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ソードアート・オンライン~黒の剣士と紅き死神~

作者:ULLR
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After days
summer
  訳ありのバカンス

 
前書き
最近、だらだらしてる文章が多い気がする……。
次回、頑張ろう! 

 



『以上で一学期終業式を終了します』



7月にある終業式。この面倒この上ない儀式を終えれば待ちに待った夏休みだ。

勤勉な者は7月中、あるいは8月の前半で学校の課題を終らせ、そうでないものはラストの3日間ぐらいで泣きを見るあの夏休みだ。だが、この《SAO事件被害者》のための学校の夏休みは少し、様相が異なっていた。

なんせ、3年弱で2年に及ぶ空白を埋めなければならないのだ。
当然、夏休みにも補講がある。しかも相当な日数。
しかたのないこととはいえ、やはりそれをやるのは億劫だった。

皆が諦めかけたその時、立ち上がったのは水城螢だった。彼は実にいい笑顔(彼の親しい友人に言わせれば完璧な作り笑い)で、その方針が提示された学校全体の集会で教師陣にこうのたまったのだった。


『先生方、夏休みとは単なる長期休暇ではありません。そもそも、夏休みの本来の意義とは夏の暑さで生徒が勉強に集中出来なくなるぐらいなら、多忙な教師達も休んでしまおう。ということではないのでしょうか?確かに()たちには時間がありませんが、それでは普段から勤勉に勉強して優秀な成績を残している人達があまりに不憫ではありませんか。そこで、補講授業受講者選抜テストを行ったらどうでしょう?』


後日、この進言はまかり通り、1週間後にテストは行われた。


終業式が終り、点々ばらばらに退場(自由席のため、退場は各々で行う)する生徒達にの中に一際ぐったりとした集団があった。


「やれやれ、誰も引っ掛からなくてよかったな」

「……お陰様でな」


その先頭を歩く男子2人の内、1人は悠然と歩き、もう1人はぐったりとしている。


「螢君のスパルタ具合は凄かったねえ~」


ぐったりとした少年の背中をポンポン、と優しく叩いて労っている美しい少女に疲労の様子はあまりない。


「全くだ。こちとら、くそ暑い中わざわざ学校まで行かなきゃならんのが嫌でああ言ったのに、何でお前らの勉強まで面倒見なきゃならんのだ」

「……自分だって現代文ギリギリだったくせに」

「……ふん」


じとーっ、と半眼で螢を睨む和人はため息をつくとぐぐっ、と背伸びをした。


「ま、何はともあれ夏休みはのんびり出来るわけだ」

「課題はあるけどな。ちなみに俺は事前入手して半分終わった」

「ずるい!?」


こうして、2年ぶりの夏休みは始まったのだが……。

それが波瀾の始まりとは他ならぬ螢でさえ、予想していなかったのだった。











__________________________________







「水城隊長、海に行く気はないかね?」

「ありませんね」

「そこまで即答しなくてもいいだろうに……」


波瀾の発端は、夏休み1日目。

午後から和人達とアインクラッド攻略に参加する予定ではあったが、午前中は暇だったので早めにダイブしてアインクラッドを久々に散策しようかとも考えていたのだが、ホークス総帥に急に呼び出され、わざわざ実家の板橋区から本部のある千代田区までやって来た。

