葉に対して指摘を入れた。
「それは違うね」
「違う!?」
「こういう場合は」
万丈は怒っていた。静かにだ。
「覚悟を決めるって言うんだよ」
「僕が覚悟をかい?」
「そうさ。何故なら」
そして言うのだった。
「御前はここで僕に倒されるからさ!」
「君だけでかい?」
「皆、手出しは無用だよ」
万丈は仲間達に対しても告げた。
「何もね」
「って万丈さん」
「幾ら何でもあれは」
「無理なんじゃ」
だが誰もがそれには戸惑いを覚えた。
「相手が相手だし」
「それはどう考えても」
「無謀ですよ」
「無謀じゃない」
だが万丈はそうではないという。
「僕は勝つ。必ずね」
「じゃあ見せてもらおうかな」
ディカステスは悠然と動いていた。
「君の言うことが真実かどうかね」
「いいだろう、見ろウェンドロ!」
叫んで、であった。一気に前に出た。
そうして。まずは足を向けた。
「ダイターンキャノン!」
「うぐっ!」
向かおうとするウェンドロのその動きを止めた。
「何だ、この攻撃は」
「まだだ!」
次はミサイルだった。
それも命中した。だがディカステスはまだ動く。
メガフラッシャーを放つ。しかしそれは。
ダイターンにかわされてしまった。何なく。
「何だとっ!?」
「一度見たらそれで充分さ」
あえて余裕の声を出してみせるのだった。
「これ位はね」
「くっ、野蛮人が・・・・・・」
「御前はその野蛮人に倒される!」
今度はダイターンジャべりンを放って貫いた。
それから接近しダイターンザンバーで切り裂き。最後には。
「日輪の輝きを受け今!必殺の!」
あの技であった。
「サンアタアアアァァァック!!」
それはディカステスを完全に捉えていた。そうして。
ダイターンの両足が来た。最早ディカステスはそれをかわせなかった。
「ダイターーーーーーーンクラアーーーーーーーーーーーーーッシュ!!」
一気に蹴り抜いた。これで終わりであった。
「ウェンドロ!これでどうだ!」
「ぐうっ!」
「これが人間の力だ!」
万丈はここで高らかに言った。
「わかったかウェンドロ!」
「つ・・・・・・強い・・・・・・」
流石に彼も今は笑っていなかった。苦悶の表情である。
「強過ぎる・・・・・・」
「それだけじゃない」
万丈はここでまた言った。
「僕達の力は力だけじゃない」
「で、でも・・・・・・」
ウェンドロは最後まで彼等の話を聞いていなかった。
「その力・・・・・・」
「その力?」
「その力が銀河を滅ぼすんだ」
こう言うのである。
「所詮君達は癌なんだよ」
「それだというんだね」
「そう、地球にとっても」
その最後の言葉は。
「宇宙全体にとっても・・・・・・」
ディカステスが爆発して消えた。後には何も残っていなかった。
万丈はここで。こう言うだけだった。
「何もわかっていなかったな」
「はい、その通りでございます」
ギャリソンが彼に応えた。
「あの方は。御自身が神だと思っておられました」
「それこそが問題なんだ」
ウェンドロ自身がだというのだ。
「神と思い込み全てを支配し管理できると思ったその時にね」
「それこそが銀河も宇宙も滅ぼします」
「ウェンドロこそがそれだったんだ」
万丈は言いながらそれまでウェンドロがいた空間を見ていた。もうそこには何もなかった。
「それが自分では何もわかっていなかった」
「見ようともしれはいませんでした」
「傲慢な神」
また言う彼だった。
「それが今滅んだんだ」
「今それにより」
「インスペクターとの戦いも終わったね」
「はい、今」
「ただ」
しかしだった。ここで万丈の目が寂しいものになった。
「メキボスは惜しいことをしたね」
「全くでございます」
「おいおい」
しかしだった。ここで声がしてきた。
「勝手に死んだことにされちゃ困るぜ」
「手前幽霊か!」
「化けて出たな!滅殺してやる!」
「成仏しろ」
それを聞いて最初に反応したのはオルガ、クロト、シャニの三人だった。
「一度死んだんだ!大人しくあの世に行け!」
「この世にそんなに未練があるのかよ!」
「あの世に本当に行け」
「だから生きてるんだよ」
いい加減メキボスも切れてきた。
「運がよかったぜ」
「何っ、あんた生きてるのかよ」
「死んだら面白かったのに」
「残念だ」
「あんた達に言われたくはねえな」
流石に不死身とさえ言われる彼等に言われては面白くなかった。
「とにかく何とか五体満足だしな」
「へえ、そりゃまた凄いね」
万丈はそれを聞いて楽しそうな笑顔になった。
「五体満足だなんてね」
「まあな。グレイターキンのダメージはな」
ここで愛機の話もした。
「またもう一機造りなおさないといけないkれどな」
「もう一機?」
「そう、もう一機な」
笑いながら言っていた。そのすぐ後ろには脱出ポッドがあった。それが黒焦げになっていた。危うい状況だったのがそれでわかる。
「造らないとまずいな」
「用意はないのかい?」
「一応あるぜ」
それはあるのだという。
「だがな」
「だが?」
「新型なんでちょっと慣れるまでに時間がかかりそうだな」
「まあそれでもあるのとないのとじゃ全然違うね」
「その通りだ。さて」
ここでメキボスは話を変えてきた。
「いいか?」
「何がだい?」
「だからだ。ウェンドロは死んだ」
言うのはこのことだった。
「最高司令官が死んだんだ。後は俺達四天王が指揮を引き継ぐ」
「そういうことだ」
「終わったみたいだね」
「・・・・・・・・・」
ここで基地に四天王の他の三機の機体が出て来た。中には当然彼等もいる。
「メキボス、助かって何よりだな」
「あんたがいないとやっぱりね」
「・・・・・・・・・」
「最高司令官は御前がやれ」