例のごとく、きらびやかな部屋に通され、第一声が先程の会話である。


「どうせ、任務か面倒事でしょう?生憎自分は今、夏休みですので。有事以外で隊長級を動員するのは感心出来ませんね」

「やれやれ……可愛いげの無いやつだ。海水浴場を貸しきったので、お友達とどうかと思ったのだが?」

「……は?一体、どうゆうこと……」


総帥は俺が食いついて来たのにニヤリとして言う。


「日本海沖合いで米軍と海上自衛隊の合同訓練があるのだ。ただ、その場所がちょいとまずくてな」

「なるほど、中国がらみですか……」

「そうだ。()()の際に貴官及び、第三師団特殊武装運用試験部隊に出陣してもらう。これは既に秘密国会で承認された事案である。とはいえ……」


総帥はつまらなそうに俺が暑中見舞で持ってきたワンカップもずく300個のうち、1つの封を開けながら答える。


「大層なことにはならんはずだ。中国とて米軍相手にいきなり喧嘩ふっかけて勝算があるとは思ってないだろう。精々抗議、最悪爆撃機による警告だな」

「爆撃機相手に生身の俺はどうすりゃいいんですか……」

「そのための第三師団だ。……『トライデント』の後釜、米国と共同開発の『カヴァリー』の演習も兼ねてるからな」

「……そのネーミングはどうかと思いますが。まあ、いいでしょう。丁度今日、仮想世界で会う予定です。都合を訊いておきます。いつからですか?」

「8月1日から4日間だ。承諾を得たら連絡してくれたまえ。宿屋もろもろはこちらで手配する」

「了解しました」







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数時間後、

10層ボスがその巨体を爆散させ、一瞬の間をおいて部屋に歓声が響き渡る。


「ふぅ……」


大太刀を納刀し、息を吐く。最近はボス戦のノウハウも大分蓄積されたり、武装も強力なものが出てきたりして楽になっては来ているが、アインクラッドのフロアボスは相変わらず強かった。

今回は2レイド98人の大人数で挑めた(夏休みなので人数がそろった)のが幸いし、30分交代のワンローテ、一時間でボス戦は終了した。

ラストアタックを取れなかった前半組は不満が溜まっているようでムッスリしている。


「おい。ラストアタッカーさん。早く逃げんと面倒だぞ?」


俺が笑いながらキリトの肩を叩くと、キリトは顔をしかめてそそくさと上層へ続く階段に向かう。


「やー。疲れた疲れた。やっぱり夏の迷宮区ほど嫌なものは無いね」

「今の時期、ノーム領が過ごしやすいんじゃないか?」

「いいねー。あ、でも真夏に震えてるのもおかしくない?」

「はは、そうだな」


俺達のパーティーは前衛6人、後衛1人の超攻撃型パーティーだ。

だが、唯一の後衛こと《閃光》のアスナさんは時々……いやほとんどの場合、いつの間にか前衛にいる。故に、俺達がボスに張り付いているときはHPがゴリゴリ削れるのだが、ヒーラーのくせに前衛に置くと滅茶苦茶強いということで、彼女の2つ名は《バーサークヒーラー》とか言われてたりする。

ちなみに、今回のパーティーは俺、キリト、アスナ、シリカ、リズ、クライン、エギル。

戦力としては申し分無いのだが、やはり後衛の薄さは否めない。


「やっぱ後衛は必要か……」

「う……ごめん」

「いや、責めてる訳じゃないからな?」


取り合えず、菊岡/クリスハイトを脅して入れる時間を増やさせるか?とか思ったが、根本的な解決にはならないような気がしたので、保留にした。


「あ、そう言えばちょっといい話があるんだが、この後時間あるか?」

「え?あるけど……何?」

「それはお楽しみ」






___________________________________







(ゲーム内の)飯おごるという名義でやって来た、二層主住区《ウルバス》。


かの馬鹿高いので有名なケーキ、《トレンブル・ショートケーキ》の産地(?)だが、当然それが売っている店に入るわけない俺は明らかにそれを狙っていた女性陣を取り合えず鎮圧(方法は割愛する)し、妥協点のそこそこおしゃれなオープンカフェの席に着いた。


「色々あって8月1日から4日間、鳥取県の石脇海水浴場を貸し切れたんだが、行くやつ挙手」


ポカン、とする一同。


「ん?居ないのか。それはざんね―――」

「いやいや待て待て。海水浴場貸し切り、ってどうゆうことだ!?」


強面に驚きを滲ませ、恐ろしげな顔になっているエギルが身を乗り出しながら質問する。


「正確に言うなれば、沖合いで自衛隊と米軍が合同演習をするんで、その期間は一般人が立ち入り禁止なんだ。だが、せっかくだから関係者の家族に入禁になっている海水浴場で遊んでもらおう。という趣旨らしい。沙良のコネで俺達もそれに参加できる訳だが、どうする?」


沙良が中学卒業後、自衛隊に入隊したのは既に周知の事実なので、皆の顔に浮かんだのは軽い戸惑いだけだった。


「気が向いたら随時連絡してくれ。ちなみに、費用は向こうで出してくれるから実質タダだ」


タダ、という言葉に反応した数名の将来に多少の不安を覚えたレイであった。









________________________________________







―――出発前日。



水城家の食卓には珍しく家族全員が揃っていた。

というのも、沙良が明日の合同演習に参加する際に諸々の事情により、現地集合を命じられたからだ。
諸々の事情とは機密らしく、言えないらしい。まあ、日本領海内で演習とはいえ、戦略兵器(カヴァリー)を運用するのだ。そこら辺の事情だろう。

家族が揃っているとは言ってもそこに団欒が生じる訳ではない。水城家の食事は静けさを重んじるのだ。
それ故、明日からの日程で複数の意味で関係者になる当主が口を開いたのは食器の片付けが終わった後だった。


「沙良」

「何でしょうか?」

「一応、用心しときなさい。螢や蓮も現場にいるとはいえ、立場は一般人と何ら変わらん。もしもの時はお前が中心になって事態を収拾しなければならない」


それは祖父から孫への教え、ではなく当主から家の者への命令。

孫――主に沙良――に激甘なことで定評のある冬馬には滅多にないことだった。


「はい。心得ています」

「ならば良し。今日はもう休みなさい」


最後に冬馬はそう言うと、自室に引き上げて行った。


その稀な光景を見ていた俺の心中は祖父に対しての驚きではなく―――





―――蓮兄、来るのかよ……



その事実に対しての驚きだった。









_________________________________






早朝、羽田空港。


「おーい。こっちだ」


おのぼりさんみたいにキョロキョロしていた和人を呼び寄せ、だいぶ集まってきたメンバーを見渡す。

俺、沙良、蓮兄は当然一緒に来た。現在居るのは和人、明日奈、直葉、里香、珪子、凛、狼李。


「……ていうか、何人来るんだ?」

「お前が把握してないのかよ!?大丈夫なのか?」

「何が?」

「いや、飛行機の席とか……」

「何だそんなことか」

「そんなことか、って……結構重要じゃないか?」

「問題ない。プライベートジェットだし」


それを聞いた和人以下、7人は唖然としましたとさ。




21世紀も4分の1に達しようとしている今日この頃。ジェット機の騒音も大分軽減され、民間機に至っては最新のスタビライザーにより、離着陸の震動も少ない。

離陸から30分、早朝の集合だったからか、乗員の大半は既にスヤスヤと寝ている。


「お前ら、もうちょっと感動しようぜ?」


そんな彼らを苦笑混じりに眺めながら朝食のおにぎりをかじる。
ちなみに、あれから来たのは海斗、夏希、レオン。保護者役でエギル(長いためPNで勘弁されたし)だ。


空の旅は3時間弱。昼は向こうで食べることになるだろう。

室内は冷房が適度に効いていて快適だが、長袖でいるのは少し暑い。それにも関わらず、螢は薄手の長袖を着ていた。理由は至極簡単。左腕部の関節の少し上。肉体と義肢を接続する金属リングが人工皮膚の上に露出しているからだ。現行の技術ではそれが精一杯。無理に隠そうとしても、そこだけが盛り上がってしまうのだ。

正直、海へ行くのも躊躇われた。行けば、隠すことは困難を極める。今回のメンバーで義肢のことを知っているのは和人だけ。それでも、彼に明かしたのは事情があってのことである。

見せたくない理由は、見たときに皆の目に浮かぶだろう同情の光を見たくないからだ。

この腕に関することであれこれ気を使われるのは好む所ではない。優しすぎる彼らのことだ。見ればそうなることは想像に難くない。


窓から外を見る。
雲の上の世界。アルヴヘイムで散々見慣れている光景ではあるが、絵のディティールではやはり、本物に分がある。


「まぁ、何とかなるか……」


蒼空の先にある深い青を眺めながら、螢は目を閉じた。






________________________________





―――緊急報告。


外部からの干渉により、カヴァリーのメイン制御システム《Mammal》に軽微の異常を感知。
自己修復を実行、これを解決。
システムスキャン、損傷・ウイルスの潜伏問題なし。

幕僚長協議の結果、演習は予定通り敢行。ただし、念のためホークス情報戦部隊を新たに召集。

情報戦部隊の指揮権は第三師団副官・藍原智代に委譲。

なお、本件の打診は山東家の進言であることを付記する。


 
 

 
後書き
レイ「なんか、きな臭くね?」

ULLR「でなきゃ面白くない。ていうか、意図的にフラグ立てるのってムズくない?」

レイ「皆やってることだ。精進しろ」

ULLR「はい……」


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インフィニティ・モーメントについて、

http://swordart-online-game.channel.or.jp/movie/

内容が重いんですけど……。 
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