「代理だけれどね」
ヴィガジとアギーハが彼に言ってきた。シカログは沈黙しているが同じ考えだった。
「それでいいな」
「頼んだよ」
「俺でいいんだな?」
メキボスはその仲間達に問い返した。
「俺が最高司令官で」
「俺は副司令官が肌に合っている」
「あたしはそういう柄でもないしね」
「・・・・・・・・・」
シカログも同意見だった。これで決まりだった。
「悪いな、じゃあやらせてもらうな」
「うむ、ではだ」
「いいね」
こうしてであった。インスペクターの話は決まった。メキボスが統率者となった。
しかしであった。ここで万丈がメキボスに問うのだった。
「それでだけれど」
「何だ?」
「君達の方針はどうなのかな」
それを彼等に問うのである。
「ウェンドロは倒れたけれど」
「それでか」
「僕達としては君達の返答を聞きたいんだ」
そうだというのである。
「講和か。それとも」
「俺の考えはわかっている筈だ」
これがメキボスの返答だった。
「いいな、それでな」
「うん、わかったよ」
「俺達は同じだ」
メキボスは今彼が立っているその場所で微笑んでいた。
「同じ人間だからな」
「うん、じゃあ今やっと」
「手を握らせてもらうよ」
こうして人類とインスペクターの講和がなった。そしてそれがなった瞬間に。基地に今度はネオ=グランゾンが姿を現わしたのである。
「まずはおめでとうございます」
「シュウ、手前か」
マサキが彼に応えた。
「今度は何の用だ?」
「インスペクターだけではありませんので」
まずはこう言うのだった。
「ゲストがいますよ」
「ああ、そういえばそうだったな」
イルムがその勢力を思い出したのである。
「あの連中が出て来たな」
「そうだな、ゲストがな」
リンも言う。
「出て来たか」
「そうです、丁度いい具合に動かれましたので」
シュウは微笑んで言ってきた。
「ですから貴方達にはこれからは」
「ゲストと戦って欲しいんだな」
「はい」
その通りだというのである。シュウはだ。
「これからまずはサイド6に向かって頂きます」
「サイド6にかよ」
ジュドーはそれを聞いて少し意外な顔になった。
「セダンとかソロモンじゃなくてかよ」
「てっきりそこで攻防かと思ったけれど」
「違ったのね」
ルーとエルも言う。
「サイド6での戦闘なんて」
「滅多になかったけれど」
「ただよ、コロニーを巻き込むとかな」
「そういうことにならなかったらいいけれど」
「そうだよね」
ビーチャにモンド、イーノはそれを危惧していた。
「ゲストの戦い方は今一つわかっていないけれどな」
「非道な戦いは見たことないけれどね」
「ティターンズの過激派とかガイゾックとかガルラ帝国みたいにはね」
そうした存在とは違うというのである。しかしであった。
プルとプルツーが言うのであった。
「そういえばよ。ゲストって」
「その司令官がわからないぞ」
「誰なのかな」
「あの三人だけではないな」
「それもおわかりになられます」
シュウがここでまた言ってきた。
「サイド6に行かれれば」
「つまりは」
ミネバがここで考える顔になって述べた。
「サイド6でいよいよゲストのことも全部わかるのね」
「その通りです」
ハマーンが彼女の言葉に応える。
「ではミネバ様」
「行きましょう、ハマーン」
ミネバはその彼女に告げた。
「ゲストとも。戦わなければいけないのなら」
「わかりました、それでは」
こうして皆シュウのその言葉に乗ることになった。
そうしてだった。シュウはふとこんなことも言うのであった。
「私はです」
「どうしたってんだ?」
「私に命令できるのは私だけです」
ヴォルクルスに告げた言葉をここでも言ったのだ。
「これはお忘れなきよう」
「手間のその性格はよくわかってるけれどな」
他ならぬマサキ自身がであった。
「まさかと思うがよ」
「それもおわかりになられます」
今はそれ以上言わないシュウであった。
「そしてです」
「そして?今度は何だ」
「私は利用されることを好みません」
このことも言うのだった。
「何故なら私は自由を何よりも愛しているからです」
「手前を利用できるとは思えねえがな」
「ですが人には色々な人がいます」
また言うシュウだった。
「中には今のウェンドロの様にです」
「自分を絶対者と思うからってことだね」
「そういうことです」
シュウの今の言葉は鋭いものになっていた。万丈に返したその言葉はだ。
「絶対者というものはこの世にはあってはならないものなのです」
「そしてそう思うってことは」
「それ自体が間違いなのです」
それがシュウが今言いたいことだった。
「さて、ゲストの方々との面会です」
「どうもな」
マサキのその鋭い勘が動いた。
「ゲストもインスペクターと同じみたいだな」
「それもおわかりになられますよ」
シュウはこのことについても述べた。
「何もかもです」
「どうでもいいがウェンドロみたいな奴は何処にでもいるな」
「その通りだニャ」
「全くだニャ」
クロとシロが今のマサキの言葉に応えた。
「胡散臭い奴が多いニャ」
「訳のわからない」
「シュウを利用かよ」
マサキはこのことも言う。
「やれやれだな」
「さて、その戦いニャが」
「サイド6、宇宙ニャぞ」
クロとシロは今度はこのことを指摘した。
「それかコロニーの中ニャ」
「こことは違う戦いになるニャ」
そんな話をしながら今度はサイド6に向かう。インスペクターとの講和を終えた彼らは今度はゲストとの戦いに突入するのであった。

第百七十八話完

2009・12・29  
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